「人口が減少する日本で不動産賃貸業は成り立つのか?」。不動産投資について取材を受けるときによく質問されますが、人口減少そのものは賃貸市場には影響がないと見ています。さらに現状では不動産価格が下がる理由を見つける方が困難です。(『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』午堂登紀雄)
※有料メルマガ『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』2022年7月4日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:午堂登紀雄(ごどう ときお)
米国公認会計士(CPA)。1971年生まれ、岡山県出身。中央大学経済学部 国際経済学科卒。株式会社エディビジョン代表取締役。一般社団法人 事業創造支援機構代表理事。
「人口が減少する日本で不動産賃貸業は成り立つのか?」の答え
先日、FIRE(ファイナンシャルインデペンデンス、リタイヤアーリー)のひとつの手段としての「不動産投資」について取材を受けました。
それにしても毎回よく質問されるのが、「人口が減少する日本で不動産賃貸業が成り立つのか?」という懸念です。
まず誤解してはいけないのが、人口減少、つまり死亡している人の多くは高齢者であり、彼ら高齢者のほとんどは持ち家だという点です。
賃貸物件に住んでいる人が減っているならともかく、持ち家の人が亡くなっても、賃貸市場にはそもそも関係ない人たちですから影響もないわけです。
では、高齢者の死後、その物件が賃貸市場に流れ込んで供給増を招く可能性についてですが、これもかなり低い。
いまの高齢者の世代はまだまだ戸建て志向ですが、戸建ては地方郊外にあり、首都圏でも駅から離れていますから、賃貸物件としては人気がない部類に入ります。
それに、親の古い戸建てを相続した人が、じゃあ古いから(お金をかけて)リフォームして貸し出そう、と考えるような人がどれほどいるのか疑問です。
また、都市部では高齢者にもマンションが人気になっていますが(段差がない、戸締りがラク、庭もなく外壁修繕も不要で管理がラク)、ではそのマンションを相続で引き継いだ人はどう考えるか。
彼ら、つまり高齢者の子どもたちもすでに自分の家を持っていることが多いでしょうから、その物件を相続しても、「貸す」という発想より「売却する」という判断をすると思います。
というのも、やはり一般の人が不動産投資や賃貸経営をやるという発想にはなかなかなりにくいからです。
つまり、どうシナリオを考えても、人口減少そのものは賃貸市場には影響がない。
都市部での単身者向け賃貸経営は手堅い
一方、毎年80万人以上の新生児が誕生し、彼らが成長して進学・就職などで家を出ると、住む場所が必要ですから賃貸需要が発生します。
大学も企業も大都市圏に集中しており、つまり求人も大都市圏に偏るため、進学にしても就職にしても都市部に出てくることになるからです。
そして、未婚や晩婚の増加で単身世帯が増えますし、独身でマイホームを買う人は多くないでしょう。つまり賃貸暮らしです。ということは、単身者の賃貸需要は今後も右肩上がりになるだろうという推測が成り立ちます。
そもそも都市部にはもう土地がほとんどなく、新規に賃貸物件を建てる余力が少ないですから、供給も限りがあります。東京23区はワンルーム条例があるため、やはりなかなか建てにくい。
なので都市部での単身者向け賃貸経営は手堅い。