老後生活のために、どのくらいの資金が必要かは、現役時代にはわかりにくいものです。しかし、自分にとっての理想的な老後生活を描き、それを目標にすることで、自然とお金を貯めていく習慣はついていくものです。(『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』牧野寿和)
ファイナンシャルプランナー、牧野FP事務所代表。「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務のほか、不動産投資、賃貸経営のアドバイスなども行う。著書に『銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法』(河出書房新社)など。
目的のためにお金を貯めて使う
今回は、自分の決めた目的達成のために長期間にわたりお金を貯め、そのお金を使うことを考えていきます。
考えていくことで、先回の記事「お金は抜きで書き出すのがコツ。老後はどこに誰と住む?夢が広がる“人生の工程表”の作り方」の最後にお話いたしました、「軸になる」その理由も、よりご理解いただけることでしょう。
目的のためにお金を貯めることは簡単
目的があって、お金を貯めて、そのお金を使う経験は、たとえば、短期的には旅行費用や住宅購入の頭金を貯めるということがあります。
それより少し長くて、10数年貯めるのであれば、子どもの大学進学資金を貯める、または、起業資金を貯める、といったことでしょう。
生活をしていくうえで、一定水準の収入が確保できている現役の時代であれば、結構、簡単にお金を貯められます。
ただし、現役の時代であっても、貯めていく金額によっては、今までの家計支出の別の部分を締めていくことになるかもしれません。
何十年も先のことは不確か
また、老後の資金を貯めていく目的は、現在の収入と老後の年金収入では差があり、老後も今の生活を維持するために貯蓄が必要、ということは理解できることです。
しかし、将来何が起こるかわからないし、そもそも、いくら貯めていくのか、貯める目標額が漠然としている。
そのような理由で、老後の生活費を貯めること自体を今一つ悩んでいる方も多いでしょう。
Next: 老後資金の目標額の決め方と貯めていくための2つの方法
仮定した貯蓄の目標額を決める
老後の生活のために貯蓄する目的は、老後の生活でも現在の生活を維持していくために、現在の収入と将来の年金収入の差額を確保するためです。
また、この貯蓄は自分の思い描いた生活を送るために、今から貯めて準備しておくお金でもあります。
たとえば、先回、お話したような、老後の住宅資金です。
このように、今後必要となるお金の項目と、そのおおよその金額を書き出して、算出できた金額を貯蓄の目標額とすればいいのです。
なお、そのようなことをせずにお金を貯めることなく、漠然と老後の生活を迎えても、老後の生活で必要となるお金です。
お金を貯めていく2つの方法
お金を長期的に貯めていくには、主に、2つの方法があります。
ともに、毎月決まった金額を積立てることは基本です。
1つ目は、預けたお金(元本:がんぽん)が、必ず減らないように貯める方法です。
銀行の定期預金や個人向け国債といった、金融商品で貯めていきます。
ご存じのように、これらの金融商品では、利子や利息はほとんど付きません。
したがって、預けた金額のみを確実に積み上げていきます。
2つ目は、元本の保証されていない金融商品などで運用して、収益を貯めていく方法です。
たとえば、株式投資や投資信託、債券、保険商品の一部、といった金融商品を運用することです。
また、不動産や金やプラチナといった現物に投資したりするのも、この方法のひとつです。
この方法では、元本が保証されていない分、収入がある一方で、損出も出るといった、リスクがあります。
海外の株式や投資信託や債券に投資すれば、為替や地政学的なリスクも加わります。
初めて元本保証のない金融商品で貯蓄を目的に投資運用をするなら、現在は、税制優遇が施行されている下記の制度を利用するといいでしょう
・NISA(少額投資非課税制度)
・iDeCo(個人型確定拠出年金)
これらの制度なら、あまり値動きが激しく変動しないであろう金融商品の銘柄から、運用する金融商品を選ぶこともできるでしょう。また、節税の効果も期待できます。
ただし、くどい様ですが、原則、運用する金融商品の元本は、保証されていません。
最悪の場合、元本が無くなることも考えられるのです。
なお、詳しい商品の内容は下記をご確認ください
NISA(少額投資非課税制度)
金融庁HP「NISAとは」
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)の特徴(iDeCo公式サイト)
Next: 思い描く理想の老後生活を描けば資金を貯める「軸」ができる
思い描いている老後生活を書くと「軸」ができる
このように考えてくると、老後の生活をするにあたっては、生活費以外にも、戸建ての持ち家に住んでいれば、屋根の雨漏りといった修繕費用や、旅行にいったり、趣味の美術品が買いたくなったり、といったお金は必要になるでしょう。
ただ、そのたびごとに必要にお金を、何とか捻出していては、その後の生活が成り立たなくなる可能性もあります。
それよりも、ご自身が思い通りの生活を描き、そのために必要なお金を計算して、あらかじめ貯めて使った方が、たとえそのお金が、目標の額に達しなくても、余裕のある生活ができることは確かです。
また、その時の状況により、旅行のために貯めておいたお金を、医療や介護の費用に使うことも可能になるのです。
つまり、ご自身の「軸」を作っておけば、老後の生活で予期せぬ変化に対応できるのです。
そのために、ご自身の思い描いた生活を描き、予算組みをして貯蓄をしていく。
この一連の流れのことを、「軸」を作るといいます。
これで、先回お話ししました「どこに住むかも、誰と住むかも、将来、その時のご自身や夫婦。時には、独立したはずの子ども、それに親族といった、まわりの状況によって、変えることもあるでしょう」と記述した記事の内容も、ご理解いただけると思います。
ただ、ご自身が、どのようにどこに誰と住みたいのか、思い描いていることを書いていれば、それが軸となり、その時々の変化を、受け入れることは容易になると記述した先日の記事の内容もご理解いただけると思います。
老後の生活の準備をする手始めは、今から、自分の思っている生活を描いてみることです。
『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』(2022年7月27日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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ご自身の描いた老後の生活を実現するために、 40代から、退職・完全リタイアをするまでに、 やっておくべきことがあります。 そんなことはわかっているよ!! でも、行動に移せないんだよね…… 実は、何から始めようか迷っているんだよ!? そもそも、何をしたらいいのかわからないんだよね??? そんな方のために、同年代の私、 「人生の添乗員(R)」が、 ファイナンシャルプランナーとして13年の実績と、 自身の人生経験から、 40代から、退職・完全にリタイアをするまでにすべき、 「貯蓄」と「節約」について、 毎週、1テーマずつお伝えします