マネーボイス メニュー

「その保険、必要ありません」。シニアライフに不可欠なお金の基本【第1回~金融と保険~】=牧野寿和

ファイナンシャル・プランナーをやっていると、シニアの方からも、たくさん相談を受けますが、今回は、その中でも、とても重要で基本的な事柄をお話します。第1回目は、金融商品と保険商品についてです。(『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』牧野寿和)

【関連】仕事は60歳でスパッと辞めよ。人生100年は嘘、死ぬ間際に後悔しない「FIRA60(ファイラ60)」の人生プラン=榊原正幸

プロフィール:牧野寿和(まきの ひさかず)
ファイナンシャルプランナー、牧野FP事務所代表。「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務のほか、不動産投資、賃貸経営のアドバイスなども行う。著書に『銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法』(河出書房新社)など。

必ず抑えておくべき老後のお金の知識

老後の生活に向けたお金の基本について、4つお話いたします。

今回はそのうちの2つ、金融商品と保険商品の基本についてです。

お話しすることにはこのコラムや私のところに相談にみえる方に、常々お話ししている内容も含まれています。

なぜなら、何度も確認いただきたい、老後のお金と向き合うために、極めて重要かつ基本的な事柄だからです。

1つ目 金融商品の基本

現在、市中には様々な特徴を持った、金融商品が販売されています。

たとえば、銀行に一定の期間お金を預けておく、定期預貯金があります。

預けたお金は、自宅で、タンス預金をするのとは違い、盗難の被害にある心配がありません。

また、預けた銀行が破綻しても、預けたお金(元本)は、ペイオフの制度により、1金融機関、1預金者あたり、元本1,000万円までと、その利息などが保護されています。

しかし、現在の預金金利は低く、利息による収益は期待できない状況です。

つまり、収益(リターン)は期待できないけど、元本割れの損失の危険も少ない、ローリスク・ローリターンの金融商品といえます。

他方、株式投資や投資信託といった元本保証がない金融商品もあります。

これらの商品で運用すれば、年単位の収益の割合である利回りが、3%とか5%とか、高収益になることもあれば、市場の動向によっては、元本を割って損失が出ることもあります。つまり、ハイリスク・ハイリターンの金融商品なのです。

いまだかつて、ローリスク・ハイリターンの金融商品はありません。

また、銀行の預貯金や個人向け国債といった一部の金融商品を除いて、元本が保証されている金融商品もありません。

金融商品のリスクとリターンとは

金融商品を運用した成果としてのリスクとリターンについてお話いたします。

まず、リターンとは収益の儲けのことです。通常、リターンには所得税や住民税が課せられています。

この課税の税制優遇がされている制度を利用して、運用するのが

・NISA(少額非課税制度)
・iDeco(個人型確定拠出年金)

です(下記※1参照)。

また、リスクとは、危険のことだと思っている方もいるでしょう。金融の世界では「ブレ」のことを言います。

たとえば、ある会社の株式に投資をして、「○○万円もうかった。」または、「○○万円損をした。」この○○万円の「ブレ」が生じることを言っています。この損が、投資資金の元本を割り込むこともあります。

(※1)
・NISA(少額投資非課税制度)
NISAとは-金融庁HP

・iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)の特徴-iDeCo公式サイト

Next: 「その保険必要ありません」。死亡・医療保険の内容が確認しよう



2つ目 保険商品の基本

保険商品は、貯蓄と保障を兼ね備えた金融商品でもあります。ここでは、主に保障の面を見ていきます。

保険商品には、自身や家族が死亡した時や入院した時のための、死亡や医療の保険商品が販売されています。

また、他人に損害を与えた時のその損害や費用などを補いつぐなうことや自身の補償のために、火災や自動車といった損害保険商品が販売されています。

万が一の場合に、家計や貯蓄から賄えない金額を、これらの保険商品に加入して、その保険から支出してもらうのが基本です。

自動車を運転中に不幸にして、他人を死傷させてしまった場合の損害は、家計や貯蓄、資産を処分しても、到底、支払うことはできません。

その補償を得るために、損害賠償保険に加入することは、賢明なことなのです。

なお、ここまでお話している保険商品は、民間の保険会社が販売している保険で、加入することは任意です。

死亡・医療保険の確認を

ところで、私たちは、公的年金(国民年金・厚生年金)や健康保険に加入しています。

国民年金は、原則60歳までの加入ですが、60歳以降も厚生年金に加入する事業所に務める場合は、勤めている期間中70歳までは厚生年金保険料を納付します。

加入の要件を満たすことで、本人が死亡した時には、遺族が遺族年金を、障がいの状態になった時には、本人が障害年金を受給します。

また、健康保険は生涯保険料を納付します。

ここでは詳しくはお話いたしませんが、たとえば、健康保険では入院した時に「高額療養費」の制度があり、前年の収入や所得に応じて病院へ支払う限度額が定められています。

従って、必要以上に、民間の死亡保険や医療保険に加入しなくていいのです。

また、加入している保険商品の保障内容を、知らないまま保険料を支払っている方もいます。

極端な例にはなりますが、死亡保険に加入しているので、何歳になっても、遺族に死亡保険金が支払われると思っていても、70歳「定期」の死亡保険だった場合は、71歳で死亡したら、保険金もらえないといったケースです。

金融の知識は絶対に必要

ここまでお話してきたことは、誰しもが、何度となく聞いたことのあることでしょう。

特に「金融商品の基本」については、株式投資をしてみようと思いながら、生涯しないままの方もいます。

決して、それが悪いことではありません。

それより大切なことは、やはり、金融商品を運用するには運用する商品の知識が必要だということです。

言い換えれば、様々な知識を柔軟に受け入れることのできる年代から始めるべきことです。

そして、老後の生活では、今まで運用してきた金融商品を、いまの運用の知識から、いかに家計に負担なく軟着陸させるか、

つまり、自分自身で収益を確定させるのか、または、負担なく次世代に継いでいくのかを考えて、行動する準備をしておくことです。

年齢に合ったお金との付き合い方を考えることは、生涯に渡り必要なことです!

リタイアが決まってから、老後のライフプランの相談にみえる方がいますが、現役中は、仕事が忙しかったようです。今からでも最低限の知識を身に着けて行きましょう。

【関連】いくら貯めれば老後破綻しない?生活レベルに合わせた必要貯金額の算出方法=牧野寿和

【関連】ドケチな青春、惨めな老後?「働きたくない」FIRE志望20~30代が早期リタイアで失う幸せの種とは=午堂登紀雄

【関連】日本人の8割が加入する生命保険はムダだらけ。対策すべきは不慮の事故より長生きリスク=俣野成敏

image by:umaruchan4678 / Shutterstock.com

【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』(2022年8月17日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ

[無料 週刊]
ご自身の描いた老後の生活を実現するために、 40代から、退職・完全リタイアをするまでに、 やっておくべきことがあります。 そんなことはわかっているよ!! でも、行動に移せないんだよね…… 実は、何から始めようか迷っているんだよ!? そもそも、何をしたらいいのかわからないんだよね??? そんな方のために、同年代の私、 「人生の添乗員(R)」が、 ファイナンシャルプランナーとして13年の実績と、 自身の人生経験から、 40代から、退職・完全にリタイアをするまでにすべき、 「貯蓄」と「節約」について、 毎週、1テーマずつお伝えします

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。