マネーボイス メニュー

今夜の米雇用統計で1ドル142円も。パウエルFRB議長の断固「インフレ退治」政策でドル円は底堅い=ゆきママ

先月の雇用統計直前は1ドル=130円台まで押し下げられていましたが、約1ヶ月後の今日は140円台の大台に突入!その背景と今夜の展望について解説していきます。(ゆきママ)

【関連】米金利上昇で予想される住宅ローン破綻者の続出。パウエル発言から始まる世界恐慌への道=吉田繁治

断固たる決意でインフレと戦うパウエル

ダンコ・パウエル!昨日のNY市場では、ダウ平均株価こそプラス圏に反発しましたが、ナスダック総合指数は5営業日連続の下落となっており、ジャクソンホールにおけるパウエルFRB議長の講演以後、株安・ドル高、そして円安の傾向が強まっていることが分かります。

NYダウ 日足(SBI証券提供)

NASDAQ 日足(SBI証券提供)

米ドル/円 日足(SBI証券提供)

これはパウエル議長の講演で、2つのメッセージを明確に打ち出したことがあります。

1つは、より長く高金利を維持することの重要性であり、利上げの継続、金利高の長期化であり、市場が織り込んでいた来年の利下げを否定することです。

さらにもう1つは、利上げなどの金融引き締めによって経済に痛みを伴う可能性に言及しました。これは経済を犠牲にしてインフレ退治を優先することの表明です。

先月、ドル円が130円台まで調整下落した背景には、7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)において、9月の利上げ幅はデータ次第と、ガイダンス(見通し)をほぼ示さなかったことがありました。市場はGDPが2期連続のマイナス成長と、テクニカル・リセッション(一義的な景気後退)と認識し、利上げはほぼ打ち止め、来年には利下げもあり得るという思惑が台頭しました。

しかしながら、先週のジャクソンホールでは、金利の長期化を示唆して来年の利下げを否定、さらに経済を犠牲にしてでもインフレと戦う姿勢が打ち出され、市場の見通し、織り込みは180度変わることになりました。

さらに最近は欧州のインフレが一段と加速したことを受け、ECB(欧州中央銀行)もタカ派的、0.75%といった大幅利上げに言及しています。

このように、米国と欧州が相次いでインフレ退治のための金融引き締め姿勢を明確にしたことで、日本の緩和的な経済政策との差が際立つこととなり、ドルやユーロに対して円売りが加速する状況となっています。

黒田日銀総裁はジャクソンホールにおけるパネルディスカッション後の質疑応答で、金融緩和策を維持する必要があると明言していました。

Next: 今夜の米雇用統計でドル円はもうひと波乱?先行指標をもとにした展望



予想のハードルは高め!波乱に警戒

それでは、先に発表されている雇用指標の数字を見ながら、今日の展望を考えていきたいと思います。

雇用指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)

統計手法を変更したADP社の全米雇用報告を見る限り、雇用の鈍化が示唆されています。ちなみに変更をした理由としては、乖離が指摘される労働統計局の非農業部門雇用者数に近づける類のものではなく、より正確な労働市場の状況を反映することを目標としたとしていますから、まだまだ乖離は続きそうではあるんですけどね。

一方で、ISM(米供給管理協会)の示す製造業の雇用指数は、4ヶ月ぶりに好不況の節目となる50.0ポイントを上回って3月以来で最高、労働市場が一定以上の強さ、パウエル議長も指摘するタイトさがあると言えるでしょう。

トータルで見ると、可もなく不可もなくといったところで、それなりの数字が期待できるように思います。ただし、前月の非農業部門雇用者数は+52.8万人と大幅増だったことを踏まえると、前月比ですから反動減も想定されるところで、+30万人という事前予想の数字は見た目以上に強い印象です。

コロナの影響は元より、インフレによる半強制的なダブルワークが雇用者大幅増のノイズになっているという指摘もありますから、波乱も十分に想定したうえで見ておく必要がありそうです。

よほど弱い数字でなければ下がらない?

パウエル議長がインフレ退治という断固たる決意、つまり、多少経済に痛みがあろうとも利上げを継続する姿勢を明らかにしていますから、雇用統計もよほど悪い数字が続かない限り、利下げといった織り込みにはなりにくいでしょう。

そういう意味で、今夜も含めて今後のドル円は底堅い状況が続くことが想定されます。

ドル円チャート(日足)

事前予想値は+30万人増となっていますが、+20万人増レベルであれば十分に労働市場はタイト。そういう意味で非農業部門雇用者数が+10万人未満となる、あるいは平均時給が前月比でマイナスとなるといったことでもない限り、基本的にドル円は押し目を狙っていきたいところです。

Next: 今夜のトレード戦略は?想定は1ドル=138.50〜142.00円



今夜の想定は1ドル=138.50〜142.00円

目先は節目や高値として意識されていた139.00〜139.40円レベルで下げ止まれるかどうかで、多少予想を下回る数字が出てドル円が押し下げられた場合でも、139円台を大きく割り込まない限りは押し目買いで入って良いでしょう。

あるいは、発表前に139.50〜139.70円レベルまで押し下げられているのであれば、軽く買って雇用統計ギャンブルもあり。この場合、損切りは浅めなら138.90円でいったん撤退ということになるでしょう。

予想をしっかり上回る数字が並んだ場合には、一段高で142円レベルも十分でしょう。ドル高というより円売りが支えとなっており、さらに強い数字でドル高が加速するのであればストップロスを巻き込みながら上値を伸ばすパターンが想定されます。

基本的に今夜は押し目買い・ロングの意識でついていきたいですね。

押し下げられた場合でも、よほどの数字が悪い、138円台を割り込まない限りは、ポジションを作っていくチャンスと考えて足固め想定で見ておきたいです。

【関連】秋に来るパウエルショック第2波に要警戒。FRB“積極利上げ”のジレンマと隠れたリスク=斎藤満

【関連】歴史的FRBの金融政策が与える米国経済へのボディーブロー。米国株はいつノックダウンされるのか=新天地

【関連】ビットコイン「冬の時代」に買っているのは誰か?相場を牽引するミレニアル世代が見つめる強気予測=高島康司

image by:Federal reserve at Wikimedia Commons [Public Domain], via Wikimedia Commons

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2022年9月2日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。