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米CPI悪化でインフレ継続示唆、NYダウは上下1,500ドル。大荒れ相場でも最後は株高で終わった理由=高梨彰

13日発表された米CPI(消費者物価指数)で高いインフレが持続していることが判明しました。当然、Fedの利上げは続くと思われ一時株安となりましたが、最終的には前日比828.87ドル高で終わりました。なぜ、1日で値幅が1.500ドルとなる大荒れ相場となったのか解説します。(『徒然なる古今東西』高梨彰)

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プロフィール:高梨彰(たかなし あきら)
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。

上下1,300ドル、大荒れの株高、株安要因

13日のNYダウは、1日の値幅が約1,500ドル。終値は前日比827.87ドル高の30,038.72ドルです。

主な材料は時間の順に、

1.イギリス政府が減税案を見直す(かも)→財政安定からの英国債安定期待(株高要因)
2.米CPI高インフレ示す→Fed大幅利上げ継続(株安要因)
3.株も米国債も下げ止まり(米10年債一時4%超も売り続かず)(株高要因)
4.株下げ止まりが「売られ過ぎ」と「売り手の買戻し」を誘発(株高要因)

ざっとこんな感じです。

米Fedの目標インフレ率への道は険しい

懸念されていた米CPI(消費者物価指数:Consumer Price Index)の伸びが予想以上だったものの、瞬間的な売り玉の枯渇が反転買いを誘った形です。

その米CPI、9月は前月比+0.4%、前年同月比+8.2%。エネルギー価格下落(前月比-2.1%。3か月連続下落)が全体の伸びを抑える一方、住居(前月比+0.7%・前年同月比+6.6%)の伸びが指数を押し上げました。

特に住居の伸びが更に進んでいて、Fed(米連銀:Federal Reserve)の大幅利上げ継続路線を後押ししています。住居は米CPI全体の32.47%を占める項目でして、住居の上昇率が下がらないと米CPIも高いままです。

加えて、食料(前月比+0.8%・前年同月比+11.2%)も高い伸び。足元で原油価格が下げ止まりから反発しつつあることも考慮すると、米国のインフレは依然として脅威です。
ましてやFedの目標とするインフレ率2%への道は険しいと言わざるを得ません。

Next: それでも1日が終わってみれば株高となる相場の恐ろしさ



それでも1日が終わってみれば株高

それでも1日が終わってみれば株高。相場って怖いです。

ドル円はCPI公表後に147円台半ばまで円安・ドル高が進んだ後、乱高下。147円67銭から一気に146円45銭まで円高へと逆戻りです。

日本の為替介入はあるのか?

「介入?」の連想も働きますが、NYダウの動き1つ取ってみても何処もかしこも派手な動き。しかも板は薄く(売りと買いの出会いが難しく)、単に振り回されただけとも。

だいたい、CPI直後に介入なんてボラティリティ(変動率)上昇を助長させるだけです。介入の有無は不明ですが、あそこで実施したなんて分かったら、市場からバカにされてしまいます。

むしろ、1日経った今日の方が理に適っています。東京市場は日本のホームグラウンドです。ホームで勝負した方が勝率だって高いというもの。

だからこそ、今の円相場には手を出し難いです。

結局、「荒れた相場はまだまだ続くのか」と遠くを眺めるのみ。相場屋には難儀な週末の気分です。

【まとめ】

・9月米CPIは高インフレ継続を示し、Fedの大幅利上げ継続も確信させます
・それでも瞬間的に売り玉が尽きたのでしょうか、株価は急反発です
・薄い板(売りと買いが出会い難い状態)も高ボラティリティを助長させます

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image by:peterschreiber.media / Shutterstock.com

徒然なる古今東西』(2022年10月14日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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