オーストラリア産小麦が豊作を背景にアジア市場を席巻し、国際市況の押し下げにもつながっている。米国の不作懸念を相殺し、世界的な需給緩和につながっている。食料インフレはすでに落ち着きつつあるが、この流れを加速させる可能性もある。今回は小麦の国際価格急低下で恩恵を受ける日本企業5社を紹介したい。(『 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 』田嶋智太郎)
※本記事は有料メルマガ『田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット』2023年1月27日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後の一時期は大学教諭として「経営学概論」「生活情報論」を担当。過去30年余り、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、地域金融機関改革、引いては個人の資産形成、資産運用まで幅広い範囲を分析研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等において、累計3,000回超の講師を務めてきた。これまでに数々のテレビ番組へのレギュラー出演を経て、現在はマーケット・経済専門チャンネル『日経CNBC』のレギュラー・コメンテーターを務める。主な著書に『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)などがある。
小麦の国際価格急低下で関連の企業に恩恵
オーストラリア産小麦が豊作を背景にアジア市場を席巻し、国際市況の押し下げにもつながっている。米国の不作懸念を相殺し、世界的な需給緩和につながっている。食料インフレはすでに落ち着きつつあるが、この流れを加速させる可能性もある。
米農務省によると、2022~23年度の豪州の小麦生産量は3,660万トンと過去最高になる見込み。
流通の目詰まりが解消しつつあり、出荷も進んでいる。また、豪州産の供給増加は国際価格の下落にもつながっている。
米シカゴ市場の小麦先物は足元で1ブッシェル7ドル台前半と1年3カ月ぶり安値圏で推移し、ウクライナ危機前の水準に戻った。
農林水産省は昨年9月、令和4年10月期の政府売渡価格について令和4年4月期の政府売渡価格を適用する(実質、据え置く)ことを決定した。
令和5年4月以降については、令和4年3月以降の1年間の買付価格を元に算定することとなっているが、当然、昨年5月中旬以降の価格低下も考慮されよう。
小麦を原料として各種の製品を製造・販売する企業は、これまでに製品価格の引き上げを複数回にわたって実施しており、4月以降の政府売り渡し価格が再度据え置きあるいは値下げとなれば、そのぶん利ザヤが確保しやすくなると見込まれる。
以下に、関連する主な企業を取り上げておく。
日清製粉グループ本社<2002>
老舗製粉会社であり、同社の小麦粉国内市場シェアは約4割と首位。小麦粉、プレミックス、パスタなどの小麦を原料とする製品、パスタソース、冷凍食品などの加工食品を製造・販売。
食品は図ごもり特需が剥落しつつあるものの、米国で製粉が好調に推移。健康志向の高まりもあって、ふすま(小麦ブラン)価格が上昇していることも収益に貢献している。
23年3月期(今期)は豪州事業見直しで減損特損を558億円計上するも、年間配当は前期水準(39円)を据え置く見通し。利回りは2.4%となり、500株以上なら株主優待も受け取れる。なお、今期の売上高は前期比14.8%増の7,800億円、営業利益は同12.1%増の330億円を見込んでいる。続く24年3月期も、基本的に増収増益基調は続くものと期待される。
足元の株価は、26週移動平均線、52週移動平均線を挟んでもみあっているが、両線をクリアに上抜ければ、ひとまずは21年9月高値=1,953円を試す動きになると見る。
東洋水産<2875>
「マルちゃん」ブランドで知られる総合食品メーカー。国内外で展開する即席麺を主力に、チルド麺などの低温食品、米飯などの加工食品を展開。水産食品、冷蔵の各事業も手掛ける。
即席麺は国内が値上げ実施も原料高や広告宣伝費投入で苦戦。ただ海外が数量増勢、価格改定の効果も発言。増益幅拡大で純利益は過去最高を更新する見通し。
1月17日、「マルちゃん」ブランドの生麺やチルド商品など計179品目を2023年4月1日納品分から値上げすると発表。市販用や業務用の冷凍食品(88品)と、包装米飯や魚肉ハムなどの加工食品(119品)も4月から値上げする。
足元の業績はすこぶる好調で、23年3月期の売上高は前期比22.5%増の4430億円、営業利益は同37.9%増の410億円、純利益は同38.3%増の310億円と過去最高更新を見込む。株価は昨年10月高値=6130円から調整入りしており、足元は一目均衡表の週足「雲」下限をサポートに反発しつつある。週足「雲」をクリアに上抜けると、あらためて6,000円台を意識した動きになると見られる。
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日清食品HD<2897>
言わずと知れた、即席麺メーカー最大手。カップ麺は06年明星食品子会社化で国内シェア5割超。袋麺も首位級。国内は即席麺増勢だが日清、明星とも原料高はきつい。ただし、海外は米州が値上げに加えて高単価品を伸ばして収益を大きく牽引している。
2023年3月1日納品分からチルド麺の希望小売価格を7~17%、冷凍麺の出荷価格を6~20%引き上げる。チルド麺・冷凍麺の値上げは22年3月以来となる。
23年3月期は、売上高が前期比4.4%増の5,950億円、営業利益は同6.2%増の495億円、純利益は同6.8%減の330億円を見込んでいる。24年3月期も海外を軸に利益を牽引。原料高こなして営業増益基調が続くと見られる。
株価は目先調整含みとなっているが、26週移動平均線を再びクリアに上抜ける動きになってくると、あらためて1万1,000処を試す展開になると見られる。
山崎製パン<2212>
製パン業界で国内シェア4割のトップ。国内各地に工場を展開し、食パン、菓子パン、和・洋菓子などを製造・販売。コンビニエンスストアのデイリーヤマザキも手がける。
菓子パンは数量減でも値上げ浸透、主力品軸に牽引。食パンも単価伸長。コンビニ赤字減る昨年1月と7月に食パンを値上げ。低・中価格帯の商品も展開して需要を取り込む。
また「ランチパック」のピーナッツ、たまご、ツナマヨネーズの主力3商品を2月1日出荷分から値上げする。薄皮つぶあんぱんなど「薄皮シリーズ」の7商品は1月1日出荷分から価格を変更せず内容量を5個から4個に減らす「実質値上げ」となった。
22年12月期の営業利益は前期比30.7%増の240億円、純利益は同15.6%増の120億円を見込んでいる。株価は一目均衡表の週足「雲」の下方で推移しており、1,500円処の水準は底値圏にあるとの印象。23年12月期は値上げ効果がフルに寄与すると期待されており、2月14日の前期決算発表時に示される今期予想が楽しみである。
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不二家<2211>
菓子食品の製造販売、洋菓子類の製造販売および喫茶、飲食店の経営を手掛ける。ペコちゃんのキャラクターライセンス事業なども展開。製菓が好調で、洋菓子も高付加価値戦略を続けながら、費用の増加分は順次価格転嫁で賄う。
最近は「カントリーマアム チョコまみれ」が好調で生産能力を増強。また、新製品「ホームパイ チョコだらけ」の販売も好調に推移している。加えて『ルック』や『ミルキー』などのブランドにおいても新製品を発売し、テレビCM、デジタル広告配信等の販売促進活動を積極的に展開して売上を拡大している。
22年12月期の営業利益は前期比27.8%増の53億円、純利益は同7.2%増の34円を見込む。株価は目先調整含みながら、足元は52週移動平均線に下値をサポートされており、反発の機会をうかがっている。
23年12月期はヒット商品となった『チョコまみれ』の生産増強効果が通期化することもあり、会社側が打ち出す通期予想に期待したい。 ※2023年1月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
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田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット
田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット
』(2023年1月27日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による