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今夜の米雇用統計は鬼が出る?注目は平均時給、有効なドル円トレード戦略は「戻り売り」=ゆきママ

昨年売り込まれ続けたハイテク株がついに上昇!レバナス勢が息を吹き返しつつあります。そんな中、今日は月に1度のお祭り米1月雇用統計の発表(22:30)が予定されています。今週あったFOMC(米連邦公開市場委員会)、BOE(英国中央銀行)委員会、ECB(欧州中央銀行)理事会という3つの中銀イベントを通過した相場の現状について解説しながら、今日のトレード戦略について解説していきます。(ゆきママ)

結局はドル1強?日銀アタックがなければドル円の下値は限定的か

米FOMCでは、マーケットの予想に反して「継続的な利上げは適切」という文言が残されたものの、パウエルFRB議長は現在のディスインフレ(金融引き締め政策などにより物価上昇ペースが鈍化すること)に概ね満足しているようで、以前のようなインフレへの危機感、インフレファイターといった印象が打ち消され、ハト派的(緩和)と市場が受け取ってドル安・株高となりました。

また、英BOE金融政策委員会においては0.50%の利上げが行われ、予想以上に賛成票が多かったことで初動はタカ派的(引き締め)との見方が広がりましたが、経済見通しレポートでは、英国のCPI(消費者物価指数)が2024年の第2四半期に1.0%まで下がるとされており、急激なインフレ後退を織り込んでポンド安に。

市場のディスインフレへの期待感が高まる中、欧州ECB理事会では、0.50%の利上げ、さらに次回3月も0.50%の利上げが強く示唆されたものの、ユーロ買いには結び付かず。むしろ、ラガルドECB総裁が以前よりもインフレに対する警戒感を薄れさせたことを好感し、ユーロ安・株高へ。

このように、市場は主要な中央銀行がディスインフレを意識して警戒感を緩めたことを好感し、利上げの打ち止め、さらにいずれは利下げということで株が大きく買われています。

また、為替においてFOMCでのドル安からドル高になったのは、ポンドやユーロが売られたことが大きいです。結局のところ、経済の強い米国ですら利上げ打ち止め・利下げ方向なら、経済状況の悪い英国や欧州では時期的にも利下げになるのは早そうですからね。押し出される形でドルが買われています。

こうなると、どうしてもドル円が下がらなくなってしまうので、他のクロス円もやや下値は限定的ですね。

なんだかんだ米国、英国、欧州は金利の引き上げはしているわけですから、日本と世界の金利差は一段と拡大したわけで、極端な円高にはなりにくい状況です。したがって、1月の円高のような値動きになるためには、ヘッジファンドによる日銀アタック(国債売り)か、日銀の金融緩和政策の修正・変更期待が高まらないと難しいでしょう。

2月上旬・10日ごろを目処に黒田日銀総裁の後任人事が示されるということで、この人選次第で再び円高圧力が高まることになりそうですので、注意しておきましょう。

Next: 先行指標から結果を先読み。有効なトレード戦略は?



注目は平均時給!非農業部門雇用者数は初動のみ

それでは、先に発表されている雇用指標の数字を見ながら、今日の展望を考えていきましょう。

雇用指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)

企業向け給与計算サービス大手のADP社が発表する全米雇用報告は、+10.6万人増と予想(+17.8万人増)をお大きく下回る弱めの数字となりました。背景として、カリフォルニア州の洪水や悪天候による影響があるとしています。

ISM(米供給管理協会)の数字も若干弱まってはいますが、少なくとも製造業に関しては今年も採用には前向きであり、積極的に減らそうという話はあまり出ていないとのことです。

実際、新規失業保険申請件数は歴史的な低水準が続き、減少傾向ですからね。労働市場は引き続き堅調に推移していることが伺えます。

というわけで、もしかするとNFP(非農業部門雇用者数)の数字は予想を下回ってくるかもしれませんが、影響するのはあくまでも初動だけでしょう。求人件数は相変わらず多いので、天候や季節要因と解釈される可能性が高く、大勢には影響しない可能性が高いです。

したがって、注目は平均時給(賃金上昇率)ということになります。前年比はベース効果(前年の数字による影響)が大きいので、とりわけ前月比の数字がポイントになるでしょう。

予想では+0.3%増となっていますので、これを上回ってくるようならドル高に結びつきやすいでしょう。

戻り売りが手堅そう!

予想からよほどの数字が乖離すれば別として、基本的には狭めのレンジでの値動きになりそうです。初動はNFPの値動きに左右されがちですが、注目すべきは平均時給、とりわけ前月比でどうなったかが大きいので、まずはそこに注目しておきましょう。

ドル円チャート(日足)

前月比でマイナスということになれば、賃金インフレが一気に後退ということでドル安加速、年初来安値の127.20円レベルを試す可能性は十分です。もっとも、米国の雇用市場が引き続き堅調なことを踏まえると、その可能性は低いでしょう。

基本的に予想並かそれ以下の数字が出れば、利上げ打ち止め意識が継続しますから、ドル円の上値は限定的。強めの数字が出ても、前月比+0.6%増以上の数字でなければドル高にも限界がありそうで、そういった意味では「戻り売り」が手堅そうではあります。

Next: 具体的なトレード戦略は?今夜の想定は1ドル=127.50〜129.80円



今夜の想定は1ドル=127.50〜129.80円

具体的なトレード戦略としては、発表前に128.50円前後から下であればロングして強めの数字にかけて初動で利食いしたい。129円台はかなり重いでしょうし、130円の大台はもっと上値が重いですからね。

あるいは、予想並かちょっと強い程度の数字が出るのを待って、上昇したところを戻り売り・ショートで入っていくのが良いでしょうか。

やはりしばらくは利上げ打ち止め意識でドル円の上値は重いですし、来週以降は日銀の後任人事による円高がありそうですから、129円台で伸びが止まったあたりからコツコツ売っていくイメージですね。ただし、下値も固いので下がれば128円台半ばぐらいでいったん利食いでしょう。

前月比+0.6%以上の数字が出た場合は、株価も乱高下して荒れそうなので要注意。ジリジリドル高が継続する可能性がありますから、その場合は慎重に様子を見ながらトレードを改めて考えましょう。

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image by:metamorworks / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2023年2月3日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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