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価格高騰で難易度あがる不動産投資…「小口化」商品は儲かるのか?プロが実物・REIT・不動産ファンドを徹底比較=姫野秀喜

少額から不動産投資ができる「不動産小口化商品」というものがあります。これ、本当に儲かるのでしょうか?不動産コンサルタントが真剣に調査・検討しました。(『 1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ 1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ 』姫野秀喜)

プロフィール:姫野秀喜(ひめの ひでき)
姫屋不動産コンサルティング(株)代表。1978年生まれ、福岡市出身。九州大学経済学部卒。アクセンチュア(株)で売上3,000億円超え企業の会計・経営計画策定などコンサルティングに従事。合間の不動産投資で資産1億円を達成し独立。年間100件以上行う現地調査の情報と高い問題解決力で、顧客ごとに戦略策定から実行までを一貫してサポートしている。

「不動産小口化商品」は気軽に投資できるが、たいして儲からない

通常、不動産投資は、アパートやマンションなどの賃貸用不動産を購入し、それを賃貸して家賃収入を得て最終的に売却し、売却益(売却損)を得る…という感じの流れになります。

ところが、世の中にはリート(REIT)やリート以外の小口化された不動産ファンドに関する投資商品も存在します。

で、「そういうのって、本当に儲かるの?」という質問を受けたので、詳しく調べてみました。

まず結論から言うと、リートや不動産ファンド商品は、

・気軽にできるが、たいして儲からない
・資産形成には使えない
・税金対策にはならない
・不動産を所有しないが、所有した気分を味わえる

というものだということがわかりました。

不動産投資・不動産ファンド・リート・株式の違いは?

次の表に、実物の不動産投資、不動産ファンドの小口商品、リート、株式(個別銘柄)の違いを表にまとめましたので、ご参照ください

ざっくり、ポイントを解説します。

インカムゲインとキャピタルゲイン

まず、投資における儲けは「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」に分類されます。

「インカムゲイン」とは、所有している間の家賃収入や、利息、配当金、株主優待などを表します。また「キャピタルゲイン」とは、売却価格から購入価格を差引した、売却益のことを表します。

この「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の両方を合わせて、最終的に投資した金額以上に儲けが出ていれば、その投資は意味がある投資であると考えます。

不動産投資は、物件を見極めることができさえすれば、所有している間の家賃収入と、最終的な売却益の両方を得ることが可能な投資と位置付けています。

その見極めは大変な困難を伴うのですが、株式と異なりテクニカルな値動きが少ないため、ファンダメンタルだけで、おおよそのキャピタルゲインを予測することが可能だからです。

それに対して、株式(個別銘柄)は、たとえ企業のファンダメンタルズがどんなに良くても、テクニカルで購入タイミングを失敗してしまえば、損切りが必要となるなどキャピタルロスのリスクが存在します。

株式の見極めも不動産同様に大変困難を伴うでしょう。株式で成功している投資家は穴があくまで四季報を読み込み、有報を読み込んでいるし、企業の現地調査までやっていることでしょう。

そこまですれば株の勝率も不動産同様に上がるかもしれませんが、それでもファンダメンタルズ中心に動くのかテクニカルの影響を受けるのかの違いは大きいと思います。

不動産ファンドはインカムも小さく、キャピタルゲインはゼロ、そのくせキャピタルロスのリスクは存在するという、基本良くてトントンという商品です。

リートは、値上がりする可能性はあるものの、値下がりする可能性もあり、そもそもテンバガー(10倍になる銘柄)を見極められるかどうかは微妙な商品です。

Next: 資金効率・節税メリット・手間で比較すると…



資金効率

投資の資金効率については、実物の不動産投資だけが「融資の利用」が可能であり、効率が高いです。

株式(個別銘柄)や、リート、不動産ファンドはあくまで自己資金での購入が基本となりますので資金効率は極めて悪いです。

なお、表には記載していませんが、FXなどの証拠金取引であればレバレッジを利かすことが可能なので、資金効率は上がります。

いずれにせよ、少ない元手で大きく儲けることが可能という点では実物の不動産投資の右に出るものはいないと言えます。

節税メリット

節税のメリットでいえば、不動産投資と株式に軍配があがります。

不動産投資は、そもそも事業経営なので、さまざまな経費の計上が可能であり、相続税対策、所得税還付などたくさんの節税メリットを享受することが可能です。

株式投資は、サラリーマンの給与とは別の枠で課税され、その税率は約20%と低いため、所得税が40%や50%といった高所得者であればあるほど、お得と言えます。

リートについては、ほぼ株式(個別銘柄)と同様に分離課税となりますが、控除などが使えなくなる分、ちょっとお得感は減ります。

節税でいえば、不動産ファンドは最悪です。不動産ファンドによる収益は雑所得に分類され、収益が20万円を超えると、サラリーマンの給与所得の税率と同じになるからです。つまり、税率が50%の人は50%で課税されるということです。

ただ、どの投資でも言えることですが、「節税ばかりをウリにする投資」については注意が必要です。「節税ばかりをウリにする投資」は、節税以外にメリットがなく購入すれば損する確率が高いからです。

「節税」はあくまで投資の副産物であり、「節税」が目的になって、儲からないモノを購入するのは本末転倒です。

購入の手間

購入の手間については、不動産ファンド、リート、株式(個別銘柄)は楽々です。

今はネット証券などがたくさん存在しますので、口座を開設してしまえば、あとはスマホで簡単に売買できます。

不動産ファンドもネットだけで購入可能など、お手軽さをウリにしています。

それに対し、実物の不動産投資は、不動産屋まで契約しに行ったり、有給を取得して銀行に行き、融資を依頼したり、役所に行って公的書類を用意したりと、何かと手間がかかります。

まぁ、本当にお得な物件は、有給をとって会社を休み、自分の足で現地や不動産屋や銀行や役所に行く人しか買えないので、仕方ないことなのですが…。

なお、上記の面倒な作業のほとんどすべてを業者がやってくれて、手付金も20万円や30万といった、めっちゃ少ない金額しか支払わなくてよい物件は、儲からない物件の可能性が高いので気をつけましょう。

実物の不動産は手間がかかるのが当たり前です。その手間を面倒だと思う人は株式をやる方が幸せになれます。

Next: あなたに合った投資はどれ?必要資金と期待される収益で比較



必要資金

必要資金については、少ない順に、不動産ファンド、リート、株式(個別銘柄)、不動産投資となります。

不動産ファンドやリートは、数万円程度の小さな金額から始められることをウリにしていますので、当然といえば当然です。

最近は株式でもミニ株などありますが、様々な個別銘柄を買うとすればどうしても、50万円や100万円単位の資金が必要となってしまいます。

不動産投資は、最低でも物件価格の1割~3割程度の自己資金が必要となりますので、500万円や1,000万円程度の資金がないと投資をスタートできません。

この必要資金の高さが不動産投資のハードルの高さといえるでしょう。

もちろん、200~300万円で地方の築古戸建を買うなど小資金でも始められる手法はあるものの、それでも株式投資よりも絶対的な資金は必要となります。

期待される収益の大きさ

この期待される収益の大きさとは、投資を継続できれば「何年くらいでどれくらい儲かるのか」を記載したものになります。

一番収益が大きいのは株式(個別銘柄)でうまくテンバガーを買い続けられれば「10年で億単位」の収益を得ることができます。

ただし、あくまでテンバガーを買い続けることができればという前提条件付です。10年間、株式マーケットを見続け、銘柄を入れ替えながら、拡大する必要があります。

次に収益が大きいのは不動産投資です。

不動産投資は、融資の返済が終わる頃には「30年で億単位」の収益を得ることができます。これも、あくまで最初に絶対に値下がりしないエリアの物件を購入することが前提条件です。

ただ、株式と異なるのは不動産の場合、きちんと見極められれば、その後は家賃収入を得ながら借金を返済するだけで、30年後には億単位になるということが確定していることです。

ここが、株式より不動産投資の方が楽な点であり、難しい点でもあります。

というのも、不動産は株式に比べて途中での撤退がとても難しいからです。自己資金で投資をしている株式の場合、誤った銘柄を購入しても損切りすることで撤退できます。そして、それほど大きな損失を受けずに撤退できれば、すぐに別の銘柄に再投資が可能です。しかし、融資を用いる不動産投資の場合は、借金が残ってしまい売却できないため、損失が拡大し続けるのに損切りできないという事態に陥りやすいからです。

不動産投資は簡単に撤退できないため「とりあえずやってみながら考える人」には不向きの投資です。買ってしまったらお終いなので、買う前にしっかりと見極めることが重要なのです。

リートについては株式投資と近いものの、過去の投資実績を見ているとあまりテンバガーがなくせいぜい投資金額の2倍程度というのが多いようです。

なお、不動産ファンドについては、そもそも投資金額が小さく、せいぜいお小遣い程度にしかならないため、資産形成の手段としては使い物にならない感じです。

Next: 不動産ファンドは体験型アミューズメント?優良案件を掴める可能性は…



優良案件探しの難易度

儲かる物件、儲かる株式(テンバガー)を購入するためには、圧倒的な学習と研究のプロセスが必要となります。

「優良案件探しの難易度」は、そのプロセスの難易度を表しています。

実物の不動産投資では、1,000件も2,000件も物件資料に目を通して、その中から50件、100件と現地調査を行い、財務3表(B/S、P/L、C/F)に基づく30年シミュレーションを作成して、インカムゲイン・キャピタルゲインの可能性をしっかりと見極める必要があります。

株式(個別銘柄)も、四半期に一度、四季報を熟読し、様々な指標を基に個別企業をピックアップし、その企業の有価証券報告書やIR資料、必要なら現地調査や製品調査などを行い、テンバガーの可能性を見極める必要があります。

不動産投資も株式投資も、定量的な知識から定性的な知識まで必要な学習を行い、分析・調査を行うために膨大な時間を必要とします。

そういう意味で、めちゃめちゃ大変です。というか、そういう大変な学習や調査をしないで、投資で勝つことはありません。

それに対し、リートはそもそも銘柄数が少なく、分析したところでテンバガーがそもそも存在しない可能性もあるため、その中からテンバガーを見つけるのが難しいという意味で、めちゃめちゃ大変です。

また、不動産ファンドにいたっては、業者が提案している商品の中からしか選べないため、その中に優良案件がある(なんて甘い世界ではない)可能性は極めて低いという意味で、めちゃめちゃ大変です。

まとめると、不動産投資と株式(個別銘柄)は、「当たり(儲かる物件・銘柄)は存在するが見極めがめっちゃ大変」ということであり、不動産ファンドとリートは「そもそも選択肢が少なすぎて当たりが入ってるのか不明」ということになります。

いずれにせよ、どの投資をするにしても「当たり」を探し出すのはめっちゃ大変ということになります。

不動産投資をやった気分になる

実は、不動産ファンドの最も大きなメリット?は、「不動産投資をやった気分になる」ということです。あくまで「気分」です。

不動産投資は、大変な学習をし、調査や分析をし、大きな借金を背負って、物件を購入するわけで、手間も苦労も半端なくかかります。

不動産ファンドは、それらすべてをやらずに手間なしで行えます。

面倒な学習もなく、調査や分析に土日を使わず、有給を取得して役所や銀行に行かず、大きな借金を背負わずに「不動産投資をやった気分になれる」のです

不動産ファンドは、それを最大のウリにしています。

つまり不動産ファンドは「不動産投資をやった気分」を味わう体験型アミューズメントと解釈できるのです。

そのため、不動産ファンドの商品は、ホームページに「物件写真」「物件情報」「周辺のエリア情報」など、その不動産について自分で分析・現地調査したかのような気分が味わえる情報がたくさん掲載されており、それを見て投資することができます。

本来、不動産投資は、相手が出してきた情報だけで投資判断せず、自分自身で現地を調査し、自分の目で見極めるというものなのですが、そういう苦労をしたくない人がターゲットだからお手軽に仕立てられているのです。

でも、どこまでいってもしょせん「不動産投資をやった気分」を買っただけです。

運よく値下がりせずに、元本が返ってきたとしても、その商品を所有している間の配当はせいぜい小遣い程度。

お金を出しているのに、物件の所有権を取得できないため、不動産ファンドが手に入れいている何億円ものキャピタルゲインをもらうこともできません。

もちろん例外もありますが、自分が投資している不動産ファンド商品の対象物件が、値上がりしても利益はもらえない一方で、値下がりした場合は、元本保証されないのです。

そのかわり「不動産投資をやった気分」を味わうことができるのです。

まぁ、キャピタルロスが出たところで、投資金額がせいぜい数万円から100万円程度の人がほとんどなのであきらめもつくという感じでしょうか。

これは不動産ファンド側から見ると、キャピタルロスが出ても1人当たりの金額が小さいため、集団訴訟を起こされるリスクも小さく、銀行融資よりも圧倒的に有利に資金調達できるというメリットとなります。

物件のキャピタルロス(値下がり)のリスクは、出資者に持ってもらい、元本割れしたら返済しなくてもよい資金を調達でき、転売が完了すればキャピタルゲインを得られるわけですから、うまい商売を考えたもんです。

Next: 投資するならどれ?「不動産小口化商品は儲かるのか」の結論



まとめ:結局、投資するならどれ?

今回、不動産ファンドとリートについて色々と質問されたので、調べてみたのですが、やはりせっかく投資をするなら「実物の不動産投資」か「株式投資」だなとあらためて思いました。

株式はさすがに投資の王様だけあって、さまざまな税制優遇を受けられますし、情報量も多いためやりがいがある投資だと思います。

不動産投資も物件の見極めは大変ですが、確実に資産形成を行える王道ですし、税金対策も多数存在し、やりがいがある投資だなと思います。

リートは、株式投資の感覚で不動産に関わってみたいという人であればいいですが、わざわざ好んで投資対象の選択肢を狭める必要はないかなぁって思います。

不動産ファンドは、ファンド側はメリット盛りだくさんですが、買う側はどうでしょうね。税金対策もできないし、儲かってもせいぜい小遣い程度ですし。うーん、投資というより「やった気分」を味わうエンタメとして買う分には良いかなぁって思います。安いしね。

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image by:eamesBot / Shutterstock.com

1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ 1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ (2023年3月28日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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