マネーボイス メニュー

モスフード史上最高売上で赤字転落の怪。お化け飲食企業“うかい”絶好調の謎を解く=井戸実

モスフードが赤字転落したという報道がなされましたが、史上最高売上を叩き出しながら、赤字決算にしてしまった経営陣の責任は重いと言わざるを得ません。その一方で、コロナ禍を乗り越え、順調な経営を続ける企業が「とうふ屋 うかい」を経営するうかいです。その全貌を明らかにしていきます。(『<ロードサイドのハイエナ> 井戸実のブラックメルマガ』井戸実)

※本記事は有料メルマガ『<ロードサイドのハイエナ> 井戸実のブラックメルマガ』2023年6月7日号を一部抜粋したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にご購読ください。

プロフィール:井戸実(いど みのる)
神奈川県川崎市出身、1978年1月19日生まれ。川崎市で一番偏差値の低い工業高校を卒業後、寿司職人の修業を経て、数社の会社を渡り歩いて26歳で目黒区祐天寺に居酒屋を開業。2006年7月に「ステーキハンバーグ&サラダバーけん」を開業し、同年9月に㈱エムグラントフードサービスを設立。現在は事業譲渡をして、株式会社TWENTY NINEで「肉流通センター」の焼肉店をチェーン展開する。

史上最高売上で赤字転落の謎

23年3月期の決算発表が、各社、5月に集中するので、先週の居酒屋業界の分析に続き、今週は、非アルコール業態の会社の決算発表を覗いてみました。

なんだか謎の決算を出したのが、モスバーガーを展開するモスフードサービス社でした。

モスフード社は、コロナに突入する直前の2019年に食中毒事故を起こして、19年3月期の決算では、9億円の最終赤字を計上。そしてコロナに突入するという、最悪の流れだったのですが、外出控えやデリバリー、テイクアウト需要が業容を支え、コロナを追い風にして、以下のような結果となりました。

売上高/当期利益

19年3月 662億円/▲9億円
20年3月 689億円/3.6億円
21年3月 719億円/9.9億円
22年3月 784億円/34億円

居酒屋企業が悶え苦しんだ前期の22年3月期には、モスフード創業以来の最高益となる、34億円の当期純利益を叩き出しています。これには12億円の助成金(給付金・協力金)収入が計上されており、時短営業の要請に従ったもので、そもそも20時以降の営業を閉じたところで業績にあまり影響のないところに、降って沸いたお祝い金が会社を潤わせたことがわかります。

ちなみに日本マクドナルドHD社は、趣旨に合わないと、給付金の受給を辞退しました。よく株主を納得させたと思います。

その一方で、モス社は、コロナ禍の3年を黒字で乗り越え、23年3月期は売上も伸び、創業以来の最高売上となる、850億円の売上を叩き出しました。凄い話です。

しかし……しかしです。

当期純利益は3億円の赤字となりました。

原材料、人件費高騰はわかっていたはず

全く意味がわかりません。営業利益で4,100万円の黒字。経常利益では3.5億円の利益。助成金収入で4.7億円を計上しております。そして除却損と減損で8,9億円を計上したので、3億円の当期純損失で着地しています。創業以来最高売上を計上しているにも関わらず、赤字に着地させてしまったのは、経営陣の責任によるところも大きいのではないかと思います。

赤字となった要因は、ロシアのウクライナ侵攻による、原材料の高騰、円安による調達コストの高騰、光熱費の高騰、人件費コストの高騰など。これらが重くのしかかり、最終的に赤字に至りました。

そのように決算短信に記されてるのですが、対策はなかったのかと、ツッコミたくはなります。

コロナ前の19年比で200億もの売上を増やし、直前期から売上を110%伸ばしながら、34億円あった当期純利益をマイナス3億円にしてしまうのは、経営陣が怠慢だったと言われても仕方がありません。

Next: モスフードの経営陣はほとんどがプロパーの社員だった



経営陣のほとんどがプロパー出身の役員

そこで、現在の経営陣がどのような人で構成されているのかプロフィールを確認してみると、モス社のプロパー社員出身の役員がほとんどです。

取締役社長 中村栄輔氏(65歳) 88年6月入社
取締役常務執行役員国際本部長 瀧深淳氏(58歳) 86年4月入社
取締役常務執行役員 福島竜平氏(59歳) 86年4月入社
取締役常務執行役員開発本部長 内田優子氏(63歳) 85年入社
取締役上席執行役員営業本部長 太田恒有氏(53歳) 95年4月入社

残り4人の取締役は外部からの役員となっていりますが、察するにプロパーの役員の方々が、重要決議を差配していることと思います。

別に僕は同社の株主でもなんでもないので恨みも何もありませんが、このような決算になってしまうのは違和感があります。

同社は、自己資本比率が64%で、ネットキャッシュが150億円もあります。なので危機感があまりないのかもしれません。無謀なチャレンジをせず、既存の事業を守っていけば、絶対に潰れない企業構造になっているので、外部から変な人材を迎え入れてしまい、それがバカボンでしかないような事態になってしまうくらいなら、モスに一生を捧げたプロパー役員が舵取りするのが一番なんだとは思います。

コロナ禍で快進撃を続ける“うかい”

また、コロナで苦境に喘ぐ居酒屋企業に対して、コロナを打ち負かした外食企業はどこかと追い掛けていたら、面白い会社がありました。

「とうふ屋 うかい」などを展開する株式会社うかいです。

コロナ前の19年からの業績は以下の通り。

売上高/当期純利益

19年 139億円/9千万円
20年 132億円/▲4.9億円
21年 85億円/▲16億円
22年 98億円/▲8.6億円
23年 126億円/9.1億円

ご多分に漏れず、コロナ禍の3年間は悲惨でした。20年~22年の3年間で30億円近い赤字を叩き出しました。着目したいのは、21年度と22年度の助成金(給付金)額です。

同社の2年分の助成金収入の合計は、8.5億円でした。

この時期の同じ売上規模の企業で「備長扇谷」などを展開するヴィアHD社と串カツ田中HD社の助成金収入を調べてみると、ヴィアHDは約60億円(20年4月~22年3月末)、串カツ田中は34億円(20年12月~22年11月末)の助成金収入となっています。

15店舗で99億円を売り上げるお化け企業

それに対してうかい亭社は8.5億円しかありません。なぜかと不思議に思って調べていくと、その理由が明らかになりました。

芝とうふ屋うかい 2,033,766
銀座うかい亭 1,098,519
横浜うかい亭 959,383
うかい鳥山 912,362
表参道うかい亭 789,007
あざみ野うかい亭 685,355
八王子うかい亭 738,269
とうふ屋うかい鷺沼店 526,374
とうふ屋うかい大和田店 420,969
うかい竹亭 370,645
六本木うかい亭 350,398
グリルうかい 丸の内店 322,692
六本木 kappou ukai 263,671
銀座 kappou ukai 肉匠 214,729
ル・プーレ ブラッスリーうかい 131,346
単位(千円)

これは同社の23年3月期で126億円を売り上げる「うかい」のレストランの店別売上です、なんと15店舗で99億円を売り上げるのです。

この他に物販事業で17億円、箱根ガラスの森美術館事業で9.6億円の売上があるのですが、レストラン事業で一番売っている店は、東京タワーの裏にある「芝とうふ屋うかい」で、年商20億円です。これはマジで凄いことです。

僕が行ったことがあるのは、芝・銀座・六本木・烏山・表参道・あざみ野ですが、東京タワーの下の店の月商1.6億円は、ホントにヤバい数字です。

西麻布の交差点にあるグローバルダイニング社の「権八」が、全盛期に月商1.3億円くらいを売り上げていたという話は聞いたことがありますが、コロナ禍を取り込んだ22年4月~23年3月の間で、1,6億円ですから、おそらく今期はさらに積んでくるでしょう。

しかしホントに凄いです……月商1億円売る店を一軒作って、そのお店だけを大事に守って余生を過ごすような生活……理想です。

続きはご購読ください


※本記事は有料メルマガ『<ロードサイドのハイエナ> 井戸実のブラックメルマガ』2023年6月7日号を一部抜粋したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にご購読ください。

<すぐ読める! 5月配信済みバックナンバー>

※2023年5月中に定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。

2023年6月配信分
  • 『成功する人、失敗する人の見分け方』井戸実のブラックメルマガVol.602-2/2(6/7)
  • 『モスフード創業来最高売上でも赤字決算の謎』井戸実のブラックメルマガVol.602-1/2(6/7)

いますぐ初月無料購読!

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

※1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。

2023年5月配信分
  • 『20年後の居酒屋業態どうなるか?』井戸実のブラックメルマガVol.601-2/2(5/31)
  • 『不可解な丸亀製麺の蛙混入問題』井戸実のブラックメルマガVol.601-1/2(5/31)
  • 『常識外れの利益率を叩き出すZ世代の飲食事業』井戸実のブラックメルマガVol.600-2/2(5/24)
  • 『外食を止めればワタミは超優良企業』井戸実のブラックメルマガVol.600-1/2(5/24)
  • 『強盗団の裏に潜むのは誰なのか?』井戸実のブラックメルマガVol.599-2/2(5/17)
  • 『あまりにも面倒なインボイス制度』井戸実のブラックメルマガVol.599-1/2(5/17)
  • 『どうなる?コロナの5類引き下げ後』井戸実のブラックメルマガVol.598-2/2(5/10)
  • 『不正利用されたクレジットカード』井戸実のブラックメルマガVol.598-1/2(5/10)
  • 『品川駅で職質受け激怒』井戸実のブラックメルマガVol.597-2/2(5/3)
  • 『すし銚子丸の調子はどうなのか?』井戸実のブラックメルマガVol.597-1/2(5/3)

2023年5月のバックナンバーを購入する

2023年3月配信分
  • 井戸実のブラックメルマガVol.592-2/2(3/29)
  • 井戸実のブラックメルマガVol.592-1/2(3/29)
  • 井戸実のブラックメルマガVol.590-2/2(3/22)
  • 井戸実のブラックメルマガVol.590-1/2(3/22)
  • 井戸実のブラックメルマガVol.590-2/2(3/15)
  • 井戸実のブラックメルマガVol.590-1/2(3/15)
  • 井戸実のブラックメルマガVol.589-2/2(3/8)
  • 井戸実のブラックメルマガVol.589-1/2(3/8)
  • 井戸実のブラックメルマガVol.588-2/2(3/1)
  • 井戸実のブラックメルマガVol.588-1/2(3/1)

2023年3月のバックナンバーを購入する

【関連】中国産を国産と偽ったウナギ店、売上も“偽装”で4,500万円脱税。「ウナ丼しっかり食べた」谷国家公安委員長ともども呆れられる事態に

【関連】なぜココイチ「2400円カレー」爆売れ?全メニューが割高でも客が離れない経営戦略=佐々木悠

【関連】飲食店に復活の兆し…投資家は「食品卸」銘柄に大注目!業績拡大が見込める日本企業5社=田嶋智太郎

Image by:yu_photo / Shutterstock.com

<ロードサイドのハイエナ> 井戸実のブラックメルマガ』(2023年6月7日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

有料メルマガ好評配信中

<ロードサイドのハイエナ> 井戸実のブラックメルマガ

[月額880円(税込) 毎週水曜日(年末年始を除く)]
2010年度外食企業売上高伸長率で日本一となった株式会社エムグラントフードサービスの創業者オーナーです。2011年9月で会社設立から丸5年を迎えます。たった5年で総店舗数260店舗以上。売上高で165億円の社を作った軌跡の一部をメルマガにてお伝えします!

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。