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ダウ「前年比安」で米国は景気後退に入ったのか?個人投資家がいま備えるべきこと=角野實

ダウが去年よりも安い水準になっています。ダウは現在、株価ベースでは、2.37%高です。これだと、株価、つまり、前年同月同日比では2.37%高という意味になります。私が言っているのは、去年のドルや金利の価格を含めて、ダウが去年よりも安くなった、という意味です。みなさんが知りたいことは、ここから株は買いなのか?ということだと思います。(『 角野實のファンダメンタルズのススメ 角野實のファンダメンタルズのススメ 』)

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プロフィール:角野實(かどの みのる)
大学卒業後、金融機関に10年ほど勤務。独立して投資家の道へ。現在は企業経営者として活動、FX関連の執筆を多数行っている。

ダウ「前年比安」の意味

ダウが去年よりも安い水準になっています。これは確か去年の秋以来のことで、ここから株価などは底にして上昇をしていました。ここ最近の前年比がどんどん安くなっていく原因は、ドルの上昇が原因です。

米ドル/円 日足(SBI証券提供)

具体的にはマーケットというのは、前年比で動いています。その理由は、経済指標、主なものは、たいていの場合、前年比あるいは前月比(前期比)で表示されることです。

マーケットがファンダメンタルズ通り動いているのであれば、経済指標通りに動いているのと同義のことになりますので、前年比で動いている、ということになります。

前月や前期比で動くケースもありますが、それはあくまでも補助的な意味合いです。たとえば、先月、あなたが何を行っていたか、鮮明に思い出せる人は稀でしょう。自分が先月、何をやっていたのか思い出せないのに、マーケットや世界経済の動きなどより思い出せないのと一緒のことです。

つまり去年の同じ季節と比較した方が、具体的なイメージが湧きやすい、というのが理由です。

ダウは現在、株価ベースでは、2.37%高です。これだと、株価、つまり、前年同月同日比では2.37%高という意味になります。私が言っているのは、去年のドルや金利の価格を含めて、ダウが去年よりも安くなった、という意味です。

NYダウ 週足(SBI証券提供)

ドルインデックス(ドル×金利)は、前年比で3.09%安です。3.09%安というのは、3.09%株価が高くならなくてはいけない意味を成しています。「ドル安なら株買い」といつも言う意味と一緒です。ドル安だと株価は高くなる傾向があり、結果として、ドルが3.09%下がったなら、株価は3.09%上昇しないといけない意味になります。

さらにダウは前年よりも2.37%上昇していますが、ドルや金利を含めると3.09%は上昇をしていないといけない、ということです。「2.37 – 3.09 = -0.72」で、0.72ダウはきのうの引けの段階で安くなった、ということを意味しています。

みなさんが知りたいことは、この「‐0.72、という数字、ないしは、ここから株は買いなのか?ということだと思います。

Next: いまの株式相場は「買い」なのか?中国経済の危機が騒がれているが…



全体の流れ

今の報道やニュースなどを眺めていると、まず、中国経済の不振などが先頭に不景気な話が並んでいます。

では、中国経済がここからクラッシュする可能性があるのか、といえば、そんなバカな話があるわけなかろう、というのが私の本音です。

減速しているのは事実なのかもしれませんが、リーマンやコロナのような経済活動の事実上の停止のような状態には追い込まれないだろう、というのが私の考えです。

もちろん、再びパンデミックになる可能性を否定しません。みなさんお忘れかもしれませんが、世界の感染症の発祥というよりも震源地というのはたいていの場合、アジア、つまり中国であり、その理由は、人が多すぎるから、というのがおそらく定説だと思います。

共産党はこんなことをいえば怒るでしょうが、過去の事例をみるとどう考えたって、人が多いところでパンデミックは発生します。

いまは8月ですが、9月になれば、インフルエンザやパンデミックの季節ということをお忘れなく。そのリスクは排除をしますが、中国経済が停滞をする可能性は高いものの、その進行はゆっくりのはずであり、すぐに危機が見えるわけではない、ということです。

中国ネタを囃して「株売り」「景気悪化」と騒ぐのは時期尚早であり、また、いつかきた道をまたたどっているというだけの話です。

いつかきた道というのは、結局、リーマンショック後の10年と一緒のことで、2011年に東日本震災や南欧債務危機、2015年に上海ショックと大きな事件はありましたが、結局、株価はその間、ゆっくりと新値を更新してコロナ前まで新値を更新し続けたじゃん、ということです。

つまりコロナ復興のあと、いろいろな事件はこれからもあるだろうけど、なんだかんだいいながら、株価は安いところを拾っておけば、儲かるだろうね、ということです。

つまり、「目先の事件 < コロナ復興」という材料のとらえ方の問題であり、今は目先、仮に中国などで問題や事件が発生したとしても、一瞬で調整が終わり、その安値は絶好の買い場になる可能性の方が高い、という状態です。

今、世界に存在するリスクというのは中国よりも、西側の資源調達が上手くいくか否か、という問題の方がはるかに大きい、と私は考えています。

今、目先の事件が起こったとしても大きく調整する可能性は極めて少ないのです。

その理由は鮮明で、株価などのリスク資産が調整を迎えるときというのは、その直前に、株価が前年などよりも30%以上買われているということが前提条件であり、ダウの前年比2.37%、日経の11.07%、ナスダックの10.43%、スパイダーズの3.12%などなど、こんなので大きく急落なんかするわけがない、ということです。

むしろ警戒すべきなのはドル円の8.47%、ユーロドルの7.22%、ドル元の7.82%などの変化でしょう、と思います。ルーブルは前年比で60%も売られており、トルコも50%です。参考までにトルコは株価も急騰をしており、通貨安からの経済復興がようやく板についてきたね、というのが私の感想です。

Next: まもなく買い場?ショック後の復興期はネガティブな論調が目立つが…



「リセッションというのには、まだ具体的な証拠がなさすぎる」

リーマンショック後もそうですが、少し経済が復興をすると、もう駄目だ、もうダメだ、という意見がメディアを通じて多く拡散され、投資家の目を曇らせるものです。しかし、その陰の極はたいてい買い場になる、ということです。

要するに、一昨日のエンパイア指数などを見ると不景気、と思うかもしれません。NY連銀総裁が年明け、利下げと叫ぶ、理由はエンパイアをみれば歴然でしょう。NY地区は不景気かもしれませんがアメリカ全体でみれば、景気が腰折れするような兆候がありません。

金利について少しだけ触れれば、金利の逆イールド、アメリカにおけるものは2y-30yで最大で1.3%の逆イールドが発生したと記憶していますが、現在はその水準の半分0.67%程度の逆イールドになっています。

つまり、今まで上昇していた短期金利の上昇が終わり、反対に今まで停滞していた長期金利が上昇をしているだけ、の話です。

この逆イールドの解消というのは、インフレが直近は抑えられる傾向にあるけど、長期金利の上昇というのは将来、インフレだよ、と言っているだけの話だと思います。

短い期間の金利は上昇をしていませんので、この金利上昇がアメリカ経済に甚大な影響を及ぼす、とは考えていません。リセッションというのには、まだ具体的な証拠がなさすぎる、と思います。

多少は調整するかもしれませんが、3〜5%程度の話であり、急落というのには話が大きすぎるよね、と思います。

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2023年8月配信分
  • ダウが前年比安 リセッションなのか?(8/16)
  • ルーブル安が止まらない?(8/15)
  • ドル安は規定路線のように思います(8/14)
  • ドル円のポイント(8/13)
  • ドル安円安を待っているだけ(8/10)
  • 銀行株格下げ(8/9)
  • また円売り投機が始まっている可能性がある?(8/8)
  • 今は需給相場、だと思う(8/7)
  • 不景気にはならない、と思う(8/6)
  • 今のマーケットの問題点(8/4)
  • ドルが強いマーケット(8/3)
  • パラダイム転換?(8/2)
  • 複雑怪奇な円相場(8/1)

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2023年7月配信分
  • 混乱の続く市場(7/31)
  • 日銀は投機筋に勝てるのか? という問題(7/29)
  • 複雑な状況(7/28)
  • 8月から大きなバブル相場になる可能性があります(7/27)
  • きょうはFOMC(7/26)
  • ドル円の新しいシナリオ(7/25)
  • ドルと円の詳細な分析(7/24)
  • 円安の原因解明と今後の展開(7/23)
  • ふたたび円高になる可能性?(7/21)
  • ドルの価値にもっと注意しよう!(7/20)
  • 大きい流れから小さい流れをつかむ(7/19)
  • 主導は内部要因で変わらないけど・・・(7/18)
  • 円安の真相が見えてきた(7/17)
  • 閑散に売りなしの意味 ムチャクチャな相場の由縁(7/16)
  • とんでもない相場になる可能性(7/14)
  • 円高の緊急解説(7/13)
  • つくづく無茶苦茶なマーケットだな、とは思うけど、想定内(笑)(7/13)
  • とんでもないことになる可能性のあるマーケット(7/12)
  • 今は内部要因の戦い(7/11)
  • ドルは高いのか? 安いのか?(7/10)
  • 雇用統計は強いのか? 弱いのか? マーケットは?(7/9)
  • 荒れ相場の原因を探ればなんてことはない(7/7)
  • 7月利上げの可能性が出てきた(7/6)
  • インフレを抑えるのが今の国際政治課題だと思います(7/5)
  • ISM製造業指数(7/4)
  • ISM製造業指数は注意かもしれない?(7/3)
  • 6月の動きがわかれば7月の動きも自然とわかると思います(7/2)

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image by:Victoria Lipov / Shutterstock.com

角野實のファンダメンタルズのススメ 角野實のファンダメンタルズのススメ 』(2023年8月16日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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