マネーボイス メニュー

ついに4月解禁ライドシェア…「Uber」が日本市場も席巻する?上場以来初の黒字化で波に乗るUber株は買いか=天野博邦

世界的に進んでいるライドシェアが、日本でもこの4月に部分的に解禁される。ライドシェアと言えば、アメリカの「Uber」が代表的だ。Uberは時価総額で世界のトップ100位に入っている企業であり、2023年の純利益は上場来初めて黒字になったことで注目が集まっている。このタイミングでUberについて分析してみた。(天野博邦)

プロフィール:天野博邦(あまの ひろくに)
作家、投資家、経営コンサルタント。1982年山梨県生まれ。東北大学大学院卒(量子情報理論)。金融・コンサルティング業界を経て、2024年に独立。海外勤務の経験から主に欧米企業の企業分析が得意。日本をいかにより良い国にできるかをテーマとして執筆活動を行っている。

存在感を増すUber、出遅れた日本勢…

Uberは2010年創業のアメリカの会社である。筆者は2013年から数年アメリカにいたが、当時、Uberは当たり前に使われていた。

Uberは70カ国ほど(都市でカウントすると1万都市以上)で利用されている。1日あたりのUberでの移動は2,800万回に上り、毎月Uber EATSを利用する人は1億5,000万人に上るという。

UBER TECHNOLOGIES INC<UBER> 週足(SBI証券提供)

時価総額は世界のトップ100位に入っている。仮に、日本でUberが誕生していれば、時価総額ベースで言えば、トヨタの次に大きな企業となっていたことになる。

Uberの世界シェアは25%と言われており、同じアメリカの『Lyft』、中国の『Didi』、シンガポールの『Grab』などの競争相手がいる。

Uberは競争相手の株式を保有したり、ジョイントベンチャーを立ち上げたりしている。というのも、Uberは「今からではマーケットを確保するには遅い」という国では、無理に投資するのではなく、競争相手の成長を確保する戦略をとっているからだ。

ライドシェアは世界中ですでに相当の勢力図が構成されている。「先行者プラットフォーマーとしてのブルーオーシャンを確保する機会を失った」という意味で、これも日本の“失われた30年”の1つだと言えよう。

2023年には上場以来初の通期「黒字」に

UberはセグメントとしてMobility(移動)、Delivery(宅配)、Freight(物流)の3つを上げている。

コロナが始まった2020年、Mobilityの売上は前年と比べて下落したが、Deliveryの売上は上がった。2021年以降は、MobilityもDeliveryも毎年、増えている。コロナによってDeliveryが軌道に乗りつつ、コロナの終息に伴いMobilityが回復したということだ。なお、FreightはBtoBの物流のサービスであり、まだ立ち上げフェーズだ。

Uberの業績を見る際には「Gross Booking」と「Revenue」に注目する必要がある。

前者(GB)は、ユーザーからもらったお金そのものを集計したもの(ただし、チップは含まれない)であり、後者(R)は、Uberが徴収するプラットフォームの手数料である。

Mobilityでは、RはGBの28%ほど、Deliveryでは20%ほどである。Uberは2023年に、2019年の上場以来で初めて純利益の黒字を達成した。修正EBITDA(利払前・税引前・減価償却前の利益)が41億ドル(1ドル150円換算で6,000億円)だった。

なお、修正EBITDAはGBの3%ほどとなっている。つまり、GBに対し、プラットフォームの手数料が2〜3割で、そこから費用を控除すると、3%が利益として残る、という構図である。

また、今後3年間の修正EBITDAは年平均成長率として40%を見込む。過去の3年を見ても、例えば、GBは年平均成長率20%超であった。

株価はS&Pの中で2023年に伸びた銘柄のトップ10に入っている。好調な業績を踏まえ、上場以来初となる、株主還元(自社株買い)を宣言した。

Next: 主要マーケットで首位…なぜUberは強い?日本のライドシェアでも独走か



主要マーケットで首位独占。なぜUberは強いのか?

Uberは主要なマーケットでトップシェアとなっている。ライドシェアのみならず、Uber EATSも提供し、Uber Oneというサブスクリプションを提供しており、売上の3割はこのメンバーから、ということである。

少なくとも2020年時点で2,000人のエンジニアを擁しており、研究開発にも多額を投資している。近年では、車内やアプリでの広告からも収入を得ており、Uberとパートナーシップを組むビジネスが増えている。

またUber EATSの発展形としてUber Directがあり、これはホワイトレーベルとして飲食や商品の配達の裏にUberがいる……というモデルだ。例えば、アメリカではiPhoneの配達にUber Directが使われている。

このように、Uberは配達を起点としたエコシステムを構築し、ユーザーやパートナーを囲い込む戦略で成功している。その過程で、データを大量に蓄積し、AIモデルを頻繁に更新しているのだ。

なお、Uberは、自動運転は脅威ではなく、ビジネスをさらに伸ばすチャンスと位置づけており、10社と提携をしている。例えば、Uberでは、グーグルの子会社が提供する自動運転を利用できるようになっている。

日本は官民ともにUberと協同するのが得策?

Uberはすでに「全国ハイヤー・タクシー連合会」に加盟しており、タクシー業界のビジネスパートナーとなっている。

一方でUberは安全性や利便性において先進的な技術を有し、70カ国における規制当局との協議の経験も含め、ライドシェア導入のプロと考えるべきだろう。

日本としては、官民ともに、Uberと協同していくのが最善ではないか。宅配においてはすでに日本で成功している。なお、グローバルではタクシーとのパートナーシップが増えており、Uberのドライバーの5%はタクシーだというから、タクシーと必ずしも排他的な関係ではないとも言える。

日本で、ライドシェアの本格解禁後にUberのドライバーになる場合、個人事業主として働くことが1つの形として想定されるが、現在、日本の個人タクシーはタクシー運転の経験が10年以上あることが要件となっている。

そんな中、4月からタクシー会社の管理下におけるライドシェアが始まるが、6月に向けて法改正も含めて検討する、ということになっている。

岩盤規制と言われる日本にて、すでに世界で実績のあるライドシェアという仕組みがどこまで本格的に実現するのか、変革のスピードと生活者目線での効率性をどこまで追求できるのか、官民の連携に注目したい。

【関連】テスラの苦戦が示唆するEVの命運。自動車「家電化」で低価格競争へ突入、エンジン回帰は近い?=斎藤満

【関連】ワークマン「子ども服・肌着への参入」は吉か凶か。顧客のニーズを見失うと一気に凋落も=澤田聖陽

【関連】日高屋、なぜ業績が急回復?サイゼリヤと並ぶ前年比2割増の客数増加率となった当然の理由=山口伸

image by: MikeDotta / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2024年3月1日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。