28日のNY時間に米半導体大手エヌビディアの第2四半期決算が発表された。既知のとおり、その内容は十分に評価できるものであったが、市場では事前に期待値が高くなり過ぎていたために「物足りない」との評価が下された模様。28日の時間外で同社株は大きく下落してしまう。ただ、これはあくまで一時的な反応と見る向きも多く、今後も周辺銘柄を再評価する機会は訪れると見られる。ここで関連する日本企業を改めてチェックしておきたい。(『 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 』田嶋智太郎)
※本記事は有料メルマガ『田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット』2024年8月30日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:田嶋智太郎(たじま ともたろう)
慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後の一時期は大学教諭として「経営学概論」「生活情報論」を担当。過去30年余り、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、地域金融機関改革、引いては個人の資産形成、資産運用まで幅広い範囲を分析研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等において、累計3,000回超の講師を務めてきた。これまでに数々のテレビ番組へのレギュラー出演を経て、現在はマーケット・経済専門チャンネル『日経CNBC』のレギュラー・コメンテーターを務める。主な著書に『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)などがある。
日本の半導体銘柄に脚光?
28日のNY時間に米半導体大手エヌビディアの第2四半期決算が発表された。既知のとおり、その内容は十分に評価できるものであったが、市場では事前に期待値が高くなり過ぎていたために「物足りない」との評価が下された模様。28日の時間外で同社株は大きく下落してしまう。ただ、これはあくまで一時的な反応と見る向きも多く、今後も周辺銘柄を再評価する機会は訪れると見られる。
NVIDIA CORP<NVDA> 日足(SBI証券提供)
エヌビディアはAI学習に使うGPUで世界首位。「B200」をはじめ複数の次世代GPU「Blackwell(ブラックウェル)」の製品シリーズを投入する。B200のGPUは、2つのGPUダイの周辺に最新型の広帯域メモリー(HBM)を並べて、1つのパッケージの中に納める(パッケージングする)ことでつくられる。HBMは短期記憶を担う「DRAM」を積層することで高速・大容量のデータ処理を可能にしたメモリー。日本企業はHBMの量産などに不可欠な素材や製造装置に強みを持つ。ブラックウェルシリーズは8-10月期以降に出荷が拡大する見通しとなっており、むしろ今後の中長期的な成長が期待される。
経済産業省によれば、日本は半導体の主要素材で約5割のシェア。ここで関連する日本企業を改めてチェックしておきたい。
住友ベークライト<4203>
同社の半導体チップを保護する素材(封止材料)である「バッファコート」は、DRAM全体の約50%の世界シェアを持つ。同社は「DRAM向けに使う既存のバッファコートでHBM向けにも対応できる」と説明。HBMの生産数に比例して出荷が増えそうだ。
同社が手掛ける事業セグメントは「半導体関連材料」「高機能プラスチック」「クオリティオブライフ関連製品」の3つで、売上高は半導体関連が他の2事業よりやや少ないが、事業利益は圧倒的に大きい。
25年3月期は、売上高が前期比7.6%増の3,090億円、営業利益は同9.3%増の300億円、純利益は同9.9%増の240億円と過去最高を見込む。
中期経営計画では、26年度の売上高3,450億円、ROE9%を目標とする。かなり意欲的な目標にも思われるが、自動車向け製品の拡大や先端半導体への対応で射程圏と見られる。
住友ベークライト<4203> 週足(SBI証券提供)
今期は年90円配当予想で配当性向は35%。26年度までに40%を目途として引き上げる方針。
一目均衡表の週足「雲」上限が下値サポートとして機能している。
TOWA<6315>
半導体と外部を電気的に絶縁して封止するモールディング装置に強みを持ち、最先端のHBM向けでは世界シェアを独占している。足元で、封止装置は好採算のコンプレッション型がHBM向けなどで出荷を伸ばす。また、後半からはスマホ向けも復調する見通し。
25年3月期は、売上高が前期比18.9%増の600億円、営業利益は同45.5%増の126億円、純利益は同37.0%増の88億円と過去最高を見込む。
7月にレゾナックHDが、半導体を最終製品に組み立てる後工程の開発や評価に取り組む日米10社の企業連合(「US-JOINT」)を設立したと発表。TOWAもこれに参画する。シリコンバレーに拠点を設けて開発や評価に必要な装置をそろえ2025年夏ごろの稼働を目指す。
TOWA<6315> 週足(SBI証券提供)
一目均衡表の週足「雲」上限が下値サポートとして機能すると見られる。
Next: まだある注目すべき日本の半導体銘柄。今後の成長性は?
ADEKA<4401>
4月に発表した27年3月期を最終年度とする中期経営計画で、半導体材料に研究開発投資や設備投資の軸足を置く方針を表明。主力のDRAM向けに加えて、最先端のロジック半導体や先端パッケージング向けの事業を伸ばす。そこに向けて、日本、韓国、台湾で相次ぎ生産能力の増強に動いている。
8月9日に2Q予想と通期予想を上方修正。25年3月期は、売上高が前期比6.6%増の4260億円、営業利益は同10.6%増の392億円、純利益は同5.3%増の242億円と過去最高を見込む。
ADEKA<4401> 週足(SBI証券提供)
27年3月期の営業利益目標は530億円。かなり挑戦的であるが、先端半導体向け材料の成長が前提。
配当性向40%方針で、今期は年90円配当予想。配当性向は38%で増配の可能性も。現在の配当利回りは3%弱で株価は割安。一目均衡表の週足「雲」上限が下値サポートとして機能すると見られる。
日本マイクロニクス<6871>
半導体検査器具の「プローブカード」で世界屈指の商品競争力。特にメモリー向けでは世界首位級の実力を有する。データセンターのAIサーバー用半導体需要が盛り上がりをみせるなか、HBMを含む高水準のメモリー向け需要を受注に結実させ、24年4~6月期はメモリー向け受注高が過去最高を記録した。汎用品やスマホ、PC向けも堅調に推移しており、足元で工場はフル稼働。
日本マイクロニクス<6871> 週足(SBI証券提供)
24年12月期は、売上高が前期比43.6%増の550億円、営業利益は同2.1倍増の116億円、純利益は約2倍増の83億円と過去最高を見込む。期末一括で65円配当(前期は33円)と大幅増配を予想。株価は、一目均衡表の週足「雲」を再び上抜けるかに注目。
日本電子材料<6855>
プローブカード専業大手で開発や設計も手掛け、売り上げの99%を同商品分野で占める。
台湾のTSMC向け受注拡大を念頭に置いたうえで、熊本の生産ラインを増設し、プローブカードの製造能力を段階的に高め、ロングタームで3倍化させる方針。
熊本事業所新棟は10月竣工徒弟で、以後も設備投資を敢行する計画。
25年3月期業績は通期予想を未定としているが、1Q実績は売上高が前期比20.6%増、営業利益は同4.57倍増、純利益は同3.83倍増と大幅増益を達成した。
日本マイクロニクス<6871> 週足(SBI証券提供)
株価は、足元で52週移動平均線(52週線)がサポートする一方、26週線が上値を押さえる格好。ひとまずは再び3,000円台に乗せ、26週線を上抜けることが期待される。 ※2024年8月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
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※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による