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バフェットはなぜ上昇し続ける米国株を「割安」と判断しているのか?=東条雅彦

ウォーレン・バフェットは2月末のテレビインタビューで「米国株はバブルか」と問われ、「バブルの領域ではない、金利と比較すればまだ割安な水準だ」と強気の見解を述べました。一方でバフェットは株価について「明日、20%値下がりする」可能性もあるとしています。この一見矛盾する発言の真意について、できるだけわかりやすく解説したいと思います。(『ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』東条雅彦)

暴落はむしろチャンスになる!バフェット発言の真意を読み解く

米国株を割安だと発言したバフェット

ウォーレン・バフェットは、CNBCとの単独インタビュー(2月27日)で「米国株はバブルではありませんか」と問われた際、次のように述べていました。

米国株はバブルの領域にない。金利と比較すればまだ割安な方だ。長期金利が7~8%程度に上昇したらバブルを警戒すべきかもしれない。米経済のダイナミズムは顕著で、しばらくはいかなる大統領のもとであっても順調に推移する

米国株に投資している人から見ると、このバフェットの発言はとても心強く感じます。一方で、「株価の話をしているのに、なぜ金利の話が出てくるのだ!」と感じた人も多いと思います。

金利と株価を直線に結びつけて説明すると、少し話が飛躍してしまいます。これを理解するのには、「景気サイクル」と「債券価格と金利の関係」の2つの概念を先に抑えておく必要があります。

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そもそも経済には「波」がある

経済には波があって、好景気と不景気が交互に訪れます。「景気が良い」「景気が悪い」の意味は、世の中のお金回りの良し悪しを意味します。

景気=お金が世の中を回る勢い

経済の主役は、家庭会社政府の三者です。そしてお金は、この3つの間を回っています。「金は天下の回りもの」なんて言いますが、実際にグルグルと回転しているというイメージを思い浮かべてください。

好景気というのは、このお金の流れが速くて、グルグル回転に勢いがあるということです。世の中を駆け巡るお金の回転が速くなっているので、同じ時間内に入ってくるお金も多くなります。会社からの給料も多くなり、みんながたくさん買い物をします。政府にもたくさん税金が入り、みんな、大喜びです。

逆に、不景気というのはお金のグルグル回転に勢いがないことです。入ってくるお金が少ないと、みんな買い物をしなくなります。会社にはいるお金も少ないから、給料も減ります。政府に入る税金も少なくなり、みんながジリ貧になっていきます。

Next: 「明日20%値下がりする可能性もある」米国株が割安な理由とは?



景気と金利の関係

経済には「好景気」と「不景気」の時期があり、これらは交互に訪れます。銀行の立場に立って、この交互に訪れる景気が良い時・悪い時のそれぞれの場合において、どう行動しているのかを想像してみましょう。

景気が良い時は、企業も個人もお金を借りるために銀行に殺到します。こういう場面において、銀行は貸し出し金利を下げるでしょうか?それとも上げるでしょうか? 好況期の銀行は殿様のようなものです。貸出金利を上げても資金を借りてくれるので、多くの利益を出せます。

反対に不況期になると、みんな、銀行に寄り付かなくなります。貸出金利を思いっきり下げても、誰もお金を借りてくれないという厳しい時期になります。

債券価格と金利の関係

金利というのは、債券価格によって決定します。金利と債券価格はちょうどシーソーのような関係になっています。

金利と債券価格はシーソーの関係にある(出典:大和証券)

上記の図を例にすると、表面価格100円、表面利回り3%で売りに出された債券は、市場金利が4%に上昇すると3%の債券の投資魅力が薄れるので、債券価格が下落します。反対に市場金利が2%に低下すると、3%の債券の投資魅力が上がるので、債券価格が上昇します。そのため、次のような関係が成立しているのです。

先程の景気サイクルの話とドッキングさせると、次のようなイメージになります。

Next: バフェットは株価と金利の関係から「今はバブルではない」と言っている



中央銀行の金利操作

金利には中央銀行の政策も関係してきます。中央銀行は主に短期金利に働きかけて、経済が安定的に成長していけるように調節しようとします。

景気が過熱しすぎると、バブルになってしまいます。人間の欲望には際限がないので、お金回りが良くなってくると、皆が儲けるために我先にと無謀な投資(設備投資、株式投資、不動産投資等)に走り出します。

景気のグルグル回転に勢いがつきすぎると、最後はバブルが弾けて大恐慌に突入してしまうリスクがあります。そうならないように、中央銀行は長期的な視点に立って短期金利を上昇させ、グルグル回転の勢いを沈めようとします。反対に不況期に入ると、中央銀行は短期金利を引き下げて、景気を回復させようとします。

株価と金利の関係

ようやく「株価と金利の関係」について話ができる下地が整いました。

好況期に入ると金利が上昇して、債券価格が下落していきます。不況期に入ると金利が下落して、債券価格が上昇していきます。

この金利に対して、株価は逆方向に作用します。例えば、長期金利が2%から5%に上がった場合、投資家の多くが「リスクの大きい株式投資を行うよりも、債券を購入した方が安全でしっかりと儲けられる」と考えるのです。反対に長期金利が5%から2%に下がった場合、債券の魅力がなくなり、相対的に株式の魅力が上がります。

いきなり、上記のように言われてもピンと来ない方は、次のように考えてください。

Next: 決して矛盾していないバフェット発言の真意。長期的な視点に立とう



ウォーレン・バフェットの発言の真意

バフェットはこのように発言していました。

「米国株はバブルの領域にない。金利と比較すればまだ割安な方だ。長期金利が7~8%程度に上昇したらバブルを警戒すべきかもしれない。米経済のダイナミズムは顕著で、しばらくはいかなる大統領のもとであっても順調に推移する」

現在、長期金利の目安となる米国10年債利回りは、2.3%(2017年4月10日現在)で推移しています。

米国10年債利回り(1988年1月~2017年4月)

この金利を見ると、経済全体の流れが見えてきます。2.3%という金利水準は歴史的にはかなり低い方です。つまり、景気サイクルを見れば、まだ景気回復の初期段階だということです。

米国の中央銀行であるFRBは最近、連続で利上げを実施しています。先月、ようやく1%に達しました。FRBはこのまま米国の好景気が続くようであれば、これからどんどん引き上げていくものと思われます。

各国の政策金利は、次の通りです。

2017年 世界各国の政策金利

南アフリカ共和国やトルコの政策金利はそれぞれ7%、8%に達しています。これはかなり高い金利水準です。政策金利は「短期金利」を意味するので、長期金利だったら、もっと高い金利になっています。

現在、両国の10年債利回りは南アフリカが9%、トルコが10%に達しています。お金のグルグル回転がかなり高速になっていることが伺えます。その点、米国は利上げを実施している最中とはいえ、政策金利は1%に到達したばかりです。まだ米国の「お金のグルグル回転」は遅いと判断できます。

長期的な視点と短期的な視点

米国の株価はリーマンショック(2008年)の大暴落から、ほとんど調整もないまま、上昇しています。そのため、短期的には暴落してしまうかもしれません。

バフェットはCNBCとの単独インタビュー(2月27日)の中で、「明日、20%値下がりする」可能性もあると話していました。一見、強気の発言と矛盾しているように見えますが、そういうわけではありません。

「米国株はバブルの領域にない。金利と比較すればまだ割安な方だ」という発言は、長期的な景気サイクルの観点から述べています。一方、「明日、20%値下がりする」可能性もあるという発言は、短期的な株式のボラディリティ(価格変動性)の観点から述べています。この点については混同しないように気をつけてください。

バフェットの言っている「金利と比較すればまだ割安な方だ」を意訳すると、次のようになります。

お金のグルグル回転に勢いがないので、今は景気回復の初期段階。通常、バブルはグルグル回転に勢いがある時に生じる現象ですよ

バフェットは常に長期的な視点に立って行動しているので、近い将来、短期的な暴落があってもまったく気にしないものと思われます。私たちもバフェットのように、長期的な視点に立って行動していきましょう。しっかりと安全域を確保した投資を実践している場合、短期的な暴落は逆にチャンスになります。

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ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』(2017年4月10日号)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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