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プロ任せは危険!「投資信託ビンボー」にならないための資産運用入門=俣野成敏

投資というと、どうしても「素人には難しいもの」というイメージがあります。「大事なお金は失いたくないし、かといって銀行預金では増えないし…」と思ったときに、思いつくのが「投資信託」ではないでしょうか。

投資信託は、「運用をプロにお任せできる」「証券会社や銀行など自分の身近なところで、1万円から始められる」「大きなところにお願いすれば安心」などといった敷居の低さで、最近注目されています。後ほどお話しするNISAなども、人気の理由のひとつですが、実際のところはどうなのでしょうか?

今回は、投資信託のメリットやデメリットなどを見ながら、利用する場合はどこに注意すればいいのかを確認していくことにしましょう。(俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編

※本記事は有料メルマガ・俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編 2016年7月12日号を一部抜粋・再構成したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:俣野成敏(またのなるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳で東証一部上場グループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらには40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任する。2012年の独立後は、フランチャイズ2業態6店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、マネープランの実現にコミットしたマネースクールを共催。自らの経験を書にした『プロフェッショナルサラリーマン』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、『トップ1%の人だけが知っている』(日本経済新聞出版社)のシリーズが10万部超えに。著作累計は44万部。ビジネス誌の掲載実績多数。『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも数多く寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』を3年連続で受賞している。

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投資信託(以後、略して投信)とは金融商品の一種で、みんなで出し合ったお金を、プロに一任して運用してもらい、そこで出た利益を分配する仕組みです。こうした仕組みを「ファンド」といいますが、ファンド自体は投資信託とイコールではなく、行政管理下にはない金融商品も含みます。

投信は、行政の監督を受けた投資信託委託業者によって、厳正な管理の下で運営されています。銘柄にはいろいろあり、商品は主に株や債券、貴金属、土地(REIT:リート)などがあります。

投信のしくみ

それでは、投信のしくみについて見てみましょう。

投信に関わるのは、主に下記の4者です。

  1. 投資家(法律用語で受益者)
  2. 証券会社、銀行など(販売会社)
  3. 運用会社(委託者)
  4. 信託銀行(受託者)

投資家は、販売会社を通じて運用会社に資金の運用を委託しますが、資金は運用者が直接管理するわけではなく、信託銀行に預けられます。信託銀行は運用者の指示により、投資家から集めた信託財産を管理します。このように、運用者と資産の管理を別々にすることによって、資産の安全性を保っています。

投信運用の仕組み図

投資信託のメリット・デメリットは?

投信は、投資をしたいけれどまとまったお金のない人や、自分ではうまく運用する自信のない人などにとっては、手軽に始められる商品です。

メリット

投信が利益を上げる方法は、主に下記の2つです。

  1. 売却差益
    投信を購入したときよりも、基準価額が高いときに売り、利益を出すこと。
  2. 分配金
    分配金とは、投信の決算が行われる際に支払われるもので、投信を運用して得た収益を、持分に応じて投資家に分配するしくみ。

デメリット

投信を行う際にご注意いただきたいのが、主に下記の2つです。

  1. 投信は元本が保証された金融商品ではないこと
  2. 様々な手数料がかかってくること

(1)について、投信はプロに運用をお願いするといっても、元本が保証されているわけではありません。投信を運用した結果、出た利益を投資家の間で分配できる代わりに、損失が出た場合も、出資金に応じて投資家が負担しなければならないシステムになっています。

(2)の手数料についてですが、一般的にいって、他人に運用を依頼するということは、その分お金がかかると考えなければなりません。もちろん自分で調べたりする手間暇を考えるなら、「プロにお願いした方がいい」という発想自体はいいことですが、中には同じ商品でも頼むところによってかなり手数料が変わってくるのも事実です。

Next: 投資信託の種類によってこんなに違う!「手数料の罠」を回避せよ



投信にかかる費用は?

投信に主にかかる費用は、以下の3種類になります。

  1. 投信を購入する際にかかってくる費用(販売手数料)
    利用する会社や銘柄によってだいたい1.05~4%程度かかります。最近は「ノーロード投信」という、販売手数料が0%(無料)の投信も登場しています。
  2. 投信を運用するためのコスト(信託報酬)
    投信を運用するためのコストのことです。これも商品によって差があり、年0.5%~3%ほどかかりますが、同じ商品であれば、どこで買っても手数料は同じになります。これは保有している期間中、毎年かかります。
  3. 解約時にかかる費用(信託財産留保額)
    解約時にかかる手数料のことです。投信はさまざまな「株」や「債券」を運用しており、それらを換金するには費用がかかります。これらの費用を、解約する人から「信託財産留保額」という形で徴収します。だいたい元本の0.5%~1%くらいかかるのが一般的ですが、無料のものもあります。

その他、実質コストが別途かかるものもありますので、この3種類だけではなく、運用報告書などもよく確認することが大切です。一般的に、名の通った金融機関では、上記の手数料が(1)~(3)までフルにかかります。一方で、手数料を一部なくしたり、低く抑えられている投信もあります。

いろいろな投信~手数料が低めの商品も

(1)インデックス投信

投信は、ベンチマークと呼ばれる日経平均株価や東証REIT指数などを主な指標として運用されています。

普通に考えると、「運用パフォーマンスが上がれば上がるほどいい」と思われるかもしれませんが、実際は、各銘柄が市場の動きとまったく無関係な動きをするということは考えにくく、また目標があった方が的外れな運用になりにくい、といったことです。

投信には、大きく分けてアクティブ型インデックス型があります。

アクティブ型というのは、簡単にいってしまうと、ベンチマークを上回ることを目指して積極的な運用を行うことです。運用のためには調査や管理などで手間暇がかかるため、コストが高くつきます。

それに対してインデックス型は、ベンチマークに連動させることを目的に運用されています。アクティブ型の積極運用に対して、インデックス型は穏健運用といったところです。

インデックスの運用は、基本的に東証平均などに連動させればいいので、組み入れる銘柄も決まっており、運用に手間がかからないため、その分手数料が安く設定されています。ただし、いくら手数料が安いといっても、日経平均自体が右肩下がりになった場合は、インデックスの運用も同じ曲線を描き、マイナスに陥る可能性があります。

とはいえ、もともと市場には必ず上昇期と下降期があるため、長期的なスパンで見た場合、結局はインデックス投資の方が、アクティブ投資よりも運用成績がよくなる場合が多いようです。

(2)ETF投信(上場投信)

ETFは上場投信といって、証券取引所に上場している投信のことです。

普通の投信では、委託者(運用会社)が運用を行い、それを販売会社(証券会社や銀行など)が販売する形となっています。一方、ETFの場合は証券市場を通じて、投資家同士が直接取引を行っており、間に販売者がいない分だけ、手数料が安く済んでいます。

ETFは、証券会社は仲介をしているだけであり、連動する銘柄を組んでしまえば、コストはほとんどかからない形式になっています。インデックスと同じく、市場に連動した値動きをしますが、価格はリアルタイムで変動し、即時売却可能です。

ETFは上場しているため、購入単位が金額ではなく、口数単位(株と同じ)となり、一回の最低投入金額が投信よりは大きくなります。また、配当金を自動では再投資できません。配当金を再投資するには、口数単位に満たなかったり、手数料がかかったりすることがあります。

(3)J-REIT(ジェイリート:不動産上場投信)

ETFと同じく、証券取引所に上場している投信です。ファンドで不動産を主に購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する商品です。対象不動産はオフィス用物件、マンション、商業施設、ホテルなど多岐に渡ります。不動産を扱いますが、法律上は投資信託の仲間になります。

REITの特徴は、「不動産投資法人」の形式をとっていることです。J-REITは一定の条件を満たせば実質的に法人税がかからず、「内部留保」もないので、一般の株などに比べて、収益がほぼそのまま分配金として出やすい金融商品になっています。

不動産はもともと性質上、流動性が低く、また投信のように、随時投資家の求めに応じて購入・売却などがしづらい商品です。そのため、J-REITは証券取引所に上場し、流動性を確保しています。ETFと同じく、証券市場での取引が行われ、価格の決まり方や、取引の仕方は、上場株式と同じです。

REITのデメリットとしては、実物資産でありながら、所有することができないこと、また投資対象が、実際は不動産法人であるため、法人の倒産リスクなどが考えられます。

(4)ノーロード投信

購入時に販売手数料がかからない投信です。購入時の費用を抑えることによって敷居を低くし、買いやすくしているわけですが、通常の投信と比べてかかる費用が安く済むのかというと、必ずしもそうとは限りません。

販売手数料がない分、信託報酬が高くなっている場合などもありますので、費用はトータルに見ていくことが大切です。

ここでちょっと例を見てみましょう。

例えばここに、「ノーロード型○○投信」と「通常型××投信」があったとします。「ノーロード型○○投信」の販売手数料が0%で、「通常型××投信」の販売手数料が3.5%であっても、信託報酬が「ノーロード型○○投信」3%、「××投信」1%だった場合は、下記となります。

ノーロード型○○投信 通常型××投信
販売手数料 0% 3.5%
信託報酬 3% 1%
1年目の合計 3% 4.5%
2年目の合計 6% 5.5%
3年目の合計 9% 6.5%

上記の通り、2年目以降は通常型投信の方が安くなることもありますので、注意が必要です。

一般的に、手数料が高い投信の傾向とは、

  1. 距離的に遠いもの(海外の投信など)
  2. 内容が複雑なもの(複雑=多くの仲介業者が入っているということ)

といった特徴があります。

投信は、基本的には「運用をお任せする」というスタイルではありますが、結局のところ、どこに依頼するのかといったことや、コストとのバランス、また依頼するに見合うだけのリターンを得られるのかなどの判断は、自分でしないといけないということです。

Next: 税金が優遇される「NISA」には大きなデメリットがあった



税金が優遇されるNISA

さて、ここまでは投信についての基礎的なことをお伝えしてきました。続いて、気になる税金に関しての優遇処置が得られるNISAについても簡単に触れておきましょう。

NISAについて

NISAとは、投資で得た利益に対してそれまで行われていた「軽減税率」が2013年に終了するに伴い、2014年から始まった「少額投資非課税制度」のことです。2014年1月以降、上場株式や投資信託等の売買益に対する課税20.315%が、NISA口座を利用した、最大120万円まで(2016年から)の投資に対する配当金等が非課税になるというものです。

NISAのシステム自体は良いものです。ただし、NISAには大きなデメリットがあります。それは「損益通算」や「3年間の損失の繰越ができない」という点です。

損益通算」とは、株や投資信託、ETF、J-RIETなど投資商品の間で合算が認められる制度のことで、損失が出た場合は、利益から損失分を差し引いて、残った利益だけに対して税金がかかるようにすることができます。ところがNISA口座に関しては、それができないのです。

まず、NISAの非課税のメリットを受けるためには、NISA口座の開設が必要です(基本的にひとり1口座のみ)

一般的に、投資をしていると、利益の出る銘柄もあれば、中には損失が出る銘柄もあります。

たとえば、ある年にA投信で100万円の利益が出たとします。しかし、B投信で50万円の損失が出てしまったとします。NISA以外の投資であれば、税金は100万-50万=50万×20%=10万円ですが、NISAの場合はこれができず、そのまま支払う税金が、100万×20%=20万円になるということです。

このように、NISAの場合は非課税の代わりに損益の通算ができず、NISA以外の投信口座との通算も同じくできないことを意味します。これがNISAの大きなデメリットです。

どうしてこのような制度になっているのかというと、もともとNISAが「利益が出る」ことを前提につくられていることと、その目的が、個人に投資を促すためにつくられたことによります。つまり国は、お金は使ってもらいたいけれど、自分たちのとり分(税金)は減らしたくないわけです。

NISAは利益が出れば問題ありませんが、実際はいつも利益ばかりが出るとは限らず、損失が出た場合は、かえってNISAでは不利になるということを、念頭に置くようにしてください。

Next: 最近人気の「毎月分配型投信」に潜む5つの落とし穴



毎月分配型投信の落とし穴

もうひとつ、これだけはお伝えしたいというのが「毎月分配型投信の落とし穴」についてです。

最近、人気なのが毎月分配型の投信です。毎月分配型は、毎月決算を行って、収益の一部を分配金として毎月配当する仕組になっています。確かに、もし自分の投資した分の利益が毎月入ってきたら、投資の実績が出ている感じがして嬉しいですよね?しかし、この投信にはデメリットが結構多いのです。

そのデメリットとは、次の5つになります。

  1. 分配される度に税金がかかるので、ロスが大きくなる
  2. 利益を支払ってしまうとその分、複利の効果が期待できなくなる
  3. 分配金を出す度に事務手数料などの、無駄なコストがかかる
  4. 常に分配を払い出すためのお金をストックしておかないといけなくなり、その分運用効率が落ちる
  5. タコ足配当問題(タコが自分の足を食べるのに似ていることから)利益が出ていなくても、投資元本から配当を出すものがあるので要注意。※先に支払いを約束してしまうと、収益が出ていない場合は、元金から出すしかなくなり、元本を切り崩す状態になる

こうした毎月配当型だと、全体でどれくらいのリターンがあったのかがわかりづらくなります。また毎月お金が出るという安心感があるため、つい気が緩んで、コストに対しても鈍感になりがちです。

世界と比べて、日本の投資環境は不利になっている

いかがでしたか?ここまで読んで、「投信をすると、意外にいろいろ手数料をとられるんだな…」と思いませんでしたか?

実は、金融先進国の多くは、基本的に投資に税金はかかりません。税金とは、先ほどのNISAの項目で説明した、「利益が出たときに差し引かれる」あの20%の税金のことです。世界的に見たら、本当はあの20%の税金は無いのが当たり前なのです。

投資を行い、売却した際に20%の税金をとられるということは、それだけ日本の投資環境は、世界と比べたときに不利になっているということです。

現在、日本で暮らしている僕らには、どうしても日本の市場だけに目が行きがちになります。しかし、一度顔を上げて外に目を向けてみれば、そこには日本とは比べものにならないくらいの豊かな世界が広がっています。僕もサラリーマン時代に投信をやっていたことがありますが、今は所有していません。正直にいうと、現在の日本市場で、あまり旨みのある商品はないように思えます。

誰にとってもお金は大切です。苦労して稼いだお金ですから、「得体の知れない海外なんかに投資するのは怖い」という気持ちもわかります。ですが、日本の投資案件だろうと世界の投資案件だろうと、「結局お金を失うリスクは変わらない」ということ、そして日本の「安全コスト=各種費用」というのが意外に高く付いているということ、「日本の当たり前は決して世界の標準ではない」ということを、本日のメルマガから読みとってくださったなら嬉しいです。

ワンポイントアドバイス

投資で一番大切なのは、「売却した際にいくらになっているか?」「トータルで増えたのか?」ということです。

一般に、投資とは中長期的視野に立って行うものです。ですから、生活資金などは投資用資金とは別に用意しておくことによって、資産が積み上がるスピードを速くすることができます。

投資をする際、最低限おさえておきたい基本

  1. プロにお願いする場合であっても、自分のお金がどういう状態になっているのかを把握するようにする(任せっぱなしにしない)
  2. 各種コストに敏感になると、損をしにくくなる
  3. 途中経過の分配金を当てにするくらいなら、最初から別に預金を用意しておき、そこから使うようにする

※本記事は有料メルマガ・俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編 2016年6月6日号を一部抜粋・再構成したものです。メルマガでは今回ご紹介した以外にも、読者の方からのご質問に回答するQ&Aコーナーもあります。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』(2016年7月12日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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