1998年に破綻した日本長期信用銀行は、国有化され8兆円もの公的資金(税金)を注がれた挙句、最後にはハゲタカ外資に二束三文で売り飛ばされてしまいました。しかし自分たちの税金が奪われていることに気づいた世界中の預金者を、今後も同じ方法で騙すのは難しいでしょう。いま国際金融資本は「新しい詐欺の手口」を必要としているのです。(『カレイドスコープのメルマガ』)
※本記事は、『カレイドスコープのメルマガ』 2016年7月19日第165号パート2の抜粋です。興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
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公的資金注入詐欺はもう古い。新しい詐欺はすでに始まっている
英国のEU離脱でイタリア銀行株が暴落
ブレグジットの衝撃は、すぐさまイタリアの銀行を襲いました。
欧州中央銀行(ECB)が、イタリアの銀行に債務負担を減らすように求めたところ、世界最古(1472年に創設)の銀行にしてイタリア第3位の大手銀行であるモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行(Monte dei Paschi di Siena)の株が暴落しました。
7月4日、イタリアのミラノ株式市場で、モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行の株価は、一瞬、10%も下落しました。後場中場では9%の下落でした。
欧州中央銀行は同銀行に対して、10月3日までに不良債権を削減するための計画を策定するよう求めていました。
イタリアの銀行は、分かっているだけで、およそ3600億ユーロ(約4000億ドル)の不良債権を抱えています。これは、ユーロ圏のすべての不良債権の約3分の1に相当します。
モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行が抱えている不良債権は、約470億ユーロ(約440億ドル)です。(BBC)
この銀行は、2013年に巨額の損失を出したことから、ことあるごとに預金者が本店に殺到する事態が続いています。
ブレグジットによる株価の暴落を受けて「今度こそは本当に破綻だ!」と欧米の陰謀系ブロガーたちが煽っています。
モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行を発信源として、「イタリア全土の銀行で取り付け騒ぎが起こっているぞ!」と。
こうした事件が起こって以来、株価が大きく下がると、確かにイタリアのごく一部の銀行では、すぐにATMに向かう人々が出てくるようになりました。
巧妙に覆い隠されている「危機」
しかし、今回のように「ATMから金が引き出せない!」と騒いでいるのは、欧州で果敢に進められているという「キャッシュレスATM」のニュースと混ぜこぜにされてしまったのか、いゆわるフェイク・ニュース(ガセネタ)の類として地元の人々は受け止めているようです。
とはいえ、イタリアの銀行の貸付資金のうちの約18%が不良債権化し、すでに債務不履行の銀行ローンとなっていることは事実です。それが18%にまで上っているということは、「とっくに破産している」ということを意味します。
「債務不履行の銀行ローン」とは、不良債権に対する資本と担保預金の割合のことです。
通常、銀行の不良債権は10%を超えてくると、その銀行はテクニカル的に見て破産状態と見なされます。
ですから、どうであれしっかり心に刻んでください。取り付け騒ぎが起ころうと、そうでなかろうと、「イタリアは、とっくに破産者」です。
ウニクレーディト(Unicredito)は、ユーロ圏で第1位の資本を持つイタリアの銀行です。
同銀行の株価は、2008年の最高値から比べると94%も下落しています。そして、ドイツ銀行同様に、2015年の高値からも71%も下落しているのです。
もうひとつのイタリアの主要銀行、バンカ・カリージェ(Banca Carige)の株価は、2008年のピークから、なんと99%も下落しました。
これは、モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナやウニクレーディト、バンカ・カリージェなど、イタリアの代表的な数行の金融機関だけの問題ではありません。