IMFラガルド専務理事「預金者の金を失敗の穴埋めに使え」
国際通貨基金(IMF)は7月12日、2016年のイタリアの経済成長率見通しを1%弱、2017年は1%前後にそれぞれ下方修正しました。
つい5月末の時点では、2016年は1.1%、2017年は1.25%との見通しを示していました。
わずか1カ月間での下方修正について、国際通貨基金(IMF)は、3600億ユーロ(約4000億ドル)の不良債権を抱え、今年に入って株価が50%超も下落しているイタリアの銀行こそが、今後の経済見通しへの大きな脅威となるだろう、との見方を示しています。(ロイター)
これからのヨーロッパの「景気気象」は、過去2年間の間の米国のそれより、ずっと冷え込みそうです。
しかし、金融当局者たちは、イタリアの煮えたぎる金融危機にもかかわらず、逆にブレグジットをスケープゴートにして、その深刻さを誤魔化そうとしています。
国際通貨基金の専務理事、クリスティーヌ・ラガルドは、つい先日まで「イタリア経済は深い谷間から徐々に脱しつつある」と楽観的見通しを示してしまいした。
が、今はどうでしょう。一転して、その復興プロセスは「予想より長引きそうであるため、危険領域に入っていくだろう」であると見立てを変更したのです。
この国際通貨基金の気難しいイタリアの経済見通しは、それでも大甘で寛大すぎると言えます。
仮に、欧州中央銀行が急かせている改革が完全に実行されたとしても、EUでもっとも低迷が長く続いているイタリアの場合は、破綻までの単なる引き延ばしに過ぎず、結局は、最終的な破局を迎えます。これは避けられない運命です。
ブレグジットの国民投票以来、経済学者たちが、次々とイタリアの経済展望の見通しを悲観的に変更していく中で、イタリア政界を、その強力なロビー活動によってコントロールしている「イタリア産業総連盟」は、2016年はわずか0.8%の成長、2017年は0.6%にまで落ち込むと、国際通貨基金よりさらに厳しい予想を出してきているのです。
国際通貨基金の長期予測によれば、「イタリアは2025年頃に、ようやく世界金融危機前の2008年のピークに戻るだろう。そして、イタリア以外のEU諸国は、2025年頃には20~25%まで伸びて来るだろう」とのことです。
言い換えれば、イタリアは目下のところ、20年不況のちょうど真ん中にある、ということになります。
イタリアの銀行のリスク関する国際通貨基金のレポートの要点は以下です。
イタリアの金融当局は、歴史的な課題に直面している。
銀行のバランスシートのゆがみを修復し、非常に高い公的債務の水準を下げることを含め、資本バッファ(最低自己資本を上回る資本のこと。資金的ゆとり)が構築されなければならない。
下振れリスクは、銀行の資産の(品)質への対処の遅れから生じる。
下振れリスクが現実のものとなれば、イタリア全体の経済危機が重しとなって、その他の地域や世界に与える副次的影響は重大である。激化する世界金融市場のボラティリティー(変動性)、また、輸出の重荷になっている世界貿易の低迷、安全保障の脅威となっている難民の流入などが政策決定を難しくしている。
残念であるが、目下のところリスクは下振れに傾いている。
「ベイルイン」で国際金融資本に預金者が殺される
「イタリアの銀行の資産内容の質と収益性の問題について、今すぐに対処しなければ、残りの他のさまざまなシステムの重荷になるだろう」と国際通貨基金は警告してはいるものの、このままでは、イタリアの銀行には援助の手が入らないだろうとも見ているのです。
イタリアの銀行の救済に関しては、ドイツのメルケル、そして、ユーロ圏の財務大臣のトップ、ジェロエン・ヂセルブロエン(Jeroen Dijsselbloem:前オランダの財務大臣)らは、イタリア側が他の強力なEU加盟国(ドイツのような)に繰り返し求めていたベイルイン(※次ページで詳述)を拒否してきました。
クリスティーヌ・ラガルドは、今までもそうであったように、国際通貨基金の伝統的な手口として、ベイルイン(※次ページで詳述)に反対しているメルケルとヂセルブロエンを懐柔し、預金者の金を国際金融資本家の失敗の穴埋めに使え、と言っているのです。
だから、今後、メルケルとヂセルブロエンに対しては、国際通貨基金を実質的にコントロールしているロスチャイルドのような国際金融資本家のメディアがネガティブなキャンペーンを仕掛けるかも知れません。
簡単に洗脳されてしまう大衆は、イタリアの銀行を見捨てようとしている2人に対して、「冷酷な人間だ」と言うでしょう。
しかし、メルケルとヂセルブロエンは、大衆が銀行に預けてある預金を保護しようとしているというのが実際のところです。