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英フィナンシャル・タイムズが「日本撤退」を投資家に勧める理由

7月日銀会合への期待が高まっていますが、日本経済の先行きは本当に暗いです。それは本当に…。英フィナンシャル・タイムズ(6月27日)が、日本の現状を簡潔に分析しています。(『カレイドスコープのメルマガ』)

※本記事は、『カレイドスコープのメルマガ』 2016年7月21日第166号の一部抜粋です。全文に興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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英FT「投資家はもはや日本に投資すべきではない」は正しいのか?

「アベノミクスの失敗を認めるときが来た」

まずは、英フィナンシャル・タイムズ(6月27日)に掲載されたその記事、「アベノミクスは失敗である――投資家は、それを認めるべきときである」(英語ソース:It’s time for investors to admit it: Abenomics has failed ※全文閲覧は要ログイン)のポイントをいくらかご紹介しましょう。

【関連】日銀追加緩和決定で円高・株高が同時進行も、日本株は再度下値トライへ=E氏

…ブレグジットの衝撃は確かに、一瞬とはいえ対ドルで99円まで上昇させました。

しかし、日銀は、日本のリート(Reits)の購入を年額900億円の買入れ枠から2000億円に拡大したように、GDP目標600兆円を意識して、ETF(Exchange Traded Fund:上場投資信託)の持ち分についても、3.3兆円から6.3兆円に増やしました。

…東京のJPモルガンのエコノミストは、「7月末には、マイナス金利をマイナス0.1%からマイナス0.3%にまで拡大することを提議するかもしれない」と予測しています。

結果、円は今まで以上に強くなり、アベノミクスと日銀が期待している影響は、逆の結果を導くことになりそうです。 それは、おそらく回復不能なレベルまで行く可能性があります。

…結局、アベノミクスは単に通貨を弱めただけでした。

この3年間の企業収益増は、単に通貨安がもたらした結果に過ぎず、これから起こる逆流現象によって(すでにその兆候は出ているが)、さらに製造業を衰弱させていくでしょう。

…4月の船舶・電力を除く民需の機械受注(それは、キャペックスをもっともよく表している数字)は前月比11.0%減の7963億円、4月の貿易収支は8,235億円と3ヵ月連続の黒字となるも、輸出は前年比10.1%減と減少幅が拡大。

3月の日銀短観では、対ドル円相場は117円を予想していましたが、それも大きく裏切られました。

JPモルガンのチーフ・エコノミストの菅野雅明氏や、みずほ証券のチーフ・エコノミストの上野泰也氏は、ともに「来年は対ドルで90円台まで高騰する」と見ています。

一方、日銀が導入したマイナス金利は、銀行株の流血を伴います。

銀行株に損害を与える日銀の政策が、なぜ信用回復につながって日本経済が良くなるというのか?」と、クリストファー・ウッド(CITIC証券のストラテジスト)は疑問を呈しています。

…三菱東京UFJ銀行頭取の平野信行氏から抗議が起こるのも当然のこと。

これは、日本の民間銀行が政府の言いなりにならなくなっている証左でもあり、旧来の護送船団方式が完全に崩壊して後戻りする可能性がなくなったことを意味しているのです。

…こうなると、ある意味で、三菱東京UFJが国債市場で主要なディーラーシップを放棄する準備をしているという事実は、さして重要ではありません。少なくとも、「鳥の目」「虫の目」で見る限りは。

…イールド・カーブ(利回り曲線)がフラットであれば、保険業者は日本国債を保有することは非常に難しいでしょう。どうであれ、彼らの持ち株に損失が生じるという恐れは、結局、高まっていくのです。

加えて、多くの大口投資家にとって、悪いことが迫っているように見えます。彼らは日銀の迷走する政策によって、さんざん振り回されてきました。

JPモルガンのデータから言えることは、リスクオフの状況にある世界において、円高に振れる懸念が出ている以上、外国通貨で資産を保有している日本の機関投資家は巨額の損失を被ることになるかもしれない、ということです。

出典:It’s time for investors to admit it: Abenomics has failed – FT.com

「もはや日本に投資すべきではない」

フィナンシャル・タイムズは、この記事の最後で「投資家は、もはや日本に投資すべきではない」と外国人投資家に呼びかけています。

日本の株式市場における外国人の売買シェアは約6割です。「GDP600兆円」は夢のまた夢となるのでしょうか?

いえ、まだ、奥の手があります。しかし、それを使えば夢の後に破綻が確実にやってきます。

Next: ついに始まった、ゆうちょ銀行(郵便局)の「貯金大崩壊」



マイナス金利幅の拡大でゆうちょ銀の「貯金」が崩壊する?

フィナンシャル・タイムズの「7月末には、マイナス金利をマイナス0.1%からマイナス0.3%にまで拡大することを提議する可能性あり」という情報は、まだ日本では出ていないようです。

しかし、この情報のとおり、もし、金利がさらに引き下げられた場合、壊滅的な打撃を受けるのは、ゆうちょ銀行(郵便局)の定期貯金・定額貯金・財産形成貯金などです。

今年2月16日からの日銀のマイナス金利の導入を受けて、日本の3つのメガバンクが0.01%に金利を引き下げました。

郵便貯金の金利も、これに歩調を合わせるようにして3月14日から、1ヵ月から5年までの定期貯金の適用金利を、それまでの年0.025~0.03%から0.01%に引き下げました。

ゆうちょ銀行の「貯金」である(愛称)郵便貯金は、預金者が郵便局に預けている預金で国債を購入し、その金利で預金者に分配するというビジネスモデルで成り立っているため、マイナス金利が、さらに-0.3%まで拡大されると、それが崩壊してしまうのです。

日銀などの中央銀行が実施する量的金融緩和とは、政府が発行した国債を三井住友、みずほ、三菱東京UFJなどに代表される市中銀行が買い取り(このとき、財務省から電話が入って、国債の買い取枠、つまりノルマが通達される)、それを日銀に売ることによって実行されます。

日銀は、日本政府という信用の裏付けによって通貨を信用創造(新しい紙幣を印刷する)し、それを市中銀行から買い取った国債の代金に充てます。

その代金の一定額は、日銀の当座預金制度によって開設されている口座に当座預金(3階層に分かれている)として預けなければなりませんが、マイナス金利が導入された2月16日以降、預けられた資金についてはマイナスの金利がつくことになったのです。

預けておくだけで元本がマイナス金利によって減っていくわけですから、国債を買った市中銀行は、国債を日銀に売らずに市場で売買することによって利益を出そうとします。

どう利益を出すかというと、国債を買っている(あるいは、政府から国債を買わされている)すべての銀行が、こうしたマネーゲームに参加するようになるので、市場で売買される国債の値が吊り上がって、最初に国債を買った銀行などの金融機関は、値が吊り上がったところで売って差益を出そうとします。

すると、国債を買いたがる金融機関が殺到して国債の利回りが低下します。みんなが買いたがるので、資金の一時避難所と化した国債の利回りが、仮にゼロであっても買い手が付くからです。

その挙句が、現在のように2年から10年物の国債すべてがマイナスになってしまったのです。

国債の買い需要が沸騰してしまったので、市場メカニズムは、その熱を冷ますために自動的にマイナスの金利をつけてクールダウンさせようとしているのです。

こうなると、国債を持っていても損が出るし、かといって日銀に国債を売っても、当座預金として資金を預けたままにしておけば、元本はマイナス金利によって目減りしていくので、市中銀行は資産を減らしていくことになります。

そこで、市中銀行は国債に関わると損をするので、三菱東京UFJ銀行のように、政府から特別に国債を購入できる権利、つまり国債特別資格を返上するという事態が起きてくるのです。

もう、日本の金融当局は、民間銀行をコントロールできなくなりつつあるということです。

そうなると、買えば損するし、売っても損するので、政府は国債を発行しても、誰も引き受けないという事態が生じます。つまり、買ってくれる金融機関がないので財源を確保できなくなりつつあるのです。

こうなると国家予算を組むことができなくなってしまいます。それは、国の財政の破綻を意味します。それが、現在の状況です。

Next: 黒田バズーカが「弾切れ」状態になった本当の理由とは?



全世界のマイナス金利付き国債の3分の2が日本国債

6月16日に日銀の政策決定会合が開かれました。参院選の前なので、安倍政権であれば、選挙に勝つための粉飾相場を演出するために、日銀に追加の金融緩和を発表させて株価を持ち上げるものと市場関係者は自信を持っていました。

しかし、日銀は市場に何もアナウンスしなかったのです。結果、市場では失望売りが優勢となり株式市場は大暴落したのです。

これは、日銀政策決定会合の前日、6月15日まで開かれていた連邦公開市場委員会(FOMC)において、米連邦準備理事会(FRB)が政策金利の据え置きを決定したものの、失業率の推移を見て年内利上げの含みを残したことが大きく影響しています。

FRBは、去年12月、9年半ぶりに利上げを決めましたが、年明け早々、世界同時株安などの危機的な相場となったため、2016年に予定されていた年3~4回程度の利上げは棚上げとなっています。

しかし、今回のFOMCで米国の利上げ観測が再び浮上してきたことから、日銀は追加の量的金融緩和ができなくなってしまったのです。「なによりも優先されるのは米国経済」なのです。

2012年12月に安倍政権は、国際決済銀行(BIS)とFRBからお墨付きをもらって、アベノミクスという名の国富投げ売り政策を果敢に進めました。

“日銀バズーカ”によって急激な円安が進んでも、欧州中央銀行(ECB)やFRBが日銀に何らクレームを付けなかったのは、日本の株高によってウォール街と、これをコントロールしているロンドン・シティーに日本の富を吸収させるためだったのです。

もちろん、これは、あらかじめ計画されていたことです。

安倍首相と日銀・黒田総裁の二人は、ウォール街とロンドン・シティを支配している金融帝国の秘密の国際金融資本が書いたシナリオどおりに振舞ってきたのです。

日本の株式市場から十分吸い上げた秘密の世界金融資本は、今度はメディアを使って、「アベノミクス祭りは終わった」と死刑宣告を出しました。

そろそろ円安容認を止めて、米国の利上げを考え始めたのです。

といって、去年12月の利上げの失敗を繰り返すことはできないので、その環境をととのえるため日銀には「待った」をかけたということです。

日銀が、今年に入ってから一度も追加の量的金融緩和を行っていないのは、欧州・米国のこうした事情によるものです。

6月23日のブレグジット国民投票によって、英国がEU離脱を決定づけたことによって、先行きの英国経済、EUの経済の失速を予感した投資家は英ポンドやユーロを売って円買いに走ったため急激な円高になりました。

それでも、日銀が緊急の量的金融緩和策に打って出ることができなかったのは、こうした秘密の国際金融資本家からの外圧があったからです。

しかし、理由はもう一つあります。

Next: メガバンクの「国債離れ」 国債バブル破裂の前兆が表れはじめた



「国債バブル破裂」の明確な前兆

それは、今まで説明してきたように、日本政府は、国債の買い手がつかなくなりそうな水準まで国債を大量に発行してしまったため、市場が「これ以上発行してはダメ」というシグナルを送り始めたことです。

そこで、いよいよ追い詰められた日銀は、実質的な量的金融緩和と同じ効果が見込めるマイナス金利の導入をしぶしぶ決めたというわけです。

しかし、これは、やってはならない禁じ手です。

結果、国債の金利そのものがマイナスになることによって、日本の銀行システムまで危機に晒すことになってしまったのです。

政府の国債を、いったん市中銀行が買った後で、それを日銀が引き受ける今までのプロセスでは、市場のジャッジを受けることになるので、今回のように黄信号が点滅し終わって、いよいよ赤信号が点灯しそうになると、国債の流動化が止まってしまいます。

それは、国債バブルが破裂する明確な前兆です。

メガバンクの「国債離れ」

「国債離れ」を宣言したのは東京三菱UFJ銀行だけではありません。実は、主だった日本のメガバンクは、去年のうちに保有していた国債のうち17%も手放しているのです。

マイナス金利によって銀行の出血は止まらず、政府を救うために、このまま国債を引き受け続ければ、近いうちにメガバンクでさえ、出血多量で頓死するかもしれません。

すでに政府が発行した国債の80%超がマイナス金利となっており、買っても、その後市場でも売れない事態が近づきつつあります。

マイナス金利付きの国債はヨーロッパの数ヵ国(スイス、ドイツなど)でも見られます。しかし、全世界のマイナス金利付き国債の3分の2は、日本政府の国債です。すでに日本経済は点滴も打てなくなって危篤状態にあるのです。

FRBや欧州の金融勢力は、ブレグジットだけでなく、右傾化著しいフランスなどもEUからの離脱をほのめかしており、さらに下振れリスクがあることから、当分の間、日本には量的金融緩和の続行を封印するように無言の圧力をかけてくるでしょう。

完全に袋小路に追い詰められた日銀には、残された手段として、マイナス金利を拡大する以外に成す術がなくなっているのです。

こうした状況を、すべて勘案すると、フィナンシャル・タイムズの「7月末には、マイナス金利をマイナス0.1%からマイナス0.3%にまで拡大することを提議する可能性あり」という見立ては、かなり現実的であることがわかるのです。

現行のマイナス0.1%が、マイナス0.2%、そして、マイナス0.3%と金利がじり下げされていくごとに、郵便貯金は真綿で首を絞められていくのです。

Next: 近づく宴の終わり。それでも東京はまだマシ、地方の運命は?



近づく「宴の終わり」

アベノミクスによって、徹底した優遇税制の恩恵に浴してきた大企業は、それ以外でも、安倍政権の政策の柱である非正規雇用化の促進によって人件費を極限まで削減することによって内部留保を増やしてきました。

こうした優良貸出顧客であった大企業を失って、いよいよ有り余る資金の行き場がなくなってきた東京の大手銀行は、不動産担保物件に投資を始めました。

同時期に、中国人の富裕層による都内のマンションの爆買いも手伝って、東京23区内、そして湾岸エリアの高層マンションの値はぐんぐん吊り上がりました。

なんと、六本木ミッドタウン近くの新築マンションには一戸15億円の値がついています。

まさに資産バブルが始まっているのですが、東京の大手銀行は、国債の金利のマイナス幅が拡大すると予想しているので、不動産への貸し付けを止めることができなくなっているのです。

アベノミクスはとっくに終了しているのですが、日本政府がそれを認めることはバブル崩壊の引き金を引くことになるので、すでに神話化し始めたアベノミクス幻想に、ひたすら、しがみつくしかなくなっているのです。

それでも、投資先が残っている東京の大手行は恵まれています。日本の経済崩壊までは、なんとか宴を楽しむことができそうだからです。

対して、地方銀行は国債を買わされてはいるものの、貸出先がないので、売るに売れず元本の目減りを待つばかりです。

そこに、マイナス金利の拡大が実施されれば、地銀はバタバタと潰れていくでしょう。残されているのは合併・統合による生き残りです。

つまり、クリプトカレンシー(暗号通貨)の市場導入と相まって、銀行員の大リストラ時代が始まるということです。それは、ゆうちょ銀の「貯金(郵便貯金)」も同じです。
(※第145号パート2「マイナス実質金利から資産バブルに向かう日本」、第147号パート2「2016年から始まる悪夢/見えてきた日本の資産バブルと戦争経済」にて詳述)


※本記事は、『カレイドスコープのメルマガ』 2016年7月21日第166号の一部抜粋です。全文に興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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「カレイドスコープ」のメルマガ』(2016年7月21日第166号)より一部抜粋、再構成

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