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ぼくらが株を売る理由。心がわりは決算のせい?=炎

何もこの水準で売らなくても良さそうだが、あらゆる株価指標が割安に放置された状態でも売りが出る銘柄があります。でもこうした銘柄が少ないのであれば修正運動が起きるはずですが、今は多くの銘柄が指標面で割安に放置されていて、束になって割安銘柄がありますので、投資家にはこうした現象が日常茶飯事になるわけです。(『億の近道』炎のファンドマネージャー)

プロフィール:炎のファンドマネージャー(炎)
小学生から証券会社に出入りし、株式投資に目覚める。大学入学資金を株式の利益で確保し、大学も証券論のゼミに入る。証券会社に入社後は一貫した調査畑で、アナリストとして活動。独立系の投資運用会社でのファンドマネージャーの経験も合わせ持つ。2002年同志社大学・証券アナリスト講座講師を務めたほか、株式漫画の監修や、ドラマ『風のガーデン』(脚本:倉本聰)の株式取引場面の監修を行う。

本当にこれでいいのか?複雑ではなく非常に単純な「売り」の背景

さらに売られる割安株

およそ3600社の上場銘柄の多くが割安だと評されていますが、投資家の懐はなかなか良くならないので、積極的に上値を買う向きが少ない状況下では致し方ありません。

時価総額が最大のトヨタ<7203>ですら減益見通しの中でPER10倍・PBR1倍・配当利回り3%という水準に甘んじる状況下では、全体相場が元気になるはずはありません。

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各上場銘柄には上場来の歴史があり、過去の投資家へのリターンが大きいほど古くからのファンが集まり、売りに対して活発な買いが入ってきます。各上場企業は業績を向上させることで投資家との信頼関係を構築しながら活動しています。

上場間もない企業はそうした信頼性に欠けるため、説明を十分にしないと投資家からの信頼を失ってしまいます。業績が堅調だろうとなかろうと、未来の成長や事業の方向性を語る必要があります。

個人投資家を主体にしたステークホルダーはもちろん、機関投資家を相手にしている企業も当然のごとくきちんとした説明が必要です。アナリストはそうした説明の場に出向いて、根ほり葉ほりヒヤリングしてその方向性を探ります。

そうした専門家が解説してくれるのであれば投資家はそれに従うこともできますが、専門的な見地で解説がない企業には投資家個々人の判断で売り買いがなされますので、時には見かけの数字だけで売りが出たりもします。

保有している銘柄の内容がいくら良くても、単純に第1四半期が減益になったから売るとかいう行動に出てしまいます。

株を売る理由はシンプル

株を売る理由は、複雑なものではなくとてもシンプルです。発表された業績が増益なら買い、予想より良くても買い、反対に減益なら売り、予想より悪くても売りというものが基本となります。

四半期決算が発表されるようになったので、上場企業も大変です。通期決算の過程で事業内容によっては四半期が赤字になったり大幅な黒字になったりとしますので、そのたびに株価が変動しがちになります。

投資家はそうした業績発表内容に一喜一憂しがちですが、実際にはロングランで見れば買いタイミングはそうした売り物を拾うべきなのかも知れません。

ただし、それには我慢する時間軸をかなり念頭に入れて置く必要があります。

資金量が豊富な投資家ならむしろ、四半期決算発表後のイレギュラーな株価変動時こそ投資のチャンスと言えるでしょうが、それにはかなりの分析力と経験が必要になります。

株を売るのは「保有するメリットよりも売却するメリットがあるため」でしょうか。保有していて値下がりする可能性があるのであれば、ためらうことなく売却する。そうした短期的な視点で取り組む投資家が最近の株式市場には多くなっている可能性があります。

それにしてもPER4.5倍、PBR0.45倍、配当利回り4.5%などという水準に放置された無借金銘柄があるのには驚きです。企業側もここまで放置されていて何もしないというのは驚きを通り越してしまいます。

ただ、通常は売り買いが離れていて売買が成立しないはずなのに結構出来高もできていますので、参画している投資家は案外、冷静に取り組んでいるのかも知れません。企業側も案外分かったうえで放置しているのかも知れませんので、今後の展開に興味津々といったところです。

Next: 富の分配を受ける株式投資家、小口運用と年金運用の決定的な違い



富の分配を受ける株式投資家

日本が経済的な発展を遂げた結果、1億2000万人の国民が蓄積した金融資産は1400兆円を超えています。一方では政府の借金(国の借金や国民の借金ではない)が1000兆円を超えていて、現在も増加中で財政再建の必要性を指摘する声もあります。

これが積極財政政策を妨げる要因になっていますが、民間の投資が将来への不安を背景に進まない中では政府の投資が必要なので、もっと積極的に財政出動すべきだと有力なエコノミストや大学の先生から指摘されています。

戦後営々と蓄積されてきた国民の金融資産は社会インフラ資産に置き換わっていたり、企業インフラの代価としての株式資産に置き換わっていると推察されます。

個人も機関投資家(年金資金も含む)も株式投資家は企業が発行した株式に投資する一方で、そこから期間内に生み出された利益(富の増分)の分配を受けることになります。

企業はゴーイングコンサーンで絶えず事業運営を継続する前提で存在しており、予期せぬリスクに対応する必要があるために、利益のいくらかを内部留保して継続性を担保しないとなりません。

多くの企業は設立時の混沌とした状況からビジネスの成功とともに発展・成長に向かうステージを迎えます。基本は利益の蓄積つまり自己資本でビジネス展開しますが、成長のスピードを速めるために株式市場に株式を新規に公開して不特定多数の投資家からリスクマネーを得る行為をIPOと称し、その後の成長を見込んだ経営手法となっています。

小口運用と年金運用の決定的な違い

現在、株式市場にはおよそ3600の企業が上場して、不特定多数の投資家のリスクマネーを呼び込んでいます。結果として日本の株式市場の時価総額はおよそ500兆円となっていますが、そこで得られるリターンはインカムゲインだけで言うと約2%の配当金ですので、10兆円程度になって国民から集めた年金資金100兆円をこの株式市場で運用すれば平均的には2兆円を得ることができるわけです。

年金運用で5兆円の損が出たと話題ですが、投資の開始時点をどこに置くかでこの議論は違ってきます。国債などの債券投資などで運用していては得られないリターンを確保するための懸命な運用を株式投資でカバーしようとしているのは理解できます。

過去の時価総額はバブル経済の末期、1989年末に600兆円でピークを打ちました。

逆に言うと、日本の株式市場の時価総額が今後600兆円にまたなるとすれば、20%の運用成果が未来において得られることになり、そこに仮に100兆円を投じていれば20兆円の資産増強が実現することになります。

年金マネーは長期的スタンスでリターンを上げることが目標になりますので、長期的視点で企業の収益向上、事業拡大が実現すれば良いので、これが10年後に実現しても良いわけです。黙って投資していても年間2%が配当として得られますので、GPIFによる年金マネーの株式運用から10年で合計4%が得られれば良いことになります。

年金資金に負けじと個人投資家の皆さんは株式運用に注力されているものと拝察しますが、企業によっては配当性向が低い状態で配当利回りが4%以上になっている銘柄や時価総額が保有している現預金よりも小さい銘柄があり、相応の成長性に加えて富の積極的な配分が期待される魅力的な銘柄が数多く存在しています。

年金のような大きな資金は小回りが利きませんので、そうした細かい運用はできないのかも知れませんが、個人投資家は自由に運用ができます。企業の発する情報を分析しながら長期スタンスで投資していく個人投資家に対して企業が構築した利益(富)の分配が進むことで株式相場が大いに盛り上がっていくものと期待されます。

Next: なぜ日本では株価が解散価値を下回る低PBR銘柄が大量に存在するのか?



大量に存在する「低PBR銘柄」は日本経済の縮図

リーマンショックから8年を経過した日本経済。アベノミクスによる景気回復は道半ばとは言え、着実に進展中ですが、目標となるデフレ克服には至らず円安から円高への反転が先行きの日本経済への不安感を醸成しています。

先行きへの不安感から日本のGDPの6割を占める個人消費が元気がなく、おまけに企業の設備投資も伸び悩みという状況下、政府の次の一手が期待されています。民間企業の投資は減価償却の範囲内に留まり、成長資金が設備投資や研究開発投資に回っていない状況が見られます。

こうした日本経済の状況を背景にして投資家のリスクオフを図る動きから株式市場は昨年来の調整局面を継続しており、需給悪の中で個別株の低迷も顕著です。

日本の株式市場に上場している約3600社の企業のうちPBRが0.5倍以下に留まっているのは約700もあり、更には1倍以下となると約1950もあるのです。つまり株価が解散価値を下回っているのが、過半数を超えているという現実をどう見たら良いのでしょうか。

この中には時価総額が小さな小規模な銘柄から時価総額が比較的大きな大型銘柄まで様々に存在しています。

なぜこうした現象が生じているのか?というと、将来の成長性が見出せずに業績の停滞が多くの企業で見られるためと考えられます。

自らの力で市場を切り拓き成長を指向している銘柄のPBRは比較的高く、当然のごとくPERも高い評価がなされています。また低PBRでもその背景が赤字経営が続いているなど企業の存続にも関わる状況がそうさせているケースもあります。

投資家は様々な経済環境や相場環境の変化に絶えながらじっくり長期スタンスで保有し続けている可能性があります。多くの企業は成長指向ではあるでしょうが、マクロ経済の状況にも影響を受け、収益の変動を余儀なくされています。

本格的な収益拡大の方向性が見出せるなら株価は上昇に向かうのでしょうが、業績の停滞が続くと投資家はリスクオフしたくなってしまいがちです。

最近の投資家は短期的な成果を求めがちになっていて、株価が低迷している局面での長期スタンスでの投資を実行に移せる本物の投資家は少なくなっているのかも知れません。

かつては不景気の株高という言い方がなされましたが企業が持つ余資の運用先に株式があり、企業自らが株式投資をするなど財テクに走った時代があったことを思い出す必要があります。今はそうした時代ではなくなってバランスシートをスリム化しようと各企業が余計な投資をしなくなってしまいました。

とはいえ、自らの資産内容に比べて優れた他社株式を保有するのは将来の収益を得るための良い選択肢の一つかも知れません。

企業内に余った現預金が設備投資(固定資産投資)や研究開発投資(知的財産投資)に回り、更には一定金額は自社株も含めた上場株の運用に用いられるというお金の流れが活発化しない点が日本経済の停滞にもつながっているという認識を皆さんとともに共有しておきたいと思います。

Next: 投資家が避けるべき銘柄とは?企業経営者のここを見るべし



投資家が避けるべき銘柄とは?企業経営者のここを見るべし

第1四半期決算の発表シーズンが終わり、次の第2四半期決算に向け、日々事業活動に邁進している多くの上場企業の経営者の皆様、お疲れ様です。

やれ円高で為替差損が出たの人件費の上昇で利益が出なかったのと言い訳をしながら短期的な業績結果を釈明するのもなかなか大変ですが、四半期の決算短信には、業績が低下した理由についてせいぜいその程度のことしか書いてないので、投資家は出てきた数字を見て単純に売り買いしてしまうことになります。

結果として眺めるとあの時が底だったとかあの時が天井だったということになるのですが、企業の決算の出方を普段からしっかり研究しておきたいものです。また、投資家としては余り短期的な視点に偏ることなく投資していきたいところです。

短期的な視点より重要なのはやはり中長期的な視点です。企業によっては成長する意識があるのかどうかまったくその方向性が見出せない場合もあって、投資家はできるだけそうした企業への投資は避けないとなりません。過去の業績推移と中長期計画から成長指向の企業を見出して投資することが、オーソドックスな投資のスタンスと言えます。

上場している以上は自己資本の増殖を図るために努力して、絶えず上を目指している必要があります。事業が安定的な市場を背景にしている場合においては、より市場の発展が見込める成長分野に新規参入することやM&Aによる事業規模の拡大を図るなど手法は様々ですが、投資家に夢を与えることも経営者の役目です。

経営者自らが株主として存在している場合はそうした成長指向がより強く現れますが、サラリーマン経営者の場合はどちらかと言うと安定志向のところがあってなかなか未知の世界には足を踏み入れません。

そうした企業への投資家の評価は低いのが一般的なように思われますが、中にはアドソル日進<3837>のようにリーマンショック時にバトンタッチした現社長が明確な成長に向けたビジョンを示し積極的な経営を指向している場合もあります。

第1四半期に見る短期業績の向上を背景に株価はこのところ安値から5割程度の上昇を見せましたが、事業規模や事業内容、新規事業の成長性などからすれば企業全体の伸びしろが大きいと判断できる一方で、株価の上昇による短期的な相場乱高下の可能性を踏まえて多くの投資家は待ち構えて売りを出そうとしているという構図が見て取れますが、同社のように成長を指向している企業への評価は今後も高まるものと期待され、短期的な調整を経て次のステップに向かう可能性も念頭に入れておきたいところです。

過去の株価変動が激しい企業の株価は企業経営者が自ら積極的な成長を指向していることを背景にしている場合があります。投資家の皆さんはそうした企業の株式をポートフォリオに組み込んでみてはいかがでしょうか。

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億の近道』(2016年8月22日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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