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ビットコインは「ノアの方舟」なのか? 出口なき緩和マネー大洪水を生き残る術

日本でも米国でもEUでも、現在の金融緩和に「出口」はありません。このままでは世界規模の金融危機は不可避です。だからこそ各国は今「通貨のデジタル化」を急いでいます。

代表的な仮想通貨のビットコインは、いくつかの金融危機を通して、今や「最後の資産逃避先」と見られるまでになりました。他方、独自の仮想通貨を発行しようとする動きも各所で活発化しています。これは何を意味しているのでしょう?

ここで重要なのは、例えば三菱東京UFJ銀行の「MUFGコイン」のような民間銀行が発行する仮想通貨と、スウェーデンのように中央銀行が発行する仮想通貨とは、本質的にまったく別物だということです。(『カレイドスコープのメルマガ』)

※本記事は、『カレイドスコープのメルマガ』 2017年4月11日第202号パート2の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

投資家を最後に守るのはビットコインか?MUFGコインか?それとも

中央銀行による不換紙幣発行が限界に近づいている

世界はこれまで、2008年の金融危機から脱却するため、不換紙幣(ペーパーマネー)の輪転機を果敢に回してきました。

同時に長期間、金利をほぼゼロに据え置いたため、溢れかえったマネーが株式バブルと債権バブルを同時に生み、中間層は破壊され、その富は「1%」の富裕層に移転されてしまいました。

日本でも米国でもEUでも、この緩和政策に「出口」などありません。どんなに長くても2019年までに発生するであろう世界規模の金融危機は不可避であり、その後はハイパー・インフレに突入する可能性があります。

そこで西側諸国は今、このシナリオを既定路線として「通貨のデジタル化」を急いでいるのです。

「出口」ではなく「通貨のデジタル化」で対処する

キャッシュレス化のスピードがもっとも速いのはスウェーデンです。スウェーデンでは、現金での出入金を停止する銀行が相次ぎ、利用者の少ない地方のATMを撤去しています。

ノルウェー政府も、2020年までにキャッシュレス・エコノミーに移行する計画を推進しています。

日本も後れを取るまいと、2020年の東京オリンピックに合わせてキャッシュレスに移行する準備を進めています。

去年の11月、インドのナレンドラ・モディ首相が、1000ルピーと500ルピーの2種類の高額紙幣の使用を禁止しましたが、米国に対しても、国際通貨基金(IMF)が、100ドル紙幣の流通を止めるべきだとする提言を出しています。

スペインイタリアフランスでは、高額紙幣の流通を禁止する代わりに、現金での高額取引を禁止しています。

西側先進国のほとんどが、仮想通貨への移行に着手しているか、具体的な検討に入っているのです。
(※メルマガ第195号「現金を廃止するEUの動きとブロックチェーンによる暗号通貨経済」にて詳述)

これらの動きについてはさまざまな分析がありますが、総じて、各国の中央銀行による正貨、つまり金(ゴールド)に裏付けされていない不換紙幣の発行が限界に近づいていることを示しています。

「ノアの方舟」として脚光を浴びるビットコイン

中央銀行が通貨を発行する場合、政府の発行する国債という借用証書を購入する対価として、新札を印刷して市中に送り出します。つまり、それは、その国の国民が背負わされる借金が形を変えたものに過ぎないのです。

現在、世界中は、中央銀行によって借金漬けの状態に置かれています。中央銀行制度は、すべてのイデオロギーを超えて廃止しなければ、世界経済の崩壊はまぬがれないことが分かってきたのです。

ほとんどの国の通貨が潜在的に暴落のリスクを抱えており、仮想通貨(クリプトカレンシー=暗号通貨)へ資金を逃避させる局面が多く見られるようになっています。

政情不安で通貨危機に陥ったウクライナ、そして、ハイパー・インフレに見舞われた南米のアルゼンチンやブラジルでは、資産をビットコインに替えることによって通貨の減価(購買力の低下)を防いだ人々が大勢いました。

そのため、「一朝有事のときの避難場所」として仮想通貨の需要が一気に高まり、ビットコイン特需が起こったのです。

また、財政危機から実質的なデフォルトに陥り、銀行から必要な資金を引き下ろすことができなくなったギリシャでも、事前に銀行の預金口座に預けておいた現金の一部をビットコインに替えておいた人々は、それを現金に換えて使用することができたので、まったく支障がなかったのです。

ビットコインで「預金封鎖」から逃れたロシアの富裕層たち

ビットコインが「資産保全法の王様」として、一躍、脚光を浴びた出来事のひとつは、2013年3月、キプロスで起こった金融危機でしょう。

ギリシャ危機の煽りを受けて、キプロスで預金封鎖が実行されたとき、やはり事前に兆候をつかんだロシアの富裕層がビットコインに乗り換えたことによって資産課税という預金の没収から逃れることができたのです。

もともと、キプロスはロシア、ヨーロッパの富裕層にとって、身近で安心できるタックスヘイブンでした。それゆえ、キプロスの銀行には、本国での課税を逃れるための資金が各国から集まっていました。

しかし、そのキプロスの銀行が閉鎖され、再び再開されたときには、強制的に銀行預金から一定額をキプロス政府に没収されてしまうベイルイン(※)が実行された後でした。ほとんどの人々は、まるでキツネにつままれたように唖然とするしかなかったのです。
※ベイルイン:危機に陥った金融機関の損失を公的資金ではなく預金者が負担すること

しかし、事前にベイルインの情報を掴んでいた富裕層は、本国に資金を戻すわけにもいかず、苦肉の策として無国籍のビットコインを購入することによって資産防衛を果たしたのです。

それどころか、このニュースに触れた後発の人々がビットコインの購入に走ったことでさらに価格が上昇し、二度の幸運に恵まれたのです。

人民元切り下げショックや英国EU離脱ショックでもビットコイン急騰

2015年6月から始まった中国上海市場の暴落にともなう3連続の人民元引き下げのときも、中国の富裕層は、一斉にビットコインに資金を逃避させて難を逃れることができました。

最近では、国民投票によって英国のブレグジット(EU離脱)が決定的となったときも、ビットコインが急騰しました。英国のEU離脱によってユーロやポンドの下落を懸念した資金が、ドルや円に向かうと同時に、ビットコインにも向かったからです。

ユーロやポンドを買っていた中国の富裕層が資金のやり場を失って、その大半が「最後の資産防衛手段」としてのビットコインに乗り換えたことが主な原因です。

これらの危機を通して、ビットコインは、国家予算規模ではないにしても、ある程度「巨額」な資金の避難場所としても活用できることが証明されたと言えるでしょう。

Next: 「仮想通貨で世界を支配する」中国の狙い。ロシア、そして日本の対応は?



自国通貨を信用しない中国人にとって最大のインフレ・ヘッジ

世界経済が不安定になると同時に、ビットコインの持つ「資金の避難場所としての需要」が爆発的に拡大し、仮想通貨先進国の欧米では法整備が後手後手となり、資金の流出がコントロールできなくなっています。

特に、金融当局の監視が厳しい中国の富裕層にとって、ビットコインは必要不可欠の存在になっています。実際に、ビットコインの利用者の大半は中国人であると言われています。

数々の革命や政変を乗り越えてきた中国人は、もともと自国通貨の人民元を信用していないので、金(ゴールド)や不動産などの現物資産を海外に持とうとします。

しかし、それでさえ当局に把握されて、政変や経済崩壊が起これば、いつ何時、差し押さえされないとも限らないのです。

したがって、中央銀行制度の外側に置かれている仮想通貨システムは、無国籍の通貨を自由に売買できる点で、最大のインフレ・ヘッジになっているのです。

ビットコイン価格はなぜ年明け早々に暴落したのか?

今年1月5日、ビットコインの値が過去最高値から一気に23%も下落しました。

これは、ビットコインがあまりにも急激に上昇し過ぎたので、投機筋がリスク回避のために利益確定したことと、人民元が上昇したので、ビットコインを売って人民元に乗り換えようとする中国人富裕層が殺到したためです。ビットコインは、資産保全の手段と同時に、投機の対象にもなっています。

その1週間後、すかさず中国の中央銀行である中国人民銀行がビットコインの大手取引所の検査に入り、さらに、1ヵ月後には、国内の3大ビットコイン取引所にビットコインの引き出し停止措置を行いました。

「引き出し停止」とは、ビットコインを他の仮想通貨に移したり、ビットコインを他国の通貨に替えるために引き出しを行ってはならない、とするもので、ビットコインを人民元に両替して現金化したり、逆に人民元でビットコインを購入するのは自由です。

これは、中国の中央銀行が、いままで追跡ができなかった無国籍のビットコインの流れを掌握することによって、人民元による為替操作を政府の決断によってスムーズに実行に移すことができるようにしようということです。

ただし、人民元とビットコインとの交換については規制していないことから、中国も仮想通貨の利用拡大の流れに水を差すことはしたくないようです。

中央銀行とブロックチェーンとの対立が表面化

欧米は、今回の中国人民銀行の規制を中国の為替操作と捉えていますが、この見方は、ビットコインなどの民間の仮想通貨がもたらす大きな変化の一部を捉えたものに過ぎません。

つまり、中央管理システムから完全に切り離された仮想通貨こそが、中央銀行の通貨政策を脅かすことになり、ひいては、中央銀行制度そのものを崩壊させてしまうことが実証されたことによって、中央銀行とブロックチェーンとの対立が表面化したものと捉えなければならないのです。

一方で、中国は世界中から金(ゴールド)を買い集めています。とうとう、中国の公的金保有量は4000トンを超えました。

中国政府は、国民にも金(ゴールド)の保有を積極的に奨励しているので、全体ではおそらく1万トンに迫る勢いでしょう。

これは、去年9月、国際通貨基金(IMF)が、人民元を特別引出権(SDR)通貨バスケットに採用したことに対応したもので、ゆくゆくは、金(ゴールド)で裏付けされた人民元による通貨覇権を目論んでいることを如実に示しているのです。

中国の金融当局が、ビットコインが人民元と交換される分については口を差し挟まないのは、中国が独自の仮想通貨の発行を計画しているからで、今のところ、ビットコインを多くの国民の間に普及させることによって「仮想通貨の教育期間」と考えているからです。

ビットコインは、1月から2月にかけて大暴落を演じましたが、その後、高値を抜けて上昇し続けています。

Next: 中国と正反対。ロシアはなぜビットコインを恐れているのか?



中国と正反対。ロシアはなぜビットコインを恐れているのか?

同じく、金(ゴールド)を世界中から集めているロシアの対応は、中国とは正反対です。

2014年2月、ロシア当局は、ビットコインをはじめとする仮想通貨を使った資金決済を違法行為とし、「ロシアの公式通貨はルーブルただひとつである」と国内外に周知させました。

ロシアは、歴史的に新世界秩序(ニュー・ワールド・オーダー)の脅威に晒され、何度も国家分断の危機を回避してきました。プーチンが大統領になって以来、それは、いっそう鮮明に打ち出されています。

その理念は、「通貨の匿名性こそが基本的人権を守る」という考え方に立脚しており、紙幣の通貨を決して廃棄しようとしません。

中国もロシアも、ビットコインに規制を加える理由に、「マネーロンダリングに代表される裏金脈の構築によって、地下経済の広がりに仮想通貨が大きな役割を果たそうとしている」ことを挙げていますが、本質的には、西側の新通貨システムよって、国家が乗っ取られることを警戒しているのです。

ロシアの場合は徹底しており、来年に迫ったロシアの大統領選に向けて、プーチンの対立候補が、ビットコインにより選挙活動資金を集めることまで禁止しています。

今のところ、プーチン優勢ですが、今後、西側メディアによるプーチン・スキャンダル捏造によるキャンペーンが活発になっていくでしょう。プーチンの政府は、「悪い芽は早いうちに摘んでおけ」とばかり、徹底して仮想通貨の普及拡大を警戒しています。

そのロシアも仮想通貨の独自開発を目指している

しかし、そのロシアにも、去年8月にビットコイン交換所がオープンしました。

また、クリル諸島(千島列島)という比較的、閉鎖された経済圏で日米共同の仮想通貨推進プログラムを展開する計画が水面下で持ち上がっています。

これは、ロシアが反対しているのは、中国と同様、あくまで西側世界の仮想通貨システムで、独自に開発する仮想通貨システムには反対していないことを示しています。

ロシアと中国は、明らかにヨーロッパ・中国を含めたユーラシア経済圏構想の戦略の下で、世界中から金(ゴールド)を買い集めているのです。

2001年6月15日、ロシア、中国、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンの6ヵ国による多国間協力組織、もしくは国家連合として「上海協力機構」が上海にて正式に設立されました。

これは実質的な軍事同盟であり、かつ、経済的同盟関係にある機構です。ロシアは、ワルシャワ条約機構の復活を構想しているのかもしれません。

Next: 日本における仮想通貨は東京オリンピックを契機に急拡大する



日本における仮想通貨は東京オリンピックを契機に急拡大する

日本における仮想通貨の普及は、米欧と比較して大分遅れを取っているとはいえ、ビットコインの取引量は確実に増えています。

日本では、ビットコインによる決済を受け付けている店舗の数が少ないため、むしろ、投資の対象として仮想通貨を位置づけている人が多いのが特徴です。

とはいえ、ビックカメラなどの大型量販店チェーンなどが参入してくると、その様相は一変する可能性があります。

これはもちろん、2020年に開催予定の東京オリンピックに、世界中から訪れる観光客を当て込んでの対応で、これをはずみとして、一気に仮想通貨の利用拡大が促されると見込んでのことです。

東京オリンピックに訪れた観光客が、日本ではビットコインが使えないとなれば、「仮想通貨後進国」のレッテルを貼られないとも限らないので、政府としても今後、果敢に仮想通貨の普及拡大に向けたPRに力を入れるでしょう。

投資家たちは、むしろ、東京オリンピックの前後から始まると予想されている地価の下落株式市場の暴落をきっかけに、ビットコインの急騰を当て込んでいるかもしれません。

民間のメガバンクでは、今年の秋から、三菱東京UFJ銀行の「MUFGコイン」が発行されます。その他のメガバンクも、ブロックチェーンを使った独自の仮想通貨の発行を計画しています。

日本政府は、この発表と相前後して「ビットコインを貨幣として認定」し、仮想通貨の普及を後押しする姿勢を表明しました。

議論沸騰の末、強行採決によって決着を見た「カジノ法案(IR推進法案)」ですが、おそらく政府は、統合型リゾート全体で仮想通貨による決済を可能にすることによって、モデルケースをつくりたいのでしょう。

仮想通貨「3つの問題点」を、現在の不換紙幣と比較すると?

さて、仮想通貨の持つ最大の問題は、3つほどあります。

1つは、絶対価値の裏付けがないこと。

2つ目は、法定通貨ではないため、事故が起こったときに国が救済しないこと。

3つ目は、中央銀行が仮想通貨を発行すると、必然的に、国民監視社会が誕生すること。

「絶対価値の裏付けがないこと」に関しては、何も仮想通貨だけの問題ではなく、中央銀行制度を採用している国の通貨のすべてに「絶対的価値」の裏付けはないのです。

実質的に、世界の基軸通貨の座にかろうじてとどまっている米ドルにしても、1971年8月のニクソン・ショックを契機とするブレトンウッズ体制(IMF体制)の崩壊以後は、主に米国政府の信用がドルの裏付けとされたのです。

ブレトンウッズ体制のことを、別の言い方で「金・ドル本位制」と言うように、それまではドルと金(ゴールド)の交換比率を一定に定めると同時に、他国通貨に対しては固定相場制を取っていました。したがって、世界中のほとんどの金(ゴールド)が米国に集中していたのです。

しかし、米大統領ニクソンによって、ドルと金の交換停止が宣言されて以来、ドルは本位貨幣(正貨たる金貨や銀貨)との兌換が保証されない不換紙幣となって、世界は変動相場制に移行したのです。

現在のドルや円、その他の国の通貨は、その国が法律で通貨と定めることによって流通が保証された「法定通貨」ですが、価値が保証されているということではありません。ハイパー・インフレになれば、紙幣は紙切れ同然となり、国民の資産が際限なく政府に没収されるのです。

通貨は、中央銀行が独占的に発行権を持っています。

しかし、中央銀行が通貨を発行する際には、政府が発行した国債(借用証書)を買い入れることによって、その支払いに充てるための新札を印刷して市中に放出するので、政府に国債の発行を野放図に許してしまえば、通貨の購買力が低下するばかりです。

これは、通貨から金本位制の足枷が解かれたことによって起こったことです。

これも「インフレ税」の一種なのですが、目に見えないのため、私たちは自分の労働の対価を政府に没収されていることに気がつかないのです。

それを防ぐために、銀行は金利を設定して、預金者に還元することによって通貨の減価分を穴埋めしてきましたが、今後、世界的に少子高齢化が進展し、GDPの伸び悩みが明らかになっている上に、国債の過剰な発行がもたらした政府の財務状態の悪化によって金融システム自体がぐらついていきます。

ひいては、国債を発行するごとに政府の信用が毀損されていくので、どこかの時点で量的金融緩和ができなくなって、最終的には、不換紙幣が無価値同然になってしまうのです。

つまり、早晩、不換紙幣の新規発行ができなくなるのです。

Next: 日本人が理解しておくべき三菱東京UFJ銀行「MUFGコイン」の正体



日本人が理解しておくべき三菱東京UFJ銀行「MUFGコイン」の正体

まず、仮想通貨の代表ビットコインは、その国の中央銀行システムの外側で流通している通貨なので法定通貨ではありません。

ビットコインの信用の中心的裏付けになっているのは、ブロックチェーン(分散台帳)ですから、ビットコインが普及しなければ流動性が失われて、ビットコインのお財布(ウォレット)の中にある単なる数字に過ぎないということになります。

反対に、ビットコインがどんどん普及していけば、中央銀行が発行する「法貨」が駆逐され、最終的には中央銀行制度が崩壊します。それだけでなく、民間の銀行システムも無用の長物となる可能性があります。

仮に、三菱東京UFJ銀行が発行する「MUFGコイン」が世界中に普及したとき、実質的に、三菱東京UFJ銀行が日本の中央銀行に取って変わることになります。この可能性については、経済学者も指摘していることです。
(※メルマガ第162号パート1、パート2「2017年秋の暗号通貨の発行によって日本のメガバンクが日銀にとって代わる」にて詳述)

「MUFGコイン」は当初、1MUFGコイン=1円の交換レートでスタートすることになっています。

MUFGコインの発行限度額が決められていない場合、円との固定相場制を堅持すれば、日本が財政危機に陥ったとき、仮想通貨の価値もまた減価されてしまいます。これでは、インフレのヘッジとしては使えません。仮想通貨でも、発行限度額を制限しなければインフレになるのです。

日本の財政破綻を恐怖する人々が、MUFGコインをビットコインと同じように錯覚して円をMUFGコインに両替すると、円がだぶついてインフレを引き起こします。それは、発行主体である三菱東京UFJ銀行のバランスシートを破壊します。

それを防ぐために、政府が慌ててビットコインの通貨化を認めたように、MUFGコインもまた「通貨化」されるでしょう。日本の他のメガバンクが、それぞれ独自に仮想通貨を発行しても、交換レートを1円に固定したままでは、メガバンクにとってのインフレヘッジにはならないのです。

伝えられるところでは、財務省は、すでにデフォルトのシミュレーションを行っていると言われています。とはいえ、財務省は、そうした破滅的な事態を是が非でも回避しようとするので、いよいよとなれば、日銀に強烈な圧力をかけてヘリコプター・マネーの導入に踏み切らせるでしょう。それは、十中八九、ハイパー・インフレを招きます。

どちらにしても、民間が発行する仮想通貨と円との交換レートを固定するかぎり、最悪のシナリオを回避することはできないのです。

したがって、当初は「1MUFGコイン=1円」に固定するものの、普及へのインセンティブを働かせる目的で、次第に、交換レートの固定相場制は廃止されるでしょう。

たとえば、「1MUFGコイン=1.2円」というように、MUFGコインを使えば使うほど得をする交換比率を採用するのです。この場合、円でモノ・サービスを購入するより、MUFGコインで支払いを済ませるほうが、2割増しの購買力を持つことになります。

おそらく、この予想は現実になるはずです。そうしなければ、メガバンクの仮想通貨は普及しないからです。

とはいうものの、仮想通貨が法定通貨にならなければ、消費税も所得税も納めることができないので、いったんは円に両替しなければなりません。

当面の間、一定程度、仮想通貨が普及するまで、民間のメガバンク連合による統一仮想通貨と、法定通貨である「円」とが共存する社会となるでしょう。これが、政府のいう通貨のモラトリアム、「通貨化」の状態です。

Next: 中央銀行が仮想通貨を発行する時、ビッグブラザーはあなたを見ている



スウェーデンは、2020年に紙幣を消滅させようとしている

キャッシュレス先進国のスウェーデンは、2020年までに完全に紙幣を廃止して、すべての決済だけでなく、納税までをも仮想通貨によって完結できる社会を目指しています。

スウェーデンの中央銀行は、早ければ2年以内に、現行の法定通貨クローナに代わる「e-krona」を発行する計画を具体化しそうです。

とはいえ、社会的弱者に配慮して、e-krona以外は法定通貨として使用できない、というわけではなく、紙幣のクローナも共存させる予定です。

スウェーデンが法定通貨としての仮想通貨を発行すれば、デンマークもこれに追随し、その他のヨーロッパ諸国も後追いするでしょう。

中銀発の仮想通貨=ビッグブラザーのお出ましだ

しかし、三菱東京UFJ銀行のような民間銀行が発行する仮想通貨と、スウェーデンのように中央銀行が発行する仮想通貨とは、本質的にまったく別物です。

中央銀行が仮想通貨を発行すれば、人々は、やはり国を信用して中央銀行に仮想通貨の口座を作るようになるでしょう。

その代わり、中央銀行に法定通貨としての仮想通貨の口座を開設することは、すべての人間の消費行動が、国家に逐一把握されることを意味します。

それでも、個人事業主にとって頭の痛い消費税や所得税・市民税の申告も自動化されるので、国民は生産性を上げることだけに集中するができます。それを歓迎するかどうかは、国民の人間としての尊厳と自主独立の意識にかかっていると言えるでしょう。

なぜなら、スウェーデンの近未来こそは、来るビッグブラザーの監視社会そのものだからです。

すでにヨーロッパでは、従業員の給料を仮想通貨で支払うサービスを代行する会社が立ち上がっています――
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日本も米国もEUも金融危機は不可避

ビットコインの発行量は、全地球の金(ゴールド)の埋蔵量とリンクしている?

中央銀行が法貨としての仮想通貨を発行すると、それは「ビッグブラザー」につながる

必要な「純金積立」の見直しと現物への切り替え

※本記事は、『カレイドスコープのメルマガ』 2017年4月11日第202号パート2の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した項目(「必要な「純金積立」の見直しと現物への切り替え」etc.)のほか、配信済みメルマガのパート1、パート3全文もすぐ読めます。

初月無料購読で今すぐ読める!本シリーズ パート1/パート3の目次

第202号パート1 預金封鎖時代の「金(ゴールド)」に裏付けられた仮想通貨(その1)

・日銀の「異次元の量的金融緩和」ではマネーストックは増えない
・異次元の量的緩和とは、国民の資産を債権に変える「等価交換」のこと
・やがてやってくるインフレ大増税
・民進党が政権を取ろうとしない理由
・トランプ政権のシリアへのミサイル攻撃は「黙示録的」
・証明された一朝有事のときの金(ゴールド)

第202号パート3 預金封鎖時代の「金(ゴールド)」に裏付けられた仮想通貨(その3)

・COMEX保有の250倍以上ものペーパーゴールドが取引されている
・「DGX」の登場によって、金(ゴールド)のトレードが可能になり、流動性が高まる
・ようこそ!ブロックチェーンの世界へ
・デジタル・ゴールド・トークンの世界的普及は、実質的に「金本位制への回帰」を示す
・金融崩壊後の新しい西部開拓時代の金本位制デジタル通貨

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「カレイドスコープ」のメルマガ』(2017年4月11日第202号パート2より一部抜粋、再構成

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