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アベノミクスは二度死ぬ。最大リスク要因は北朝鮮か仏選挙か、それとも=斎藤満

北朝鮮リスクがやや後退し、株式市場では買い場を逃したとホゾをかむ投資家が多いようです。しかし慌てなくても、もっと大きな押し目がやってくるチャンスはあると見ます。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2017年4月21日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

高まる期待剥落リスク。日経平均は大きな「押し目」形成の可能性も

フランス大統領選は波乱なしでも

株式市場では、地政学リスクで下げたところを買いたいと「押し目」を待っていた人が、北朝鮮リスクの後退で買い場を逃したと、ホゾをかんでいるようです。

実際、北朝鮮危機は米国の「ねつ造」の面もあり、それが暴露されてしまいました。しかし、慌てなくても次の、そしてもっと大きな「押し目」がやってくるチャンスがあります。

目先は、4月23日のフランス大統領選。世論調査では中道独立派のマクロン氏が5月7日の決戦投票に残ると見られているので、その通りなら波乱もなく、「押し目」にはなりませんが、世論調査が当てにならないことは、昨年のトランプ勝利で実証されました。もし、極右と極左が残るようなことになると、大きな波乱となり、週明けの東京で最初の「下げ」を見せることになるでしょう。

【関連】「シェアハウス」に例えて理解するフランス大統領選とEU、本当のポイント=矢口新

「期待」で上昇してきた日本株の下げ余地は大きい

またそれとは別に、大きな「押し目」が、期待の剥落から生じる可能性も浮上しています。

これまで日本株はアベノミクス期待で上昇し、それが一巡しかけたところに、トランプ政策への期待2段ロケットのように相場を押し上げました。この上昇は今後、期待通りでやっと現状維持、期待外れならそれだけはげ落ちるリスクがあり、期待はすでに伸びきっています。

このうち、まずトランプ政策への期待がしぼみ始めました。18日以降のNY市場でゴールドマンの株価下落がダウを押し下げ、その後原油価格の下落が相場を下げました。いずれもトランブ政権の柱になる部門です。

トランプ政策の後ずれ、縮小懸念と、対ロ関係の悪化シリア攻撃の不当性が原油価格の下げを呼んでいる可能性があります。これも失望要因です。

原油価格については、原油増産を図るトランプ大統領のために、ロシアがOPECと協力して減産に協力しましたが、米ロ関係が悪化すると、ロシアが協力しなくなって、原油生産が増え、需給悪化となる面があります。イランも独自に増産に走る可能性があります。

中東不安=原油高の先入観がありますが、減産合意の破棄の方が、需給悪化に効きそうです。

トランプの「ねつ造」が次々と明らかに

また米国内の支持率低下のなかで、トランプ氏は「成果」をあげようと、日中を「貿易不均衡」と「北朝鮮」で脅しましたが、米国艦隊が朝鮮半島に向かっている、とのトランプ発言は「嘘」で、ここでのリスクが後退、シリアの化学兵器使用も「米国のねつ造」との見方が出ています。

米国景気が悪化しないと貿易赤字が縮小しない「矛盾」もあり、成果を見ないまま公約違反の声が出やすくなります。

Next: 安倍内閣を追い詰めるトランプ。「森友・加計」以外にも火種が



「森友学園」「加計学園」以外にもスキャンダルの火種

原油価格の下げとGSの株価下落は、その予兆とも言えますが、日本でもアベノミクス期待が剥落するリスクが浮上しています。

すでに黒田日銀による「異次元緩和」は、金利操作付き量的質的緩和に修正した時点で政策破たんが露呈し、以後財政主導に切り替えていますが、政権そのものがぐらついて審議が進まない面が出ています。

安倍総理の「森友学園」問題、「加計学園」問題は、北朝鮮リスクの前に立ち消えになり救われましたが、その北朝鮮問題も山を越えたようです。再び「スキャンダル」が蒸し返されるリスクがありますが、安倍政権幹部にも批判の声が集まっています。

稲田防衛相金田法務相の大臣資質が問われ、環境大臣の暴言中川政務官の「重婚」疑惑などが続いて審議が遅れます。

トランプ政権が安倍内閣に突き付ける「とんでもない要求」

さらに、安倍・トランプ関係の「蜜月」ぶりにも疑問符がつき始めました。18日の第1回日米経済対話に際して、安倍総理、麻生副総理がいたって不機嫌な表情を見せました。

この尋常ならざる表情に対して、はたから「いったい何があったのか」、様々な憶測が飛んでいます。メディアは全く報じませんが、少なくとも、「とんでもない要求」を突き付けられた可能性があります。

もっとも、ウィルバー・ロス商務長官であれば、自動車や農産畜産物での市場開放の要求が出てもおかしくありませんが、ペンス副大統領から何か出るとすれば、こうした個別案件でなく、より大きな枠組みの要求と見られます。

その点、麻生副総理が19日にコロンビア大学で、唐突にも「ヘリコプター・マネー」を否定する発言をしました。

米国からは、シムズ理論に則り、財政赤字の拡大が求められ、安倍政権もプライマリー・バランスの黒字化後退、防衛予算の拡大を示唆していますが、米国は消費税の廃止を求めているとの情報もあります。

そして財政赤字が拡大した際には、日銀にヘリコプター・マネーをやらせ、財政ファイナンスすればよい、となります。麻生副総理はこれを拒否したことになります。

解散・総選挙か?内閣総辞職か?

さらに、一部には米国が安倍総理の退陣を求めた、との見方も提示されています。その場合、解散・総選挙か、内閣総辞職となります。

もっとも、天皇退位を巡って皇室典範を改正したり、衆議院選挙の区分けを見直したりする中で、解散は困難との見方もあり、そうなると総辞職ということになります。

Next: 自民党内でも「ポスト安倍」の動きが活発化



自民党内でも「ポスト安倍」の動きが活発化

岸田外務大臣は19日、宏池会の会合であいさつし、ポスト安倍に意欲を示しました。席上、安倍総理は「もうしばらく我慢して安倍政権を支えてください」と述べています。

これまで「安倍超安定政権」「安倍永久政権」とまで言われた自民党内で、にわかに「ポスト安倍」の動きが出始めたのが気になります。

安倍・トランプ関係には諸説あり、決してうまくいっていない、トランプに利用されているだけ、との評価もあり、これらの見方では、利用価値がなくなればさっさと切るのが米国流、となります。

情報の真偽は確認できませんが、安倍退陣となれば、「安倍期待」で株高円安が進んだ面が大きいだけに、その反落も大きくなります。

ひょっとすると、大きな「押し目」ができるかもしれません。慌てず、じっくり買い場を待つのも一案です。
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・FRBの資産圧縮で市場の混乱は回避?(4/19)
・日米経済対話を前に為替圧力(4/17)
・見えてきたトランプ大統領の本性(4/14)
・トランプ政策下の金利高ドル高見通しは修正(4/12)
・米中首脳会談で習主席は窮地に(4/10)
・日銀理論の破たんを示す需給ギャップのプラス化(4/7)
・天下分け目の米中首脳会談(4/5)
・年金不安のデフレ圧力(4/3)


※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2017年4月21日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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マンさんの経済あらかると』(2017年4月21日号)より抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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