なぜ「インフレはよくない」と言われているのでしょうか?誰だって商品が高くなるのは嫌だからです。でも本当にそうでしょうか。(『お金持ちになりたいけどお金のことよく知らない人へ』)
インフレは良いこと?悪いこと?今さら聞けない基本をマスターしよう
インフレの基本的なしくみ
1900年から1965年まで、アメリカのインフレ率は年平均1%程度を保っていました。ただし、戦争の時期は別です。第一次世界大戦、第二次世界大戦の直後には、インフレ率が2桁に達しました。なぜ戦争後に物価が跳ね上がったのかについては、インフレの基本的なしくみから理解することができます。
インフレというのは人々がお金をたくさん持っていて、世の中に商品が不足しているときに起こります。たとえば戦争が終わると、兵士たちが報酬を手に帰ってきて、みんながいっぺんに品物を買おうとします。つまり、買うためのお金があり余っている状態です。しかし、戦後の物不足で商品が足りません。そのため、値段がどんどん上がってしまうのです。
これとちょうど逆のことが、大恐慌のとき起こりました。1929年から1933年にかけて、世界が深刻な不況に襲われました。アメリカでは大幅なデフレが起こり、物価がそれまでの3分の1に下がりました。お金が不足して、商品が余っていたからです。誰もモノを買うお金がなく、銀行は機能を停止し、あり余る商品の値段はどんどん下がっていきました。
なぜ「インフレはよくない」と言われているのか
ところで、なぜ「インフレはよくない」と言われているのでしょうか?
誰だって商品が高くなるのは嫌だからです。でも本当にそうでしょうか。世の中のあらゆるところで同時にインフレが起こったら、誰も困らないのではないでしょうか。
たとえば、一夜であらゆる財布の中身が2倍に増えたとします。人々の財布、銀行預金、お店のレジ、給料等お金のすべての金額が2倍になった。翌朝目を覚ました人々は、財布の中身をみて大喜びするでしょう。人々はさっそく買い物をしようと街に繰り出します。しかし、お店の人もお金が2倍に増えたことを知っています。だから、商品の値札をすべて2倍に書き換えます。この場合、すべての人々の所持金が2倍に増えた訳ですが、前日とくらべて暮らしが楽になったり、苦しくなったりすることはありません。
この話は、物価、賃金、金利、預金などあらゆる価格がいっぺんに上昇し、それを誰もが知っているとしたら、誰も困らないということです。
しかし現実には、インフレはすべてのお金にまんべんなく起こるわけではありません。この先物価がどれくらい上がるかを完全に予測することはできません。そのため一部の人が得をして、一部の人が損をするということになります。
商品の値段だけが上昇して給料があがらなければ、あなたの生活は苦しくなるでしょう。
Next: インフレを嫌う人、低いインフレ率なら問題ないという人、その違いって?
インフレを嫌う人、低いインフレ率なら問題ないという人
第一次世界大戦後のドイツでは物価が一気に跳ねあがり、空前のハイパーインフレになりました。1980年代にはアルゼンチンやイスラエル、ボリビアで、また2000年代にもジンバブエでハイパーインフレが起こっています。
あなたが事業を営んでいるとして、月初に稼いだお金が月末には4割目減りしている状態を想像して下さい。そのような状態になったら、顧客サービスや生産性などといっている余裕はなくなります。なんとかインフレの損失を最小限に食い止め、生き延びることを考えるのではないでしょうか。
消費者には様々な問題がふりかかってきます。普段買い物をする時には、それまでの経験から相場がわかるので、お買い得かどうかの判断がすぐできます。
しかし価格が常に動いているような状態では、相場をつかむことができず、買うべきかどうかの判断が非常に難しくなります。支出が予想できないので家計を管理するのは至難の技です。国の予算もうまく機能しなくなります。インフレ率が高く不安定になると、経済はひどく行き詰まってしまうのです。
一部の人々は、インフレを非常に嫌います。それはきわめて低いインフレ率を保つ事が重要だと考えているから、インフレに繋がりそうな芽は早いうちに摘み取ろうとします。
それに対して、2~5%程度の低いインフレ率なら問題ないと考える人々もいます。理由の一つは、賃金の高騰を防いでくれるからです。インフレ率が年間4%で、給料の値上げが年間2%だとします。実質的には給料が下がっていることになるが、見た目上は増えているので労働者のやる気は上手く保たれます。
また、軽度のインフレを容認したほうが、対策取りすぎてデフレを引き起こすよりもマシだという意見もあります。年間5%以内であれば、あまり経済に影響を及ぼさないという意見もあります。
『お金持ちになりたいけどお金のことよく知らない人へ』(2016年7月12日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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