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韓進海運破綻! 韓国経済を待ち受ける「超高額訴訟」の悪夢とは?

前回メルマガで「韓進海運の破綻」について触れ、台風の目になりそうだと述べたわけだが、その影響は韓国経済自体が破綻するほどの破壊力を秘めたものだった。まさに「輸出国家の危機」である。(『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』)

※本記事は、『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』2016年9月11日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

世界中で入港拒否&差し押さえ、宙に浮く140億ドルの積荷

最悪の形で破綻した韓進海運

韓国の輸出ルートは、北朝鮮に「陸」を押さえられているので、「海」と「空」の2つの手段しかない。

「空」というと空輸になるが、飛行機に積める荷物の重さや量は限られており、しかも輸送コストが高くつく。そこで「海上(船)」の輸出ルートを選ぶことになるわけだが、今回の韓進海運破綻で、その輸出ルートが他国に押さえられつつある。今回の韓進海運破綻を発端とする一連の物流混乱は、このメルマガを書いている9月10日現在でも継続中である。いまなお被害が拡大しているのだ。まずは経緯から説明しよう。

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実は数ヶ月前から、韓進海運が破綻するというニュースが韓国メディアを通じて出ていた。私もそのニュースに注目していたので、いくつかの記事をサイトで取り上げて、成り行きを見守っていた。そして、8月31日に韓進海運は破綻して「法定管理」となった。裁判所がここから数ヶ月をかけて、倒産させるか、再建するかを判断する。そして、現時点では倒産させるという意見が多い。

さて、ここまでなら「韓国最大手の海運会社が巨大な負債を残して破産した」という話で終わるところだった。しかし、破綻の仕方が最悪だった。なんと、8,300社から荷物の仕事を引き受けた状態で破綻したのだ。

法定管理になったその日、港湾使用料・備船料を600億円ほど滞納していた理由で、韓進海運は外国の港への入港を拒否された。現金で払わない限りは入港できず、コンテナも差し押さえとなったのだ。その荷物の規模は、総額140億ドルともいわれている。日本円で約1兆2,500億円である。こうして物流混乱は始まった。

米国・中国・日本からの「超高額訴訟」という悪夢

韓進海運を再建するには、6,000億円ほど必要だといわれている。そして、港湾使用料・備船料などの滞納を含めて7,000億円があれば再生できるわけだが、当然、そんな金はどこにもない。荷物を差し押さえや入港拒否を解除するには300億円ほどが必要とされているが、事件から11日たった現在でも、そのお金すら支払われていない。

港に入れずにいる韓進海運の船の荷物は、米国・中国・日本で9割を占める。米国には、「ハロウィーン」や「ブラック・フライデー(クリスマス商戦の開始日)」のために用意された荷物が大量に運ばれる予定だった。

その中には、あの世界一のスーパーマーケット・ウォルマートや、Amazonなど世界的な企業の荷物が多数存在している。仮にこれらのコンテナがブラック・フライデーの準備に間に合わない場合には、140億ドルはくだらない超高額訴訟が待っているのだ。

韓国経済はこの時点で自らを死に追いやるような、とんでもないことをしでかしたわけだ。しかも、韓国政府は韓進海運を助けようとせず、あくまでも韓進グループに金を出させるという斜め上の対応を行った。この事態を重く見たアメリカ政府は、要人を韓国に送り、韓国政府に混乱を鎮めるように要請。しかし、いまだに全くもって収まっていない。韓国政府がやっているのは、責任のなすりつけ合いである。

現実的に、韓国政府は大宇造船海洋の構造調整で公的資金を投入して批判を浴びているので、韓進海運を助けるというのは難しいのだろう。しかし、どう考えても大宇造船海洋よりも世界的な影響が大きい。助ける義務はないが、漂流中の荷物を適正に処理しなければ、韓国経済が破綻するほどの超高額訴訟が巻き起こる。そうなってしまえば、もうどうしようもない。

1日ごとに賠償額は膨れあがっていくわけで、コンテナの中身が生鮮食品ならば、すでに商品価値がないかもしれない。そういった意味でも、一刻も早く荷物を降ろすことが重要だ。それなのに、どうも韓国政府は事態の緊急性に気付いていないようである。韓国庶民の認識レベルも低い。

唯一、サムスン電子だけが事態の緊急性に気が付き、韓進海運が払わない港使用料を立て替えて、自分のところの荷物だけを降ろさせて別の船で運ぶということをしている。このあたりは、さすがサムスン電子の対応力といったところだ。「Galaxy Note7」が爆発してリコールしたことで、空輸で運べなくなったのも大きいのかもしれない。

Next: 韓国経済「自滅」の理由。なぜ韓進海運は破綻したのか?



韓国経済「自滅」の理由。なぜ韓進海運は破綻したのか?

そもそも韓進海運の破綻原因はなんだったのだろうか。問題はいろいろあるのだが、よくあるダンピングによる赤字輸送を続けていたことが原因である。ライバル企業のシェアを奪うために、相手のコストの半額以下で請け負っていたという。そして勝手に自滅したのだ。

なお、この件で良い影響も出てきている。韓進海運が破綻したことで海上運賃が150%ほど急上昇し、なんと他の海運会社の株価が軒並み上昇しているのだ。ただ、海上運賃が適正価格に戻っただけとも言える状況だ。

現在はブラック・フライデーに向けた準備で海運業は大忙しであり、韓進海運の破綻を事前に察知して準備していた台湾・中国・日本などの海運会社がシェア獲得に乗り出している。さらに、世界の海運大手「マースク」まで進出してきた。韓進海運が潰れたことでアジア、北米ルートのシェアは激変していくことになる。韓国は海への輸出手段を他国に委ねることになるが、それは自業自得なのでどうしようもない。

以上がこれまでの経緯である。さすがに今週中には混乱は収束に向かうとは思うのだが、韓国のやることなので実際にどうなるかは未知数。対応を誤れば韓国経済はたちまち破綻に追い込まれるので引き続き注目していく。

先週の韓国市場

日付 KOSPI ウォン KOSDAQ 先物
05日 2060.08 1105.10 679.49 259.85
06日 2066.53 1105,20 679.26 260.85
07日 2061.88 1090.00 672.49 259.90
08日 2063.73 1092.50 667.40 261.10
09日 2037.87 1098.40 664.99 258.00 ←北朝鮮核実験/サムスン電子3.9%急落

先週は北朝鮮の核実験により、絶好調だったKOSPIが少し下がった程度だった。サムスン電子の急落は米国や豪州、日本の航空機で「Galaxy Note7」の使用を控えるように客へと要請したことだろう。「Galaxy Note7」が爆発物扱いとされたことで、荷物にも入れることも禁止された。また、北朝鮮はG20の開催中に核実験を行ったが、経済制裁がたいして効いていないのは、見ての通りである。

さて、米国の利上げ観測が高まっている。私は利上げの可能性については、12月ぐらいだと思っている。市場では9月利上げが30%、12月利上げで60%の予測となっているようだ。もし、利上げが行われれば、おそらくウォン安に振れるだろう。ただ、あくまでも予測であり、利上げがあると発表されたわけではない。韓国経済そのものは物流混乱はあるにせよ、安定している。KOSPIも高いし、ウォンも適正レートである。利上げが来るまでは、安定維持が続くだろう。


※本記事は、『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』2016年9月11日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』(2016年9月11日号)より一部抜粋・再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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数年ごとに起きるデフォルト危機。世界経済が後退すれば、投資家が真っ先に資金を引き揚げていく新興国市場。輸出依存が96%という恐ろしい経済構造。ヘッジファンドに玩具にされる韓国市場。中国の属国化へと突き進む2014年。並行してスタグフに悩まされる現実。そして、1100兆ウォンを超え、雪だるま式に膨らむ家計債務の恐るべき実態。経済の問題点とは何なのか?なぜ、また、第四次経済危機が迫っているといえるのか。それは読めばわかる!投資、ビジネス、教養、雑談ネタにも最適な、最も韓国経済の実情を知ることが出来るメルマガ。

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