マネーボイス メニュー

地政学的リスクと米利上げから読み解く「原油・金相場」のゆくえ=近藤雅世

OPEC総会で「原油減産の延長」が決定しましたが、総会の日を天井に原油価格は下落しています。中東情勢が緊迫する中、今後の原油価格はどう動くのでしょうか。(『グローバルマネー・ジャーナル』近藤雅世)

※本記事は、最新の金融情報・データを大前研一氏をはじめとするプロフェッショナル講師陣の解説とともにお届けする無料メルマガ『グローバルマネー・ジャーナル』2017年6月14日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に定期購読をどうぞ。

プロフィール:近藤雅世(こんどうまさよ)
ビジネス・ブレークスルー大学 資産形成力養成講座講師。早稲田大学政経学部卒業後、三菱商事に入社。主に非鉄金属、貴金属分野に従事。貴金属チームリーダーとして、日本で最初の『商品ファンド』の設定に携わり、プラチナでは世界最大手のトレーダーに。2010年5月に株式会社コモディティー インテリジェンスを設立し、取締役社長に就任。

足元の原油・金相場は「噂で買って事実で売れ」を地で行く展開に

減産合意が「原油売りの合図」に

噂で買って事実で売れ」という格言はしばしば正鵠(せいこく)を射ている。5月25日のOPECによる原油減産延長決議は、まさにその通りであった。

OPEC諸国はこれまでになく全会一致の合意により、予定されていた6ヵ月間の減産延長を9カ月にまで延ばして、意気揚々と世の中に決意の程を示した。ところが、その会議が手拍子を打っている最中から原油価格は下落を始め、5月25日は5月以来の価格の天井となっている。

総会までの間にサウジアラビアイランロシアの石油大臣が、7月以降も減産をするということを繰り返し発言し、市場はそれを織り込んで上昇していたから、いざ実際に減産決議をしたときは、それまで買っていた投資家が、売り閉じる動きが多くなったのであろう。

続落か?反発か?原油相場の注目点

その中、原油価格のキナ臭い動きの要因は中東情勢であり、注目されるのはカタールを巡るサウジアラビアとイランの対立の行方であろう。

2つの方向が考えられる。1つは、何らかの対立がどこかで激化するというシナリオ。その場合は地政学的リスクの発生により原油価格が上昇するだろう。

もう1つは、イランがサウジアラビアに対抗してアジア諸国での原油シェアを伸ばそうと原油生産を増やす場合である。イランは減産対象国からはずれており、リビアやナイジェリアと並んで今後原油を大手を振って増産できる国である。サウジアラビアの主要市場であるインドや中国向けにイラン産原油が大量に輸出されて、世界の原油需給を再び供給過剰に戻す可能性がある。

Next: 原油だけでなく金(ゴールド)相場も「「噂で買って事実で売れ」



FOMC利上げでむしろ「上昇」する金価格

「噂で買って事実で売れ」といった例は、NY金についても言える。下図の赤い矢印があるところが米国でFOMCが利上げした時である。「利上げがあるよ、あるよ」と言われ続けていると金価格は下がっているが、実際に利上げが行われた後、金価格は上昇に転じている。

それまで売り込んできた投資家が買い戻すために値上がりし、それを見た他の投資家が金は強いと思って買い増すためだと思われる。つまり、6月14日のFOMCで利上げが行われれば、その後の金価格は上昇傾向になるのではないかと想像できる(編注:14日のFOMCにて、利上げ幅0.25%の金利引き上げが決定しました)。

金相場を左右する4つのリスク

金価格を動かす今後の地政学的リスクはいくつかあるが、1つは7月17日に最初の返済が予定されるギリシャ国債の償還資金の問題であろう。これは6月15日の欧州財務相会議で資金支援が決定されれば、リスクは解消する。

欧州共同体のリスクは、オランダやフランスの選挙がEU支持派の勝利により、懸念されていたポピュリズムによるBREXITに続くEU離脱国の出現は、当面なさそうである。イタリアでは五つ星運動がEU離脱を主張しているが、総選挙で過半数を握ることはないと想定されている。

残る問題は3つある。1つは、9月のメルケル首相の総選挙であり、EUをけん引してきた彼女が舞台から降りるようなことがあれば、EUの屋台骨は揺らぐ可能性がある。

2つ目はスペインのカタルーニャの独立運動である。今すぐ独立することはなさそうであるが、スペイン政府にとっては頭の痛い問題であり続けるだろう。

最後に英国は、アイルランドの少数政党と連立を組まざるを得なくなったことで保守党の交渉力が弱まり、EUからの離脱がかなり英国に不利な条件となる可能性がある。EUへの支払い問題FTP交渉の遅延など、EUは第2の脱EU国が出ないように英国に厳しく当たるだろう。これは一層のポンド安を招くだろう。

【関連】「銀」を買う者だけが生き残る?日銀の「神風特攻」に怯える世界経済

【関連】米ドルの死と2つの仮想通貨~なぜ世界経済はリセットされようとしているのか?

グローバルマネー・ジャーナル』(2017年6月14日号)より抜粋
※記事タイトル、太字はMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

グローバルマネー・ジャーナル

[無料 週刊]
最新の金融情報・データを、大前研一をはじめとするプロフェッショナル講師陣の解説とともにお届けする“無料で最強メルマガ”です。テーマは週替わりで株式・世界・為替・商品市場と、具体的な不動産投資や債券、投資信託、ファンドなどのニュースも斬ります。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。