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円高材料の米為替報告書を消化する展開に/決算前の下方修正も要注意=馬渕治好

先週の日経平均株価は一時17,000円台に達し、米ドル円相場も104円半ばを超えることがありました。ただし米国株価の下振れなどにより、日経平均株価は再度17,000円を割れ、米ドル円相場もたびたび円高方向に押し戻されました。こうした株価や米ドル円相場の下振れを引き起こした材料として、米企業アルコアの決算の不振や、中国貿易統計の内容などが、挙げられています。(『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』)

※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2016年10月16日号の抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

先週の振り返りと今週(10/17~10/21)の注目ポイント

過ぎし花~先週(10/10~10/14)の世界経済・市場を振り返って

市場波乱の要因は、アルコアの決算と中国貿易統計だと言われてはいるが

(まとめ)
当メールマガジンでは、短期的には一旦内外株安・円高に振れる、と主張してきましたが、先週は見通しに反し、日経平均株価は一時17,000円台に達し、米ドル円相場も104円半ばを超えることがありました。ただし米国株価の下振れなどにより、日経平均株価は再度17,000円を割れ、米ドル円相場もたびたび円高方向に押し戻されました。

こうした株価や米ドル円相場の下振れを引き起こした材料として、米企業アルコアの決算の不振や、中国貿易統計の内容などが、挙げられています。しかし市場波乱の主因は、米株価が高すぎることや、米ドル安を引き起こす材料がこれから来ることであり、そうした「真の要因」が片付かない限りは、引き続き短期的な内外株安・円高を見込むべきであると考えます。

【関連】トランプを見捨てヒラリーに乗り換えた「影の政府」強まるドル高圧力=斎藤満

(詳細)
当メールマガジンでは、11月初旬にかけて、米国株価が予想PERで見て高すぎるため、いずれ株価調整が生じかねないこと、米ドル高けん制が米国から政治的になされうること、日本の7~9月決算の不振が予想され、その発表が一巡する11月初旬までは株価圧迫材料になると見込まれること、などから、一旦内外株安・円高に振れる、と述べてきました。

しかし先週は実際には、前週末(10/7・金)の雇用統計における労働時間や賃金の伸びが堅調であったことが、米景気に対する楽観論を広げたことなどから、世界市場全般に米国を中心とした安堵感が広がり、日経平均株価は一時17,000円を超え(週内のザラ場高値は10/11・火の17,074.46円)、米ドル円相場も104.63円に達する局面がありました。短期株安・円高の見通しが外れたため、読者の皆様には大変ご心配をおかけしたことと思います。

しかし、一方方向に株高・円安が進むことはありませんでした。大きく株価や米ドル円相場の調整が進んだ局面は、先週は主に2回ありました。

1度目は、10/11(火)に米国の主要な株価指数が1%強、前日比で下落した局面です。2度目は、10/13(木)午前11時頃から、日本株安・円高に振れた局面で、その日の欧米株式市況などにも尾を引きました。

1度目の米国株価の大幅な下落については、米国アルミ大手アルコアの、7~9月期の決算が不振だったことが、要因として挙げられています。アルコアは、いつも決算発表が早く、米国の主要企業ではトップバッターです。同社は10/11(火)に、7~9月期の決算を発表しました。結果は、同期の売上高が前年比6%減と減収になったうえ、一株当たり利益も事前の予想を下回りました。

しかし、アルコアが米国有数の大企業であり、トップバッターとして今後の他企業の決算動向を占う役割を果たしている、ということは事実でしょうが、たった一つの企業の決算が不振だったからといって、米国の株価全般がそれほど大きく下落しなければならないものでしょうか

実際には、米国株価のPERが高すぎて、そのまま株価を維持することにもともと無理があり、「何かがあれば」株価が下落しそうな状況であったところ、たまたまアルコアの決算がきっかけ(引き金)になったに過ぎない、と解釈すべきだと考えます。

したがって、ニューヨークダウ工業株指数の場合、8月半ばをピークとしただらだらとした株価下落基調が、ある局面では加速し、ある局面では持ち直したりしながら、当面は続くと予想しています。

もう1つ、米国株価が調整をみせた真の理由が挙げられると思います。それは米長期金利の上昇です。長期短期を問わず、米国の金利が上昇すること自体は、米国経済の堅調さによるものなので、深刻視する必要はないと考えています。また短期金利は米連銀が決めるわけですが、連銀は慎重な金融政策の運営を行ない、利上げのペースは極めてゆっくりだと期待できますので、短期金利の動きを警戒する必要もないでしょう。

ただし、長期債利回りは、債券市場で決まります。市場では、何かの思惑や期待、不安で、価格が急速にぶれることがあります。米10年国債利回りはじわりじわりと上昇しており、先週末(10/14・金)は1.80%で引けました。これは今年6月上旬以来の水準です。まだ長期金利の上がり方は緩やかですが、米国株式市場は、今後長期金利が急速に上振れする危険性を、かぎつけているのかもしれません。

さて、2度目の波乱である、10/13(木)昼の日本株と米ドル円相場の急速な下振れについては、午前11時に発表された、9月の中国の貿易統計が要因だった、とされています。

この貿易統計では、中国にとって稼ぎ頭である輸出の金額が、9月は対前年で10.0%も減少しました。これを受けて市場では、「輸出減により、中国経済にとっての稼ぎが少なくなったわけで、その結果、中国経済全般がこれから悪化するのではないか」との懸念を招きました。それに加えて、9月の輸入額も前年比で1.9%減と、8月の前年比プラスからマイナスに落ち込みました。これは、「中国の景気が悪いから、その結果として、輸入品の購買が減っているのだ」と解釈され、やはり中国経済に対する不安を生じました。

この貿易統計の発表は、確かに中国経済に対する悪材料が出た、とは言えるのですが、中国経済が減速しているとの不安は、いまさら生じているわけではなく、昨年からずっと騒いでいます。したがって、中国貿易統計の発表は、日本の株安や円高の真の要因ではなく、やはりきっかけに過ぎなかった、と考えています。

では、何が株安・円高の要因であったかと言えば、まず円安に振れたのが、前号のメールマガジンで述べたように、早過ぎて速過ぎます。後ほど「今週の展望」で解説するように、米財務省為替報告書が10/14(金)の現地時間夕方に公表され、同報告書では米ドル高をけん制していますが、その内容は今週以降本格的に消化されなければなりません。米大統領選挙はスキャンダル合戦になっており、為替相場はそっちのけですが、未だに米ドル高けん制発言が候補者からなされるリスクは高いと考えています。

こうした無理な円安と、それを受けての国内株高が、中国の貿易統計をきっかけに、修正が入る局面が生じた、と解釈しています。

ここで、先週の世界の主要な株価指数の騰落率ランキング(現地通貨ベース)をみてみましょう。

騰落率ベスト10は、順に、ポルトガル、ギリシャ、中国(上海総合)、スペイン、エジプト、アルゼンチン、チリ、チェコ、ノルウェー、アイルランドでした。欧州諸国が多いです。また、前述のように、中国の貿易統計が悪かった、と多くの国で騒いだ割には、中国株は上昇しています。

一方、ワースト10は、香港、フィリピン、シンガポール、ロシア、タイ、韓国、スリランカ、ナスダック総合、インド、台湾で、中国以外のアジア諸国が目立ちます。また、ナスダック総合指数がランクインしていますが、S&P500もワースト14位、ニューヨークダウ工業株はワースト17位で、米国株が冴えない動きでした。

実は小型株を多く含む米国の株価指数であるラッセル2000は、このランキングの対象から外していますが、もしランキングに入れていれば、ワースト4位でした。ナスダック総合指数の不調と合わせて、米国の小型株・新興市場株が相対的に冴えなかったことがわかります。

先週の外貨の対円相場のランキングを見てみましょう。

騰落率ベスト10は、メキシコペソ、ブラジルレアル、カナダドル、アルゼンチンペソ、豪ドル、ミャンマーチャット、コロンビアペソ、スリランカルピー、インドルピー、米ドルでした。資源国が多くランクインしています。また、日本円やユーロなどの主要通貨に対して、米ドルが堅調に推移しているため、かえって米ドル高けん制の動きが強まると懸念されます。

騰落率ワースト10は、南アランド、ハンガリアフォリント、英ポンド、ポーランドズロチ、スウェーデンクローナ、チェココルナ、クロアチアクーナ、ブルガリアレフ、デンマーククローネ、ロシアルーブルで、欧州通貨が多いです(ユーロはワースト11位です)。南アフリカ、ロシアといった資源国の通貨が下落しており、資源国通貨は明暗が大きく分かれたと言えましょう。

Next: 【今週の展望】米・為替報告書を消化する展開へ、日米企業決算に注目集まるか



来たる花~今週(10/17~10/21)の世界経済・市場の動きについて

米財務省半期為替報告書を消化する展開へ、日米の企業決算への注目も高まってこよう

(まとめ)
今週は、まず為替市場においては、先週末 11/14(金)の現地時間夕刻に公表された、米財務省半期為替報告書を消化しなければなりません。同報告書の内容を素直に読めば、米ドル安・円高材料だと言えます。

その後内外市場は、米国では引き続き企業決算発表に関心が向かうでしょう。日本でも7~9月期の決算発表が始まります。ただし、発表社数が増えるのは、来週以降となります。とは言っても、決算発表を前にした企業側の自社収益見通しの下方修正は、いつ出るか、予断を許しません

(詳細)
先週末 11/14(金)の米国東部時間夕刻(おそらく午後4時半頃だと思われますが、正確な公表時点がわかりません)に、米財務省半期為替報告書が公表されました(半期為替報告書が何か、という点については、この後の「理解の種」もご覧ください)。この公表時点では、米国における為替取引はほぼ終わっていますので、同報告書の内容を本格的に消化するのは、週明け11/17(月)の東京市場から、と考えてよいと思います。

同報告書では、2015年4月以降、米ドル高・円安、米ドル高・欧州通貨安をけん制するトーンを強めていますが、今回も、円高に進む相場の動きは「中長期的なファンダメンタルズに沿っている」ものであり、「市場は円滑に機能している」、すなわち、円高に進む市場の動きはおかしなものではない、と述べ、米ドル安・円高が自然だと主張しています。

加えて、今年4月の同報告書では、中国、韓国、台湾、ドイツと並んで、日本を「監視リスト」に載せ、日本が今後為替介入を行なえば、制裁対象になりうるとしていました。今回も、日本は監視リストに載ったままで(スイスが新たにリストに加えられました)、米国が厳しい目を注いでいると言えます。

こうした同報告書の内容を素直に読めば、米ドル安・円高をもたらす要因としか考えられないので、週明けの東京市場から、円高に振れると予想しています。ただし、「チャートでみればどんどん円安が進むんだ、数年に一度の外貨の買い場だ、半期為替報告書など、前回4月と同じ材料で新味がない、ここで外貨買い・円売りをしないでどうするんだ」と煽る専門家がいて、それに惑わされてしまう投資家も多いことが、頭が痛いところです。

米大統領・議会選挙に絡む、政治的な米ドル安圧力については、足元の大統領選がトランプ氏の舌禍を巡っての非難合戦に終始するといった感が強く、既に2回行なわれたテレビ討論会でも、まともな経済・外交政策の議論は脇に押しやられ、具体策に欠ける印象が色濃かったです。ましてや為替政策などは言及もされませんでした。

10/19(水)には3回目のテレビ討論会が予定されていますが、引き続き低レベルな応酬にとどまり、為替については言及がない可能性が高いです。ただ、その後も3週間近く選挙戦が続きますので、どこかで「米輸出企業の雇用を守るため、米ドル安が望ましい」という主旨の発言が飛び出すリスクは高く、選挙が終わるまでは、要注意です。

米国では、7~9月期の決算発表社数がぐんと増えてきます。近年は、ポジティブサプライズ(決算実績が、事前のアナリスト予想の平均値を上回る)が、ネガティブサプライズ(実績が事前予想を下回る)を、数の上で上回る機会が多くなっており、今回も決算発表が一巡してみれば、株式市場にとってそれほど悪くないだろう、との観測が有力です。

日本でも、7~9月期の決算発表が始まります。ただ、まだ安川電機など、発表が早い企業に限られ、発表の本格化は、来週以降となります。

とは言っても、決算発表前に、今週にでも、自社の収益見通しを下方修正する、あるいはいろいろな観測報道が流れる、ということは十分ありえます。4~6月期の決算発表時は、3月本決算企業の場合、まだ3か月しか経っていない、ということから、収益見通しを上にも下にも修正する企業の数は、少なかったと言えます。しかし半年分の情勢が見えてくると、通期の見通しを直す企業が多くなってきますし、日本の場合、上方修正より下方修正を積極的に行なう企業が先行する傾向がありますので、今週から既に、下方修正リスクには要注意でしょう。

この他の材料としては、10/20(木)にECBの定例理事会がありますが、ここでは金融政策の変更はないでしょう。また、2017年3月に期限が来る量的緩和を延長するかどうかについても、現在は検討中だとして、ドラギ総裁は明言を避けるでしょう。

中国では10/19(水)は、統計の集中発表日で、9月の鉱工業生産、小売売上高などのほか、7~9月期のGDP統計も発表されます。先週の貿易統計のようなことが起こらない、とは言えませんが、中国経済の緩やかな減速を確認するにとどまり、市場に大きな波乱は生じにくいと考えています。

日本では、日銀から支店長会議に合わせての地域経済報告(いわゆる「さくらレポート」、10/17・月)、9月の訪日外国人客数統計(10/19・水)、同月の百貨店売上高、コンビニエンスストア売上高など小売の諸業界統計(ともに10/20・木)などの発表が予定されており、国内景気の状況を見極めようと、注目が集まるでしょう。

Next: 米MMFの新規制は、日欧の銀行にとって打撃か?~世界経済・市場の注目点



盛りの花~世界経済・市場の注目点

米MMFの新規制は、日欧の銀行にとって打撃か?

先週の日本経済新聞の記事の中で、「米MMF、資金流出加速」や「邦銀、ドル調達綱渡り」といった見出しのものがありました(ともに10/14・金付)。

実は、米国のMMF(マネー・マーケット・ファンド)について、10/14(金)から新しい規制改革が適用されました。米国のMMFは、主に国債で運用する「ガバメントMMF」が過半を占めますが、それ以外のMMFを、「プライムMMF」と称します。今回の規制改革は、このプライムMMFについてのものです(規制改革が決定されたのは、2014年7月に遡ります)。

規制改革は主に2つで、まず機関投資家向けのプライムMMFについて、これまでは基準価格が固定されていましたが、運用成績によって、基準価格が変動することになりました。これにより、高い利回りを得られるかもしれないが、元本割れのリスクも高まる、ということになり、安全性を求める投資家は、引き続き基準価格が固定されている、ガバメントMMFに資金を移しています。

もう1つは、リーマンショック時に、MMFからも資金を下そうという投資家が殺到し混乱を招いたため、解約に対する制限が課されました。

具体的には、機関投資家向けおよび個人投資家向け両方のプライムMMFの流動性が、あるレベルを下回った場合(流動性が低下する、というのは、リーマンショックのような市場のパニックが起こって、MMFが保有する証券を市場に売りに行っても、買い手がつかず換金できない、という事態が拡大することを意味します)、解約しようという投資家に対し、解約手数料を割り増しする、という規制です(これに加え、解約そのものを規制する、ということも追加されました)。

こうした規制に対し、投資家は、規制される前に解約してしまおうと、やはりプライムMMFから資金を引き揚げています。

こうしてプライムMMFから資金が流出しているわけですが、これがなぜ注目されているかというと、日欧を含む金融機関が、米ドル建てCP(コマーシャルペーパー、一種の短期社債)を発行してドル資金を調達しようとした場合、プライムMMFが大いに買い手になってくれていたからです。ところが、プライムMMFからの資金流出により、有力なCPの買い手が減って、銀行の資金調達が苦しくなっている、との憶測が生じています。結果として、LIBOR(ロンドン銀行間金利)などの、銀行同士のドル建ての融資金利が上昇しています。

そもそも、なぜ日欧の銀行が、米ドルが必要かと言えば、海外において米ドル建てで融資する場合、手持ちの円やユーロを米ドルに換えて融資すると、為替の変動リスクを引き受けなければなりません。それを避けるため、米ドルで借りて、米ドルで融資する、という形態をとるわけです。

ただし、銀行が米ドルを調達するのは、CPの発行だけではなく、様々な手段があります。また日銀は、銀行の米ドル調達が苦しくなるかもしれない、という懸念は既に承知しており、邦銀に対する日銀からの米ドル融資を強化しています。

こうした点から、市場が銀行の資金調達が苦しいのではないか、と過度な懸念に走る局面があれば、それは心配し過ぎだと判断できるでしょう。

Next: 改めて、米財務省半期為替報告書とは?~世界経済・市場の用語などの解説



理解の種~世界経済・市場の用語などの解説

米財務省半期為替報告書、四たび

米財務省半期為替報告書については、当メールマガジンでは既に3回ほど取り上げており、直近では第253号(2016年5月1日付)で解説しましたが、今号でも紹介します。

米国の半期為替報告書(Report to Congress on International Economic and Exchange Rate Politics、直訳すると「国際経済及び為替政策についての議会向け報告書」、内容を踏まえてもう少し意訳すると「諸外国における経済政策及び為替政策についての、議会向け報告書」)は、財務省が作成し、議会に年に2回(原則、4月15日と10月15日)提出され、同時に公表されます。ただし15日に提出・公表されたことはほとんどなく、日はかなりずれます。

この報告書は、1988年に作成が立法化され、それから継続して作成されています。

過去にこの報告書が注目されてきたのは、中国を為替操作国(不当に為替を操作している国)として認定するかどうか、という点でした。以前は、中国、韓国、台湾などが為替操作国とみなされたことがありますが、1994年以降は、対外配慮からか、どの国も為替操作国としては認定されていません。

既に昨年(2015年4月9日と10月19日)公表された半期為替報告書においては、欧州はドイツが輸出に過剰依存していると示唆されました。つまり、ユーロ安でドイツからの輸出を支える、という政策が行き過ぎている、との批判です。また日本についても・金融政策に依存しているとの指摘で、量的緩和で円安を目論むような姿勢について、牽制されたと解釈されました。

ということは、米国が、対米ドルでのユーロ安や円安について不満を表明していたのは、既に昨年からのことであって、その点では、いまさら騒ぐようなものではありません。

今年4月29日に公表された同報告書では、そうしたユーロ安・円安に対するけん制姿勢に加え、新たな動きがありました。それは、中国、ドイツ、韓国、台湾とともに、日本を、「監視リスト」に指定したことです。この「監視リスト」という扱い自体が昨年までは存在せず、今年2月に議会で成立した「貿易円滑化・貿易執行法」に基づくものです。

「監視リスト」に含まれた場合、3条件(対米の貿易黒字が年間200億ドルを超える、全世界に対する経常黒字が名目GDPに対して3%を超える、自国通貨売り・他国通貨買いの為替介入額が名目GDPの2%を超える)すべてに抵触すると、米国は是正策を求め、是正されないと制裁することになっています。現時点で日本は、対米貿易黒字と経常黒字の条件に抵触しています。

こうした他国の通貨安をけん制するような法律である「貿易円滑化・貿易執行法」が成立した背景は、TPPの成立で貿易の自由度が進むと、米国の競争力が弱い産業が、日欧の企業に負けてしまう、といった懸念が議会で強かった(あるいは、議員自身はそう考えていないが、今年11月の議会選挙を前に、米国内の輸出企業から票が欲しい)という背景があります。つまりたぶんに政治的な色合いが濃く、今年11月の選挙を過ぎれば、あるいは米輸出企業の業績が良くなれば、日本やドイツなどに対するけん制が峠を越す、といった展開もありえます。

また、当報告書は、秩序立って市場で円高が進んだ際に、日本が円売り介入をしたり円安誘導的な政策をとることをけん制しているわけですが、中長期的に、日米景気格差・金利格差に沿って、秩序立って市場で米ドル高・円安が進んだ際は、「日本は円売り介入したり自国通貨安政策をとったりしてはいけないが、米国は米ドル売り介入をしてもよい」とまで厚顔無恥なことは言えないでしょう。

脇道の花~道草の話題

秋の味覚

秋もおいしいものが多いですが、読者の皆様は、秋の味覚というと、何を思い浮かべられるでしょうか。

マツタケはもともと高いですし、サンマも最近は不漁で高いので、筆者としては、まず栗でしょうか。焼き栗は、パリでは秋の風物詩です(パリで食べたことはありませんが…)。果物では、柿もおいしいですね。生の柿より干し柿が好きですが、干し柿はどちらかと言えば冬の物ですね。

おいしい秋の物を食べるため、「天高く馬肥える秋」と言いますが、馬ではなく馬渕が肥えるとメタボになってしまうので、気を付けます。

セミナーのお知らせ

※当面の各地での自主開催セミナーは、下記の通りです。すべて有料セミナーです(参加費、時間などは、それぞれ異なります)。学生の方には、学生無料枠もあります。
カッコ内の数字は、(現時点での参加お申し込み数/定員)です。

12/4(日)名古屋(愛知県名古屋市中村区)(6/25)
12/10(土)高岡(富山県高岡市)(1/25)
12/17(土)浅草(東京都台東区)(12/25)
12/23(金、祝)葛西(東京都江戸川区)(8/30)
12/24(土)横浜(神奈川県横浜市中区)(2/25)
1/7(土)大阪(大阪府大阪市中央区)(2/25)
1/28(土)札幌(北海道札幌市中央区)(3/30)

以上の諸セミナーについての、詳細やお申し込みは、
http://bd-fleurettes.eco.coocan.jp/sub3.html
のページの下の方にある、セミナーのスケジュールから、それぞれのリンク先をご覧ください。

上記以外のセミナーも、公開可能なもの(有料、無料にかかわらず、参加者が限定されていないもの)は掲載しています。セミナーの受付が開始され次第、順次掲載していきますので、お手数ですが、こまめに上記ページをご確認いただければと思います。


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馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2016年10月16日号外)より
※記事タイトル、本文見出し、太字はMONEY VOICE編集部による

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