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年齢と学歴で差がつく?「格差社会の本場」アメリカの現実を可視化してみた

米国では、その富の大半をごく少数の富裕層が独占していることはご存知でしょう。今回は少し切り口を変え、より具体的に「富の偏り」を可視化してみます。(『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』)

※本記事は、『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』2017年6月27日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

アメリカにおける「貧富の格差」はもう手遅れなのか?最新データ

米国政府の最新資料

米国連邦議会予算局の『米国家庭の資産の変動、1989年から2013年』という報告書があります。この報告書は2016年発行と少し古い資料ですが、私は今まで、このオリジナルデータをしっかりと見ていませんでした。

米国の資産のほとんどをごく少数の富裕層家庭が保有していることは、すでにニュースなどで皆さまもご存知だと思います。今回は少し切り口を変えて、米国の富の偏りについて紹介します。

【関連】日本はなぜ超格差社会になったのか?その「制裁」は1989年に始まった=矢口新

さて、冒頭の報告書ですが、2016年に「2013年のデータが最新」として報告されています。また、このレポートの内容は3年ごとのデータです。となると、次は2016年のデータを2019年に出すのでしょうか? それはわかりませんが、過去の同様の資料は見つけることができませんでした。

上位10%が全資産の4分の3を独占している

<第8頁>

上位10%の家庭(すなわち富裕層)が、米国の全家庭の純資産67T$の4分の3程度を独占しているのです。

下位50%の家庭(極貧層、貧困層、中間層)の富は、全体の純資産の1%です。なお、3%だった時期もありました。

富裕層の資産は増え続けている

<第9頁>

下位90%の家庭の平均的な富(資産−負債)は、1989年の60万ドルから、現在は90万ドル強に増えています。なお、この数字は物価上昇率を織り込んでいます。

これは、上位10%の富裕層の富が増えたからです。このことは下位25%(極貧層・貧困層)の平均的な富が横ばいで、金額がわからないほど少ないことから推測できます。

下位50%(極貧層・貧困層・中間層)の平均的な富も横ばい状態で、金額は100,000ドルもありません。

なお、下位75%(全家庭の4分の3)の平均的な富は少し増加しており、金額は300,000ドル程度です。

Next: 追い込まれる貧困層。借金を抱える家庭が増加し債務額も急増



中間層の資産は意外にも横ばい

<第13頁>

下位26%から50%(中間層)の資産と負債の変化を示しています。期間はすべて1989年から2013年です。左から住宅資産、金融資産、その他の資産、そして住宅ローン残高です。単位は2013年時点での米ドルです。

1989年から2013年には住宅資産は減り、金融資産はほぼ横ばいで、その他資産は増え(+3)、合計ではあまり変化しなかったのですが、住宅ローン負債は増えています。

資産と負債を相殺すれば、プラス(平均額で38万ドル)ですから、大きな問題とは思えません。

貧困層はより一層厳しい状態に

<第15頁>

下位25%(極貧層、貧困層)の資産および負債です。

1989年から2013年には住宅資産はプラスからマイナスに転じ、金融資産は微増。その他資産も微増。合計はゼロ近辺でしょう。住宅ローン負債は大きく増えています。

結果、1989年は資産と負債を合わせると概ねゼロ近辺であったのが、2013年には平均1.3万ドルの負債を抱えているのです。

返済できるのかどうか? それは誰にもわかりません。

借金を抱える家庭が増加、平均債務額も急増

<第16頁(グラフは省略しています)>

ネットで債務を抱えている家計グループ(負債が資産を上回る家計グループ)の全人口に占める率と平均債務額です。1989年当時は全家庭の7%程度だったのが、2013年には12%へ増加しています。

平均債務額は1989年当時は9000ドルだったのが、2007年には2万ドル、そして2013年には3.2万ドルへと急増しています。もちろん単位は2013年の米ドルの価値で表していますので、物価変動分を織り込み済みです。つまり、借金大国です。

Next: 年齢か?学歴か?富める者と貧しき者を分かつもの



年齢グループごとの家庭の富の平均額

<第17頁>

年齢グループごとの家庭の富の平均額です。

65歳以上で20万ドル強、50歳から64歳の年齢グループでは15万ドル、35歳から49歳の年齢グループで5万ドル強です。

重要なのは、リーマンショック前の2007年から現在までの、各グループの資産の変化です。

全グループが資産を減らしていますが、65歳以上の年齢グループの資産減少率が比較的少ないのです。これは年寄りほど、安全資産に比重を移していること。そして、よく学習しており、一部かも知れませんが、2008年の株の下落を認識していたからでしょう。なお、2010年から2013年にかけても資産を減らしています。資産を食い潰しながらの退職生活なのかも知れません。

64歳以下のグループは、若いだけに博打的な値上がり期待での投資が多かったのではないでしょうか? 今後のことを考える場合にも重要でしょう。

学歴グループごとの富の平均額

<第18頁>

学歴グループの富の平均額です。

上から大学院卒、大学卒、高卒、短大卒、それ以下の分類です。学歴の差が出ているのは当然でしょうが、こちらも同様に、重要なのはリーマンショック前の2007年から現在までの変化です。

全グループが資産を減らしていますが、大学院卒グループの資産減少率がほとんどないのです。これもよく学習して、一部でしょうが、2008年の株の下落を認識していたからでしょう。

他方、大学卒グループは、博打的な値上がり期待での投資が多かったのではないでしょうか? 2010年から2013年にかけては資産が増えています。しかし、今後はどうなるか心配なはずです。このデータも、今後のことを考える場合には重要だと思います。

さて、米国の富の偏在を確認しましたが、日本の「格差社会」は現在も拡大しているのでしょうか。
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※本記事は、『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』2017年6月27日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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いつも感謝している高年の独り言(有料版)』(2017年6月27日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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