東京五輪について、立候補時点では約7300億円とされていた総費用が、実は3兆円以上かかるという指摘が入りました。小池都知事は今、まさに躍起になって「コスト削減」に走っています。TV・新聞も、それを後押しするかのように「コンパクト五輪に!」「節約しよう!」という風潮で報道をしています。正直、私はこの“節約志向”には大反対です。(『落合王子のマネーアカデミー』落合陽平)
しょぼい五輪でいいのか? このままでは日本は「不景気」に沈む
コスト削減に走る小池都知事と、それを礼賛するメディアの問題点
立候補時点では、約7300億円とされていた総費用が、実は3兆円以上かかるという指摘が入ったのをきっかけに、ガバナンスの甘さが露呈された形になっています。
暑さ対策やテロ対策の強化分で上乗せがされたとはいえ、「さすがに見積り甘くない?」という気持ちはよくわかりますし、確かにガバナンスに問題があったのかもしれません。
小池都知事は今、まさに躍起になって「コスト削減」に走っています。
2020年東京五輪・パラリンピックの競技施設をめぐり、東京都が担当する3施設について、整備費が最大390億円縮減できる見通しとなった。小池百合子知事はコスト削減や国際オリンピック委員会(IOC)の意向も見据え、週内にも3施設の整備計画の検討結果を公表する。
都が整備する競技施設のうち、見直し対象は水泳会場「オリンピックアクアティクスセンター」(江東区)、バレーボール会場「有明アリーナ」(同)、ボート・カヌー(スプリント)会場「海の森水上競技場」(東京湾臨海部)。
都は工事時のセキュリティー費の抑制や、設備の簡素化、施設の一部仮設化などでコストダウンを検討した結果、当初の整備費よりアクアティクスセンターで最大170億円、有明アリーナで約30億円、海の森水上競技場で約190億円が抑えられ、最大で計390億円削減を見込む。
TV・新聞も、それを後押しするかのように「コンパクト五輪に!」「節約しよう!」という風潮で報道をしています。
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節約志向に大反対。税金は“使う”ために徴収している
正直、私はこの“節約志向”には大反対です。なぜならこの節約志向は、まさに“デフレ”の根源であり、日本を不景気に陥れた人たちの考え方そのものだからです。
例えば小池都知事の手腕により、1000億円削減できたとしましょう。この削減された1000億円は何を意味するのでしょうか?
経済は、お金が巡り巡ることで機能し、発展していきます。東京都が支払う(仮に)3兆円というお金は、使ったら消えるわけではなく、必ず「誰か(建設会社や警備会社等の従業員etc…)の所得」になるわけです。その「誰かの所得」は、また何か使われる(消費される)ことによって、別の誰かの所得になります。こうやってお金は巡り巡って、人々を潤すのです。
仮に1000億円削減されるとどうなるでしょう。その分、世の中に出回るお金は減ることになります。経済にとっては、決して好ましいとは言えません。この節約志向は「緊縮路線」とも言われますが、まさに日本の20年にも渡るデフレの原因がこれなのです。
一見すると、節約はとてもいいことのように見えますが、個人と国家(自治体含む)を同列に扱ってはいけません。これは「合成の誤謬(ごびゅう)」という経済事象で、ミクロでは正しいことが、マクロの世界では、必ずしも同じ結果になるとは限らないということです。
個人が、家計のため、将来のために節約し、貯金することは、その人の人生にとっては正しい判断かもしれません。ところが、個人の集合体である国(あるいは地方)ではどうでしょう。日本人全員が、所得の20%を節約をしたら、その分世の中を巡るお金は減ることになります。ましてや、税金を徴収している国(地方)までが節約なんかしたら最悪です。
税金は“使う”ために徴収しているわけですから、節約して良いことは一つもありません。この状況が、まさに今の東京五輪に通じるな、と思うわけです。
というわけで、個人的には3兆円かかろうが4兆円かかろうが、別にいいと思っています。むしろ、こんなにお金を使える機会なんてそんなにないのだから、使えばいいじゃん、というのが私の考え方です。世界中の人が日本に集まるというのに、仮設施設ばかりの“しょぼーい”五輪をやるんでしょうか?世界第一位のGDPを誇る東京が、本当にそれでいいんですか?
『落合王子のマネーアカデミー』(2016年10月31日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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これまで1000世帯以上のライフプランニングを手掛けてきた若手ファイナンシャルプランナー「落合 陽平」がお届けする”お金”と”経済”のはなし。フラットな立場で、ライフプランに役立つ情報から、世界の政治経済まで、「誰にでも分かりやすく」をモットーに、独自の視点で「お金」の本質を解いていきます。学生から今一度勉強したい大人まで、これを読めばニュースの本質が分かる!