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北朝鮮の核はアメリカ公認? トランプが軍事行動に出ない真の理由=斎藤満

北朝鮮がICBMを発射したことで国際的な緊張が高まっており、米国は北朝鮮に対して軍事行動に出ると警告しています。しかし現実に実行される可能性はかなり低いでしょう。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2017年7月10日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

北朝鮮の核技術をウラで支援しているのはアメリカ自身なのか?

それでも米国は軍事行動に向かわない

北朝鮮がついにICBM(大陸間弾道弾)を発射し、米国が設定した「レッドライン」を超えたことになったため、米朝間を中心に国際的な緊張が高まっています。

国連は早速、公開形式で緊急安全保障理事会を開催。米国の国連大使は、数日中にも新たな制裁案を提示し、中露両国がこれを支持しなければ、軍事行動を含めて独自の対応に出ると牽制しました。

この米国の動きに対し、ロシアは米国の軍事行動にも新たな経済制裁にも反対の意思表示をし、中国も安倍総理の「圧力強化」の要請をかわして、あくまで対話路線が重要と発言するなど、ロシア・中国ともに米国の動きを支持しない姿勢を明らかにしました。

では、米国はヘイリー米国連大使が警告する軍事行動に向かうのでしょうか

今回も、その可能性は極めて低いと見ます。北朝鮮はトランプ政権に対して、「退屈しないようこれから何度でも(ミサイル発射の)プレゼントを贈り続ける」と挑発していますが、米朝関係は以前から指摘しているように、単純な対立構図では読めません。もし米朝間で軍事衝突が迫っているなら、在韓米軍の家族が半島から離れるはずですが、こうした動きは見られません。

北朝鮮の核ミサイル開発は「米国公認」の可能性も

北朝鮮は孤立しているように見えて、160カ国以上と国交があり、欧米についてもロスチャイルド系を含めたユダヤ資本が入り、米国からもロックフェラー系企業ネオコン系企業が進出しています。そして彼らが北朝鮮の核ミサイル開発企業と関わりを持ち、資金面、技術面で何らかの関与をしている可能性があります。

したがって、北朝鮮の核ミサイル開発は、米国の知らないところで勝手に進められているというより、米国やユダヤ資本が承知のうえで進んでいる可能性があります。中には、ネオコン系やユダヤ資本が積極的に北朝鮮を煽っているとか、資金面、技術面で支援さえしているとの見方もあるくらいです。

Next: アメリカの警告は北朝鮮ではなく日・中・韓に向けられている



米国は誰に何を警告しているのか?

そうなると、ヘイリー米国連大使の警告、牽制は誰に向けられたものでしょうか。一般的な受け止めは、米国が北朝鮮に対して、これ以上核ミサイル開発を進めれば、米国が軍事行動も辞さない、との警告と受け止められていますが、北朝鮮はこれを全く意に介していません

これはトランプ政権にはそれだけの行動力がないと「足元を見られているため」との見方もありますが、米国が北朝鮮の核ミサイル開発に協力しているので、米国自身が軍事行動に出ることを咎め、北朝鮮は「米国が軍事行動に出ることはない」と承知しているからではないかと見られています。つまり、米国の牽制・警告は、北朝鮮向けではなく、中国、韓国、日本に向けられたものと見られています。

ロシアが米国の北朝鮮対応に反対しているのは、ロシアと北朝鮮の関係からくるものというより、米露があまり親しい関係と見られないように、あえて米露対立を演出しているように見えます。

トランプの「敵」は中国

しかし、中国の反応は、ロシアと事情が異なります。米国は明らかに中国に圧力をかけています。

北朝鮮の管理を中国に委ねた「密約」「裏取引」自体、米中間では不平等なもので、中国は初めから不利な立場にありました。習近平国家主席はこの春に急遽フロリダに飛びましたが、その裏ではトランプ政権が中国国有銀行をドル決済システムから外す動きがあり、それをされたら中国の4大銀行はドルがとれなくなり、破たんするリスクがありました。

それを何としても回避するために、習主席は何を差し置いても訪米せざるを得なかったわけで、初めからトランプ大統領の土俵で戦う羽目にありました。しかも、夕食中にシリアへの空爆を知らされ、北への軍事介入を避けるために、中国は「密約」を飲まざるを得なかったはずです。

「密約」といっても、明らかに不平等で、中国は「裏で米国が操る」北朝鮮の核ミサイル開発を抑止させられ、その見返りに、秋の中国共産党大会が無事に終わるまで、米国は人民元や株価を混乱させない、という条件を得ました。その関連で、それまでは米中間の貿易不均衡にも目をつぶり、高率関税も封印するものでした。

そして案の定、中国は北朝鮮を抑止できず、密約後も北朝鮮はミサイルの発射を繰り返し、しまいには米国が「レッドライン」としたICBMの発射までしでかしました。トランプ大統領は中国の評価を、当初の「よく頑張っている」から「頑張っているが結果が出ていない」へと失望方向に変えてきています。これも予定通りだと思います。

Next: アメリカ、中国、韓国、日本。最後に笑うのはどの国か?



米国の中国叩きは始まっている

その中で米国の中国に対する姿勢も次第に強硬論に戻りつつあります。4大国有銀行ではありませんが、まず丹東銀行に経済制裁として、米国の決済システムから外しました。そして台湾に14億ドル余りの武器輸出を認めました。共産党大会を待たずに中国に経済政治両面から圧力をかけ始めました。習主席も不安になっているように見えます。

その結果、ドイツのメルケル首相と接近し、米中関係がギクシャクした際の受け皿として欧州との関係強化に動き、日本にもこれまでより接近する姿勢を見せています。北朝鮮の封じ込めは困難と認識しつつも、米国の軍事行動は困り、軍事行動はないとしても、裏取引の不履行を咎められて経済的な圧力が強まり、市場開放で譲歩せざるを得なくなるためです。

トランプ氏が習主席に与えた100日の猶予が切れ、共産党大会が終わって習近平体制維持が確認されれば、米中冷戦に向けて、米国が態度を硬化させてくる可能性があります。中国は初めからトランプ大統領に達成困難な宿題を与えられ、それができないということで、米国はあからさまな中国叩きに出る可能性があります。

日本はチャンスを活かせるのか?

日本としては、トランプ大統領の威を借りて、中国、韓国との交渉を優位に展開するチャンスでもありますが、そのトランプ大統領を罷免できるよう、民主党が動き始めるなど、米国内でトランプ政権に対する反発が強まり、日本でも安倍政権への批判が急速に高まり、政権の安定が揺らいでいます。

当面は中国が苦しい立場に追い込まれますが、トランプ政権、安倍政権が先に倒れると、にわかに中国が優位に立ち、習主席が世界をリードすることになるかもしれません。
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※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2017年7月10日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。最新の7月12日号『黒田日銀はゴールを見直す時期に』も無料購読ですぐに読めます。

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マンさんの経済あらかると』(2017年7月10日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。

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