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優位に立つバブル反対派。やはり「夏の大調整」は避けられないのか?=藤井まり子

イエレンFRB議長をはじめ、先進各国の中銀総裁(黒田日銀総裁を除く)が一斉に「タカ派」へと変質しています。やはりこの夏の調整は避けられないのではないでしょうか?(『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』藤井まり子)

※本記事は有料メルマガ『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』2017年7月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

「バブル容認」から「バブル潰し」へ。通貨マフィアの変節を読む

やはり「7」の付く年の暴落が起きる?

2017年の年頭に、「7」のつく年は「危機」「暴落」が起きやすい年だというジンクスが存在するとお伝えしました。

具体的には、1987年10月にはブラック・マンデーが起き、1997年7月にはタイの通貨バーツが暴落してアジア通貨危機が起きました。2007年8月9日にはパリバショックが起きて、サブプライム危機の前哨戦が始っています。

これら「7」の付く年のアメリカ株式市場は、過去においては、春から夏にかけて上昇年間のピークは「おおむね夏場」につけていました。そして、秋には暴落するパターンを繰り返しています。

投資家の半数は「大型バブルが起きる」と油断している

私は年初より「2017年は『比較的早い時期のマーケットの大幅調整』がトランプノミックスのベストシナリオ」という予測をしていました。が、「大ハズレ」でした。

対立軸となっていた予測シナリオは、「2017年は、秋に暴落するから秋まではユケユケでマーケットは上昇する」という「単純なシナリオ」でした。

そして、どちらのシナリオも、「比較的早い時期に調整が起きるのか?」「秋に暴落が起きるのか?」の違いはあっても、今現在の「アメリカの物価上昇率と賃金上昇率の低さ」に着眼していました。

イエレンFRBは、今年後半にかけては、利上げできないだろう。秋の利上げは見送られるだろうから、その後は大型バブルが起きるだろう。ましてや、FRBは『バランスシートの縮小』など実行できないのではないか?」との予測が支配的でした。

今現在でも、金利の先物市場は、FRBの利上げについては、「2017年の後半は1回だけの利上げ」は、50%しか織り込んでいません。

マーケット関係者の半分が、いまだに物価上昇率や賃金上昇率が低いことを重要視し過ぎていて、「2017年後半は、イエレンFRBは利上げを見送るだろう(だから、大型バブルが起きるだろう)」と、高を括っているようなのです。

そして、イエレンFRBの「バランスシートの縮小」についても、今現在のマーケットは、やはり物価上昇率や賃金上昇率が低いことを重要視し過ぎていて、ほとんど織り込んでいないのではないでしょうか?

その証拠に、アメリカの長期金利が上昇しているといっても、いまだに2.4%程度の低さです。

今現在の6月以降のグローバル・マーケットは、アメリカ・ナスダック市場がいくばくか調整、ヨーロッパ株式市場がいくばくか調整しただけ。アメリカ株式市場の本体であるダウ工業平均S&P500などは、いまだに「スーパーゴルディロックス相場(適温相場)」の中にいます。

(「ゴルディロックス相場」とは、利上げをするには賃金上昇率やインフレ率などの実体経済がやや弱いけれども、経済失速しているわけではない。長期金利もあまり上昇しないので、株価には好都合の「良いところ取り」の相場のことです)

Next: 先進各国の中銀が一斉にタカ派転換、やはり夏の大調整は避けられない



この夏の大調整は避けられない

ところが、ところが! 6月27日の「先進各国の中銀たちが一斉に引き締めへの大合唱」で、この「ゴルディロックス相場」もとても「あやしく」なりつつあります。

イエレンFRB議長は、今年後半も粛々と利上げを進めるだろうし(たぶん、12月に政策金利を1回は引き上げるでしょう)、9月19日~20日のFOMCでは「バランスシートの縮小」を10月から実施すると、高らかに宣言することでしょう。

その目的は、それが可能かどうかはさておき、今現在進行形の株式ブームを息の長いものに維持するためです。イエレンFRB議長は、すっかり「タカ派へ変質」しているのです。いや、「タカ派への変質」は、イエレン議長に限った話ではありません

ECB総裁もイギリスのBOE総裁もカナダ総裁も、先進各国の中銀総裁たちは、(黒田日銀総裁を除けば)、一斉に「タカ派」へ変質しています。

その「黒幕」は、後述するように、BIS(国際決済銀行)です。この「変質」に、ほとんどのマーケット関係者はまだあまり気がついていないのではないでしょうか? そして、この夏の調整は避けられないのではないでしょうか?

イエレンFRB議長は、トランプがアメリカ大統領に選ばれる前の「金融緩和大好き」「高圧経済大好き」のFRB議長から、「大型バブルの形成は未然に防ぐべし」のタカ派議長に大変身しているのです。

7月12日~13日のイエレンFRB議長の議会証言では、再び「タカ派的な発言」が飛び出すことでしょう。やはり、この夏の調整は避けられないのではないでしょうか?

バブルを容認するIMFの発言権が失われている

トランプ大統領が「ロシアスキャンダル」で大忙し、アメリカ議会の共和党内部は上院も下院も「学級崩壊」状態など、予算審議が紛糾し続けています。「予算審議の入り口」であるはずの「オバマケア代替法案」でさえ、いまだに立法化できない状態。

アメリカの政治が迷走していても、長く続いた「イエレン緩和」のおかげでアメリア経済は元気です。2017年も2%前後の成長は達成できる見通し。

ユーロ圏の経済も、量的金融緩和2年目で見違えるように景気が良くなりました!イギリス経済も然り。カナダ経済も然りです。

しかも、今の中国経済もなんとか「大失速することなし」に踏ん張ってくれているようなのです(中国の場合は、今年後半はちょっとあぶないけれども…)。

どうやら世界経済は「デフレ危機」から脱することだけは見事に成功したようなのです。

2016年の「イギリスのEU離脱」や「トランプ大統領の選出」といった大珍事の続発とともに、ラガルドIMFが通貨マフィア(=各国の中銀総裁や高名な経済学者たちの集団)たちの間で、発言権を失っていることを明記しましょう。IMFに代わって、通貨マフィアの間で発言権を増しているのは、BIS(国際決済銀行)です。

Next: IMFに代わり「バブル反対派」のBIS(国際決済銀行)が勢いを増す



なぜ先進各国は一斉に「引き締め」を叫び出したのか?

繰り返しになりますが、6月27日に先進各国の中銀たちが一斉に「引き締めへの
大合唱」を開始
しました。まるで示し合わせたような「引き締めへの大合唱」の「始まり」です。BISの年次総会で示し合わせたのです。

イエレンFRB議長・フィッシャーFRB副議長・サンフランシスコ連銀総裁らは、一斉に「アメリカ株が高い」ことに警鐘を鳴らしました。同じ日に、ドラギECB総裁も高らかに「デフレとの戦いの勝利」を宣言、量的金融緩和の段階的縮小(=Tapering)を示唆しました。さらに、カーニー・イングランド銀行総裁もカナダ中銀総裁も、「緩和からの展開」「引き締めへの転換」メッセージを発しました。

先進各国の中銀総裁たち(ただし、黒田日銀総裁は除く)が一斉に「引き締めへの転換」の大合唱を開始したのです。

黒幕は、あの「量的金融緩和策が大嫌い」「リフレ政策が大嫌い」な「BIS」です。

実は、6月下旬に、BISの年次総会が開かれていました。このBISの年次総会で、各国中銀たちが勢ぞろいしていたのです。この6月下旬のBIS年次総会で、先進各国の中銀たちは問題意識を共有します。「示し合わせた」のです。

25日発表のBIS年次報告書では、「インフレなき景気回復を好機として、量的緩和策と歴史的低金利の“大いなる巻き戻し”を加速するべきである」との見解が示されています。

すなわち、この6月のBIS年次総会では、「主要国経済は緩やかな景気回復のもと、『景気回復してみたけれども、思ったよりは物価上昇率が低かった』という共通の課題に直面している。

しかしながら、このインフレ率が当初の想定よりも低いと言うことは、それほど深刻な問題ではない。主要国経済は『インフレの心配のない、穏やかな景気回復軌道』にあると言える。

この『インフレなき穏やかな回帰回復』局面を好機と判断して、それをうまく利用して、主要国は『金融政策の正常化』を進めるべき」とのコンセンサスが、通貨マフィアたち(=先進各国の中銀総裁たち)の間で形成されたのです。

これは、とてもとても重要なことです。

「バブル反対派」のBISが勢いを増す

かつて、リーマンショック後の「デフレ危機」時には、IMFとBISとは、激しく意見対立していました。

IMFは、「量的金融緩和策とバブル形成にはとても鷹揚(おうよう)」です。「危機時は量的金融緩和でデフレ対応が可能」とする立場です。すなわち、ラガルドIMFは「バブル容認派」「バブルは生成してもOK」の立場だったのです。

一方、BISは、「量的金融緩和策なんてものはもってのほか」とする立場でした。「バブル否認派」「バブルは未然に防ぐことが大切」の立場です。

ここ10年間は、「IMFのバブル容認派」と「BISのバブル反対派」との間で、激しく意見対立していたのです。

世界が危機に直面する間は、中銀総裁たちが織り成す通貨マフィアたちの世界では、「IMFのバブル容認派」の意見が「BISのバブル否認派」の意見より断然優位に立っていました。

ところが、世界経済がなんとか危機を脱したように見受けられる2017年夏、中銀総裁たちの通貨マフィアの世界では、「BISのバブル否認派」が「IMFのバブル容認派」よりも断然優位に立つようになったのです。

イエレンFRBは今後は粛々と粛々と「金利正常化」の道を歩むことでしょう。ECBも、BOEも、そのほかの中銀たちも然りです。
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2016年の一連の大珍事「イギリスのEU離脱」と「トランプ大統領の誕生」

「2%インフレ目標」の達成は急がない

中銀たちの方針の大転換をマーケットは織り込んでいるか?


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藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』(2017年7月11日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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