FRBに習えとばかりに、各国の中央銀行が「利上げ」を示唆するような動きを強めています。本当に先進国は、金融緩和を解くほどに景気回復しているのでしょうか?(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2017年7月3日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
金融緩和終焉は世界的「捏造相場」大クラッシュの狼煙となるか?
各国中銀が「利上げ」示唆
FRBの利上げに習えとばかりに、ここへ来て(日銀を除く)各国の中央銀行が利上げを示唆するような動きを強めています。
特にECBの「追加緩和の終焉」に絡むような発言に対する欧州市場の反応は強烈で、ドラギ総裁がちょっとそれっぽい発言をしただけで、たちまち債券は大きく売られ、ユーロは対ドルでいきなり1.14台後半にまで跳ね上がる勢いとなってきています。
しかし世界的に見て、先進国は景気が回復し、これまでの過剰とも思える金融緩和措置からさっさと退場することができるのでしょうか?
各国中銀のマネージャークラスの連中に一体どういった深層心理が働いているのかよくわかりませんが、緩和策を一気に反転させるほど景気が回復しているようにはまったく見えません。
今回、米国起因で世界規模の相場暴落があるとすれば、やはりどこかの中銀が「利上げ」のボタンを連鎖で押してしまうのではないか。そう思わざるを得ない状況がだんだんと高まっています。
中銀関係者は、自らが作ったゼロ金利バブル相場を忘れている
米国の株式市場は、FRBの追加利上げもバランスシート縮小もまったく気にするそぶりを見せず、じり高傾向を続けています。しかし、実態経済の方はやはり利上げの影響をじわりじわりと受けており、自動車と奨学金のサブプライムローンはいよいよ様子がおかしくなりはじめています。

NYダウ 月足(SBI証券提供)

NASDAQ 月足(SBI証券提供)
たしかにリーマンショックから考えると、だいぶ景気が回復したことは間違いありません。しかし、ほとんどのアメリカ人は株をもっておらず、キャピタルゲインにもありついていないどころか、貯蓄はまったく無いままに推移しており、借金経済の実態はなんら変わっていないのが現実です。
とりあえず、都合4回目までは奇跡的に相場の暴落が起きずに済んでいますが、ここからは利上げなどという調子のいい話が何度も簡単に進むとは思えない状況です。さらに、ECBの緩和措置が終焉へ向かうことが明らかになると、もはや株式相場がそこらじゅうの国で癇癪を起こすことは時間の問題と言えます。
のど元を過ぎて、すっかり自分たちが作り出してきた捏造的な人工相場のことを、多くの中央銀行関係者がお忘れになりはじめているようです。いまの状態で積み木崩しゲームを進めていくと、ある瞬間に一気に残りが崩れ去りそうな、非常に危うい状況が近づいてきているという印象を持ちます。
バブル期にえらい費用をかけて美容整形をした女性が、鼻にシリコンをたっぷり入れたことをすっかり忘れ、久々にディスコに出かけて踊りまくったところ、鼻が白く光ってしまった…という笑うに笑えない話を聞いたことがあります。なんとも、それに近い雰囲気を感じる次第です。
7月がその瓦解のスタート月になるかどうか。それは依然としてわかりませんが、いつ崩れてもいいように、しっかりと準備をするべき時期にさしかかってきているのではないでしょうか。
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