イエレンFRB議長の任期は、来年(2018年)2月3日までです。はたして次期FRB議長は誰になるのか。これから秋にかけて、マーケットはざわつき始めます。(『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』児島康孝)
イエレン再任か?新議長誕生か?市場を左右するFRB人事のゆくえ
FRB副議長にクオールズ氏
ウォール・ストリート・ジャーナルなど複数のメディアは、トランプ大統領がFRB副議長(銀行監督担当)に、ジョージ・W・ブッシュ政権で財務次官を務めたランダル・クオールズ氏を指名すると報じました。
この副議長のポストは、米国の金融機関、ゴールドマン・サックスをはじめとする巨大な投資銀行や銀行などを監督する役職です。クオールズ氏は、トランプ政権の金融政策の方針に合わせて、規制緩和を進めるのではないかとみられています。
クオールズ氏がFRBに入ることで、現在のイエレン議長が率いる体制にどのような力学が働くのか。注目されています。
イエレンFRB議長「再任」の可能性は?
そしてFRBの議長職は、来年(2018年)2月までの任期です。結構、その時期が近くなってきました。
イエレン議長が続投するのか、あるいは新しい議長が誕生するのか。今年(2017年)の秋頃から、様々な観測・憶測が流れそうです。
イエレン議長は、先のアメリカ大統領選挙の前に利上げを遅らせたことで、政権党であった民主党ヒラリー・クリントン氏を間接的に支援していたという観測があります。そのことで、トランプ氏は「中立ではない」として批判していました。
このため、イエレン議長の再任があるのか、ないのかがまず第1のポイントです。
大統領選挙の頃を思い出せば、「イエレン議長の再任はまずないだろう」ということになるのですが、その後のトランプ大統領はイエレン氏への批判を控えています。
ですから、イエレン氏の再任も可能性はあります。
現在の構成メンバーの中ではNY連銀のダドリー氏が安定感がありますが、構成メンバー以外から新任の議長が誕生するのも普通ですから、これから秋・冬にかけてマーケットがFRB議長人事を気にしはじめます。
クオールズ氏が副議長に内定したことで、そういえばFRB議長も来年2月に任期が来ると、市場関係者は思い出すわけです。
新議長誕生で短期的なショック安の恐れも
注意が必要なのは、新たなFRB議長が就任した後には、ほぼ決まったかのようにマーケットの波乱が起きて、新しい議長を試すかのような動きが起きるのです。
私はこれまでにもお伝えしているように、当面、景気は良いという見方です。しかし、来年2月に新しいFRB議長が就任する場合は、来年の早い時期にそれなりの短期的なショックは起きるかもしれません。ちょうどトランプ大統領が就任して1年という時期で、この頃に短期的なマーケットの調整が起きるのは十分に考えられます。
これは今後、力強い景気の上昇が続いた後の話ですから、少し気が早い話ではあります。ですが、景気の上昇が続いた後、来年の初めにはちょっと注意が必要でしょう(※2017年の円安・株高の見通しには変更はありません)。
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ECBクーレ専務理事「ユーロ下落は金融政策の目的ではない」
ロイター通信が、ECB欧州中央銀行のクーレ専務理事の見解を報じています。ユーロの下落は、ECBの金融政策の目的ではないという内容です。
また、同じくロイター通信ですが、ドイツのメルケル首相がECBの金融政策について、ドイツが望む状態に戻っていないと言及。
これらの発言は、ECB欧州中央銀行に対して、景気の回復に合わせて金融緩和を転換するよう求めるものですね。つまり、これまでドイツやフランスは自国レベル以上の金融緩和の恩恵を受けてきたわけですが、これが今後、予想外の展開を引き起こすかもしれないのです。
ドイツが恐れる「予想外の展開」とは?
これまでのユーロの問題は、ギリシャなど経済が苦しい国が自国が苦しいからと言って利下げしたり、通貨安にしたりといった、自国の金融調整が行えなくなる問題でした。
つまり、ギリシャも、ドイツやフランスと「同じ土俵」ということです。経済が弱くてもドイツと同じというのですから、厳しいわけです。以前なら不景気の時は、通貨安などで自然に調整されていたわけです。
そして、今後に起きる可能性がある不都合は、ドイツやフランス側の問題です。つまり、景気が回復して本来なら利上げを行う局面になっても、ギリシャやポルトガルなどと同じ金融政策であるために、通常通りの利上げを行えない(利上げが遅れる)可能性があるのです。
どのような不都合が起きるかはまだ未知数ですが、例えばドイツやフランスなどユーロ圏の経済強国でインフレが異常に進んで、物価高になるとか、バブルを抑えられないなどの問題が生じる可能性があります。
これは、考えてみればわかるのですが、ギリシャと同じ金融政策をドイツで行い続ければ、物価のコントロールを失うこともあり得るわけです。ギリシャがこれまで苦しかったのと逆の現象ですね。
たとえドイツで景気が過熱してインフレを抑制しようと思っても、欧州の他の国が同じような状況になければ、利上げや金融引き締めを行うことができないのです。
最近、メルケル首相やドイツの金融関係者が、しきりにECB欧州中央銀行の金融政策について発言しています。ドイツマルクのままであったらどうだとか、かなり刺激的な発言も相次いでいます。
おそらくドイツは、ECB欧州中央銀行がギリシャやポルトガルなどに配慮して、金融引き締めが遅れるリスクを感じ取っているのでしょう。
『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』(2017年7月11日, 12日号)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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