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北朝鮮に脅迫される日本の「自己責任」我が国はなぜ弱小国になったのか?=児島康孝

北朝鮮や中国など周辺国の脅威が増しているのは、日本の経済力衰退が原因です。特に中国が経済力で日本を抜き去り、地域のバランスは大きく変化しています。(『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』児島康孝)

経済の弱さは軍事の弱さ。日本はこのまま飲み込まれるのか?

構造改革・リストラ路線が地政学的リスクを誘発

北朝鮮や中国など周辺国の脅威が増しているのは、日本の経済力が原因です。

かつてアメリカに次ぐ世界2位のGDPを誇り、アメリカを急追していた日本は、バブル崩壊後は低迷のまま。現在(2016年データ)の日本のGDPは、アメリカの3分の1中国の半分以下の規模しかありません。特に中国が経済力で日本を抜き去り、地域のバランスは大きく変化しています。

軍事力の強弱は、結局のところ、GDPの大きさに左右されます。実際の軍備の大小とは別に、潜在的な国力・軍事力の増強余力が大きくものを言うわけです。

ですから、対北朝鮮や対中国の日本の軍備は、ニュースにはなっても、結局のところ日本のGDPを拡大するしか対応する方法はありません

つまり、バブル崩壊後に誤った構造改革・リストラ路線を進めて、日本の国力を低下させてしまったことが大きな背景です。

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周辺国に対する「抑え」が効かない

北朝鮮や中国は、軍事モードであったり漁船モードであったり、様々な圧力をかけています。

日本の経済力が強い間は、日本の国際的な発言力も強く、手出ししにくい状況にありました。しかし、日本の経済力が弱くなると、世界各国も日本の味方をしてもまったくメリットがありません

今年7月にIMF(国際通貨基金)のラガルド専務理事が、「今後10年で北京(中国)がIMFの本部となる可能性がある」とリップサービスの発言をしています。

こうした発言が飛び出すように、もはや経済力では、世界の目は完全に中国に向いていて、デフレで停滞が続く日本は眼中にはないのです。平たく言えば、国民が物を買ってくれる可能性があり、官民の資金を出してくれる国=中国ということです。

これは、私がシンガポールなどを訪れても、そう感じます。30年ほど前は、日本人に対してはある種の尊敬の眼差しがありました。日本人というだけで、アジアの先進国として、特別視されていたのです。

しかし、最近は、逆効果も感じます。つまり、日本人ということで、特に経済に詳しい人からは、「日本は何もできない」とか「いつまでデフレをやっているのか?」と思われているのです。

まあ、それは仕方ない部分もあります。東南アジア各国では、ビルが次々立ち、景気は良く、活気があります。もちろん、一時的には景気が良くない時期もありましたが、それは1年間ぐらいの話で、すぐに立ち直り、回復しています。

欧米でも、そこそこの経済成長は続いていますから、取り残されているのは、世界で日本だけということになっています。

先日、ECB欧州中央銀行のドラギ総裁が講演で、「非伝統的な金融政策は、欧州と米国で成功した」と発言しています。これは露骨に、日本はうまくいっていないという意味です。

日本は、構造改革・リストラ路線に「夢中」となり、このデフレ作用によって、日本自身を窮地に陥れているわけです。

そして、それは経済にとどまらず、軍事的な部分へも、波及しているのです。

Next: 海上保安庁の限界は近い。低所得者への給付で国力回復を!



海上保安庁の限界は近い

周辺国の圧力は、大和堆(やまとたい、日本海)であったり、尖閣諸島であったり、様々な場所で起きます。そして、それは連日です。

軍事的な直接衝突でなければ海上保安庁が対応にあたっていますが、考えてみて下さい。日本の海上保安庁の港からどれだけ遠いか。そして、連日であることを。

大和堆では、北朝鮮のイカ釣り漁船がイカを干しているところに放水するという、絶妙のアイデアで対処しましたね。これは、海保が柔軟に考えて対応できる組織であることを示しています。

そして、彼らは決して「しんどい」とか「きつい」とか言いません。もともと海難救助などを行うフラットな組織で、いわゆる海のプロであるからです。

しかし、日本から遠く離れた海上での外国船への対応&連日の任務で、かなり疲弊しているのは間違いありません。この状態を続けてもきりがないので、いち早く、日本の経済力を回復すべきです。

低所得者への給付で国力回復を

長年のデフレ局面で、たとえば年収1000万円の人が300万円になったり、年収500万円だった人が200万円になったりということが普通に起きています。

欧米では、低所得者に対する膨大な支出があり、景気の底割れを防いでいます。しかし、日本には使い勝手の良いセーフティーネットがありません

日本の公的な制度は、終身雇用制がメインだった時代のままです。日本で、月給20万円の場合は年収240万円、月給15万円の人は年収180万円です。生活は厳しく、さらに日本は食料品も高いのです。欧米では食料品が安く、高税率のフィンランドでも、ヨーグルト1個が50円とかリンゴ1個が50円前後でスーパーで売っていて、これで税込みの価格なのです。

日本の個人消費が低迷し、生活の苦境に陥る人が多いのもあたりまえなのです。

さらに日本では、世界的に水準が高かった「教育」にも暗雲が垂れ込めています。いま、国立大学の入学金は、28万2000円。授業料は別途年額53万5000円あまりです。ボーナスがない世帯が珍しくない現状で、バブルの頃よりも逆に高くなっているので、低所得世帯では、国立大学でも払えないわけです。

日本はいち早く構造改革・リストラ路線を転換すべき

このように、構造改革・リストラ路線によって、デフレ、国力衰退、消費低迷が起きていて、これがGDPの低迷を呼び、周辺国の脅威増大となっています。

デフレの間は単に紙幣を増刷して配布すればよいのですが、多くの経済評論家が言うのは、デフレを促進する話がほとんどです。

これは、トランプ政権が登場する前の欧米勢に騙されたわけで、日本はいち早く構造改革・リストラ路線を転換し、国力の充実、GDP成長をはかるべきです。

Next: 日本の構造改革・リストラ路線で得をするのは「欧米」と「中国」



得をしてきた「欧米」と「中国」

このような日本のデフレ・貧困化によって得をしているのは、欧米や中国です。実際、今から15年ほど前に欧米勢の本音を聞いていますが、「日本人は冷凍食品を食べていれば十分だ」とか、「日本人はみんな大学に行かなくてもよいのだ」と言っていました。また、「はしごをかけて、はずすのだ(バブルと、バブル崩壊を意味)」なども言っていました。

つまり、日本は狙われていたのであり、さすがにここまで格差拡大・貧困化・GDP低迷が明白になった今、トランプ政権が登場する前の欧米勢が言っていたことと、逆のことをする必要があるのです。

構造改革・リストラは景気が良い時に断行し、景気が悪い時は、少々効率が悪くても、仕事を増やして給付を行う。金融引き締めや金融緩和と同じ理屈です。

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ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』(2017年9月1日号)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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