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Frederic Legrand - COMEO / Shutterstock.com

デフレ日本と同じ轍を踏むマクロン仏大統領、「誤った政策」で支持急落=児島康孝

ルペン氏への対抗馬として人気があったフランスのマクロン大統領の支持率が急落。「労働市場改革」などの誤った政策をフランス国民に見透かされたためです。(『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』児島康孝)

マクロン人気はどこへ。デフレ下の「労働市場改革」で支持率低下

就任100日、マクロン大統領の支持率はすでに危機ライン

ルペン氏の主張は基本的に正しかったのですが、トランプ大統領のようなオープンさがなかったことから、マクロン氏が圧倒的な人気でフランス大統領になりました。

さすがに、大統領選挙の際のルペン氏の集会の動画を見ると、全体主義を連想させる怖さが感じられました。

こうして大統領選挙と議会選挙で勝ったマクロン氏でしたが、国際金融資本の「傀儡」であることがバレて、支持率は急落

フランス国民は「景気を良くして欲しい」とか「輝けるフランスを再び」という思いで投票したわけです。しかし、マクロン大統領は議会で多数を握ると、解雇やリストラにつながる「労働市場改革」などを始めました。

フランスの世論調査(IFOP)によると、「就任後の100日の仕事ぶりに満足する」と回答したのはわずかに36%。マクロン大統領の事実上の支持率が36%で、世論の支持率の面では、政権の「危機ライン」になっています。

「労働市場改革をすれば、失業率が下がる」という誤り

日本では既に経験済みなので、労働市場改革をしても、失業率が下がるとか、景気が良くなるということはないという実感があります。ですが、従来の欧米の経済学者などがよく言うのは、「労働市場を改革すれば、失業率は下がる」です。「賃金が下がれば、雇用は良くなる、景気は良くなる」とも言っています。

しかしこれは、特にデフレ傾向がある中では、まったく誤りです。これをマクロン大統領が言い始めたので、フランス国民は反発しているのです。

日本でも、バブル崩壊後の不況に対して労働市場を改革し、解雇やリストラを進めれば失業率は下がるという経済評論家がいました。

もっともらしく聞こえる説ですが、実際はそんなことにはなりませんでした。

つまり、解雇とリストラで景気は悪化し、個人消費は低迷デフレ・スパイラルに陥るわけです。

失業率が下がるのは、逆に賃金が上昇していて、景気が良い時ということになります。当てはまるのは、1990年頃までの日本です(いま日本の表面上の失業率が低いのは、カウントの仕方の問題です)。

では、「労働市場を改革すれば、失業率は下がる」は、なぜ間違っているのでしょうか

Next: なぜ日本もフランスも政策を間違ったのか?



なぜ「労働市場改革で失業率は下がる」は間違いなのか

一番、経済学者に欠落していたのは、「企業が人件費を同額投入し続ける」という前提を疑う姿勢です。つまり、賃金が下がって雇いやすくなれば、もっと雇用するというのが経済学者の前提となっているのです。

例えば、人件費を10億円使っている企業が、賃金の下落や非正規雇用への置き換えで、人件費を5億円にしたとしましょう。5億円の利益が増えました。

机上の空論どおりに、5億円分、企業が採用を増やせば雇用は改善するのです。しかし、実際はこの5億円は、内部留保や配当にまわり、それで終わりです。

人件費にまわっていれば、衣食住の生活費として消費され、景気を下支えする可能性がありました。しかし現実では、内部留保となって資金が滞留したり、海外の投資家に配当で支払われると、日本の消費にはまわりません

ですから、日本で円が不足してデフレ傾向が強いのも、それだけ市中で流通する円が減っていることを反映していますから、増刷して補う必要があるということにもなります。

株価の動きに例えれば「間違い」は明らか

また、雇用に関する話の間違いは、株価の動きに例えればはっきりします。つまり、経済学者や評論家が言っているのは、株価が下がれば「安いから株は買われる」と言っているのと同じことです。

株価が大きく下がれば、株は買われますか? 現実は逆ですね。株価が下がれば、もっと売られて、下がるわけです。暴落が起きたりもします。

現実では、むしろ株価が上昇している方が、株は買われるのです。

ですから、雇用に関しても、賃金が上昇して解雇が少ない方が、失業率が下がり、消費が拡大し、景気が良くなります

日本も夕張市をモデルにしたような構造改革を続けていると、ますます衰退し、生活コストの上昇経済は衰退住む人も出ていって減ってしまうという悪循環に陥ります。

それで、GDPが低迷して国力が衰退すると、日本は経済力の低下による国際的な地位低下で、周辺国の軍事的な脅威にさらされやすくもなるわけです。ですから、構造改革とリストラは、景気が良い時に行うべきものであるわけです。

Next: 今デフレかインフレかで、取るべき政策はまったく異なる



今デフレかインフレかで、取るべき政策はまったく異なる

紙幣の増刷構造改革の話は、その時点がデフレであるのかインフレであるのかで、まったく話が変わってきます。これまでの日本の議論の中で見落とされているのは、デフレ環境なのか、通常のインフレ環境なのかです。

インフレなら紙幣を減らして構造改革が必要なのですが、今はデフレ傾向で、前提が違っています

バーナンキ前議長は、こうした前提によって政策が異なることをよく知っていました。ですから、リーマンショック後には、当時は非常識とも思われた「ヘリコプターマネー」を語っていたわけです。

逆に日本の場合でも、インフレ率が実質ベースで2%を超えてくれば、デフレの時には正しかった経済政策が、今度は正しくないということになります。

まだまだ2%にはなっていませんが、実際にそうなった場合には、紙幣の流通量を減らしたり、構造改革を始める必要がでてきます。

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ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』(2017年9月8日号)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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