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北朝鮮はともあれ強いものは強い! ゴールド・原油は強気相場が目前に=江守哲

先週の金相場は大幅続落しましたが、上昇トレンドを保っています。また原油相場は多くの市場関係者がWTIだけを見て誤解しています。これはど素人の見方です。(江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて

本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2017年9月25日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

市場関係者の多くは、ゴールド・原油相場の本質を誤解している

金相場は何に反応しているのか?

先週の金相場は大幅続落となりました。北朝鮮情勢が緩和する中、安全資産としての金買いが後退する一方、米国の追加利上げ観測の高まり長期金利の上昇につながり、金利の付かない金に売りが出ました。

また、米国を中心に世界的に株価が堅調に推移していることも、投資家のリスク回避姿勢の大幅な後退につながりました。

しかし、今回のFOMC受けて、金利は上昇しても、ドルは上昇していません。したがって、金相場は金利上昇だけに反応しているといえます。

一方、トランプ米大統領が国連演説で「北朝鮮を完全に破壊するしかなくなる」と警告したことを受けて、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は21日付の声明で「史上最高の超強硬対応措置の断行を慎重に考慮する」と表明しました。

さらに北朝鮮の李容浩外相が、同国が太平洋上で過去最大級の水爆実験を行う可能性を示唆しました。これを受けて、北朝鮮情勢の悪化への警戒感が強まったことから、週末には買いが入り、下げ渋りました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は9月15日の838.64トンから22日には856.08トンに増加しました。

市場全体は下げているものの、ETFへの買いが増えていることから、年金や機関投資家は今回の下落局面を利用して資金を金に振り向けているものと考えられます。

COMEX金先物市場での大口投機筋のポジションは、9月19日時点で23万6089枚の買い越しとなり、前週から1万8671枚減少しました。

買いポジションが2万0846枚の大幅減少となった一方、売りポジションも2175枚減少しました。ネットの買い越しが減少したのは久しぶりで、今回の下げがいかに厳しいものであるかがうかがえます。

また、買いポジションの減少だけでなく、売りポジションも減少しており、上昇局面で売った向きが買い戻しを始めていることも確認できます。

高値で買いついた向きは損失覚悟の売りを出しているものの、売り方も買い戻しており、大きく下げないとみている可能性があります。

NY金先物 日足(SBI証券提供)

金相場はボトムをつけたのか?

さて、今後の金相場ですが、下げ止まるタイミングを模索すると考えています。

今回の金相場の下落の端緒は、北朝鮮情勢を背景とした地政学的リスクの緩和でした。

それまでは投資家がリスク回避姿勢を強めたことで、資産保全のために金を購入したことが、金相場の上昇につながっていました。また、金相場の上昇を受けて、トレンドが強まったと判断した投機筋の買いも相場水準を押し上げました。

しかし、北朝鮮情勢がやや緩和したことで買いが続かなくなると、手仕舞い売りが優勢となり、これが下落につながりました。また、下落基調に入ったことで、高値を買った投機筋が損切りの売りを出したことも、下落に拍車をかけた可能性があります。

したがって、投機筋の手仕舞い売りが止まるまでは下げ基調が続く可能性があります。ただし、売り方の買い戻しが入り始めると、下げ止まりが確認されると考えます。また、再びドル安が意識される中、底値を模索する動きが続くものと考えます。

節目の1300ドルは割り込んでいますが(※編注:本稿執筆9月25日時点)、重要なポイントはむしろ1275ドル前後であり、これを維持できていれば、上昇基調も維持されていると判断できます。

Next: 1320ドル超から金は再び強トレンド入り、株高・金高は続く



金相場は1320ドルを超えると再び強いトレンドに

一方、今回のFOMC後に発表されたFRB関係者による経済・金融見通しでは、物価動向の弱さを考慮し、インフレ率が目標の2%に到達する時期を6月時点の18年から19年に後退させています。

また、利上げ回数の見通しは18年は3回で据え置きましたが、19年は2回程度に下方修正しています。さらにFOMC声明では、物価動向について「短期的には2%の目標を幾分下回るとみられる」と予想し、インフレ率が上昇しない現実を受け入れた格好です。

「中期的に目標の2%前後に到達する」との見方は維持していますが、結局はインフレ率が上昇しない限り、利上げはできません。したがって、インフレが加速しなければ、利上げはありませんし、長期金利も上昇しません。この点には注意が必要です。

金相場は1275ドル前後で下げ止まり、1300ドルを回復して1320ドルを超えると、再び強基調に回帰すると考えます。

一方、北朝鮮情勢が長期的な金相場の上昇要因にはなり得ないことから、過度に重視しないことも必要であると考えます。

いまの金相場の動きは想定通りです。目先の下げで慌てる必要は全くないと考えています。

金は保有しておく必要がある資産であり、相場水準で決めるものではない、というのが持論です。これも、言い続けていることです。そして、今回のように安くなった時に押し目を買っておくのが賢明であるとのスタンスも変わりません。

「株高・金高」の状況は続く

個人的には、今回のFOMCの内容はタカ派的ではなく、むしろハト派的であと考えています。ですので、金市場の現在の反応は過剰と考えています。

いずれにしても、目先の話に関係なく、金は常に保有しておくべき資産です。この点は何があっても変わりません。金も長期的に保有しておきたい資産との考えに変わりありません。金相場は2020年までは確実に保有しておきたい銘柄であり資産であるとの見方です。

とにかく、FRBは株価を支えるためにもドル安を維持する必要があり、そのためには過度な利上げは避けなければなりません

インフレが低迷しているため、現時点でも12月の利上げは難しいでしょう。

したがって、米長期金利は上昇しづらく、ドルの上昇は見込みづらいので、今後も金にとってはきわめて良好な市場環境が続くことになるでしょう。結果として、「株高・金高」という状況が続くことになるのではないかと考えています。

資産を保全するという考えに基づき、金を常に保有しておきたいところです。

ちなみに、これも以前に解説したように、スイスのプライベートバンクは、顧客である富裕層に最低でも資産の5%相当の金を保有することを勧めています。これが、彼らが長年生き残っている所以です。

Next: 市場関係者の、原油相場に対する致命的な誤解とは?



原油相場に対する致命的な誤解

原油はもう少しで上値ブレイクのところまで来ました。しかし、そこからがなかなか上がりません。強気になれない向きが、下値で買ったロングを利益確定しているのでしょう。

しかし、WTI原油は51ドルを超えると、全く違う相場になると考えています。この51ドルはきわめて重要です。超えると55ドルまで上昇するでしょう。これはあくまでテクニカル分析における判断です。

WTI原油先物 日足(SBI証券提供)

一方、世界の石油市場のベンチマークであるブレント原油は、すでに56ドル台にまで上昇しています。それだけ、強いのです。

日本の市場関係者の「原油価格は弱い」といっているのは、あくまでWTI原油です。しかし、グローバルな原油はブレント原油です。この点を間違えないようにしないといけません。

もし「原油は弱い」と解説している市場関係者が居れば、それは原油市場に関してはど素人の方です。原油はしっかり戻っています

WTI原油を基準に話す人が多いので、私も仕方なくそうしていますが、本当は違います。この点はしっかりと理解していかなければなりません。

さて、ブレント原油が堅調な理由は、言うまでもなく――

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【関連】弱気に傾くヘッジファンドの帝王、レイ・ダリオ氏の「台所事情」を読む=江守哲

2017年9月25日号の目次

・マーケット・ヴューポイント~「北朝鮮情勢に惑わされない」
・株式市場~米国株は過去最高値更新、日本株はようやく上昇へ
・為替市場~ドル円はは上昇に転換
・コモディティ市場~金は大幅続落、原油はあともう少し
・今週の「ポジショントーク」~株式市場は堅調
・ヘッジファンド投資戦略~「ヘッジファンドへの注目が回復?」-投資戦略構築のポイント~
・ベースボール・パーク~「土曜日は東京でセミナー、日曜日は地元リーグ戦の試合と野球教室」
・セミナー・メディア出演のお知らせ


本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2017年9月25日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方は、バックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した米国株式、為替、コモディティ各市場の詳細な分析(約20,000文字)もすぐ読めます。

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株式・為替・コモディティなどの独自の市場分析を踏まえ、常識・定説とは異なる投資戦略の考え方を読者と共有したいと思います。グローバル投資家やヘッジファンドの投資戦略の構築プロセスなどについてもお話します。さらに商社出身でコモディティの現物取引にも従事していた経験や、幅広い人脈から、面白いネタや裏話もご披露します。またマーケット関連だけでなく、野球を中心にスポーツネタやマーケットと野球・スポーツの共通性などについても触れてみたいと思います。

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