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「小池劇場」で外国人投資家はどう動く?日本株とドル円の注目点=江守哲

安倍政権の継続は日本株投資の大前提です。基本的に株価は上昇方向ですが、万が一安倍政権が負けてしまったときのインパクトはかなり大きいでしょう。(江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて

本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2017年10月2日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

上昇基調も、アベノミクスの象徴・金融政策の見直しには要注意

日本株にようやく上昇の動き

日本株もようやく上昇の動きが出てきました。一気に上げていくわけではありませんが、下げにくくなってきました。日経平均採用銘柄のPERは14倍台半ばまで上げてきていますが、まだ15倍よりは下です。

また、最近の上昇で騰落レシオが高くなっていることも、上値を抑えやすくなるでしょう。それでも強い相場の時にはあまり関係がないことも多いので、騰落レシオだけで判断するも危険です。

自民党の「想定外」

さて、今後の株価動向を見ていくうえで、やはり今回の衆院解散は外せないでしょう。まず言えることは、自民党が当初描いていたシナリオとは全く違うものになってしまったということです。

小池新党が旗揚げしたことで、論点が消費増税分の使い道ではなく、「政権選択」になってしまいました。これは自民党の思惑違いです。公明党も「予想外」と認めています。サプライズ効果を狙った小池都知事の戦略勝ちですね。

しかし、小池氏も都知事の仕事があり、どの程度選挙区を回れるのかは不明です。また、民進党との合流も決まったわけですが、民進党議員に関しては「選別する」と言明しています。すでにイニシアチブを取りながら、過去の「小泉チルドレン」「小沢ガールズ」のような「使えない議員」の連立にならないようにする方針のようです。これも非常に大きなポイントです。首相経験者も除外される可能性があります。菅氏や野田氏は対象外になってしまう可能性がありそうです。

しかし、フレッシュさを出すには、それくらいのことをしないとダメでしょう。小沢氏との合流も実際には厳しいのではないでしょうか。

前原氏に関しても、小池氏は過去の関係を断ち、運のない前原氏から距離を置く可能性もあるでしょう。そのうえで、全国各地に候補者を立て、安倍自民党をつぶす方針です。公明党も苦しい選挙戦になるでしょう。

ただし「小池新党」にも目玉はいない

小池新党の候補者はわかりませんが、一方で小池氏が居ないと目玉もないというのも事実です。民進党内部ではかなりもめているようですね。それは当然でしょう。前原氏も罪な人ですね。

一方の小池氏も大変です。都知事職と国政を一緒に行うことはかなり難しく、都民の批判が出るかもしれません。私も都民ですので、その点はよく考えたいと思います。

今の段階では、小池氏の出馬の可能性も残っているというのですから驚きです。選挙で希望の党が勝てそうな雰囲気になれば、出馬もあるというのです。これも非常に現金な判断ですね。わかりやすく言えば、負け戦はしないということです。これもある意味では無責任な動きということもできます。

Next: 与党敗退ならインパクト大。海外投資家は市場をどう見る?



海外投資家は市場をどう見る?

しかし、このように政治が流動化すると、海外投資家が動けなくなります。安倍政権の継続が日本株投資の大前提になっていますので、万が一安倍政権が負けてしまったときのインパクトはかなり大きいでしょう。

また、新政権が誕生した場合の政権運営に関しても、不安が残ることは間違いありません。どうしても、旧民主党のことを思い出してしまうからです。あのような稚拙な政治ではお話になりません。まして、北朝鮮問題がきわめて深刻な状況です。

したがって、今回の衆院解散は安倍首相への批判が必要以上に大きくなる可能性があります。

もし選挙戦中に大きなミサイル発射などの事件が起きた場合、しっかりと対応できるのか。そう考えると、安倍首相も東京を離れられません

小池氏はこの点も良く分かったうえで今回の決断をしているわけであり、本当に周到に準備された新党結成だといえます。もちろん、これからの候補の容認には相当高いハードルが課されるでしょう。また、人員不足は否めませんが、新党への期待が膨らむと、本当にわからないですね。選挙はやってみないとわかりません。

楽しみではありますが、市場が不安定になるのは歓迎できません。この点の判断が難しいところになりそうです。

企業業績が落ち込まない限り、上昇基調は変わらない

ただし、それでも重要なのは企業業績です。これがしっかりしていれば、何も心配する必要はありません。これが落ち込むようなことにならない限り、基本的な株価上昇のパスは変わらないと考えます。

一方、北朝鮮情勢については、10月10日の朝鮮労働党創立記念日、12月17日の金正日総書記命日などのイベントも控えています。10日は衆院選の公示日です。ここで選挙を妨害するような動きが出るかもしれません。

しかし、そのようなことを考えていては、何もできません。これは以前から申し上げている通りです。また、選挙戦の動向についても、今の時点で予想してもあまり意味がないでしょう。自民・公明の勝利、あるいは小池新党の勝利の両方の可能性を念頭に入れながら、事態を見守るしかないでしょう。

もっとも、安倍政権が負けたときの日銀総裁の任期延長のリスクには注意が必要でしょう。新政権が誕生すれば、前政権の政策は全否定されるでしょう。そうなれば、アベノミクスの象徴である金融政策も大きな見直しを迫られる可能性があります。そうなれば、株式・為替市場への影響はある程度大きくなるでしょう。

その意味でも、今回の選挙は注意が必要ですし、意外な結果になる可能性も十分にあると肝に銘じておきたいところです。とにかく、報道には注意しながら、興味を持って見ていきたいと思います。

10月の想定レンジをアップしました。ぜひ参考にしてください。

【日経平均株価:2017年の想定レンジ】

強気シナリオ18335円~23400円(17年末23020円)/弱気シナリオ14970円~19915円(17年末15620円)

【日経平均株価:10月の想定レンジ】
強気シナリオ20870円~22500円/弱気シナリオ15160円~17160円

【TOPIX:2017年の想定レンジ】
強気シナリオ1473~1860(17年末1833)/弱気シナリオ1215~1574(17年末1270)

【TOPIX:10月の想定レンジ】
強気シナリオ1680~1809/弱気シナリオ1235~1370

Next: 為替市場に政治が与える影響は軽微、今は理論値よりも円高



為替市場~ドル円はやや割高

ドル円は円安水準を維持しています。FRB関係者からは少しずつ発言が出始めていますし、イエレン議長も利上げの可能性を示唆しています。12月利上げを何とか織り込ませたいのでしょうけど、インフレ指標次第ですので、これだけは先読みするのは難しいところです。とはいえ、やはり8月の個人消費支出(PCE)物価指数が前年同月比1.4%上昇と、伸びが3カ月連続で横ばいだったことは、ドルの上昇を抑制することになるでしょう。

米ドル/円 日足(SBI証券提供)

ただし、市場では、トランプ政権の税制改革を背景とした財政悪化を金利上昇と理解し、ドル高になっています。この考え方が間違っていることに、市場はまだ気づいていないのに驚きます。無論、円安を期待している日本の為替アナリストたちも同様です。本当に困ったものです。過去のデータを見れば、そうならないことは簡単にわかるのですが。

また、イエレン議長が段階的な利上げ継続が必要との認識を示していますが、これはあくまで利上げを希望しているだけであり、必ずそうなるわけではありません。それは、昨年と今年の9月にも経験済みです。それでもまだ市場はわからないようです、学習効果がないと思います。それはそれでよいでしょうし、いずれ誤りに気づくでしょう。そのときにはすでに遅いと思いますが。

政治が与える影響は軽微。為替相場は金利差で決まる

一方市場では、24日のドイツ総選挙で、極右政党「ドイツのための選択肢(AFD)」が躍進し、反欧州運動への懸念が広がったとの認識もドル高・ユーロ安につながったと判断しているようです。

しかし、このような政治が為替市場に与える影響は最終的には軽微です。為替相場は最終的には金利差で決まります。この基本的な考え方を抑えておく必要があります。

材料面で考えるのであれば、金融政策の方向性を考えるとよくわかるでしょう。欧州ではこれから政策の正常化に入ります。米国はすでに入っています。材料面では新鮮味があるのは欧州です。これは非常に重要なポイントです。

イエレン議長は「インフレ率が2%に戻るまで金融政策を据え置くのは軽率」としていますが、これこそが利上げを希望していることを示す発言といえます。しかし、すべてはインフレ率次第です。PCE物価指数が1.4%では利上げは難しいでしょう。

今の水準はやや円高

一方、ドル円で考える場合、日本のCPIも見なければなりません。8月の全国消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.7%上昇となりました。プラスは8カ月連続です。以前にも解説したように、日本のCPIは米国に遅れて上がります。まさにシナリオ通りです。

しかし、これは日米実質金利差でみると、日本の実質金利が下がりますので、理論上はドル高・円安になりやすくなります。とはいえ、9月末の理論値推計は110.70円程度です。したがって、今の水準は理論値からすればやや円高です。この点は理解しておく必要があるでしょう。

Next: 結局、米国のインフレ率が大きくなれば「円高」になる



米国のインフレ率が大きくなれば「円高」になる

一方、日銀の黒田総裁は、昨年9月の導入から1年が経過した長短金利誘導策について、「これまでのところイールドカーブは調節方針と整合的な形で円滑に形成されている」との見解を示しました。黒田総裁は「物価上昇目標2%の実現には、なお距離がある」とし、現在の金融緩和策を「粘り強く進めていく」との考えを強調しています。

日銀は少なくとも、安倍政権が続くかぎり、黒田総裁が来年4月に退任したとしても、現在の日銀の政策は維持されるでしょう。この点はあまりに気にする必要はなさそうです。

ただし、そうなると、長期金利があまり動かないので、やはり理論上は円安になりやすくなるかもしれません。

結局は、米国のインフレ率が大きくなれば、円高になるということになります。この点もしっかり理解しておきたいところです。マスコミに出ているアナリストたちは、このような説明は絶対にしませんので(笑)。円高シナリオは表向きは絶対に話せませんから(笑)。

とにかく、いまはドル高基調にありますが、米国が株高を維持させるためにはドル安にしておく必要があります。米国はそう簡単にドル高を受け入れないでしょう。この点だけは忘れないようにしたいところです。

10月の想定レンジを記載してありますので、そちらもぜひ参考にしてみてください。

【ドル円:2017年の想定レンジ】

強気シナリオ115.25円~129.85円(17年末128.35円)/弱気シナリオ103.60円~118.75円(17年末104.70円)

【ドル円:10月の想定レンジ】

強気シナリオ123.05円~127.85円/弱気シナリオ103.74円~109.25円

【ユーロ円:2017年の想定レンジ】

強気シナリオ119.80円~134.85円(17年末133.70円)/弱気シナリオ107.95円~124.75円(17年末109.65円)

【ユーロ円:10月の想定レンジ】

強気シナリオ122.85円~127.90円/弱気シナリオ108.65円~116.75円

【ユーロドル:2017年の想定レンジ】

強気シナリオ1.0270ドル~1.1700ドル(17年末1.1550ドル)/弱気シナリオ0.9480ドル~1.0695ドル(17年末0.9730ドル)

【ユーロドル:10月の想定レンジ】

強気シナリオ1.0980ドル~1.1415ドル/弱気シナリオ0.9585ドル~1.0130ドル

【ポンド円:2017年の想定レンジ】

強気シナリオ140.50円~156.25円(17年末154.20円)/弱気シナリオ125.65円~146.85円(17年末127.05円)

【ポンド円:10月の想定レンジ】

強気シナリオ143.60円~150.00円/弱気シナリオ127.60円~137.50円

【ポンドドル:2017年の想定レンジ】

強気シナリオ1.2080ドル~1.3710ドル(17年末1.3535ドル)/弱気シナリオ1.1230ドル~1.2510ドル(17年末1.1435ドル)

【ポンドドル:10月の想定レンジ】

強気シナリオ1.2910ドル~1.3450ドル/弱気シナリオ1.1255ドル~1.1895ドル

【豪ドル円:2017年の想定レンジ】

強気シナリオ83.20円~96.10円(17年末94.80円)/弱気シナリオ74.45円~87.00円(17年末77.70円)

【豪ドル円:10月の想定レンジ】

強気シナリオ89.05円~94.30円/弱気シナリオ74.45円~81.70円

【豪ドル/米ドル:2017年の想定レンジ】

強気シナリオ0.7070ドル~0.8200ドル(17年末0.8080ドル)/弱気シナリオ0.6480ドル~0.7355ドル(17年末0.6625ドル)

【豪ドル/米ドル:9月の想定レンジ】

強気シナリオ0.7630ドル~0.8065ドル/弱気シナリオ0.6535ドル~0.6970ドル

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【関連】北朝鮮はともあれ強いものは強い! ゴールド・原油は強気相場が目前に=江守哲

2017年10月2日号の目次

・マーケット・ヴューポイント~「長期上昇相場の道程」
・株式市場~米国株は強い相場であることを理解する、日本株もようやく上昇の動き
・為替市場~ドル円はやや割高
・コモディティ市場~金は大幅続落、原油は高値更新
・今週の「ポジショントーク」~原油高を見越したポジションが奏功
・ヘッジファンド投資戦略~「香港のヘッジファンド事情」-投資戦略構築のポイント~
・ベースボール・パーク~「土曜日は野球の練習、日曜日は都大会と地元リーグ戦の試合」
・セミナー・メディア出演のお知らせ


本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2017年10月2日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方は、バックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した米国株式、コモディティ各市場の詳細な分析(約2万2,000文字)もすぐ読めます。

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株式・為替・コモディティなどの独自の市場分析を踏まえ、常識・定説とは異なる投資戦略の考え方を読者と共有したいと思います。グローバル投資家やヘッジファンドの投資戦略の構築プロセスなどについてもお話します。さらに商社出身でコモディティの現物取引にも従事していた経験や、幅広い人脈から、面白いネタや裏話もご披露します。またマーケット関連だけでなく、野球を中心にスポーツネタやマーケットと野球・スポーツの共通性などについても触れてみたいと思います。

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