面倒な手続きが多い不動産投資ですが、気をつけないともっと面倒なことになりかねません。今回は固定資産税の支払い、大家法人の役員報酬について解説します。(『1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ』姫野秀喜)
姫屋不動産コンサルティング(株)代表。1978年生まれ、福岡市出身。九州大学経済学部卒。アクセンチュア(株)で売上3,000億円超え企業の会計・経営計画策定などコンサルティングに従事。合間の不動産投資で資産1億円を達成し独立。年間100件以上行う現地調査の情報と高い問題解決力で、顧客ごとに戦略策定から実行までを一貫してサポートしている。
サラリーマン大家の「会社バレ」防止策ほか、不動産投資の注意点
固定資産税、分割で払うか? 一括で払うか?
固定資産税を分割で支払う場合、6月、9月、12月、3月と年に4回期限がやってきます。一括で支払っても分割で支払っても、基本的に金額は変わらないわけですから、経済学で言うところの「割引現在価値」の概念で考えたら、分割で支払う方がお得になります。
とはいえ、一括で支払うか分割で支払うかは、(4回も支払うのが面倒とか)個々の事情があるでしょうから、どちらでもかまわないと思っています。私は個人的には、4回も支払うことで痛税感を感じる回数を増やし、納税者であることを意識する儀式として捉えているので、あえての分割にしています。
不動産投資家は支払い期限に注意
さて、この固定資産税ですが、一括にせよ分割にせよ、それぞれ「何月何日までに支払いなさい」という期限があります。
支払いはコンビニなどで行えるので簡単ですが、不動産投資家にとっては、この支払い期限に注意する必要があります。支払い期限が10月末だからといって、末日に支払いを行うと、思わぬところで面倒なことが起きかねません。
この固定資産税の支払い情報は、各自治体によって、納付済み・未納と一人一人管理されています。この管理されている支払い情報には、2週間ほどのタイムラグがあります。つまり、あなたが固定資産税を10月末に支払ったとしても、自治体の支払い情報データベースには2週間後にしか反映されない可能性があるということです。
そして、そのタイミングで融資の審査を受けている場合、手続きが少し煩雑になる可能性が高いのです。
ご存じの通り、銀行から融資を受けるためには、各種資料を提出しなくてはなりませんが、その際、固定資産税の納付済み情報も提出しなくてはなりません。
それが問題なのです。もし期限ぎりぎりに支払っていた場合、2週間のタイムラグのせいで公的情報に「未納」と記載されてしまうからです。
その場合、納付済みの支払い票を持って行けばもちろん問題はないのですが、万一納付済みの支払い票を紛失してしまっていた場合は、納付を証明するのが面倒になります。
それもこれも支払い情報のデータベース反映に2週間もかかることが原因なのですが(いまどきそんなに同期に時間かかる?)、そうはいっても仕方ないので、自衛のために少しだけ早く(2週間ほど早く)納付するのがよいのです。
Next: 不動産投資を「法人」で行う場合のメリット、デメリットとは?
不動産投資は個人で行うべきか、法人で行うべきか
不動産投資を検討するときに、個人で行うべきか、法人で行うべきか迷われている方も多いと思います。私のところにも、法人化すべきか?という質問をされる方がしばしばいます。
法人化のメリットは、なんといっても経費の幅があり、税率も個人の最高税率より低いということです。
減価償却も、個人は強制償却しなくてはいけないのに対して、法人の場合は任意となりますし、節税という観点から法人化は優れた方法だと思います。
一方、法人化のデメリットは、業務が煩雑になることと、ランニングコストがかかることです。
株式会社や合同会社など形式は問いませんが、法人化すれば、毎年決算を行わなくてはなりません。また、法人住民税など、たとえ赤字決算でも支払わなくてはいけない費用が発生するからです。
一般的には、不動産の課税所得が280万円を超えないなら個人でもよいと思います。
お勤め先に「不動産投資」がバレてしまう
では、そのデメリットの1つについて掘り下げて説明しましょう。
不動産投資をするにあたり、お勤めの会社の副業規定に抵触しないよう、税務申告に注意している方は多いと思います。
これが大家法人などにすると、もう1つ気をつけなくてはいけないことが発生します。それが「社会保険」です。
日本に住んでいる人は、基本的に国民年金・健康保険もしくは、会社の厚生年金・社会保険に加入しなくてはなりません。サラリーマン大家さんであれば、当然、今お勤めの会社の年金・保険に加入しており、毎月源泉徴収されていると思います。
大家法人を立ち上げ、その代表取締役になると、その大家法人でも「社会保険」の加入義務が発生します。
大家法人で社会保険の加入義務が発生した場合、「2箇所以上勤務」の申込をして、サラリーマン給与と大家法人からの役員報酬額の金額案分で、社会保険を支払わなくてはなりません。
この「2箇所以上勤務」はとても注意が必要な代物です。なぜなら、サラリーマンとして働いている会社に、個別に「2箇所以上勤務」の対象者の社会保険請求が来るからです。
つまり、サラリーマンとして務めている会社に、大家法人の存在がバレるということです。
Next: 会社バレのリスクをなくす唯一の方法とは?
会社バレのリスクをなくす唯一の方法
万一、副業規定などに抵触しそうであれば、会社バレは避けたいモノです。その会社バレのリスクをなくす方法はただ1つ、「役員報酬を0円」にするということです。
社会保険の加入義務は、労働報酬が出ることで発生します。つまり、役員報酬を放棄するという書面を作成しておけば(そして実際に報酬はもらわない)、社会保険に加入しなくてよくなります。加入していないので、当然、会社にバレることはありません。
家族への給与支払いにも注意を
次に、この大家法人で、従業員として家族に対して給与を支払っている場合はどうでしょうか。その場合、以下の(1)(2)要件を両方とも満たした場合、社会保険の加入義務が発生します。
- 週30時間以上勤務
- 月間17日以上勤務
この場合は、社会保険の加入義務及び支払い義務が発生します。
なので、もし家族に給与を支払う場合は、雇用契約書などに上記の時間や日数未満の勤務形態と記載すれば、社会保険の加入対象外となります。
社会保険に加入すると、平日の昼に年金(社会保険)事務所に行かなくてはならないなど、サラリーマン大家としては、なかなか対応が難しい仕事が増えてしまいます。
ですので、極力余計な仕事を増やさないように、役員報酬や、従業員給与については注意して設定した方がよいと思います。
(※本日の内容は、年金・社会保険事務所職員へのヒアリングに基づき記載しています。具体的な内容については、各事業者の担当エリアの年金・社会保険事務所へおたずね下さい。)
『1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ』(2017年9月26日, 29日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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