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ピンチはチャンス!「21世紀版ブラックマンデー」が近づいている=藤井まり子

現状は1987年秋のブラックマンデー直前の状況に酷似しています。ノーベル経済学者のシラー博士や、あのジェフリー・フランケル教授の警告を見てみましょう。(『資産形成・マクロ金融deあそぼ♪ − 貞子ちゃんの連れ連れ日記』藤井まり子)

※本記事は有料メルマガ『資産形成・マクロ金融deあそぼ♪ − 貞子ちゃんの連れ連れ日記』2017年10月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

ブラックマンデー直前に酷似。米国市場の大調整はいよいよ近い?

あの1987年秋を想起させるアメリカ株式市場

まず、現状は次の通りです。
・アメリカ企業の企業業績が4四半期連続で2ケタ上昇
・アメリカ株式市場ではもう1年近く、これといった調整局面なしに株価が上昇
・しかも、マーケットのボラティリティも極端に低下
・株価は高値圏だが、アメリカの金利市場ではまだ「逆イールドカーブ(近い将来の暴落を暗示するもの)」は現れず

そんな中で、こんな状況にあります。
・人工知能を駆使したアルゴリズム(新金融技術)が大流行
FRB議長の交代がクローズアップ
・金融引き締め懸念
地政学的リスクの高まり

こんな状態が続けば、「年季の入った古株のファンドマネ─ジャー」ならば、克明に思い浮かぶ「時代」があるはずです。

今のアメリカ株式市場は、27年前の「ITバブル」崩壊前にもたいして似ていません。10年前の「サブプライムバブル」崩壊前にもそれほど似ていません。

鮮明に思い浮かぶのは、およそ30年前の1987年秋のことです。そう、「今のアメリカ株式市場は、ブラックマンデーの直前のアメリカ株式市場にそっくり!」なのです。

直近発表の「税制改革法案」は眉唾もの

先週は、共和党のリーダーたち6人とトランプ大統領による「税制改革のフレームワーク」が発表になりました。この「フレームワーク」、再びわずか9ページだけといった「骨子だけの発表」でした。具体的な内容は伴っていませんでした。

春先にトランプ大統領が発表した「税制改革のフレームワーク」がわずか1ページだけの「人をバカにしたようなもの」だったことに比べると、「一歩か二歩」は前進したかもしれません。

が、今回の「税制改革のフレームワーク」も、掛け声だけの、実現性に乏しい、空疎なものでした。またもや「大風呂敷」だったのです。

今のアメリカ財務省の高級官僚のスタッフ人員は、議会の承認が得られないために、半数ぐらいしか定員を満たしていません。しかも、今回の「税制改革」の陣頭指揮に当たっているムニューチン財務長官コーンNEC委員長も、財政・税制に関しては、どちらかというとアマチュアだということが、だんだんバレバレになってきています。

かくして、質・量ともに極度のスタッフ不足の中、議会の審議に耐えられるような「トランプ減税」の年内作成なんてものは、そもそも最初から「絵空事」だったことが、白日の下にさらされる日が近づいています。

税制法案づくりには時間がかかる

そもそも、「オバマケア代替・撤廃法案」でさえ、いまだに議会を通過していません。いわんや、税制法案をや。

そもそも、当メルマガで1年前からお伝えしておりますように、減税法案というものは、細部まで煮詰めてちゃんとした法律に形作るまで、およそ1年~2年くらいかかるものなのです。多くの優秀なスタッフに恵まれていたとしても、それくらいの時間と労力と忍耐のかかる「骨の折れる作業」なのです。

(ちなみに、「1986年のレーガンの包括的税制改革法案」は、完成時はページ数にして数百ページにも及ぶものでした。時間も発案から2年もかかっています。)

トランプ減税はとん挫か

というわけで、「トランプ減税」においては、優秀なスタッフにも恵まれていませんし、スタッフそのものの人員が足りていない「人手不足」状態が続いています。トランプ減税は、とん挫して完全崩壊するリスクだってあるのです。

昨年11月のトランプ大統領の就任当初は、この「トランプ減税」という、そんなに簡単にできるわけがない「大風呂敷」に、マーケット関係者はほとんど全員が騙されてしまいました。さすがに、この秋は騙しとおせないでしょう。

法案そのものがとん挫するリスクさえも存在しています。マーケットの調整は近いです。

Next: ロバート・シラー博士「近いうちにアメリカ株式市場は20%調整へ」



ロバート・シラー博士「近いうちにアメリカ株式市場は20%調整へ」

行動経済学者にしてノーベル経済学者のロバート・シラー博士が、「アメリカ株の弱気相場入りの可能性が高まっている」ことに、とうとう警鐘を鳴らし始めています。

シラー博士は影響力の大きな人なので、今はヤフーファイナンスやブルームバーグでは口を閉ざしています。今は、よりマイナー&マニアックなところで意見表明しています。

以下、シラー博士のレポートの「日本語訳(意訳)」です。
※出典:The Coming Bear Market? by Robert J. Shiller – Project Syndicate(2017年9月21日配信)

過去において、13回の弱気相場があった。いま現在のアメリカ株式市場は、こういった弱気相場が始まる直前のマーケットにとてもよく似ている。今すぐ弱気相場入りするわけではないかもしれないが、そろそろ「株式市場の自己陶酔」を警戒すべき段階だ。

弱気相場の定義はいろいろだが、「20%の大幅調整入り」を弱気相場と定義するのが、一般的のようだ。

「20%の大幅下落」を弱気相場と定義するようになったのは、「1987年10月19日に、アメリカ株式市場がわずか1日で20%下落した」ことから由来している。

私の場合は、今回「株価が12か月継続して上昇した後、その翌月のどこかの月に20%下落する」マーケットを「弱気相場」と、定義します。

私の定義する弱気相場は、過去において、アメリカでは、古くからは、1892年、1895年、1902年、1906年、1916年、1929年、1934年、1937年、1946年、1961年、1987年、2000年、2007年と、13回現れた。

これらの弱気相場では、特筆すべき「3つの共通項」があった。

まず第1に、これら「13回の弱気相場」は、どの弱気相場でも、20%下落する直前まで12ヶ月間継続して株価が上昇していて、バリエーションがとても高い状態にあった。

次に、これら「13回の弱気相場」では、どの弱気相場でも、その直前の12ヶ月間では、企業業績も2ケタ台の伸びを記録するなど、とても良好だった。

最後に、これら「13回の弱気相場」では、どの弱気相場でも、その直前の12ヶ月間では、ボラティリティ(株価の乱高下)が異常に低い状態だった。

いま現在のアメリカ株式市場は、12か月間、上昇局面が続いていて、バリエーションが高いこと、企業業績も四期連続2ケタ成長していること、ボラティリティが異常に低いこと、などなど、これら「13回の弱気相場」が起きる直前のマーケットの「3つの共通現象が」同時に起きている。

ということで、アメリカ株式市場が20%の下落をする可能性がかなり高まっている。「必ず訪れることを保証しているわけではない」が、警戒しよう。

ということです。以上、シラー博士の警鐘でした。ほんと、警戒したいですね。

Next: ジェフリー・フランケル教授「近いうちに大幅調整が来る」



なぜリスクが高いのに、調整しないのか?

9月に入ってから、日本金融村の一部では(まだ一部ですが…)、アメリカ株式市場について、「こんなにリスクが高まっているのに、よくもまぁアメリカ株は高値更新していますね~」といった、「あきれ気味の言葉」が挨拶代わりになりつつあります。

アメリカ株式市場はもう9年近くも上昇トレンドにあり、さらに直近1年はほとんど調整らしい調整を経験していません

なぜリスクが高いのに、調整しないのか? それはおそらく、バブル崩壊を知らない「新しい世代」たちが、アルゴリズム(人工知能)を駆使して、条件反射的に「押し目買い」を続けているのだと思います。

なにやら、1987年のブラックマンデー時の「ポートフォリオ・インシュアランス」を彷彿とさせます。

ジェフリー・フランケル教授「近いうちに大幅調整が来る」

ハーバード大学のジェフリー・フランケル教授は、大変の弱気派(どちらかというと暴落派)です。教授は次のように語り、近いうちに大幅調整が来ると警鐘を鳴らしています。

ブラックスワン(めったに合わない深刻なリスク)は本来は見えてないリスクだからブラックスワンというのだが、いま現在のブラックスワンはすでに飛び立って目の前に居座っていて、見えている。市場がこの見えているブラックスワンから(イケイケのあまり)目を背けているだけだ。

ジェフリー・フランケル教授の指摘によると、いま現在の見えているリスクとは、ざっくりまとめると、以下の6つとのことです。

  1. 歴史的高値圏にある株式市場(シラーPERの30ポイント超え)
  2. 今後、長期金利が上昇してゆくリスク(債券バブルの崩壊リスク)
  3. FRBが「バランスシートの縮小」と「政策金利の引き上げ」を目指し、ECBも「テーパリング」を模索、BOE(イングランド銀行)も利上げを模索している。先進各国の四中銀のうち、日銀を除く三中銀が「金融政策正常化」へ動こうとしているリスク
  4. アメリカの覇権の陰りが日に日に強くなっている中で、北朝鮮や中東などで「地政学的リスク」が高まっているリスク
  5. 「10月18日からの中国共産党大会」以降、習近平体制が「従来の何がなんでも経済減速だけは許すまじ」の政策から大きく舵を切って、「中国がより安定的な経済運営(いくばくかの景気減速を伴う)」へと移行しそうな「中国リスク」
  6. トランプ政権の減税政策などの失政が、上記などのリスクを増大させる

【関連】北朝鮮はともあれ強いものは強い! ゴールド・原油は強気相場が目前に=江守哲

【関連】1987年10月19日「ブラックマンデー」の思い出と教訓=石川臨太郎

こんなに黒い鳥がいたるところで泳いでいるのに、アメリカ株式市場は、目下のところ、こういった黒鳥から目をそらし続けています。弱気相場入りは近いのではないでしょうか?

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イエレン&フィッシャーFRBの「ちょっとだけミス」

日本株式市場の上昇はいつまで続くか?

10月半ば以降は、危険がいっぱい


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資産形成・マクロ金融deあそぼ♪ − 貞子ちゃんの連れ連れ日記』(2017年10月3日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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