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なぜ無党派層は目を覚まさないのか? 日本を動かす自民「組織票」の正体

戦後2番目に低い投票率となった今回の選挙では、いわゆる組織票が明暗を分けました。ではこの組織票とは具体的には何なのでしょうか?その正体を考えます。(『らぽーる・マガジン』)

※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2017年10月23日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

投票前に勝利確定、野党が太刀打ちできない「組織票」の実態とは

投票率が低いほど組織票が有利に

解散の大儀がない、疑惑隠しだ…など様々な批判を受けながら行われた衆院選挙は、結局は自民党が改選前とほぼ同じ安定多数、自公あわせて2/3以上の議席を確保しました。

今回の選挙の最終投票率は53.68%で、戦後最低を記録した前回の選挙に次いで、2番目に低い投票率となっています。

投票率が下がると、組織票を味方にした勢力は有利となります。組織に属さない票(いわゆる浮動票)が少ない中でも、組織票はどんなことがあっても必ず投票に行き、一定の得票となるからです。

ここに、政権不支持率が支持率を上回っても、選挙では自民党が多数の票が取れる理由が隠されていると思われます。

では、この組織票とは具体的には一体何なのでしょうか?その正体の一片をご紹介しましょう。

現場サイドから見える組織票

私のブログに、ある投稿がありました。その記事のテーマが、まさに「政権不支持率が高いのに、与党の議席獲得数が多いのはなぜか」というテーマだったのですが、そこに読者からコメントを寄せていただいたので、まずはそれをご紹介します。

地元では、子供たちのスポーツ団体が加入する○○協議会の理事等を自民党の市議会議員がつとめています。自民党議員に投票するようにと、各団体に働きかけがあり、監督さんからお母さんたちに説明があります。そして○○さんが勝たないとグランドの割り当てが無くなるんだって!とお母さんたちの間で話がまとまります。地域の福祉協議会では、各地区の役員が会議名目で召集され、翌年度以降の市からの予算について説明があり、自民党の○○さんがご尽力下さいますと説明があります。

これ、すごい生情報でしょう。そして、こんな情報もあります。

日刊ゲンダイは、選挙の現場では自民党に冷たい風が吹いている、と書いている。確かに街頭では自民が勝てるような空気はほとんどない。が、自民が圧倒的に強い保守王国・九州で、その秘密の一端を聞いた。選挙期間中、仕事は午前中だけ、午後は従業員全員電話がけで自民党候補を推す会社がある、という。

話をしてくれた方の友人が勤めている会社で、会社の名前まで聞いた。会社ぐるみで、自民党候補の応援。もちろんこれは本人の自発的意思ではないし、業務の一部としてやらされていて、給与も支払われているのだから、公職選挙法違反だと思われる。

こんなことが、あちこちで行われていて、不正が日常化しているため、感覚が鈍磨している可能性がある。「選挙とはそういうものなんだ」と。だから「選挙の現場」は、街頭だけとは限らない。会社の中もまた「選挙の現場」になっている。しかも「密室」だ。

自民党は組織票で固めている、とよく言われる。しかし、組織票の実態とは、このような有無を言わせない不正と半強制の塊なのではないか。職がなくなるのが怖い、仲間外れにされるのが怖い。そんな不安心理に漬け込む卑劣なやり方である。

出典:岩上安身のツイ録 – IWJ Independent Web Journal(2017年10月19日配信)

前者のコメントは、地方議員が国政をサポートするという典型例で、国政で勝つには地方組織がしっかりすることが重要だということの一端を示しています。地方議員は祭りやイベントにこまめに参加し、地域の利益のために国会議員を利用しますが、持ちつ持たれつの関係なわけです。

いっぽう後者はまさに「組織票」の実態を表しています。どちらも生々しい現実なのです。

Next: 業界票・組合票・宗教票には勝てない?/二世議員はなぜ強いか?



業界票・組合票・宗教票には勝てない?

選挙は「業界票・労働組合票・宗教票」で決まると言われています。一般の人が投票しても何も変わらないという嘆きはよくわかります。

「業界票・労働組合票・宗教票」は、自分たちの利益しか考えていません。しかし、これら組織票の効力を薄めるには、投票率を上げることしかないのです。浮動票、すなわち組織に属していない票を増やすことです。

かつて森喜朗元総理が選挙期間中に「無党派層は寝ていてくれたほうが良い」と発言したのは、紛れもない本音です。投票においてネット活用の効率化が進まない理由も、このあたりにあるのではと勘ぐりたくなりますね。

二世議員はなぜ強いのか?

これはよくマスコミでも言われていますが、各選挙区で当選者が1人しか選ばれない小選挙区制度が、政党得票数とは関係のない選挙結果を生み出すと言われています。その結果が、自民党圧勝を招いたという人もいます。

確かに、小選挙区制度は「どちらかがましかを選ぶ究極の地獄の選択」と言った人もいるほどです。でも、もう少しこの部分を掘り下げてみましょう。これは、なぜ二世議員は強いのかにも関係してきます。

選挙は「地盤・看板・鞄」が大事だと言われます。地盤・看板はわかりますよね。3つ目の鞄とは選挙資金のことです。

そして、ここで最も重要なのは地盤を持っているかどうかです。その地盤を守っているのが、地元で選挙対策本部長と呼ばれる有力者で、たいていの場合、先代からスライドして、そのまま二世議員にも就くことになり、これが二世議員にとっては何よりも宝なのです。

かつての中選挙区制度においては、政党で選ぶのではなく、候補者の名前で選ぶ選挙でした。しかし今は政党で選挙が決まります。

候補者にとって、選挙運動という面では、中選挙区制よりも小選挙区制のほうが楽でしょうね。中選挙区制度では、地元密着度がより重要になってきます。だからお金が要ります。すごくお金がかかるのです。

以前に自民党の石破茂氏が、「お金がかかりすぎて、二度と中選挙区制度は嫌だ」と言っていたインタビュー記事を思い出します。中選挙区で戦っていた地元有力者の選挙運動は、それはそれは気配りの運動で、有権者への配慮は半端ないものでした。

小渕恵三元総理の娘の優子氏が、群馬選挙区の有権者を歌舞伎見学バスツアーに招待したことが問題視されたことがありました。そのことで経済産業大臣を辞任することになったのですが、地元有権者に「候補者の名前」を書いてもらうためには、そこまでしなければならないということです。小渕優子氏の地元選対委員長はお父様から仕えた人で、中選挙区制度の選挙を戦い抜いてきた人です。

なにせ小渕恵三元総理の選挙区には、中曽根康弘元総理福田赳夫元総理という自民党の重鎮と、さらに山口鶴男元社会党書記長という大物が勢ぞろいしていて、その中で生き残りをかけて必死にドブ板作戦を繰り広げてきた選挙参謀なわけです。そういう人が、自民党候補者の選挙対策本部長を務めています。

これは、離合集散を重ねる野党議員スタッフには到底できない芸当です。これが自民党議員の強さ、言い換えれば議員自身ではなく議員を支える組織の強さなのでしょう。

Next: 投票前から結果が出ている「茶番選挙」を変えるのはあなただ



組織票に勝つには「投票率を上げる」しかない

ここまで組織票の表と裏を見てきましたが、このような環境で野党が自民党に勝つには、もう空中戦しかありません。「」を起こして勝利を掴むしかないのです。

民主党が政権をとった選挙も「」のおかげでしたよね。そこに小沢一郎氏の自民党流選挙運動が加わって、民主党は勝てたのです。風を起こし、その風が組織票に勝つには、投票率が高くないとダメなのです。

今の選挙は、始まる前にすでに決着がついているのかもしれません。今回の選挙結果を見ると、そう感じざるを得ませんね。政権不支持率が高いのに、なぜ与党が過半数の議席を確保できるのか…その答えが見えた気がしませんか?

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1. 今週の重要指標&予定
2. 経済・マーケット情報
 ・とにかく株式市場が強い一週間でした
3. 政治・時事情報
 ・衆院選はなんだったのか
 ・政権不支持率が高いのになぜ過半数の議席を確保できるのか…
 ・なぜ若者は保守を好むのか
4. 今週の相場シナリオ(私見)
5. よもやま話~近況


※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2017年10月23日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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らぽーる・マガジン』(2017年10月23日号)より一部抜粋
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