マネーボイス メニュー

【1月米雇用統計】当面は戻り売りあるのみ、想定レンジ110.5~114.0円=ゆきママ

今日は月に一度のお祭りイベントである米国の雇用統計が発表されます。トランプ相場バージョン2.0といった感じで不安定な値動きが続いていますから、今回の雇用統計がどんな作用をもたらすのかについて解説していきたいと思います。(『ゆきママのブログでは書けないFXレポート(無料板)』『お値段以上!?ゆきママの「週刊為替予測レポート」(有料板)』FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)

1ドル=110円がターゲットも、一気の大台割れはなさそう

利上げ「年3回」に向けたポイントとなる可能性

昨年12月にFRB(連邦準備制度理事会)は2017年の利上げ回数を3回としましたが、Fedウォッチと呼ばれるFF金利先物市場が織り込む利上げ見通しを見る限り、現状では年2回、早くても6月からの利上げしか織り込まれていません。

これは先日発表された2月のFOMC(連邦公開市場委員会)における声明において、消費者や心理面の改善以外は先年12月時点から経済状況にあまり変化がないと指摘し、慎重な姿勢を示されたことが大きいでしょう。

とはいえ、年3回の利上げの可能性が完全に閉ざされたわけではなく、今回の雇用統計で特に平均時給(賃金上昇率)の伸びが良好だった場合には、3月の利上げを皮切りに6月、9月、12月のいずれかの会合で2回の利上げというパターンもある程度は現実味を帯びてきます。

やはり6月から開始で年3回の利上げとなると、9月、12月にも利上げとかなり慌ただしくなるので、もし年3回といった展望を描くのであればほぼ3月利上げは必須といえますから、今回の雇用統計は非常に重要な意味を持つことになるでしょう。

しかも、最新のFedウォッチを見ると3月の利上げ確率はわずか13.3%しかなく、期待感はほとんどありません。むしろ伸び代がある分、3月利上げを急激に織り込んだ動きも想定しながら賃金の伸びにしっかり注目しておきたいところです。

Fedウォッチ(市場の織り込む利上げ確率)

Next: トランプ大統領初の雇用統計はハードル高め、ドル上昇は難しい



ADP雇用報告の上振れでハードルは高めに

それでは、先行指標事前予想値注意すべきポイントなどについて解説していきましょう。まずは先行指標からとなります。

先行指標の結果(数値はいずれも速報値)

ISMの非製造業指数については、雇用統計の発表後に公表されるので空欄となっていますが、それ以外は良好な数字が並んでいます。とりわけADP雇用報告については非常に強いと言えるでしょう。したがって、雇用統計への期待感、ハードルはやや高めと考えておいた方が良いでしょう。

事前予想値については、非農業部門雇用者数が+17.5万人、失業率が4.7%、賃金上昇率が前月比で+0.3%と、比較的強めな数字が並んでいますが、雇用者数はこれ以上の数字が望まれている可能性に注意です。失業率に関しては、完全雇用水準とされていますが、トランプ大統領も疑わしいとするなど、最近は労働参加率の低水準と相まってそのものに疑義が生じ始めているので、あまり重く見る必要はないと思われます。

そして、なんといっても最大の注目点は賃金上昇率です。事前予想値の前月比+0.3%を大きく上回るような+0.5%といった数字が出てくるようであれば、ドルが買われることになるでしょう。ただし、前回(12月分)の雇用統計において+0.4%とかなりの伸びを見せていましたから、さらに一段の賃金の伸びがなかなか難しいという点に留意しておく必要はありそうです。

今の相場の本質はトランプにあり!上昇は難しそう

今回は3月利上げへ向けた試金石ではあるものの、短期的な相場の本質がトランプにある点も考慮すると、相場に与える影響は限定的なのかなと思います。

つい先ほど(10時10分)も日銀オペにおいても長期金利が上昇しているにもかかわらず、指値オペがなかったことから円高に傾きました。指値オペとはその名の通り、日銀の想定する金利水準から動かないよう指定した利回り(指値)において国債を無制限に買い入れる措置となります。

これを避けたということは、要するに金融政策からの円安誘導批判を重く受け止めていることの表れですから、今後、日銀が緩和政策を行う余地は非常に限られていることを意味しており、ドル円相場の上値が重くなることが予想されます。

トランプ自身はドル高になるような政策を行なっているので、最終的にはファンダメンタルズに従ってドルが買われると考えていますが、こと目先に関してはドル高は絶対許さないという姿勢が米当局から見て取れますので、しばらく上方向への値動きはあまり期待しない方が無難でしょう。

Next: 戦略は「戻り売り」しかない。想定レートは1ドル=110.50~114.00円



想定レートは1ドル=110.50~114.00円!戦略は戻り売り

やはり相場の本質がトランプにあって年初からドル安傾向が続いることから考えても、下方向への動きを重く見ておくべきでしょう。本校執筆時点(3日午前11:20時点)で1ドル=112.70円にあることから、今回の雇用統計における想定レートは1ドル=110.50~114.00円と見ています。

値動きの目処が明確にない中で、相場は節目を意識しています。1月31日、2月1日は113.90円近辺が最高値となっていますから、114.00円を上限としました。前回の雇用統計では比較的上値の軽い状態で賃金上昇率の上振れから1円ちょっとの上昇を記録しましたが、今回は明らかに上値が重いため、よほどの結果となったとしても115円台へのトライはないと考えています。

逆に下値については、112.00円というこれまでの底(トランプ相場におけるフィボナッチ38.2%戻しでもある)を割り込んでしまうようだと、一段下へ向かうことになります。110.00円という大台がターゲットですが、流石に今回の結果のみで一気に割り込むことは想定していません

ドル円チャート(ボックスを形成しつつありますが、抜け出す可能性も十分)

したがって、今回のトレード戦略は売り(ショート)以外にありません。さすがに112円台前半から積極的に売り込んでいくのは難しいですが、112円台後半からは十分狙える位置かと思います。

先行指標が比較的強めなことも考慮すれば、まずまず良好な数字を見越して結果を受けてから戻り売りを狙っていくのがベターでしょうか。特に初動は雇用者数の数字が影響してきますから、非農業部門雇用者数が強め(+20万人近い水準)で賃金上昇率が予想並みかそれ以下(+0.3%以下)だった場合には、より戻り売りの意識を高めたいところです。

ちなみに、賃金上昇率が+0.5%以上といった数字になったパターンは、一旦様子見で113円台後半ぐらいまで戻りを待ちたいと考えています。流石にそれでも114.00円ブレイクは厳しいと思いますが、そうなってきた場合には短期的なトレンド転換も想定しつつ115円台に定着できるかどうかを見極めたいですね。もちろん、定着できなければ短期は売り継続です。

以上になります。トランプによって相場が大きく歪められた感は否めませんが、その分、トレード戦略は立てやすくなっていますので、チャンスをしっかり活用して頂ければ幸いです。

【関連】知られざる「人工知能バトル」の最前線~為替相場でいま起こっていること -PR-

【関連】投資家が警戒する「第2のプラザ合意」と超円高を日本が回避する方法=矢口新

【関連】現役40代を“戦場”に放り出す「確定拠出年金」の残酷なメッセージ=持田太市

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2017年2月3日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

お値段以上!?ゆきママの「週刊為替予測レポート」

[月額1,980円(税込) 毎週日曜日]
ゆきママの視点から、毎週の為替相場見通しやチャート分析、トレードアイディアなどを提供します。解りやすい解説を心がけていますので、ぜひ初心者の方もお読みいただければ幸いです。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。