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公明党市議団の「大バクチ」に破壊される大阪市と日本の未来=内閣官房参与 藤井聡

記事提供:『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年2月28日号より
※本記事のタイトル・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

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公明党・大阪市議団は自らのエゴで「大バクチ」を打とうとしている

現実味を帯びてきた「大阪都構想の住民投票・再チャレンジ」

今、大阪ではいわゆる「都構想」すなわち「大阪市廃止解体構想」の「住民投票・再チャレンジ」がにわかに現実味を帯び始めています。
http://www.asahi.com/articles/ASK2R3V2SK2RPTIL005.html

なぜなら、「公明党・大阪市議団」が、住民投票の実施に「賛成」する見通しが出てきたからです。

そもそも「都構想」が実現されれば、「大阪市が廃止」されます(これは、定義上確定した事項です)。一方で、「住民投票」がなければもちろん、「大阪市の廃止」ということが起きるはずはありません。ということは、「公明党・大阪市議団」は今、「大阪市が廃止」される「恐ろしいリスク」を産み出している、ということになります。

ちなみに、このリスクを「恐ろしい」と見なしているのは、他ならぬ「公明党・大阪市議団」です。なぜなら彼らは公式に、都構想それ自身に「反対」を宣言しているからです。
https://www.komei-osaka.jp/blog/2015/01/005408.html

――ではなぜ、「公明党・大阪市議団」は、そんな「恐ろしい」リスクを産みだそうとしているのでしょうか?

大阪都構想が日本を破壊する』という書籍を出版し、未だに、その時の基本主張を一切変更していない筆者にとっては、この「公明党・大阪市議団」の振る舞いは、到底看過できるものではありません。彼らの振る舞い一つで、大阪が破壊され、日本が破壊されるという恐ろしい帰結がもたらされかねないからです。

ついては、本稿では、あくまでも公益・国益という「公共的視点」から、公明党支持者を含めた日本全国の国民の皆様に、この「公明党・大阪市議団」問題を解説差し上げたいと思います。

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住民投票の結果が覆される「異常事態」が大阪で起きようとしている

そもそも一昨年、平成27年5月17日に「都構想=大阪市廃止」が住民投票で否決されて以降、一部の維新勢力を除けば過半数の人々が「住民投票」には反対していました。「住民投票」で結果がいったん出た以上、これは至極当然の話です。

例えば、イギリス世論を二分したEU離脱、いわゆるブレグジットの住民投票でも、賛否が拮抗し、最終的にはわずかな差で「EU離脱」が決定されましたが、結果が出た後は、離脱反対派もしぶしぶその結果を厳粛に受け止め、離脱の手続きが粛々と進められています

「直接民主主義」の住民投票で決せられた結果には、「重大な意味がある」というのが国民的コンセンサスになっているからです。これはいわば、民主主義国家の「常識」です。

したがって、英国ではブレグジットの賛成派も反対派も、「直接民主制の住民投票でいったん結果が出れば、(よほどのことが無い限り)後戻りは許されない――」ということを最低限の共有認識として、「投票日」まで必死に「論戦」を戦わせたのです。

ところが大阪では、そうした「常識」が通用しない「異常事態」が、まさに今、生じようとしています。
http://www.asahi.com/articles/ASK2R3V2SK2RPTIL005.html

それを起こそうとしている中心勢力はもちろん、「大阪都構想=大阪市廃止解体構想」を進めようとする「維新」勢力。ですが上述の様に、彼らは大阪府議会でも市議会でも過半数の議席を持っておらず、彼らだけでは「住民投票・再チャレンジ」は不可能です。したがって、「再チャレンジ」のためには、維新以外の勢力の「協力」が不可欠です。

では、「誰が維新に協力をしているのか」というと、それこそ「公明党・大阪市議団」なのです。

公明党・大阪市議団が「維新の会」に加担する見返りとは

もちろん、公明党・大阪市議団は、「何の見返りも無く」ただただ維新に荷担しているのではありません。彼らは、自らが主張する「大阪市の『行政区』を束ねて、いくつかの『総合区』をつくる」というアイディアに、維新が賛成する「見返り」として、「住民投票」(の可能性が生ずる協議会の設置)に賛成する見通しとなっている、という次第なのです。

もしこの「報道」が正しいとすれば、公明党・大阪市議団は、「総合区をつくるという自らのアイディアを通すために、大阪市が解体されるかも知れない大バクチを打とうとしている」ということになります。

これは、大阪市民にしてみれば、「たまったもの」ではありません。そのバクチで、公明党・大阪市議団の私物を賭けるのなら別に問題はありませんが、そこで賭けられているのは、他ならぬ「大阪市民の自治」だからです。

もちろん、公明党が主張する「総合区」が良いものである可能性はありますし、大阪市民が自分自身の「自治」など要らぬと判断しているのなら、それでも構わないのかもしれませんが――「大阪市民の自治」は、大阪市民が「残します!」と住民投票を通して決定した程に市民にとって貴重なものなのです。

いわばあの住民投票は、大阪市民にとって、「大阪市民の自治」は失ってはならぬ「極めて貴重なもの」であるということを、大阪市民自身が再確認する大がかりな「一大イベント」だったのです。

にも関わらず、そこまで「貴重なもの」を差し出すような大バクチを、公明党・大阪市議団が打つことが正当化されるのかどうか――筆者はあえてここで明言致しませんが、当の公明党・大阪市議団やその支持者の方々を含めた日本全国の良識ある国民の皆様に問いかけたいと思います。

Next: 公明党・大阪市議団は有権者を裏切るのか?



公明党・大阪市議団は有権者を裏切るのか?

しかも、この問題は、それだけには留まりません。

そもそも公明党・大阪市議団は、一昨年の住民投票に「賛成」した時の公式の「見解」から、「都構想=大阪市廃止」に対して「反対の姿勢に変わりはありません」と明言しつつも、「最終的には、住民投票をもって住民の皆さんが決定をすべきであるとの結論」に至ったとのことから、「住民投票それ自身には賛成する」という、複雑な「断腸の思い」の決断がなされた様子を伺い知ることができます。
https://www.komei-osaka.jp/blog/2015/01/005408.html

なぜ、公明党・大阪市議団の皆さんがこのような「断腸の思い」をされたのかについては、既に複数のメディアに記載されていますので、敢えてここでは「直接」言及はいたしませんが――。
(※ご関心の方は、例えば、下記をご参照ください)
http://www.sankei.com/west/news/150210/wst1502100001-n1.html
https://dot.asahi.com/wa/2015080400115.html
http://npn.co.jp/article/detail/41206155/

――とにかく、公明党・大阪市議団の皆さんは、極めて微妙な立場の中、『ギリギリの筋』を通すという趣旨で、「私たちは『都構想』に反対だが、万一、市民が賛成するというのなら、私たちはそれに従います」と、「住民投票結果を徹底的に尊重する」ということを、『唯一つの論拠』として、住民投票それ自体に賛成されたのです。

だとするなら、公明党・大阪市議団の皆さんは、今、「住民投票結果を尊重する」責務を、他の度の党や会派よりも格段に大きくお持ちのはずなのです。もしここで前言を翻し、大阪市民の民意である「住民投票結果」を軽んじる様なことがあれば、あのときの、「公式見解」そのものが、「ウソ」であったと言われても、否定しようがないのではないでしょうか。

そして、そういう「ウソ」をついたということになれば、今まで公明党・大阪市議団の皆さんを支えてこられた有権者の皆さまを「裏切る」こととなるのではないでしょうか――。

公明党・大阪市議団やその支持者の皆さん、そして日本全国の皆様方に、この問題を是非、真剣にお考え頂きたいと思います。それが、「大阪を守り」、ひいては「日本を守る」ために求められているのではないかと――筆者は大袈裟でも何でもなく、真剣に感じています。

――もしも、公明党・大阪市議団の皆様から、上記について公式にご回答いただけるなら、筆者は喜んで耳を傾けたいと思いますし、そのご回答を、支持者の方、大阪市民の方を含めた日本国民皆様に聞いていただきたいと思います。

p.s.1
「大阪都構想」とは一体何であったのか――ご関心の方は是非、下記を改めてご一読ください。
http://www.amazon.co.jp/dp/4166610201

p.s.2
リアルタイムな、現在進行形の「大阪府市問題」にご関心の方は是非、下記シンポジウム(4月8日、於:大阪市立大学)にご参加ください!
http://satoshi-fujii.com/symposium8/

p.s.3
「小池都政」問題は、確実に「橋下大阪市政」問題の延長線上に位置するもの。この問題にご関心の方は、是非、下記をご一読ください。
https://www.amazon.co.jp/dp/4761526106

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