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日経平均2万円奪還の条件。トランプラリー第2幕の「切り札」とは?=藤本誠之

日経平均が2万円を奪還するには何が必要なのでしょうか?日本株を大きく左右する為替相場の注目点を、トランプ政権のポジティブ・ネガティブ両面を踏まえて解説します。(『グローバルマネー・ジャーナル』藤本誠之)

※本記事は、最新の金融情報・データを大前研一氏をはじめとするプロフェッショナル講師陣の解説とともにお届けする無料メルマガ『グローバルマネー・ジャーナル』2017年3月1日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に定期購読をどうぞ。
※2月22日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。

プロフィール:藤本誠之(ふじもと のぶゆき)
SBI証券 投資調査部 シニアマーケットアナリスト。ビジネス・ブレークスルー大学 資産形成力養成講座 講師。

大台2万円の奪還に向け、トランプ政権の期待と不安を総ざらい

代表的な2つのポジティブ面

アメリカトランプ大統領にも、ポジティブなところ、ネガティブなところ、いろいろあるかと思います。

ポジティブなところとして、マーケットが最も期待しているのが大幅な減税です。何よりも法人税減税の場合、上場企業のEPS、1株当たり利益は税引き後の話なので、税金を減らしてくれれば企業は全く同じことをしていても利益が増えてしまうのです。その面でいうと、10%から20%減税されれば、そのまま10%から20%株が上がっても良いわけです。同じPERであればEPSがそれだけ増えるわけなので、その株が上がるということになり、この部分は非常にポジティブだと思います。

次にポジティブな点は、大規模なインフラ投資です。実はこれがトランプ大統領でなくヒラリー氏が大統領になっていても、ある程度やっただろうと思います。アメリカはやらざるを得なかったのです。財政再建ということでこれまでインフラ投資ができていなかったので、昔作ったものをだましだまし使用しており、古くなっているインフラが多いのです。それをなんとかしなくてはならないので、もともとインフラ投資はあったはずです。

ただそれをトランプ大統領は声高に主張するので、やはりマーケットにも効果が出ています。非常に無駄と思われるようなメキシコ国境の壁も、実際に作れば万里の長城のように数千キロに及びます。本気かわかりませんが、作ってしまえば無駄に多くのお金がかかります。建設機械や労働力も必要になるでしょう。ただ、働くのはアメリカ人なのかというとメキシコ人のような気もします。

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大規模インフラ投資の中での注目分野

このような大規模なインフラ投資の中で今後の注目としては、鉄道の分野です。先日安倍首相が訪米した際、トランプ大統領から新幹線技術の話が出てきているので、鉄道網が日本ほど大きくはないアメリカでは今後、高速鉄道、新幹線という話は出てくると思います。今のところ世界中で見ると、中国が日本の新幹線やTGV等を作らせたときに技術を真似て、それを世界に輸出しているという状況があります。日本の新幹線のように見えるものを提案している状況です。しかしこれが世界各国で安全に動いていないのです。もともとコピーで作ったものなので技術がそこまでついていかないのです。

特に高速鉄道に関しては、安全面の配慮が必要です。さすがに時速300キロで走っていると、何か起これば乗客全員が亡くなってしまう大事故につながりかねません。日本でも時速100キロの電車で事故がありましたが、それでも大惨事になったわけです。時速300キロの新幹線では被害は計り知れません。やはり今のところ大きな事故のない、安全な日本の新幹線が採用される可能性は高いと思います。その他、建設機械関連の銘柄や、アメリカに工場を持つセメント関連の銘柄などが注目になってくると思います。

規制緩和への期待感から金融株にも脚光

また規制緩和については、やはり金融機関がメインです。リーマンショック後、自己投資や様々なものに対してかなりの規制をかけられてきました。自由にさせるとろくでもないことをするので、規制して危険度を減らそうというのがこれまでの流れでした。ただ行き過ぎた規制は企業の活力を失わせることになるので、トランプ大統領がそれを緩和して景気を良くしていこうというわけです。

日本の金融株もアメリカの金融株も上がっているのは、この規制緩和への期待が大きいからです。トランプ大統領自体は元ビジネスマンなので、どうも自分が儲かるような政策をやろうとしているようです。本来トランプ大統領を支持しているのは昔ながらの労働者の人たちですが、やろうとしていることはお金持ちで企業家が儲かる政策だということです。

Next: 1ドル115円はあるか?2万円奪還の鍵となるドル円の注目点を整理する



日本株を左右する為替動向の注目ポイント

一方、ネガティブな面は保護主義的なところです。特にTPPはいきなり離脱されてしまいました。ただし日本との二国間での協議はやるということです。アメリカ、メキシコ、カナダの北米地域がどうなっていくのかは注目です。メキシコから関税ゼロでアメリカにどんどんものが入ってきていたわけですが、アメリカも、だからこそメキシコへ様々なものを輸出できていたわけです。このあたりが不透明で、日本の個別銘柄にも影響が出ています。

やはり自動車産業が注目となりますが、ホンダはアメリカに工場をたくさん持っており、現地生産が多く、アメリカで作っていると主張することができます。一方マツダは、アメリカに工場を持っておらずメキシコから送っていたので、ネガティブな影響を受ける可能性があります。また富士重工はアメリカに工場はあるものの、日本からの輸出も多い状況です。保護主義的政策の問題は日本の個別銘柄にとってはマイナスの影響が出てくることになりそうです。

また、化石燃料重視の姿勢については、クリーンエネルギーの後退が指摘されています。原油価格がもっと高くなればともかく、極端に高くはないのでこういう流れになるのかと思います。環境問題についても不透明な状況はありますが、こうして全体を見ると、経済面については株価が上がりやすい政策だと言えます。オバマ前大統領の、できるだけ格差を縮小しみんなが幸せになる政策から、アメリカだけが強くなるという政策で、これによりアメリカの労働者にお金が回るという主張なので、大きな転換と言えます。

今後、日本の株式市場に大きな影響を与えるのは、やはりドル円相場です。結局日本株は、なんと言っても外国人投資家が7割のマーケットであり、業績を見るうえで為替が重要になってきます。また、日経平均株価の多くは輸出関連企業であり、輸出関連企業の方が株価が高く、建設会社などの内需関連には株価の安い銘柄が多いので、高いほうの銘柄に引きずられます。日経平均の場合は外需関連銘柄が上がるか下がるかの影響力がどうしても大きくなるのです。

今後のドルにとってポジティブな材料は、アメリカの利上げです。今年、年3回となればドル円にはプラスで、3月に行われればドル高が進むでしょう。さらに、減税によるアメリカ景気の堅調さもドルにとってプラスです。法人税減税はEPSに効果がありますが、個人への減税は収入の増加につながり、消費性向が高いアメリカの場合、収入があれば使ってくれるので、個人消費が良くなってきます。もちろん財政に対する心配感はありますが、そうした流れで、アメリカ景気は堅調が続くだろうと思います。

ドル円相場に関して今後ネガティブな要素として、トランプ大統領の発言がありますが、確率は低くなってきたように思います。もちろん影響は受けますが、日本に対して極端なことは言って来なくなったように思われます。ただ、欧州の選挙については、もしフランスでル・ペン氏が勝つようなことになると、大変な影響が出てしまうと思います。リスクオンからリスクオフというムードに向かい、ドル円相場も円高に向かいやすくなるでしょう。リスクオフという理由で株安にもなり、さらに円高による株安という形で、負のスパイラルが出てくる可能性は否定できません。

ドル円「115円」の抵抗線を抜けるかどうかが鍵

トランプラリーで一気に駆け上がったドル円ですが、118円まで行ったところからぐだぐだしています。115円のところで何回も頭を打ち、そこが抵抗線になってしまっています。このラインを抜けてくるかどうかが日本株にとって大きな鍵となりそうです。レンジ内での動きが続けば、日経平均は1万9000円から2万円のところを揉み合う相場展開が予想されます。さらに115円を上抜けて動けば、日経平均も2万円を抜けてくる可能性が高まるでしょう。実際、フランスの選挙前にはル・ペン氏が勝てないだろうという織り込みが出てきて、為替が120円に近づくという予想されるので、足元の日経平均も強くなると見ています。

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グローバルマネー・ジャーナル』(2017年3月1日号)より抜粋
※記事タイトル、太字はMONEY VOICE編集部による

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