米マクドナルド社の販売戦力とその成功を見ると、アメリカでも中流階級がいなくなっていること、つまり低所得者と富裕層の2極化が進んでいることがよくわかります。(『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』)
※本記事は、『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』2018年2月5日, 6日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
マクドナルド、トイザラスほか現地報道から見る米国企業の現在
売れるのは低価格セットと高級バーガー
米マクドナルド(McDonald’s)の最新戦略を見ると、中間層の時代の終焉を感じます。現地報道のポイントを翻訳しながら紹介します。
ハンバーガー・チェーンのマクドナルドは、米国本土での売上・顧客数ともに、ここ5年間で初めて増加した。新規店舗を除く同一店舗のみの売上で見ると、直近四半期の売上高は4.5%、顧客数も1%の増加であった。
この成功の一因は、バリューメニューすなわち低価格に抑えたお買い得メニューの拡大があったことだ。
マクドナルドは、2年前に“McPick2(2人分まとめ買いセット)”を発表した。今回はさらに、従来のまとめ買いでセットにできるメニューは1$の商品までという上限を外して、「1$menu&more」という新たなセットを発売。通常価格では最高で5$となるセットメニューを低価格で発表したのだ。
昨年末、この低価格のプロモーションに賭けて、1$・2$・3$のメニューを開始。同時により付加価値の高い高級コーヒーや非常に凝った高級ハンバーガーの販売を開始した。
この「高級バーガー」と「低価格バーガー」の販売戦略の成功と、「中価格バーガー」&その他メニューの不振は、米国の中間層の縮小を示すものだ。
出典:McDonald’s strategy confirms the death of the American middle class – Business Insider(2018年1月30日配信)
以下は、記事に出てくるメニューです。
すぐに中間層が消えるわけではないが、痩せ細っていきつつあるのは、どこの国でも観察されていることです。
Next: 生活必需品である定番食品まで販売数が落ちている?
キャンベルスープ社、北米工場の統廃合を決定
米国の大手食品メーカーの一角であるCambell Soup社が、北米の工場の統廃合を決定しました。カナダのトロント工場を完全閉鎖し、生産を米国内の3工場に集約すると発表しています。
Cambell Soup社は、同社が1931年に設立したカナダのトロント工場を今後1年半をかけて段階的に閉鎖し、製造を米国の3工場に集約すると発表した。
これにより同工場の380人の従業員は解雇となるが、これに対応する米国3工場の従業員増加はなく、増産で対応するとの見込みである。
親会社であるキャンベル社のMark Alexander社長は、「閉鎖の決定は困難だったが、会社にとってベストの選択であり、消費者の環境が大きく変化(窮乏化?)しており、小売業界レベルで劇的な変化(ネット通販?※筆者注:翻訳に際して意味不明)が起きる中で商売をしている」と述べている。
これに対し、キャンベル社のカナダ部門のAna Domingues社長は、トロント工場の閉鎖の理由を生産過剰としている。
それは、スープの供給量に対して消費者需要が少ないということを意味しており、「販売できる量よりもずっと多い生産量になっているからだ」とインタビューで回答している。
出典:Campbell Soup Closing Toronto Factory, Shifting Production to U.S. – Breitbart(2018年1月27日配信)
同社社長の声明は、私にはよくわかりませんでした。スーパーからネット通販に切り換えても、総需要量は変化しないはず。売上が減るのは、競合他社の攻勢で敗退するか、それとも中間層が消えて貧困層が増えた場合でしょうから。
次に、中間層の衰退とは異なる問題ですが、会社再建中の「米トイザラス社」の現状について紹介します。
Next: 会社再建中の米トイザラス、年末商戦でも結果出ず未来は暗い
米トイザラスの年末商戦結果は悪く、未来も暗い
2度の破産を経て、会社再建中の米国「Toys R Us’社」。頼みの綱だったクリスマス・シーズンの売上は非常に悪かったようです。
昨年の年末商戦は米国全体では売上増という結果になったが、トイザラス社はまったくの仲間はずれだった。
販売は予想以上に弱く、来店する顧客数も少なく、在庫も減っていない。
競争相手のアマゾン、ターゲット、ウォルマートが値下げをしたので、トイザラスの利益が減ったのだ。
競合相手は玩具を顧客を呼び寄せる目玉商品にして、利幅の多い商品を売って稼ぐのだが、それはトイザラスにはできない戦略だったのだ。
2017年末の年末商戦でのトイザラスの値引き率は、なんと2016年末よりも約10%増やしていたのだが――。
出典:Toys R Us’ poor holiday sales cast doubts on its future – CMBC(2018年1月30日配信)
内部消息筋の話では、破産再建中の同社の業績は無残な結果に終わり、債権者グループと再度の交渉が必要になるとのことである。
今後2週間以内に再建計画の見直しをし、その後、その可否を見極める必要があるとのことだ。
この消息筋によると、夏までには再建を果たすためには、債権者グループおよび玩具メーカーのMattel社、Hasbro社からのさらなる支援が必要だ。
出典:同上
問題は、債権者グループや玩具メーカーにとっては、この再建が成功するという確信が必要なことである。
トイザラスが再建能力を持っていると確信し、過去2回の破産と同じ運命をたどらないと信じられるだけの材料があるかどうかである。
出典:同上
当メルマガでは、既に何回となくトイザラスの苦境を詳しくお伝えしています。重要なポイントは、再建計画の線上よりもずっと低い実績だったことです。それで、再建計画の練り直しが必要となったのです。
支援している債権者グループとの協議が再び必要になりますが、トイザラスは説得できるのか? それが非常に疑問となっているのです。なぜなら、支援している側も大きく損害を受けているのは間違いないからで、「無い袖は振れない」のです。
Next: 支援する玩具メーカー2社の実績は? 最悪共倒れも…
支援する玩具メーカー2社の実績
支援する玩具メーカー2社の直近の実績をチェックしてみますと、足元にも火がついています。
<支援側(債権者)の玩具メーカー・Mattel社の2017年通年の決算データ>
全店比較で売上が10%減少しています。
<同社の資金繰り>
手元現金は2016年利益を計上できていたのですが、2017年は1054M$の損失を出しています。
<もう1つの大口支援者である玩具メーカー・Hasbro社の第3四半期(最新の実績)の営業利益>
前年同期比で、北米市場・海外市場でも減っています。
債権者側も大きく業績が悪化しているのです。非常に厳しいとしか申し上げられません。
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・トイザラスの年末商戦結果は悪く、未来も暗い/外食チェーンも気にする中間層の消失(2/6)
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※太字はMONEY VOICE編集部による