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ビットコインはなぜ、ネズミ講と言われるか? 仮想通貨の「養分」になるな=矢口新

仮想通貨の巨大な分散システムを守るには、新規参入者が存在し続けることが不可欠である。つまり「ネズミ講」のように、維持費を新入りが負担しているということだ。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』矢口新)

※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』2018年3月8日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

1日で「3億円の手数料」を稼ぐ取引所。それを負担するのは…

簡単にできる「投資詐欺」

投資関連の詐欺は、実は簡単にできる。

ほぼ「ノーリスク、ハイリターン」を、少し複雑な説明で行えば、必ずといっていいほど、一定の金額を集められる。その一定の金額が、全国レベルでは数百億円に及ぶこともある。それほど、「ノーリスク、ハイリターン」は魅力的な夢を見させてくれるのだ。

ネズミ講は、子が何世代か前の親に送金するものだ。それぞれが3人勧誘し、孫が祖父に1万円送金すると、祖父には3人の子供の、それぞれの3人の孫から9万円が入る。世代ごとの孫たちは祖父に1万円を払って3人勧誘するだけで、後には自分の孫から9万円を受け取ることができる。1人1人は勧誘と送金を行うだけなのに、出資金の9倍の金額を受け取ることができるのだ。これが5人勧誘し、曾祖父に送金すると、125万円受け取ることができる。

この時、半分が履行しなくても、いや3分の2が履行しなくても、支払った金額よりははるかに多くの金額を受け取れる計算なので、ほぼ「ノーリスク、ハイリターン」と思われるのだ。

ネズミ講が成立するには、新規参加者が継続的に存在することが不可欠なのだが、こうした計算では、いつかは地球人口を超えてしまう

つまり、最後の2~3世代の参加者たちは、支払損となってしまうのだ。

とはいえ、個々の損失は1万円だけ。早く入れば、利益は確保できる。「ネズミ講は犯罪」だが、なかなか廃れない理由がここにある。

仮想通貨を守るには採掘者が不可欠?

当メルマガの先日のコラム「仮想通貨の採掘、1年も立たずにコスト割れとなる」で、紹介した記事で、以下の部分が気になっていた。

この記事はイーサリアムの採掘を思いとどまらせるのが目的ではない。
今の巨大な分散システムを守るには採掘者は不可欠だ
イーサリアムの価格が上昇すれば、採掘で利益を得られると説明するのが、この記事の目的だ。
イーサリアムなどの仮想通貨で直接決済できるサービスが広がれば、値崩れしやすい機器への投資が必要な採掘の優位性は薄れるだろう。

出典:仮想通貨の採掘で本当に利益出るか 厳密に計算すると – 日本経済新聞(2018年3月3日配信)

「今の巨大な分散システムを守るには採掘者は不可欠だ」とは、どういうことなのか?

Next: 採掘コストはどんどん上がる。それでも採掘者の利益を確保するには…



「新規参入者」の存在を前提に成り立っている

以下に、『野口悠紀雄の「ブロックチェーン」講義』を引用する。

第1は、「経済的な価値を送ること」。そして第2は、「信頼を確立すること」。この2つを、ブロックチェーンは可能にしたのです。

P2P内のすべてのコンピュータが「送金情報が正しい」と同意すると、その10分間の全世界の取引記録がブロックに記録されます。この作業が延々と行われ、10分間の取引が記録されたブロックが延々とつながっていくのです。

この作業にP2Pのすべてのコンピュータが挑戦し、最初に正しいナンスを見つけたコンピュータが「発見した」と宣言する。正しいことが確認されたら、このコンピュータが10分間の取引についての「責任者」となって、「これらの取引は正しい」というタイムスタンプを押す。そして、その報酬として一定のビットコインをもらう。この作業を「マイニング」といいます。そして、こうした作業が繰り返され、ブロックがつながっていくわけです。

ブロックチェーンは「悪いことが採算に合わない」仕組みなのです。「悪いことをするのは倫理的によくないからやらない」という性善説ではなく、悪いことをしたら損をするから誰もやらない。悪いことが経済的に不合理な仕組みだから、誰も書き換えない。こうして、誰がやっているかわからないにもかかわらず、信頼できる仕組みができた。この仕組みをプルーフ・オブ・ワーク(PoW)といいます。

ブロックチェーンの信頼性も、P2Pの過半数のコンピュータが結託してデータを書き換えた場合には保証できなくなります。これを「51%問題」といいます。そこで、結託できないように、十分に多いコンピュータが参加していることが望ましい。7千から1万という数は、十分に多いと考えられています。

つまり、こうした「マイニング」がブロックチェーンの維持に不可欠なのだが、1年ほどで電気代などのコストに負けてしまうのだ。このことは、常に新規にマイニングする人が出てくることが不可欠であることを意味する。

一方、手にした仮想通貨が値上がりすれば、収益が上がる。ところが、値上がりは誰かが買うことでしかもたらされない

これでわかるのは、マイニングからの収益も、マイニング以外からの収益も、常に新規参入者が継続的に存在することが前提となっている。

Next: 誰かが損をすることで仮想通貨は成り立っている



誰かを犠牲にして成り立っている

ブロックチェーンを支持する人のなかに、決済費用の軽減を挙げる人がいる。

しかし、ブロックチェーンの維持には、前述のように多大なコストがかかっている。つまり、決済費用の軽減は、誰かがブロックチェーンの維持にコストを支払うことで成立している

具体的には、マイニングに参加しながらコスト以上の報酬を得られないでいる人々と、投機的な売買で損失を出している人々が負担しているのだ。

1日で「3億円の手数料」を稼ぐ取引所

また、コストは他でもかかっている。

仮想通貨取引所を運営する上位10社の手数料収入は、1日当たり最大300万ドル(約3億2000万円)と、年間では10億ドルを突破する見通しだ。

データを調査するコインマーケットキャップ・ドット・コムに報告された取引高や、各取引所のウェブサイトに掲載された手数料情報に基づき、ブルームバーグが推計をまとめた。

出典:仮想通貨ブーム、最大の勝ち組は取引所か – bloomberg(2018年3月6日配信)

多くの取引所が存在し、それなりに利益を上げている。また、税金を徴収するところもある。これらのコストも、うまく立ち回れない新規参入者の負担となっているのだ。

「仮想通貨」と呼ぶだけでも詐欺

私は、通貨の機能を持たないのに、仮想通貨と呼ぶだけでも詐欺に近いと考えているが、私に似た考えのコメントを目にしたのでご紹介しておく。

暗号通貨に手を出す投機家は、どこぞの愚か者がコインを手に入れるために自分より多くの金を払うだろうと考える。悪くない賭けに見えるだろう。ただし、その仮定が成立している限りにおいての話だ──。

マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボ所長・伊藤穰一による、仮想通貨とブロックチェーン、そしてイニシャル・コイン・オファリング(ICO)に関する『WIRED』US版への寄稿。

出典:仮想通貨とブロックチェーン、そしてICOの狂乱に思うこと:伊藤穰一 – WIRED.jp(2018年2月18日)

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【関連】仮想通貨バブルで「必ず最後にババを引く」負け組投資家の共通点に気づけ=鈴木傾城

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相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』(2018年3月8日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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