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没落する米国経済、コカ・コーラ社「管理職350名リストラ」が示す暗い影

米コカコーラ社が本社部門の管理職350人を解雇すると発表。北米の従業員数8,000人からすると影響は少なく見えますが、注視すると米経済全体の陰りが見えてきます。(『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』)

※本記事は、『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』2018年3月6日, 7日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

大手百貨店チェーンも正社員をパートに置き換え。米国の実像は?

昨年から続く「首切り」

米コカコーラ社が2月26日、本社部門で管理職を350人程度を解雇すると発表しました。

北米地域の従業員総数は8,000人程度なので、この350人を解雇するという短い報道は、格別大きな意味はないように見えます。しかし、果たしてそうでしょうか?

報道のポイントを翻訳しながら解説します。

コカコーラ社は2月26日、今後数ヶ月以内に、主にアトランタ本社で350人の首切りを実施すると発表。

同社報道担当によれば、リストラ策の一環として北米地域(現在の雇用数8,000人)で首切りを実施するとの事である。

1年前に同社は、本社は各部門から1,200人の首切りを発表し、これまでに解雇はほぼ完了している。

今回の首切りは、1年前のリストラ策とは別個のものである。

出典:Coca-Cola cutting up to 350 jobs, most of them in Atlanta – WSB-TV(2018年2月26日配信)

報道担当によれば、ボトリング事業をそれぞれの地域事業者の所有に戻すとのこと。そうすることで、今後は生産性を上げて利益重視のビジネスに切り換え、北米地域での成長を加速させる狙いがあるという。

コカ・コーラ社は、ボトリング事業を除いた場合、アトランタ州ジョージア地域に約5,000人の従業員を抱えている。

出典:同上

今回のリストラでは「足りない」

図版で状況を解説します。

<(ア)2011年から2017年の純営業売上高(単位は100万ドル)>

2017年の売上は、前年比で15%減少しています。

<(イ)2011年から2017年の純益(単位は100万ドル)>

2017年の利益は、前年比で71%も大きく減少しています。

<(ウ)2017年第4四半期と前年の2016年第4四半期の純営業売上高の比較>

2017年第4四半期の売上は、前年同期比で20%も減少しています。

<(エ)2017年第4四半期と前年の2016年第4四半期の純益の比較>

2017年第4四半期の利益を見ると、黒字から赤字へと大転換しています。

つまり、350人程度のリストラでは対応不足になる可能性があります。

また、米国経済の好況という演出は、もう不可能だと思えます。

Next: 米経済の行方は? 小売大手が正社員をアルバイトに切り替えへ



小売大手、正規雇用から非正規雇用に切り替えへ

米国の大手百貨店チェーン・JCPenney社が、正規雇用を切って非正規雇用に本格的に切り換えるとの報道がありました。こちらもポイントを解説します。

消息筋によれば、米小売大手・JCPenney社は、週末の繁忙時間帯の従業員を増やすために、現有の正規雇用者を解雇し、パート・タイム雇用に切り替え、さらにパート雇用を増員する計画をしているという。

この雇用形態の変化は3月11日から始まり、その後の週末や繁忙時間帯には従業員が増えることになる。

正規雇用者の労働時間は、1週間35時間から25時間に減らされて非正規雇用となる。同時に増員される非正規雇用も週25時間労働となる。

内部消息筋は、「正規雇用をもっと減らそうとしており、NY地区のある店舗では、2年前に15人、1年前には12人だった正規雇用は、現在4人だけになっている」と語った。

出典:JCPenney turning full-timers into part-timers to cut costs – New York Post(2018年2月27日配信)

同社報道担当は、この雇用形態の変化について、正規から非正規への雇用方針に関しては認めたが、詳細説明を避けた。

同社は急激な販売高減少に対応するためにコスト削減を続けており、雇用削減を続けて来たが、それでも間に合わないのだ。

パート雇用の場合は、健康保険等の医療補助・福利厚生がない。そのため、このJCPenneyの会社リストラ策は、コスト削減に大きく貢献するだろう。

出典:同上

業界専門家は「店舗の来客数が多くなる繁忙時間帯に充分な従業員が居て、ヒマな時刻には少数の従業員になるのは、道理に叶っていること。他の同業他社も挑戦すべきことだ」と語った。

出典:JCPenney turning full-timers into part-timers to cut costs – New York Post(2018年2月27日配信)

つまり、今後はさらに小売業界全体で正規雇用が消えて行き、非正規雇用が増える社会になるというわけです。

Next: リストラの波は小売以外に向かっている。解雇予告数の推移は



業界別の解雇予告者数

最後に、業界別の解雇予告者数を紹介します。

2018年1月の解雇予告は、前年12月の3万2,423人から37.7%増加して、4万4,653人に増えました。しかし、昨年同月の解雇予告人数は4万5,934人だったので、前年同月比では2.8%の減少となっています。

最も目立ったのは小売分野で、12月より34.4%増加して1万5,378人に増えました。しかし、こちらも昨年同月の2万2,491人と比較すると31.6%減っています。

気になるのは、業界別の解雇予告数です。トップ5位は下記です。

トップ5位   2018年1月    2017年1月
小売業界    1万5378人    2万2491人   32%減少
消費関連業界   7158人      316人    23倍弱
健康関連業界   6531人      3250人    3倍弱
サービス分野   3212人      1691人    2倍弱
運輸業界     1472人      328人     4倍弱

図版で解説します。

<(ア)解雇予告者の月次変化のグラフ(2016年1月~2018年1月まで)>

そんなに心配するような雰囲気は見当たりません。

<(イ)解雇予告者数のグラフ(2014年~2018年1月まで)>

2015年から、2016年、2017年は解雇者が減っているので、これを見ると大丈夫だと思ってしまいそうです。

<(ウ)解雇予告者数の月平均のグラフ(2014年~2018年)>

増加傾向とも言えますが、2018年はまだ1月だけですから、何とも言えません。

<(エ)「小売産業分野」解雇予告者の変化のグラフ(2006年~2017年)

しかし、これだけを見て大したことはないだろうと考えるのは早計です。今後も陸続と続くはずです。特に消費関連業界が増えるでしょう。

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【関連】本当はボロボロの米国経済。景気悪化の「兆候」を示す3つのデータ


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いつも感謝している高年の独り言(有料版)』(2018年3月6日, 7日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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