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中東が「Sell In May」の引き金に。米国市場は大幅調整を経て再びブームへ=藤井まり子

米国長期金利の上昇と、意外にも中東が今年の「Sell In May」の引き金になるでしょう。この夏に投機家たちが暴れる可能性が高く、市場は厳しい試練に立っています。(『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』藤井まり子)

※本記事は有料メルマガ『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』2018年5月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

アメリカ株の下げに賭ける投機家たちが、この夏に再び暴れ出す?

アメリカのイールドカーブに「異変ナシ」

FRBは、昨年12月と今年3月に「2回」の政策金利の引き上げを実施しています。0.25%の引き上げを2回、合計0.50%の引き上げを実施したわけです。

一方、直近のアメリカ長期金利の3.00%前後への急上昇。上昇が「急」だったとはいえ、この長期金利3.00%は、昨年12月のFOMCを起点にすると、0.50%前後しか上昇していません。

この急上昇分は、政策金利の2回の引き上げ分(0.50%)と同じ上昇分です。なんちゅうことはない、アメリカの長期金利は、短期金利とほぼパラレルに上昇しているだけ。

アメリカの実体経済には減速の兆しは見つかりません(もちろん、年初の「大幅減税で3%以上の(実質)経済成長は可能か?」といったアホみたいな期待は消え失せていますが、アメリカの実体経済は2%半ばの力強い成長をたどっています)。

債券・国債・金利市場では、「大幅減税をしたら長期金利が上昇する」という、ごく当たり前のことが起きているだけなのです。大幅減税をしたら、長期金利は上昇するものなのです。

今回の「長期金利の急上昇」は、どちらかというと「今までの長期金利が低すぎた」結果としての、その反動です。

アメリカ株式市場は、この夏であっても「弱気相場入り(=20%以上の下落)」は起きないです。

株式市場と長期金利の関係

当メルマガでは1年以上前から、「大幅減税を実施しても、長期金利が上昇する」「インフレが起きるかもしれない。好調な実体経済の方はさほど押し上げられない」と繰り返しお伝えして参りました。このことが実際に起きているのが、2018年です!

一番の問題は、株式市場と長期金利の関係なのです。

目下のところ、長期金利(ドル国債10年物の利回り)は3.00%前後と、投資対象としてはかなり魅力的な水準になっているのです。

一方、S&P500の配当利回りは、今では2%水準を割り込んでいます。国債の金利上昇で、株式の配当利回りの「魅力度」が低下してしまっているのです。

これは、一部の投資家が、手持ちのアメリカ株を一部売り払ってアメリカドル国債に鞍替えしても「なんら不思議ではない」状態です。

アメリカ株式市場はいつ調整しても不思議ではない「ゆがみのある状態」なのです。

アメリカの投資家は、「アメリカ株が大幅下落したら、またFRBが金融緩和で対応する(2018年末から2019年初めにかけては「物価水準目標の採用」になるだろう)」ということをよくよく理解しているところがあります。そのため、アメリカ株式市場はなんとか大幅下落に直面しないでいられるといった状態なのです。

それでも、ここらあたり(=株式の配当利回りが10年物国債の利回りを下回っている状態)が、この夏、乱高下をこよなく愛する投機筋の「格好の攻撃材料」になります。

Next: 「Sell In May」の引き金は中東? 厳しい試練に立つ米国市場



アメリカ株式市場は「厳しい試練」に立っている

たとえば、タイムリミットが訪れる「5月12日のイラン核合意の見直し」。

トランプがもし「イラン核合意」を放棄するような事態が起きれば、中東の地政学的リスクが高まります。

すると、投機筋の手によって、原油をはじめとする資源コモディティ価格が急上昇、アメリカの長期金利もあっという間に3.25%にまで「急上昇」してしまう懸念があります。

すると、アメリカ株式市場は大幅調整してしまうことでしょう。

多くの人々の注意と関心が朝鮮半島に集中していますが、意外や意外、今年の「Sell In May」の引き金を引くのは「中東」かもしれないのです。

なにはともあれ、「アメリカの長期金利の上昇」は、今年の「Sell In May」の引き金になることでしょう。

アメリカ株の下げに賭ける投機家たちが、この夏に再び暴れ出す可能性があまりに高いのです。今のアメリカ株式市場は、長期金利の上昇で厳しい試練に立っています。

(一方、日本株式市場は、アメリカの長期金利の上昇で「束の間のドル高円安」をエンジョイしています。同時に「束の間の日経平均の上昇局面」をエンジョイしています。)

2018年末には、パウエルFRB議長は「物価水準目標」採用へ

FRB新副議長にコロンビア大学教授のリチャード・クラリダ氏が就任することになりました。そして、NY連銀総裁にはサンフランシスコ連銀のジョン・ウィリアムズ総裁が就任することになりました。

・ウィリアム総裁は「物価水準目標」の熱烈な支持者であり、金融専門の経済学者
・クラリダ次期FRB副議長も「物価水準目標」には鷹揚な金融専門の経済学者

この2人の経済学者が、今後、弁護士出身のパウエルFRB議長を理論面で支えることになります。

FRBの金融政策は、今後(年末か来年初めあたりには?)より緩和的な方向へ大きく変更される可能性が高いです。

すなわち、昨年末にもお伝えしましたが、パイエルFRBは、(夏場にアメリカ株式市場が大幅調整局面を迎えるような事態が起きれば)年末から年始にかけて、「ある程度インフレを放置して、利上げを遅らせる方向」、つまり金融緩和の方向へ、大きく方針転換する可能性がかなり高いのです。

「物価水準目標」という金融政策は、平たく言えば、「今現在のFRBの政策金利の引き上げは、もっと遅らせて、2%インフレを上振れるようなインフレを巻き起こそう。名目経済成長率を引き上げていこう」というものです。

Next: 米国市場は大幅調整を経て、秋頃に再びブームへ?



米国市場は大幅調整を経て再びブームへ

アメリカ株式市場は、今年半ばには大幅調整するかもしれませんが、秋あたりから(?)再びブームを巻き起こしてくることでしょう。

かねがねお伝えしておりますように、今のアメリカの人口動態はとても良好です。

人口の多い「ミレニアム世帯」が「30歳から39歳」に入って、最初の一戸建てを購入する年齢に入ってきているのです。これは、「今のアメリカの実体経済は、向こう5~6年くらいは放っておいても拡大基調をたどる」ということです。

「2%インフレ目標」を固持すれば株価は低迷する

せっかくこういった「良好な経済環境にある」のに、パウエルFRBが「2%以上のインフレを起こさない」という信念を固持したままだと、悪いことが起きてしまうのです。

「2%インフレ目標」そのものが、アメリカ株式市場に「水を差す」結果になってしまい、ある意味とてもナンセンスです。

すなわち、パウエルFRBが現行の「2%インフレ目標」を固持して、パウエルFRBが従来通りに「今年2018年に年3~4回、来年2019年に年2~3回の政策金利の引き上げ」を断行して
いくとするならば、現在進行形のアメリカ株式ブームは、1年後あたりには「ブーム崩壊の危機」に瀕してしまうのです。

現行の「2%インフレ目標」を固持したままだと、「アメリカ株式ブームは持って1年くらい」となることでしょう。

「物価水準目標」の採用で米景気は上向く

皆さまご存知のように、ブームが弾ければ、アメリカの実体経済はリセッション入りしてしまいます。そんな「ナンセンス」なこと(=実体経済が良好なのに、リセッション入りしてしまうこと)を回避しようとするのが「物価水準目標」なのです。

しかも、この「物価水準目標」を採用すれば、「長い目で見れば、5~6年後のアメリカの政策金利を再び5%台へと引き上げられる」かもしれないのです。パウエルFRBは「バランスシート縮小」計画も放棄する必要もなくなるかもしれません。

こうなれば、次の(中国発の?)経済危機が起きたとき、FRBには「利下げの余地」と「金融緩和策の手段」が十二分に存在するということになります。

というわけで、今年のパウエルFRBでは、ウィリアムズ総裁やクラリダ次期副議長などの「金融専門の経済学者」のお知恵を頂戴して、間一髪で「物価水準目標」を採用しようとする方向へ向かっているのです。

(個人的には、「中国経済がぽしゃるまで、アメリカ経済は悠長にリセッション入りなどできない」「どんな汚い手を使ってでも、米中経済戦争に勝つ」という、アメリカの国家戦略が絡んでいると思います。)

「物価水準目標」が採用されれば、アメリカの株式市場は再びブームを再開できるのです。

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藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』(2018年5月1日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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