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ほくそ笑むのは誰なのか? 現政権がどうしても今国会で通したい4つの法案

7月22日まで延長された今国会で、政府がどうしても通したい法案がいくつかあります。いったい誰のための法案なのかを考えながら、内容をひとつずつ解説します。(『らぽーる・マガジン』)

※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2018年6月25日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

国会会期を「延長」してまで通したい法案がある。得をするのは?

あらゆる手段を使って成立へ

政権与党が今国会でどうしても通したい法案は、優先順位の高いものから

です。

さらに、あまり報道されない法案がもう1つあるのですが、それについては後述します。

その1:与党を有利にする「参議院議員の定数増」

自民党は、参院定数を「6議席」増やす公職選挙法改正案を参院に提出しました。

1票の格差是正に向け、選挙区の「徳島・高知」「鳥取・島根」は合区を維持し、候補者を擁立できなかった県の候補者を比例代表の拘束名簿式の特定枠で救済するというものです。議員1人当たりの有権者数が最も多い埼玉選挙区の定数は「2議席」増やします。

自民党はこれまで憲法改正による合区の解消を模索してきましたが、改憲議論が進まない中で来年夏の参院選を控え、公選法改正で対応することとしたようです。

同法案は参院で先に審議し、衆院に送付されます。

これね、自分たちがプレーするゲームのルールを、自分たちに有利になるように勝手に変えるというのと同じですよね。

よく言われることですが、政治家が自分たちの首を切るような改革をするはずがありません。

地方は自民党の牙城で、地方議員定数が減ることは自民党にとっては痛手になります。それを「特例」を設けて議員数を増やすことに、どこに公平性があるのでしょう。

有名タレントの得票で落選候補者を助ける仕組み

今の制度では比例区では「非拘束名簿式」になっています。

有権者は政党または立候補者のいずれにも投票することができ、個人名が書かれた票は、その者が所属する政党の得票となります。

名簿順位は政党があらかじめ決めることはできず、個人票の得票数に応じて順位付けされ、当選者が決定します。獲得議席数に比して個人票の人数が足りない場合、あるいは政党内の議席獲得可能な候補者のうち順位が最も下の者の得票数が同数の場合、当選者はくじ引きで決まります。

デメリットとして、大量に票を獲得できるタレントたくさんの組織票がある候補者がいる政党では、その者の得票によって他の得票数の少ない候補者を助けることが可能となります。だからと言うわけでは無いでしょうが、参議院選挙では有名タレント候補が多いような気がします。

憲法改正が間に合わなくても「別ルート」がある

今回の「特例」では、「徳島・高知」「鳥取・島根」の合区では「拘束名簿式」となります。これは、誰がその政党の票を獲得するのかを事前に政党で決めるもので、名簿の最高位に位置する候補が常に議席を獲得しやすくなります。

合区の都合で選挙区から出馬できない議員を、拘束名簿で上位につけるというもので、当選を確約させるという仕組みです。

政党は好きだが上位候補者は支持したくない場合はどうすればよいのかという問題が出たり、名簿製作者の権限が強くなりすぎることになります。

本来、憲法改正で選挙制度を検討するところでしたが、来年の参議院選挙に間に合わないので、公職選挙法改正で対応しようとしているのです。

Next: 安倍政権は、誰のために「カジノ法案」成立を急ぐのか?



その2:誰のために成立を急ぐ? IR推進法(カジノ法案)

カジノ法案」と言われますが、カジノだけでなく統合型リゾートですから、付随するホテルやアミューズメントパーク全体に関する法案であることはご案内のとおりです。

安倍政権は、このIR推進法を成長戦略の目玉とするようですが、野党議員からは「カジノが成長戦略か」と批判があるようです。

確かにカジノを誘致しなくても訪日観光客は今でも増えていますし、カジノ誘致で劇的に訪日外国人が増える根拠は見当たらないでしょう。

ただ地方自治体にとってはカジノは「税収の宝」となります。

政府はカジノ運営事業者に対して納付金(カジノ税)を関連収入の30%とします。カジノ収入が3000億円を超える場合、超過分により大きな負担を課す仕組みとなっています。具体的には3000億円超~4000億円で40%、4000億円超~5000億円で50%課税となっています。

さらに日本人は入場料6,000円が必要になります。日本人の回数制限は「週3回、月10回まで」とし、マイナンバーカードで管理します。これらの収入を国と地方自治体とで折半します。

さらにホテルやアミューズメントパークなどの収益に対して事業税が地方自治体に入ります。

カジノ法案で地方自治体が誘致できれば、それだけで大きな税収アップとなります。そのため、地方都市は積極的にIR推進法案に賛成するでしょう。特に大阪府は万博とセットで考えていますから、日本維新の会が法案成立に尽力するのはよくわかります。

トランプへの贈り物か。外資系企業や多くの利権が絡む

ホテルやカジノ運営は外資系企業が行うことになるのでしょう。つまり海外資本で運営してもらい、税金を手にすることができるという、おいしい仕組みとなっているのです。

また、施設建設やカジノやホテル運営など、さまざまな利権が絡みそうです。

トランプ大統領の一番のスポンサーであるシェルドン・アデルソン氏は、ラスベガス・サンズというカジノリゾート経営会社の会長兼CEOです。トランプタワーも日本にできるのではないでしょうかね。

安倍総理とトランプ大統領とは親密な仲ですからね。学校を建てるより規模が大きいですし、アメリカが絡むと文句も言われないでしょう。

これもアベノミクス? 経済効果は年間6兆円との試算も

カジノ誘致による経済効果を、ある雑誌では年間6兆円と紹介していますし、産経新聞では2兆円の試算を紹介しています。また日経新聞では、大阪夢洲への誘致で年間6300億円と具体的な場所を指定して紹介記事を出しています。

これをもってアベノミクスの成長戦略とするのはいかがなものでしょう。

世論調査では約70%の人が「カジノ不要」と言っていて、ギャンブル依存症の不安も残る中で、強引にこの法案を通さなければならない事情は、日本国民とは関係のないところにあるような気がしますね…。

Next: 企業側の要望を叶える「働かせ方改革」で、サラリーマンはさらに苦しむ



その3:働き方改革関連法案

この法案に関しては、いろんなところで報道されているので目にすることは多いかと思いますが、労働時間に焦点が当てられている感じがします。

はたして「働き方」の本質が労働時間なのかどうかは議論があると思いますが、過労死が引き金となっていることは否めないでしょうね。

法案概要は次の通りです。

第1の柱:働き方改革の総合的かつ継続的な推進(雇用対策法改正)

第2の柱:長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等(労働基準法等改正)
1. 時間外労働の上限規制の導入
2. 長時間労働抑制策・年次有給休暇取得促進策
3. フレックスタイム制の見直し
4. 企画型裁量労働制の対象業務の追加
5. 高度プロフェッショナル制度の創設
6. 勤務間インターバル制度の普及促進(労働時間等設定改善法改正)
7. 産業医・産業保健機能の強化(労働安全衛生法・じん肺法改正)

第3の柱:雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
1. 不合理な待遇差を解消するための規定(パートタイム労働法・労働契約法改正)
2. 派遣先との均等・均衡待遇方式か労使協定方式かを選択(労働者派遣法の改正)
3. 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
4. 行政による履行確保措置と裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

マスコミでも取り上げられている「高度プロフェッショナル」の概念ですが、要は残業代を考慮した給与体系にする裁量労働制の導入がこの法案の「肝」なのでしょう。

裁量労働制導入を望むのは企業側

裁量労働制導入を望んでいるのは企業側で、経団連の意向に沿った法案と言われても仕方がないでしょうね。

政治評論家の伊藤敦夫氏は「働かせ方改革」だと批判しています。

この裁量労働制は、中小企業では、会社の従業員経費負担軽減の提案として導入されているケースが多く見られています。社労士のアドバイスがあるとも聞いています。

嘘のデータを使ってまでも通したい法案、いったい誰のための改革法案なのか、そこを見定める必要がありますね。

Next: なぜか報道されないTPP11関連法案も、今国会での成立が確実に



なぜか報道されないTPP11関連法案

米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)参加11カ国の新協定「TPP11」の承認案が5月18日の衆院本会議で可決し、今国会での成立が確実になりました。

TPP11関連法案も成立すれば、TPP11の国内手続きが完了することになります。日本は各国にも手続きを促し、年内の発効をめざすとしています。

承認案は衆院通過から30日以内に参院が議決しない場合は自然成立するため、今国会の会期末までに承認される運びです(編注:今国会は7月22日までの延長が決まり、TPP11関連法案は29日にも参院本会議で可決、成立する見通しとなっている)。TPP11は6カ国が国内手続きを終えた60日後に発効し、輸出入にかかる関税が引き下げられ、ビジネスのルールも統一されます。

TPP11関連法案は

  1. 畜産農家への補助を法律で明記
  2. 著作権の保護期間を50年から70年に延長
  3. 映画・漫画など海賊版の取り締まりの強化

などが主な内容となっています。

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今週の重要指標&予定

マーケット変動要因はトランプ大統領のTwitter

米中貿易戦争の様相

加計理事長記者会見

今週の相場シナリオ(私見)

よもやま話:忠犬ハチ公が渋谷の駅前を離れる…

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・先週は2回も大幅下落がありました…(2/12)
・コインチェック問題から考える、仮想通貨(暗号通貨)はどうなるのか(2/6)
・金利を意識しだした株式市場(2/5)


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らぽーる・マガジン』(2018年6月25日号)より一部抜粋
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