米中の関税合戦が激化していますが、7月6日頃には決着して市場も落ち着くでしょう。いま中国経済は大きな壁にぶち当たっていて、対抗する余裕などないのです。(『資産形成・マクロ金融deあそぼ♪ − 貞子ちゃんの連れ連れ日記』藤井まり子)
※本記事は有料メルマガ『資産形成・マクロ金融deあそぼ♪ − 貞子ちゃんの連れ連れ日記』2018年6月26日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。
世界を飽きさせないトランプ劇場。中間選挙まで市場は乱高下する
エスカレートする米中「関税合戦」
およそ「500億ドルの中国製品への25%の高関税」に続いて、先週の6月18日(月)には、トランプは「およそ2,000億ドルの中国製品に10%高関税を課す」といった過激発言にヒートアップしました。
さらにトランプは、この「2,000億ドル」に対して中国がさらなる報復に出るならば、アメリカ側は「さらなる2,000億ドルの高関税」を中国製品に課すと脅しました。
アメリカの中国からの輸入はざっくり年間5,000億ドルくらいです。この「2,000億ドル+2,000億ドル」が本当ならば、アメリカが中国から輸入する製品のほとんどに高関税を課すということになります。
市場は「7月6日の決着」を織り込んでいる
さすがに、マーケットはこのあたりは「はったり(=ブラフ)」だと判断しました。
マーケット関係者の大方の見方は、「アメリカと中国との間の貿易交渉は、表面上では激しい言葉の応酬が行われているけれども、水面下では着実な交渉が進行中で、7月6日には大方の『大人の対応』で決着がつく」というものです。
後述するように、今の中国経済は難問が山積、アメリカと貿易戦争をしている余裕などありません。
今のアメリカ経済は、中国叩きをすれば有権者は喜ぶものの、中間選挙前に大きく株価を下げるのは、望ましくありません。
7月6日には、すでに発表されている「500億ドルの25%関税」分について、米朝が「大人の対応」をして、米中貿易戦争は「峠を越して大方の決着がつく」というのが、大方のマーケット関係者の見方です。
トランプ劇場の次のターゲットは
米中貿易戦争では、確かに、そういう決着は行われることでしょう。「米中の高関税政策の応酬」に関しては、7月6日には峠をほぼ越えることでしょう。
けれども、中国への過激な口撃(ツイッター攻撃)は、アメリカのコアなトランプ支持者には大ウケします。
トランプの過激な「排外主義的な発言」は、今ではトランプの支持率を45%にまで押し上げています。ありえないような中国叩きは、秋の中間選挙「直前」まで続くことでしょう。
たとえば、(夏の終わりあたりか?)「人民元は安すぎる!」といった暴言もトランプのツイッターで飛び出すことになるでしょう。
さらに、7月6日以降からは、トランプ劇場の第三幕(中国叩き)と並行して、第四幕や第五幕・第六幕.と、「みんながびっくりするようなトランプ劇場」の幕が次々と開いてゆくことでしょう。
有権者を飽きさせないために、有権者を楽しませるために。
「EU叩き」劇場は既に自動車関税で始まっています。いずれトランプの「EU叩き」は「ユーロは安すぎる!」「NATOの軍事費負担が低すぎる!」まで発展することでしょう。「NAFTA叩き」劇場や、それに付随して「メキシコいじめ」劇場もまた始まることでしょう。
遅かれ早かれ「日本叩き」「円は安すぎる!」劇場も始まることでしょう。
こう考えると、どうも中間選挙が終わるまでは、内外の株式市場は乱高下しながら弱含みすることを覚悟しなければならないのではないでしょうか?
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大きく下振れした中国の経済指標
中国の5月の主要な経済統計が、大きく下振れしています。特にサプライズなのが、固定資産投資(1~5月の累計)と、小売売上高。
中国の「固定資産投資(1~5月の累計)」は、前年比6.1%増しでした。2018年に入ってから、つるべ落としのように落ち込んでいます。
この低さは、サプライズ的な低さです。1995年の統計開始以来の低さなのです。今までのボトムだった「1999年12月の6.3%増し」を記録更新しています。
さらに「5月の小売統計」も、前年比8.5%と、今年に入ってから落ち込んでいます。これは、2003年6月に記録した8.3%以来、15年ぶりの低さです。
マネーサプライの絞り込みも気になるところです。中国の5月のマネーサプライの伸びは、前年比8.3%でした。
中国経済は大きな壁にぶち当たっている
中国という国は、習近平を頂点とした中央集権国家を確立したとはいえ、習近平が2017年に独裁体制を確立する以前は、どちらかというと「多くの州政府が居並ぶ連邦制」のような国でした。
習近平以前の連邦政府的国家では、「中央(北京)が政策を練れば、地方が対策を打つ」ということが普通に行われていて、これが中国経済の最大の強みでした。地方の自治権が強かったので、当時は、ある意味、フレキシブルかつ現実的な経済運営が可能だったわけです。
ところが、習近平が権力を掌握して、中央集権が強化されてからは、地方の州政府の自由度は大きく削減されてしまい、中国経済の柔軟さは損なわれています。
そういった柔軟さが欠如した中で、中央集権的に債務削減(=不良債権処理)が推し進められているのです。経済運営では至る所で「きしみ」が生まれていることは、想像に難くないです。
巨大な不老債権を処理しないままでは、中央政府主導での構造改革は周期的に壁にぶつかります。2015年夏から2016年に走った「チャイナショック」はその象徴でした。
公式発表のGDPとは裏腹に大きく失速
2018年の中国経済は、公式のGDP統計とは裏腹に、大きく失速しているようなのです。
固定資産投資が過去最低の伸びになり、小売売上高も15年ぶりの鈍化が顕著になれば、内需全般に陰りが出ていることは、明らかです。
こういう「内需に陰りが出てきた」時の中国経済は、「輸出ドライブ」に活路を見出すしかないのです。
実際に、2017年の中国経済は、内需に陰りが出始めていたので、輸出ドライブを加速することで、なんとか難局を乗り越えたのです。トランプ大統領の大幅減税のおかげで、2017年の中国経済は大いにアメリカへの輸出を伸ばせたのでした。
ところが、2018年は、米中貿易戦争が顕在化、今の中国経済は、このままでは、輸出ドライブがかけられない状態に追い込まれそうです。
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貿易戦争をする余裕がない中国
上海株式市場は、北京政府の防衛ラインと言われていた3,000ラインを大きく下回っています。上海株式市場がここまで下落したのは、2016年1月以来です。「チャイナショック」の悪夢がよみがえりそうです。こういった状態ですから、今の北京政府は、貿易問題では7月6日までにはアメリカに大きく譲歩しそうです。今の中国経済こそは、悠長にアメリカと貿易戦争をしている「ゆとり」はないのです。
中国国内で噴出した対米政策を疑問視する声
7月6日を前にして、中国の経済論壇では、こういった論調のものが発表されるようになっています。
トランプ米政権が講じる関税措置に、中国共産党指導部が同程度で対抗する方針を示したことで米中間の貿易摩擦が激しくなる中、中国国内では米国と争う準備が整っているのかと公然と疑問視する声が出ている。党指導部に対してこのように疑問を直接呈す動きが出るのは異例だ。
出典:中国指導部の対米貿易方針、国内で疑問視-景気懸念下で異例の動き – Bloomberg(2018年6月26日配信)
言論統制の厳しい中国で、こういった論調がインターネット上で出回るということは、中国の中央の北京政府がこの論調と同じ意見だということです。
長期金利上昇を抑えてくれている「トランプの過激発言」
米中貿易戦争がハイテク分野にも波及
大バーゲンセール状態になっている日経平均
日本は2019年10月消費税増税へ
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『資産形成・マクロ金融deあそぼ♪ − 貞子ちゃんの連れ連れ日記』(2018年6月26日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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