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モノ言う株主は味方なのか? 私が彼らを「真の株主」と認めないワケ=山崎和邦

株主総会シーズンが終わった。昔は総会屋が幅を利かせたものだが、今は「モノ言う株主」が台頭している。総会の運営側にもいた私は、彼らに違和感を覚える。(山崎和邦)

※本記事は、有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』(罫線・資料付)*相場を読み解く2018年7月1日号の一部抜粋です。今月分すべて無料の定期購読はこちらからどうぞ。

儲けることは、善いことだ。ただ、その「やり方」にも善悪がある

「隠し事」が総会屋を呼ぶ

「株主総会シーズン」は終わった。株主総会についてまず簡単に語ろう。

筆者は三井の会社にいたときに総務担当の常務取締役をしていたことがある。事実上の株主総会の運用責任者であった。株主総会対策の弁護士主催の研修にも参加し、それなりに勉強もした。

しかし次のような決意にたどりつき、それを実行したところ何も恐れるものはないということになって、結果はすべてスムーズに運んだ。

株主総会は、答えたくないことがあって隠していることがあると、総会屋がはびこる。正業を営んでいる間にミスは起こる。これを隠せば正業は虚業になる

ミスは総会屋に突かれる前に自ら報告し、その対策を発表する。予想外のことを突かれたら担当セクションの責任者に回答させて正直に答える。もちろん、想定問答集は用意する。何事もすべてを回答し、すべての改善策をそこで述べる。

そうすれば、何時間かかっても総会屋を恐れることはない。

総務部の「忖度」が株主総会を修羅場にする

それなのに、年老いた社長や会長を疲労させてはいけないという総務部の「間違った思いやり」で、総会を短時間で切り抜けようとするから隠蔽や誤魔化しが起こる。そして、総会屋にそこを突かれるのだ。

年老いた社長や会長がいくらお疲れになっても、彼らはそれが1年に1回の業務なのだから、止むを得ない。

すべてに社長や会長が回答できるわけではないから、責任者にすべてを振り当てて、すべてを担当責任者に回し、回答させること。担当責任者はすべてを隠さずに報告し、すべての改善策を述べること。何時間かかろうとそれをやり切る。そういう決意をして、やり切る。議長を務める社長には、「どの質問は誰に振れ、誰に答えさせろ」と事前に(またはその場で)指示することが重要なのだ。

平成3年の野村証券の総会では、社長自らが答えてしまって大失敗をし、社長・会長が辞任するという不祥事となった。あれは斎藤専務(後の東証社長)に振って、彼に答えさせるべきだった。

社長・会長はお疲れだろうが、それは我慢してもらう、年に1度のことだから我慢してもらう。そのための役員報酬でもある。

Next: 総会屋の代わり出てきた「モノ言う株主」。彼らは投資家の味方か?



活動の場を失った総会屋

筆者の会社員生活は、前半は野村證券、後半は三井の会社で過ごした。

後半は商品が野外にあり、人々の目にさらされるものである。どこにどういう苦情があるか計り知れない。当社が進めていたのはもちろん実業である。実業が成功している間にミスは起こる。これを隠したり誤魔化したりするから、これが虚業となる。そこを総会屋に突かれる。

何事も隠さず、何事も報告し、何事も今後の改善策を報告する。これさえ決めておけば、何時間かかろうが恐れるものではない。

筆者がそれを感じ、それを実行してきたのは約30年前のことである。総会屋がはびこっていた時代である。

この考え方は、今はどの会社でも採っているようだが、筆者がそれを決意し実行していた4年後(平成9年)に、野村證券が総会屋との問題で役員19人が辞職したという事件があった(前述の平成3年の事件とは別)。

今は筆者が当時考えたようなやり方が一般的になり、総会屋は活動する場面を失った

「モノ言う株主」の台頭

ここで述べるのは、総会屋とは別な「モノ言う株主」についてである。

彼らは経営陣に緊張感を与え、株主の代表としての代弁者であるから、一般に好感されている。例えば、村上世彰氏はその例である。

しかし、株式を高値で売り抜けることを目的とする「モノ言う株主」が、当該会社から離脱するタイミングをつくるために「モノ言う」のであれば、その言動は正当性を欠く。

そういう「モノ言う株主」の関心事は、もっぱら株価にある。会社は誰のものか? 言うまでもなく株主のものだ。したがって、株主価値の最大化を図ることは妥当性を持つ。こういうことは、個人という主権者が株主という規範意識を確立させてきたからできるのだ。

株主の利益は、本来「会社の利益」とともにある

会社の成長とともに会社の利益が増え、自分に対するリターンが増える。これが本来の株主の態度である。

秒単位の売買を繰り返したり、短期売買を繰り返すことは「株の買い手」ではあるが、本来は「株主」ではない。本来の株主は、数秒単位とか3日単位でポジションを持つことはない

数秒単位あるいは2~3日単位の短期売買、これは筆者も時には行う。また、それを当メルマガで報告したり「動画」やセミナーで語ったりすることもある。これは短期売買の勝負事であって、株主になることではない。

余談だが、筆者がやった3年前の250円割れから2年前の170円までの東芝株の買い(これは約1年ほど持って340~350円で売り切った)や、2年前の400円割れからの東電株の買い(600円近くで大半を売った)というようなことも当メルマガで述べた。

これは東芝が持つ本来の企業価値を計算し、発行株数で割り算すると1株当たり435円になる(実際に440円台になった)から、その半値以下は「異常な安値」として買ったものである。

東京電力はイデオロギーと関係なく(17日号の東電の項目で述べた)原発の再稼働によって2000億円の経常利益が上乗せになることを考えれば、地球温暖化の防止、高い原油を海外から買うことが減る。

地域住民に雇用を与え、経済を活性化させる面がある(絶対安全という神話はないから、これに対して万全の策を講じることは当たり前だ)。また、優れて生産工業的・経済的・東電の企業価値の増殖、という点から考えて投資したものである。

私がやったことは、中長期保有といっても「モノ言う株主」の動機とは違うものだ。

Next: 「モノ言う株主」は信用できない? 株主のあるべき姿とは



「売り抜けだけ」を目的するのは何か違う

筆者が中長期保有するのが本命であると述べてきたのは、モノ言う株主とは立場が違う。

モノ言う株主は、当該企業からの脱出(売り切ること)を目的として株価を上げるためにモノを言うのだ。

それも悪いことではない。株価を上げるということは株主価値を上げるということであり、株主全員の利益にもなる。

しかし、当該企業から脱出することだけを(売り切ることだけを)主目的として「モノを言う」のは、いかがなものであろう。筆者はそれを言う。

10数年前、村上世彰氏が盛んにテレビに出ていた頃、彼は「私はごっつ儲けましたよ。儲けることは悪いことですか?」と挑戦的だった。

筆者は「儲けることは悪いことではない。良いことだ。しかしそのやり方が悪いことに属する」と即座に心の中で回答を用意して聴いていたことを今でも思い出す――

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※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報 「投機の流儀 (罫線・資料付)」*相場を読み解く』2018年7月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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山崎和邦 週報「投機の流儀(罫線・資料付)」』(2018年7月1日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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