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6年で半値か、30倍か。中国切手バブルの崩壊から学べる4つの相場原理

ある中国切手は2012年に50万円で取り引きされていましたが、いまや半値に近い27万円です。このバブル崩壊から学べるのは、株や為替にも通じる相場の原理です。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
(株)銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

実物資産のおもしろさ。価値が上がった切手は何が違うのか?

集めてわかるアンティーク品の価格変動

僕はいろんなものを集めるのが好きで、あれこれ収集しています。

コインやカラーストーンなどを集めていることは当メルマガをお読みの方はご存知だと思いますが、ほかにも紙幣や茶道具、絵画、19世紀のヨーロッパの缶や博物画、トンボ玉、古代のガラス瓶なども好きです。

こうやっていろんなモノを集めていますと、それぞれに価格の変動があってとても勉強になりますし、それによってより深く相場というものを知ることができます。

例えば、昨今の中国切手です。

2000年に入って急騰した「中国切手」

中国の切手が2000年以降に急騰したのをご存知の方は多いと思いますが、一例だけ挙げさせていただくと、

・1964年発行「牡丹小型シート」

という切手があります。

1986年に発行された「中国切手カタログ」によれば、この切手の当時の価格は18,000円とあります。

おそらく中国切手のピークは2012年ごろだったと思うのですが、当時のカタログを引っ張り出してみますと、この切手の価格は500,000円でした。

ずいぶん派手に値上がりしたものですね。この間、27倍以上になっています。

わずか数年で「半値」に下がった

今から振り返れば、2010年前後からすでに「中国切手はバブルだ」といわれていたものです。

では、その後の値動きはどうなったのでしょう。バブルは弾けたのでしょうか。

結論から申し上げればその通りで、バブルは弾けました

手元に2018年版(これが最新です)の中国切手カタログがあるのですが、上記「牡丹小型シート」の価格は270,000円と、ほぼ半値です。

50万円の高値でつかんだ人は、さぞ悔しい思いをされたことでしょう。

一方で、この間の中国切手全体を見渡すと、すべての切手がこのように値下がりしているわけではありません

Next: 価値が上がった切手は何が違う? 株や為替にも通じる相場の原理とは



30倍に値上がりした切手も

前述の「牡丹小型シート」とほぼ同時期に発行された切手でも、逆に2012年から2018年にかけて2倍から3倍、なかには30倍近くまで値上がりした切手もあるのです。

数例を挙げさせていただきます。

・1970年「現代京劇(6枚セット)」9,500円 → 25,000円
・1971年「パリ・コミューン100周年(4枚セット)」18,300円 → 43,000円
・1973年「革命的現代バレエ(4枚セット)」900円 → 18,000円
※価格の左側数字は2012年カタログ価格、右側は2018年カタログ価格

切手相場から学べる4つのこと

上記の事実から、私たちはどのようなことを学ぶべきなのでしょう。

いくつかあると思うのですが、1つ目は「高くなりすぎたものは、いずれ調整が入り、妥当な価格に戻る」ということではないでしょうか。

2つ目は逆で、「安すぎたものもまた、いずれ妥当な価格まで値上がりする」ということです。

3つ目は、この「1つ目・2つ目の現象は、隣接した銘柄間で同時に進行することがある」ということです。もっとわかりやすく言えば、例えば同じ中国切手のなかでも、値上がりする銘柄もあれば値下がりする銘柄もあり、「すべてが同じ方向に動くとは限らない」ということです。

4つ目は、「高すぎる、安すぎるといった肌感覚は意外と重要で、決して軽視してはいけない」ということではないでしょうか。現物資産には、例えば株でいうところのPERや、債券でいうところの利回りという概念がなく、高い安いを計る指標がありません。だからこそ、この肌感覚が重要ではないでしょうか。

思い返せば2010年当時、切手をよく知る専門家は、中国切手のバブルをよく指摘していたものです。

コイン市場にも同じ原理

さてさて、この中国切手のお話。昨今のコイン市場と何と共通点が多いことでしょう。

例えば、あの有名なイギリスの5ポンド金貨「ウナとライオン」は、今から15年ほど前にオークションで200万円ほどで落札されていたものです(※準未使用クラスの場合)。

そのコインが今オークションに出品されますと、当時の15倍の3,000万円を下ることはありません。

さらに向こう数年で数倍に値上がりすると煽る新興の業者さんもおいでのようですが、果たしてどうでしょうか。

Next: ビットコインのような投機ではない「アンティークコイン」投資の魅力



アンティークコインの魅力

コイン収集やコイン投資は、ビットコインのような投機ではありません

リスクを回避しながら行う推理ゲームの側面もありますし、知的な趣味の側面もあります。

どのような領域のコインに投資するか、どの国やどの時代のコインを買えばよいのかお迷いになったら、さきほどの中国切手の例は参考になると思います。

image by:Valentina Perfilyeva / Shutterstock.com

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一緒に歩もう!小富豪への道』(2018年7月10日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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