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アップルが時価総額1兆ドル超え、最大の強み「iPhone」が今後は最大のリスクに=東条雅彦

時価総額1兆円を越えたアップルには、バフェットもハーバード大学も投資しています。売上はほぼiPhoneに依存していますが、これを脅かす製品は出るでしょうか?(『ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』東条雅彦)

アップルのビジネスはほぼiPhoneに依存。もしそれが崩れたら?

売上の62%がiPhone

現在、ウォーレン・バフェットハーバード大学も、アップルに最も資金を割り当てています。アップルはとても強いワイドモートを持っています。そして、そのワイドモートはスティーブ・ジョブズ氏が作ったiPhoneによって支えられていると言っても過言でありません。

2017年度のアニュアルレポートを確認すると、全体の年間売上高(2017年度)は2,293億3400万ドルでした。iPhoneのみの売上高に限定すると、1,413億1,900万ドルです。iPhoneが売上高全体を占める割合は62%に達しています。

<アップルの地域別、製品別売上高及び製品別販売台数>


(単位)
・地域別売上高、製品別売上高=100万ドル
・製品別販売台数=1,000台

<iPhoneの売上高全体を占める割合>

iPhoneは1年で2億1,675万台も売れています。iPadの4,375万台、Macの1,925万台がとても小さく見える程、iPhoneの販売台数は他の製品を圧倒しています。アップルのビジネスはほぼiPhoneに依存しているのです。

ちなみに、Apple Watchの販売台数についてはアニュアルレポートには記載がありませんでした(Apple Watchはまだ育成中であり、これからの製品です)。

iPhoneに代わる製品はどんなものになるのか?

アップルへの投資にもしリスクがあるとすれば、iPhoneに代わる製品が出現した時です。それでは、一体、iPhoneに代わる製品とはどんな製品になるのでしょうか?

おそらく「汎用ハードウェア」になることは間違いないでしょう。元々、iPhoneが支持を得ているのは、iPhone1つで様々な製品に化けることができる点です。

iPhoneはある時には携帯電話になり、ある時はビデオカメラになり、ある時は携帯ゲーム機になる。他にもカーナビ、目覚まし時計、キッチンタイマー等など挙げていくとキリがない程、様々な製品に変化するものです。その仕組みを可能にしたのが「汎用ハードウェア」という発想でした。

当メルマガの前号では電卓を例えにして、下記のような図でそのイメージを表現しました。この発想は重要なので、再掲します。

<電卓「専用機」>

<スマートフォン上の電卓>

ハードウェアを汎用的に使えるようにしたことで、iPhoneは「ドラえもんの四次元ポケット」のような存在になったのです。iPhoneの代わりになる製品もこのドラえもんの四次元ポケットを超えるものにならなければ、ユーザーからの支持は得られないと思われます。

Next: 「Apple Watch」はまだ欠点だらけ。スマホを駆逐しうる次の製品は?



スマートウォッチのメリットとデメリット

現在、アップルが力を入れているApple Watchですが、この製品は今のところ、iPhoneを補佐する役目しか担っていません。GoogleもAndroid Wearというスマートウォッチ向けのOSを出していますが、これも位置づけ的にはほぼ同じです。

スマートウォッチはスマートフォンの機能の一部を実現した製品に過ぎません。個人的にはスマートウォッチに関しては、まだ実験段階ではないかと思っています。

具体的には以下の用途で使われています。

<スマートウォッチの主な機能>

・メールや電話の確認
・交通ナビ機能
・ニュース等の確認
・天気の確認
・おサイフケータイ
・心拍数の計測
・音楽の再生

私も一応、Android Wearを搭載したスマートウォッチを身に着けていますが、正直、スマートウォッチがなければ絶対に困るという状態ではありません。日常的に感じているメリットとデメリット(個人的な感想)は以下の通りです。

<スマートウォッチのメリット>

・電話がかかってきた時にバイブレーションで腕が震えるので、すぐに気がつく(電話の取りミスが少なくなった)
・メールやLINEなどのメッセージをスマートウォッチで確認できるので、スマートフォンを見る回数が減った

<スマートウォッチのデメリット>

・多くの機能を使おうとしたり、頻繁にスマートフォンを操作したりすると、すぐにバッテリーがなくなる
・画面が小さいので、できることが限られる

スマートウォッチはスマホの代わりにはならない!

現時点ではスマートウォッチはスマートフォンの機能を削って時計サイズにした製品です。このままスマートウォッチがスマートフォンの代替製品になるとは思いません。

もちろん、人間はより便利な方を好むので、今後、スマートウォッチが普及してくる可能性は大いにあるでしょう。しかし、スマートウォッチを持ったからといって、スマートフォンを捨てられるわけではありません

スマートウォッチの最も致命的なのは画面が小さすぎる点です。コンピューターと人間が相互に意思疎通を図るユーザーインターフェースが小さいので、どうしても機能が限定されてしまいます

スマートフォンの次に来る製品は?

それでは、スマートフォンの次に来る製品は何なのか? 最も有力な候補は、仮想現実(VR)拡張現実(AR)です。

VR(仮想現実:Virtual Reality:バーチャルリアリティ)
AR(拡張現実:Augmented Reality:オーグメンテッドリアリティ)

両者は一見、似ているようでまったく別物なので、混同しないようにご注意願います。

VRは、仮想世界に現実を反映させる技術です。メインは「仮想」にあります。最近、VRゴーグルの方は比較的よく売れてきています。安いものだと3000円前後で手に入ります。スマートフォンをVRゴーグルに装着すると、すぐに使えます。

私も先日、試しに購入してみました。絶叫マシンが好きなので、VRに対応したジェットコースター系の無料アプリを何本かダウンロードして、体感してみました。もちろん、リアルなジェットコースターの迫力には負けますが、体がふわっと浮いたりする感覚は味わえます。YouTubeなどでもこの手の動画は大量にアップロードされています(検索ワード例「VR Coaster」)。

<VRコースター>

欠点はリアルなジェットコースターよりも酔いやすい点です。興味のある人はVRゴーグルを購入して体感してみましょう。

そして、もう1つはARです。ARは現実に仮想世界を反映させる技術です。メインは「現実」にあります。

ARの代表的な例は「ポケモンGO」というゲームです。ポケモンGOはスマホを片手に近所の公園などに行ってカメラを回すと、現実の世界に溶け込むようにモンターが出現します。

<ポケモンGO プレイ中のスマホ画面>

ポケモンGOというゲームは現実世界を舞台にしています。この発想が世界中の人々に受け入れられて、累計ダウンロード数が8億を突破しました(2018年5月)。

Next: 拡大を続ける画面サイズにヒントが? スマホを越える製品は出るのか



iPhoneの画面サイズが大きくなり続けている理由

2008年に「iPhone 3G」が発売してから今年で丸10年になりますが、iPhoneの画面サイズと解像度はひたすら大きくなり続けています

当初3.5インチだった画面サイズが今では5.8インチになっています。約1.65倍も画面サイズが大きくなったのです。そして、iPhone Xではもうこれ以上、本体を大きくすることはできないと悟ったのか、液晶ディスプレイをほぼ限界まで上下左右に広げています。

<iPhone 大きさの推移>

出典:youfones

最も大きいiPhone 8 Plusで縦幅が15.84cm、横幅が7.81cmです。このぐらいの大きさがポケットに入る限界だと言えそうです。

スマートフォンの画面サイズと解像度が大きくなり続けている傾向はiPhoneだけではなく、他のAndroid機種でも同じです。これ以上、大きくなってしまうと、タブレットPC、ノートPCとほとんど変わらなくなってきそうです。

では、なぜ画面が大きくなり続けているのか?

それは画面が小さいと機能的に実現できることが少なくなるからです。AppleWatchやAndroid Wearなどのスマートウォッチを一度でも身につけたことのある人は、そのことがよくわかるでしょう。小さくしすぎると、できることが限られてしまうのです。

反対に、物理的に大きくしすぎるとポケットに入れて気軽に持ち運べるというスマートフォンの利便性が失われてしまいます。

「スマートフォンに代わる製品」はこの画面の大きさという制約から開放されている必要があると私は考えています。

「Google Glass」がスマートフォンに代わる製品になる!

腕時計→スマートフォン→タブレットPC→ノートパソコン→デスクトップパソコンと、高性能になればなる程、物理的に本体が大きくなっていきます。

持ち運びを重視するなら、小さい方がいい。でも、小さすぎると、機能が大幅に削られてしまう。

そして、スマートフォンは持ち運びやすさとできることの多さという2点において、とてもバランスの良い製品だと思います。この絶妙なバランスはしばらくは崩れないでしょう。

そして、もしスマートフォンの優位性が崩れるとすれば、画面の大きさに制約のない機器が登場した時になると思います。

その画面の大きさの物理的な限界を突破できる可能性の高い技術が、前述のARやVRなのです。

その視点で考えを巡らすと、気になるのは2012年にGoogleが発表した「Google Glass」というメガネ型コンピューターです。Google Glassは一般消費者向けに発売した製品ではなく、まずは開発者向けに有料(1500ドル~)で提供が開始されました。

<Google Glass>

出典:YouTube

出典:YouTube

このGoogle Glassを装着している人は街中をカメラで撮影しまくるので、プライバシーの問題が指摘されました。さらに、キラーアプリがなかなか現れず、高額な価格とハードウェアの制約もあって、日の目を見ないまま、2015年に開発が打ち切られました。

当時に制作されたプロモーション映像があります。

<Google Glassでの一日>

目的地まで行くための選択肢(徒歩or電車)が表示される

目的地までのルートが表示される

テレビ電話をする

Google Glassをかけると、自分の視界にコンピューターからの映像が表示されます。これは現実を拡張しているので、ARの技術だと言えます。Google Glassのプロモーション映像を見ると、まるでSF映画の世界のようです。

このように、眼鏡を通じて目の前に映像を出す方式であれば、物理的な画面サイズの制約から開放されます。しかし、プライバシーの問題や技術的な問題は依然として残っています。

Next: なぜGoogle Glassのプロジェクトは復活したのか?



なぜGoogle Glassのプロジェクトは復活したのか?

2017年7月18日、グーグルの持株会社アルファベットは、法人市場に特化した「グラス・エンタープライズ・エディション」を発表しました。一度は断念した「Google Glass」のプロジェクトを復活させたのです。

しかも、今度はコンシューマー(一般消費者)向けではなく、法人向けに特化することにしました。すでに50社以上の企業でGoogle Glassが使用されています。

<法人向けのGoogle Glass>

出典:ROADTOVR

やはり、グーグルはメガネ型コンピューターの開発を諦めることはしませんでした。スマートフォンの牙城を崩せる可能性が少しでもあるのなら、今のうちに投資して育てておきたいというグーグルの意志が透けて見えます。

機能をとるか、携帯性をとるか。そこに限界がある

こちらの図をご覧ください。

<各機器の比較(機能の多さ、携帯性の良さ)>

こちらの図はスマートウォッチ、スマートフォン、タブレットPC、ノートPC、デスクトップPC、メガネ型コンピューターの6つの機器を、機能の多さ携帯性の高さの2点に着目して、その関係性を示したものです。

基本的に画面が大きい方ができることが多くなります。まさか、デスクワークをしている人で、パソコンを使わず、スマートフォンだけで仕事をこなしている人はいないはずです。画面が大きい方が仕事の効率が上がり、できることも増えます。

近年、スマートフォンの画面サイズはどんどん大きくなってきました。この目的は「できることを増やすため」です。iPhoneの画面サイズはここ10年で3.5インチから5.8インチへと約1.65倍に拡大したのです。

それでは、このままスマートフォンの画面サイズが6インチ、7インチ、8インチと大きくなっていくのでしょうか? そこまで大きくなってしまうと、スマートフォンではなく、もはやタブレットPCです。

そして、機能性を重視していくと、反比例するかのようにスマートフォンの携帯性の良さがどんどん失われていくことになります。やはり物理的に画面サイズを大きくしていく方針には限界があると言わざるを得ません。

機能と携帯性を両立する「メガネ型コンピューター」

このような状況の中、Google Glassなどのメガネ型コンピューターは、機能の多さと携帯性の良さの両立を保てる可能性が高い。なにしろ、メガネ型コンピューターは視界全体がコンピューターの画面になりえるのです。

よくデイトレーダーの人がパソコンのディスプレイを6台ぐらい並べて、トレードしている光景を目にしますが、メガネ型コンピューター1つで全世界の為替市場の動向を目の前に映し出すことも可能です。

将来性のある分野にどんどん投資していくグーグルのベンチャー精神には驚かされます。

Next: 次の覇権を握るのは? やはりハーバード大学の投資戦略は賢明だった



やはりハーバード大学の投資戦略は賢明である!

VR、ARの分野については、グーグルだけではなくアップル、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフト等の米国系ハイテク企業が毎年、膨大な研究開発費を使って先行投資しています。

どの企業が「NEXTスマートフォン」の覇権を握れるかはわかりません。

ハードウェアとソフトウェアの組み合わせという視点ではアップルが有利だと思われますが、スティーブ・ジョブズがいない今、その強みを活かしきれるかどうかは不確実です。

ハーバード大学の資金を運用するハーバード・マネジメントは、アップル、マイクロソフト、グーグルの3社に集中投資しています。

<内訳>

アップル株:169万株
マイクロソフト株:185万株
アルファベット株:12万9000株

このたった3社で、同基金が保有する8億1680万ドル(約890億円)相当の上場米国株のうち約72%を占めます。

繰り返しますが、どの企業がNEXTスマートフォンを生み出せるかはわかりません。そのため、ハーバード大学の将来性のあるハイテク企業を複数、保有するという投資戦略に打って出たのでしょう。

ウォーレン・バフェットは今のところ、アップルのみに張っています。これはこれでバフェットらしい投資戦略です。バフェットはバリエーションを重視するので、アップル以外のハイテク企業は割高だとシビアに判断していると思われます。

image by:Arcady / Shutterstock.com

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ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』(2018年8月8日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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