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中国経済はこの先も安泰。落ち目の日米欧にとって中国が保険になる=田中徹郎

中国の経済成長に陰りが見え始め、高齢化や格差などの社会問題も深刻化しています。このまま中国は衰退へと向かうのでしょうか? 私はそうは思いません。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
株式会社銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

経済成長の鈍化、広がる格差…それでもこの先の中国が安泰のワケ

「豊かになる前に老いる」中国

数年前から中国の経済成長に陰りが見え始めています。直近四半期(1~3月期)のGDP(国内総生産)成長率は6.8%で、かつて10%成長が当たり前だった高度成長期と比べると、ずいぶん物足りない数字です。中国の社会を見ても、アチコチ問題点が目立つようになってきました。

例えば、一人っ子政策の影響で高齢化が急速に進み、労働人口は既に減り始めました。それにもかかわらず社会保険制度は未熟で、これから迎える高齢化時代への準備ができていないように見えます。

きっと軍備拡張やインフラ投資を優先させ、社会福祉や年金制度の整備を後回しにしてきたツケでしょう。いわゆる「豊かになる前に老いる」というやつです。

歴代王朝と同じ道をたどる?

あいかわらず格差も広がる一方で、内陸部の農村に住む国民には、不安や不満が広がっているようです。とても社会主義の国とは思えません

中国史を振り返りますと、歴代王朝の交代は、たいがい農民による反乱か異民族の侵入がきっかけです。このままの状態を放置すれば、歴代の王朝と同じ道をたどるかもしれません。

シャドーバンキングの問題も解消に向かっているようにはみえません。地方政府やその別同部隊が抱える隠れ借金は、近い将来で維持不能に陥る懸念があります。

このようにみてきますと、中国はとても順風満帆とはいえないことがわかります。

では、中国経済は早晩に行き詰まり、再び長い長い停滞期に入ってしまうのでしょうか?僕にはそうは思えません。

Next: 日米欧よりずっとマシ? 中国が抱える問題は解決できる



最も深刻なのは日本

確かに深刻な問題を中国が抱えているのは事実だと思いますが、それは中国に限ったお話しではありません。

アメリカはほんの一握りの成功者が莫大な富をため込み、冨の集中に歯止めが効かなくなってしまいました、ポピュリズム政権の台頭はこの現象と無縁ではないと思います。中国の経済成長率は6%代半ばですが、こちらは2%台に過ぎません。

ヨーロッパはさらに低成長ですし、アメリカ同様ポピュリズムや極右の台頭によって、社会が分断されつつあります。統一通貨ユーロもいつまで持つかわかりません。

日米欧のなかで最も深刻な悩みを抱えているのは、日本かもしれません。財政は維持不能なレベルが近づいているように見えますし、経済の潜在成長率は1%ほどに過ぎません。

今のところ日米欧のなかで、日本はもっとも社会が安定しているようにみえますが、そのために競争や成長がないがしろにされてはいないでしょうか。この状態が続くようなら、安定した社会を維持しながらも、世界における経済的な地位はもっと下がっていくのかもしれません。まるで低体温症です。

中国は必ず乗り越える

このように世界を見渡してみますと、決して中国ばかりが問題を抱えているわけではなく、どの国にもそれなりの問題があることがわかります。大切なのは問題があるかどうかではなく、その問題にどう対処できるかではないでしょうか。

中国の場合、経済成長が鈍化したと言っても、まだ(公証)6%台を維持しています。しかも一党独裁ですから、日米欧と違い機敏に危機対策をとれるでしょう。

ですから、仮にシャドーバンキング問題が顕在化したとしても、例えばわが国で1990年代に起きた住専(住宅金融専門会社)問題や金融機関の不良債権問題のように、先送りしてさらに傷口を広げてしまうということはないと思います。

10年後まだ習近平さんが政権を維持しているかどうかはわかりませんが、少なくとも今の共産党の組織や人材をみれば、たいへんクレバーで危機管理に長けているようにみえます。少なくともアメリカや日本の現政権よりは。

社会保障制度は中国の将来にとって大きな問題になると思いますが、予想される成長率(4%程度か)を前提にするならば、少なくとも向こう10年以上は維持できるのではないでしょうか。

このようなことから、さまざまな問題を抱えながらも、中国は今後さらに存在感を高めると僕は思います。

Next: 落ち目の日本で、私たちはどう対処すべきか?



落ち目の日本で、私たちはどう対処すべきか?

では、そのような近未来に向けて、私たちはどのように順応していけばよいのでしょうか。

仮に中国の経済成長率が4%まで下がったとしても、10年後には経済のサイズが1.5倍ほどにもなります。金額でいえばGDPの増加額は630兆円ほどで、今の日本1つぶん以上も増える計算です。

10年後の中国が、そのように拡大した経済規模をよりどころに何を実現しようとするかはわかりません。もちろん海外との協調路線に転じる可能性はありますが、場合によっては私たちお隣の住人にとって、不快な行動をとる可能性は十分あると思います。

今以上に豊かになった中国人が何を持ちたがるのかを考え、それを先回りして持っておくことは、このような少し憂うつな近未来の保険になるのかもしれません。

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一緒に歩もう!小富豪への道』(2018年7月4日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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